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第一章 虐げられた姫
第18話 魔法の感知
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「だいたい、あなたはですね……」
もう30分くらいは過ぎただろう。ハリナの説教は終わる気配がない。本当に半日丸々説教になるんじゃないかってくらい。
ここは、僕に与えられた城の中の一室。周りには、他の専属魔法使い達の部屋がある。ここには、普段は専属魔法使いしか入れないけど、その誰かと一緒なら、他人でも入れる。途中で転移したものの、僕を引きずってここまで来たので、ハリナも中に入れた。
一応、表向きは皇族専属の魔法使いと第四皇女の使用人。公の場で説教するところを見せるわけにはいかないので、僕の私室に来たんだろう。
ハリナは、一部の人以外には、自分と僕がはとこであることを話していない。余計な虫がつくのを防ぐためだ。僕への足掛かりに使われたくないというのもあるんだろうけど。
隠していても、僕と彼女が近しい関係だということは、多分他の魔法使い達には感づかれているだろうけど。でなきゃ、身分が上の僕を引きずるわけがないからね。
なんでこんな野蛮な女を使うのかなぁ……
「誰が野蛮ですって……?」
……あっ。こいつが心を読めるのを忘れてた。
「先ほどから上の空のようでしたし、もう一度最初から話しましょうか?」
「いいえ、結構です。ちゃんと聞いてます」
ハリナが笑いながらそう言ってきて、思わず敬語で返してしまった。なんか……こういうところが逆らいづらい。
僕が返したところで、説教が再開した。ちゃんと続きから。ただ聞いているだけじゃつまらないから、一応訓練でもしてるか。専属クビになったら、お金が減っちゃうし。さて、どんなことをしようかな。専属だから、一応攻撃魔法も使える。まぁ、そんなものを使えば、説教が二時間くらいは延長しそうなのでやらない。
じゃあ、魔力循環でもしていよう。
魔力循環は魔法を使うときの基本となるもの。これができなかったら、普通は使えない。
魔力循環は、魔力を体の中で循環させることで、魔力を認識すること。魔法を使ううえで最も重要だ。魔力を認識しないことには、魔法が使えないから。
でも、なかには例外もいる。あの皇女様とその母親がそうだ。あんな環境でろくに魔法のことを学べたとも思えないし、不安定だったから、あれは完全に無意識。母親の才能を受け継いだんだろう。
普通、意識しないと魔力は感じられない。でも、魔力が強くて、意識しなくても感じられるのがなかにはいる。
それがルメリナだ。というか、魔法の才を買われて後宮入りしたといっても過言ではない。優れた遺伝子を後世に残すことは大切だし。まぁ、あの性格の悪さがあれば、本当に入ったかは分からないけど……実家がうまいこと情報操作していたみたいで、気づかれなかったんだったかな。
まぁ、それなりの立場にいるらしいし、あいつ、あんなに美人揃いなのに、自分の妻にそこまで関心があったわけでもないみたいだし……
「陛下にあいつとはなんですか!」
「いいじゃないか。別にそう言ってもあいつは怒らないぞ?」
僕とレクトと皇帝は幼なじみだし。一応、殿下って呼んでたけど、タメ口も普通に言ってたからな。
「そういう問題ではありません!」
「でもさ、父親としては欠けてないか?身内ひいきをしないというのは、皇帝としてはいいのかもしれないけど、父親としては失格だよな」
「あんたは臣下としては失格ですがね!魔法の才が無ければすぐにでも追い出してやりたいのに……」
君の権限では無理じゃない?まぁ、皇帝が愛情をうまく注げないのも、分からなくはない。だって、あいつは愛情を受けないで育ったんだし。いや、母親からはあった。でも、父親からは皆無だ。先帝が父親らしいことをした記憶は僕にはない。
一応、誕生日プレゼントは送っていたらしいけど、人伝に、しかもとりあえず高価な物でも送ればいいだろっていう心情が見え見えだったし。
まぁ、あいつはそれにも気づいているか分からんが。レクトも、それは理解しているから、あまり強く責められないんだろうな。僕は仲良くしてようと、疎遠になっていようと、自分が巻き込まれなければどっちでもいいけど。
冷たいとか言われるかもしれないけど、これが僕だ。自分優先に考えるのはおかしなことじゃない。それに、僕もレクトも、あまり家族に愛されたわけでもないし、何かアドバイス的なのはできない。
「あんたのアドバイスは誰も期待しないと思います」
「さすがにひどく──っ!」
ハリナに言い返そうとしたとき、西の方から、強い魔法の反応があった。あっちは……第四皇女の宮からか?
