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第一章 虐げられた姫
第17話 人形と人間の中間
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引きずられて入ってきて、引きずられて出ていった。あの人、何だったんだろう?
でも、初めて見る感じだった。顔ももちろんだけど、話し方も、声も、態度も。なんか、敬語を使ってはいるけど、砕けた?感じ……
ああいう人も、嫌いにはならない。静香のときは、ああいう人が話すたびに、笑っていた気がする。だから、多分ああいう人の方が、静香は、“好き”というやつなのかもしれない。
なんか、心がどうとか言っていたけど……ハリナは、エスパーなのかな。なら、私が考えていることも分かったりするのかな?それなら、話さなくていい。ハリナに代わりに話してもらえばいいから。
……なんか、こう考えるのは、久しぶりな気がする。あの人は、私が人形なのは、私が使っている魔法のせいだと言っていた。解除できないから、弱体化させるって。
人形にしていた魔法が弱くなって、少しは人間らしくなったということ?そもそも、魔法って何なんだろう。
ルメリナが使えたんだから、私だって使えてもおかしくない。それは分かる。そして、魔法を使うには、魔力を使うのも。でも、使い方なんて教わらなかった。静香のときは、魔法なんてお話の中でしか存在しなかった。
お話の中の魔法は、願いを叶えることができる特別な力として書かれていることが多かった。その特別な力で無双というものをしていたり、スローライフというものを送っていたり、人によって様々だったけれど。
もし、願いを叶えることができる特別な力なら、私は、人形になりたいと願っていたんだろうか。うん、そうなんだろうな。
私は、感情を、感覚を、理解したくないから壊した。分かりたくなくて。でも、普通はそう簡単には壊せない。簡単にできるなら、誰も苦しまないから。人形の数は増えるけど、苦しむ人間の数は減る。私は、人形になった。苦しむ人間ではなく、ただの人形に。
私の魔法は、壊したいという願いを叶えた。なら、今度は魔法が壊れれば、人間になれる……?
だから、弱体化をかけたの?あの人も、私を人間にしたいの?でも、あまり一生懸命な感じがしないように見えたのは、私が相手のことを理解できないから?
……セリアに聞けば分かるかな?魔法が弱まっているなら、話せるかもしれない。話し方は分からない。どうしよう。
これは、“迷い”ってやつかな?
話せないなら、他の方法でコミュニケーションをとればいいのかも。ジェスチャーってやつで分からないかな?
……やってみようかな。今は、人形と人間の間くらいにはいるかもしれない。なんとなく、感情が分かるような気がするから。
感覚はどうだろう?目をつぶって、ちょっとつねってみる。
……触られているのは、分かるな。痛みは──
「皇女殿下!何をなさっているのですか!」
感じる前に、セリアに止められた。でも、少し痛い……かもしれない。なんか、ジーンとしているから。
「後が残ってるじゃないですか!せっかくフェレス様に治してもらったのに……」
フェレス?あの治してくれた人、フェレスっていうの?あのハリナとそっくりな人。
「私は治癒術は使えないし、ハリナはフェレス様とどっか行っちゃったし、呼びに行くために、皇女殿下一人置いていくわけにも行かないし……」
何か、ぶつぶつ呟いている。いろいろ考えているのかな?別に、この程度気にしないのに。
血が出ているわけでもなく、ただ少し赤っぽいような痕が残っているだけ。でも、色があるのも、よく見ないと分からないくらい。こんなのをいちいち気にしていたら、冷宮で暮らすことなんかできない。
それが分かるくらいには頭が良さそうに見えたんだけど……人は見かけによらないってやつかな?
とりあえず、気にしなくていいというのを伝えないと────どうやって?首を横に振るの?それとも、気にしなくていいと言えばいいの?でも、私は話せない。
……とりあえず、首を横に振ってみようかな。
セリアの服を掴んで、グイグイと引っ張る。
「フィレンティア皇女殿下?」
そう言って、私の方を向いた。気にしなくていいという意味で、首を横に振ってみる。
「……気にするなと?」
それにはうなずいた。でも、セリアは「そんなわけにはまいりません」と言った。
「この美しい肌には傷一つあってはならないのです。今すぐフェレス様かハリナを呼んでこないと……」
気にしなくていいと言っているのに……それに、私の肌が美しい?もしそうなら、なんでルメリナや使用人達は、叩いたり切ったりしてきたの?美しいものを傷つけるのが好きだったの?なら、やっぱり私は相手のことをあまり理解していなかったのかな。
ルメリナにいたっては、長袖の物を身につけていたときに限って、魔法で斬ってきたかと思えば、急に叫んでどこかに行っちゃうし。ああいうのが好きなの……?
でも、今考えてみれば、ルメリナは声が安定していると、鞭とか道具を使っていたけど、癇癪を起こしていたりするときは、魔法を使っていたような気がする。
理性的と感情的ってやつかな?なんで感情的ってやつになると、魔法だったんだろう?道具がなかったからかな?