「フィレンティア皇女殿下の宮で魔法ですか?」
「ここに届くくらい強いなら、皇女本人じゃない?魔力切れを起こしててもおかしくないよ」
魔力切れは、強い魔法などで、魔力が一割を切ったときに起きる。咳や頭痛とかだったらまだマシだけど、あまりにもひどいと、その場に倒れたりもする。
「魔力切れですか?なら、早く行きますよ!」
「分かってるよ。魔力切れを放っておくほど、僕も冷淡ではないから」
魔力切れは下手したら死んじゃうからなぁ……さすがにそんなことになったら、後味が悪いし。死ぬかもしれない人を助けようと思うくらいには、人の心はあるつもりだし。
「それはよかったです」
ハリナは、今度は引きずっていくような真似はしなかった。さて……歩きじゃ遅いな。飛ぶか。
ドアに向かったハリナを止める。
「転移した方が早い。一度行ったから、座標は分かるよ」
「あぁ……あなたは魔力量は化け物でしたね」
何その見た目だけは人間みたいな言い方は。人間はまだ止めてないよ?まぁ、いいや。訂正するのもめんどくさいし。
「無駄口叩いてないで、しっかり捕まってなよ。時空に閉じ込められても助けには行かないからね」
「大丈夫です。私も空間魔法は使えますから」
「なら安心だね。……じゃあ、行くよ」
さて……皇女様はご無事かな……?
もう30分くらいは過ぎただろう。ハリナの説教は終わる気配がない。本当に半日丸々説教になるんじゃないかってくらい。
ここは、僕に与えられた城の中の一室。周りには、他の専属魔法使い達の部屋がある。ここには、普段は専属魔法使いしか入れないけど、その誰かと一緒なら、他人でも入れる。途中で転移したものの、僕を引きずってここまで来たので、ハリナも中に入れた。
一応、表向きは皇族専属の魔法使いと第四皇女の使用人。公の場で説教するところを見せるわけにはいかないので、僕の私室に来たんだろう。
ハリナは、一部の人以外には、自分と僕がはとこであることを話していない。余計な虫がつくのを防ぐためだ。僕への足掛かりに使われたくないというのもあるんだろうけど。
隠していても、僕と彼女が近しい関係だということは、多分他の魔法使い達には感づかれているだろうけど。でなきゃ、身分が上の僕を引きずるわけがないからね。
なんでこんな野蛮な女を使うのかなぁ……
「誰が野蛮ですって……?」
……あっ。こいつが心を読めるのを忘れてた。
「先ほどから上の空のようでしたし、もう一度最初から話しましょうか?」
「いいえ、結構です。ちゃんと聞いてます」
ハリナが笑いながらそう言ってきて、思わず敬語で返してしまった。なんか……こういうところが逆らいづらい。
僕が返したところで、説教が再開した。ちゃんと続きから。ただ聞いているだけじゃつまらないから、一応訓練でもしてるか。専属クビになったら、お金が減っちゃうし。さて、どんなことをしようかな。専属だから、一応攻撃魔法も使える。まぁ、そんなものを使えば、説教が二時間くらいは延長しそうなのでやらない。
じゃあ、魔力循環でもしていよう。
魔力循環は魔法を使うときの基本となるもの。これができなかったら、普通は使えない。
魔力循環は、魔力を体の中で循環させることで、魔力を認識すること。魔法を使ううえで最も重要だ。魔力を認識しないことには、魔法が使えないから。
でも、なかには例外もいる。あの皇女様とその母親がそうだ。あんな環境でろくに魔法のことを学べたとも思えないし、不安定だったから、あれは完全に無意識。母親の才能を受け継いだんだろう。
普通、意識しないと魔力は感じられない。でも、魔力が強くて、意識しなくても感じられるのがなかにはいる。
それがルメリナだ。というか、魔法の才を買われて後宮入りしたといっても過言ではない。優れた遺伝子を後世に残すことは大切だし。まぁ、あの性格の悪さがあれば、本当に入ったかは分からないけど……実家がうまいこと情報操作していたみたいで、気づかれなかったんだったかな。
まぁ、それなりの立場にいるらしいし、あいつ、あんなに美人揃いなのに、自分の妻にそこまで関心があったわけでもないみたいだし……
「陛下にあいつとはなんですか!」
「いいじゃないか。別にそう言ってもあいつは怒らないぞ?」
僕とレクトと皇帝は幼なじみだし。一応、殿下って呼んでたけど、タメ口も普通に言ってたからな。
「そういう問題ではありません!」
「でもさ、父親としては欠けてないか?身内ひいきをしないというのは、皇帝としてはいいのかもしれないけど、父親としては失格だよな」
「あんたは臣下としては失格ですがね!魔法の才が無ければすぐにでも追い出してやりたいのに……」
君の権限では無理じゃない?まぁ、皇帝が愛情をうまく注げないのも、分からなくはない。だって、あいつは愛情を受けないで育ったんだし。いや、母親からはあった。でも、父親からは皆無だ。先帝が父親らしいことをした記憶は僕にはない。
一応、誕生日プレゼントは送っていたらしいけど、人伝に、しかもとりあえず高価な物でも送ればいいだろっていう心情が見え見えだったし。
まぁ、あいつはそれにも気づいているか分からんが。レクトも、それは理解しているから、あまり強く責められないんだろうな。僕は仲良くしてようと、疎遠になっていようと、自分が巻き込まれなければどっちでもいいけど。
冷たいとか言われるかもしれないけど、これが僕だ。自分優先に考えるのはおかしなことじゃない。それに、僕もレクトも、あまり家族に愛されたわけでもないし、何かアドバイス的なのはできない。
「あんたのアドバイスは誰も期待しないと思います」
「さすがにひどく──っ!」
ハリナに言い返そうとしたとき、西の方から、強い魔法の反応があった。あっちは……第四皇女の宮からか?
「フィレンティア皇女殿下の宮で魔法ですか?」
「ここに届くくらい強いなら、皇女本人じゃない?魔力切れを起こしててもおかしくないよ」
魔力切れは、強い魔法などで、魔力が一割を切ったときに起きる。咳や頭痛とかだったらまだマシだけど、あまりにもひどいと、その場に倒れたりもする。
「魔力切れですか?なら、早く行きますよ!」
「分かってるよ。魔力切れを放っておくほど、僕も冷淡ではないから」
魔力切れは下手したら死んじゃうからなぁ……さすがにそんなことになったら、後味が悪いし。死ぬかもしれない人を助けようと思うくらいには、人の心はあるつもりだし。
「それはよかったです」
ハリナは、今度は引きずっていくような真似はしなかった。さて……歩きじゃ遅いな。飛ぶか。
ドアに向かったハリナを止める。
「転移した方が早い。一度行ったから、座標は分かるよ」
「あぁ……あなたは魔力量は化け物でしたね」
何その見た目だけは人間みたいな言い方は。人間はまだ止めてないよ?まぁ、いいや。訂正するのもめんどくさいし。
「無駄口叩いてないで、しっかり捕まってなよ。時空に閉じ込められても助けには行かないからね」
「大丈夫です。私も空間魔法は使えますから」
「なら安心だね。……じゃあ、行くよ」
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