……人形と人間の間くらいで、ここまで分かるなら、人間になったらどうなんだろう?私は、魔法で人形になっている。なら、魔法を壊せばいいの?感情や感覚を魔法で壊したみたいに。
魔法を壊せば────嫌だ。分かりたくない。話したくない。戻りたくない。
痛みはいらない。苦しみはいらない。悲しみはいらない。声もいらない。何もかもいらない。
いらない、いらない。全部……いらない!そう思ったとき、ふっと全身の力が抜けて、意識も失くなった。
でも、初めて見る感じだった。顔ももちろんだけど、話し方も、声も、態度も。なんか、敬語を使ってはいるけど、砕けた?感じ……
ああいう人も、嫌いにはならない。静香のときは、ああいう人が話すたびに、笑っていた気がする。だから、多分ああいう人の方が、静香は、“好き”というやつなのかもしれない。
なんか、心がどうとか言っていたけど……ハリナは、エスパーなのかな。なら、私が考えていることも分かったりするのかな?それなら、話さなくていい。ハリナに代わりに話してもらえばいいから。
……なんか、こう考えるのは、久しぶりな気がする。あの人は、私が人形なのは、私が使っている魔法のせいだと言っていた。解除できないから、弱体化させるって。
人形にしていた魔法が弱くなって、少しは人間らしくなったということ?そもそも、魔法って何なんだろう。
ルメリナが使えたんだから、私だって使えてもおかしくない。それは分かる。そして、魔法を使うには、魔力を使うのも。でも、使い方なんて教わらなかった。静香のときは、魔法なんてお話の中でしか存在しなかった。
お話の中の魔法は、願いを叶えることができる特別な力として書かれていることが多かった。その特別な力で無双というものをしていたり、スローライフというものを送っていたり、人によって様々だったけれど。
もし、願いを叶えることができる特別な力なら、私は、人形になりたいと願っていたんだろうか。うん、そうなんだろうな。
私は、感情を、感覚を、理解したくないから壊した。分かりたくなくて。でも、普通はそう簡単には壊せない。簡単にできるなら、誰も苦しまないから。人形の数は増えるけど、苦しむ人間の数は減る。私は、人形になった。苦しむ人間ではなく、ただの人形に。
私の魔法は、壊したいという願いを叶えた。なら、今度は魔法が壊れれば、人間になれる……?
だから、弱体化をかけたの?あの人も、私を人間にしたいの?でも、あまり一生懸命な感じがしないように見えたのは、私が相手のことを理解できないから?
……セリアに聞けば分かるかな?魔法が弱まっているなら、話せるかもしれない。話し方は分からない。どうしよう。
これは、“迷い”ってやつかな?
話せないなら、他の方法でコミュニケーションをとればいいのかも。ジェスチャーってやつで分からないかな?
……やってみようかな。今は、人形と人間の間くらいにはいるかもしれない。なんとなく、感情が分かるような気がするから。
感覚はどうだろう?目をつぶって、ちょっとつねってみる。
……触られているのは、分かるな。痛みは──
「皇女殿下!何をなさっているのですか!」
感じる前に、セリアに止められた。でも、少し痛い……かもしれない。なんか、ジーンとしているから。
「後が残ってるじゃないですか!せっかくフェレス様に治してもらったのに……」
フェレス?あの治してくれた人、フェレスっていうの?あのハリナとそっくりな人。
「私は治癒術は使えないし、ハリナはフェレス様とどっか行っちゃったし、呼びに行くために、皇女殿下一人置いていくわけにも行かないし……」
何か、ぶつぶつ呟いている。いろいろ考えているのかな?別に、この程度気にしないのに。
血が出ているわけでもなく、ただ少し赤っぽいような痕が残っているだけ。でも、色があるのも、よく見ないと分からないくらい。こんなのをいちいち気にしていたら、冷宮で暮らすことなんかできない。
それが分かるくらいには頭が良さそうに見えたんだけど……人は見かけによらないってやつかな?
とりあえず、気にしなくていいというのを伝えないと────どうやって?首を横に振るの?それとも、気にしなくていいと言えばいいの?でも、私は話せない。
……とりあえず、首を横に振ってみようかな。
セリアの服を掴んで、グイグイと引っ張る。
「フィレンティア皇女殿下?」
そう言って、私の方を向いた。気にしなくていいという意味で、首を横に振ってみる。
「……気にするなと?」
それにはうなずいた。でも、セリアは「そんなわけにはまいりません」と言った。
「この美しい肌には傷一つあってはならないのです。今すぐフェレス様かハリナを呼んでこないと……」
気にしなくていいと言っているのに……それに、私の肌が美しい?もしそうなら、なんでルメリナや使用人達は、叩いたり切ったりしてきたの?美しいものを傷つけるのが好きだったの?なら、やっぱり私は相手のことをあまり理解していなかったのかな。
ルメリナにいたっては、長袖の物を身につけていたときに限って、魔法で斬ってきたかと思えば、急に叫んでどこかに行っちゃうし。ああいうのが好きなの……?
でも、今考えてみれば、ルメリナは声が安定していると、鞭とか道具を使っていたけど、癇癪を起こしていたりするときは、魔法を使っていたような気がする。
理性的と感情的ってやつかな?なんで感情的ってやつになると、魔法だったんだろう?道具がなかったからかな?
……人形と人間の間くらいで、ここまで分かるなら、人間になったらどうなんだろう?私は、魔法で人形になっている。なら、魔法を壊せばいいの?感情や感覚を魔法で壊したみたいに。
魔法を壊せば────嫌だ。分かりたくない。話したくない。戻りたくない。
痛みはいらない。苦しみはいらない。悲しみはいらない。声もいらない。何もかもいらない。
いらない、いらない。全部……いらない!そう思ったとき、ふっと全身の力が抜けて、意識も失くなった。
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