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第一章 虐げられた姫
第13話 無意識の声と感情
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仕事に一区切りついて、椅子の背にもたれかかる。
あの子は……フィレンティアはどうしているだろうか。仕事が溜まっていて、最近は会いに行けていない。だが、本能的に向かいたくないと思っている自分もいる。一体、なぜなんだ……?
「陛下、今大丈夫ですか?」
レクトがドアから顔を覗かせる。
「問題ないが……どうした?」
「陛下に会いたいという方がいまして……私は止められないので……身分的に」
レクトは私の側近なので、身分はかなり上。それよりも上となると、私と同じ皇族しか……
「父さ……父上!」
「アルクか。なんだ?」
皇族だろうとは思っていたが、来たのはアルクだった。普段はぶっきらぼうのような感じだが、きちんと筋は通す。なのに、事前の申し入れもなしに来るのは珍しい。
「いい加減フィレンティアと交流してください!」
「どういう意味だ」
「俺たちに押しつけてから、一回も訪ねてないらしいじゃないですか!」
「──っ!」
痛いところを突かれた。確かに、仕事を言い訳に避けているんじゃないかと言われれば、否定はできない。
「仕事も溜まっているし、そんなに頻繁に訪れられても、向こうが迷惑だろう」
「父上が嫌なだけではないのですか?フィレンティアは、迷惑だと思わないと思います。そう思う感情がない人形姫だって言ったのは、父上でしょう!それに、そもそも人形姫になったのは、父上のせいじゃないんですか?」
「……なぜそう思う」
彼女が虐待を受けていたことは話したが、人形姫になった経緯は話していなかったはずだ。
「俺だって馬鹿じゃない。5歳になるまであんな状態で過ごしていたら、普通は気づくはずだ。でも、あの悪妃が死んで、父上が迎えに行くまで、誰も知らなかったじゃないですか!父上は、一回も会いに行ってなかったんでしょう?そうじゃなかったら、もっと早い段階で保護していたはずだから!」
「……そうだ。私は、彼女に会いに行ってはいなかった。私が会いに行ったら、ルメリナがどうするかなんて、想像がつくだろう」
ルメリナは、使用人をストレスをぶつける道具としか見ていなかった。だが、ルメリナは権力欲も強く、実家の力も強かったことから、第四皇妃にまでなった。そのため、私が訪ねて、皇妃に気づかれでもしたら、まずフィレンティアには会えなかっただろう。
プライドの高い彼女は、あの状態のフィレンティアを維持でも隠し続けるだろうし、ルメリナは魔力が非常に強く、本気で抵抗されたら、私でも敵うか分からないほどだ。抵抗されて負けでもしたら、私が操り人形になってしまう
そうなったら、あの悪妃による暴政が始まることになる。それは避けるべきだ。そのため、魔法が使えない結界を張っていても問題ない場所……冷宮に追放したわけなのだから。
まぁ、彼女ほどの魔力なら、少しは魔法が使えたかもしれないが……あの結界は、あくまで魔法を結界内に閉じ込めるのと、中にいる者の魔力を弱くするだけだ。私が結界内に入ってしまえば、意味がない。あの魔法は、魔力が少なくても、発動自体はできる。彼女よりも魔力が弱い私は、支配されるしかなくなってしまう。
でも、それはあくまでも建前だ。本当は、ただ会いたくなくて避けていただけだ。数分相手をするだけで、体力をかなり消耗するし、話が通じるような者でもない。そして、そんな悪妃の言動を見て育ったなら、彼女も悪人となってしまっているかもしれないと、彼女にも会わなかった。
つまりは……ただ恐れて逃げたのだ。彼女から。父親としての義務から。
それは分かっている。だから、向き合おうとしている。
「父上は、フィレンティアと悪妃を重ねてしまうから会いたくないんじゃないですか?……俺もそうだし」
フィレンティアとルメリナを……?確かに、フィレンティアのことを悪人だと決めつけていたのは事実だ。
事実だが……すぐに違うと思った。思ったが……確かに、ちらついてしまうのかもしれない。俺を魔法で支配しようとしたあの顔と。使用人をいたぶっているあの顔と。感情はないのに……私が、壊したも同然なのに。
悪妃と似ているから気に入らない。そう思ってるのと同然だ。彼女は、魔法で支配しようとしない。使用人をいたぶることもしない。そんなことをするための感情も欲もないのだから。
「……彼女は今どこにいる?」
「……俺の宮だと思います。休んでいるように言ったので」
アルクの宮……ということは、ルビー宮か。
「会いに行く。休んでいたら出直そう」
私がそう言うと、アルクは顔を輝かせて、自分も行くと言い出した。帰ってくるころには、おそらくレクトが書類を山積みにして待っているだろうが、一段落はついているし、問題ない。
ルビー宮に行って、アルクの部屋に行ってみると、彼女は眠っていた。
「フィレンティアは寝たのか?」
「はい、皇子殿下が宮を出て、私がここに来たころにはすでに……」
「なら、私がシトリン宮に運ぼう」
「へ、陛下の手を煩わせずとも……」
慌てたように止められたが、問題ないと言って、抱き抱えた。
帰る途中、夢でも見ているのか、何やらうなされている。揺らしたり、声をかけて起こそうとしてみても、余計に顔が歪んでいる。
彼女は、こういうときに声や感情は出せるのか。無意識だからか?なら、話すことや感情を出すことに何か恐怖を覚えるようなことでもあったのか?そもそも、彼女が感情を出さなくなったのはなぜだ?
……本格的に探った方がいいか。冷宮の使用人の顔はだいたい覚えているし、時間的に国外に出る時間はなかったはずだから、まだ国内にいるだろう。
使用人がいる場所の検討をつけていたとき、私の上着の裾を掴んできた。そのとき、ある出来事がフラッシュバックする。子供が欲しいとねだるルメリナが、寝所に忍び込んで、服を脱がそうとしてきたあの出来事が。
彼女はルメリナじゃない。そう思いながら、シトリン宮に向かった。
「へ、陛下!」
「彼女はルビー宮で眠ってしまったようでな。私が連れてきた」
「は、はい。今ベッドメイクをして参ります」
そう言って、セリアが駆け足で部屋に向かった。
「あの……フィレンティア皇女殿下はどうされたのですか?」
「分からないが……何か夢を見ていることは確かだな」
「起こした方がよろしいのでは?」
先ほど起こそうとしたときは、さらに苦しそうにしていたし、起こさない方がいいかと思って、そのままにしていたが……起こした方がいいのか?
「起こそうとしたが、さらにうなるばかりでな」
「そうですか……ですがやはり起こした方が──」
「陛下!ベッドメイクが終わりました…が……お話の途中でしたか、失礼しました」
「いや、気にするな」
自分よりも身分が上の者の会話を遮るのは不敬に当たりはするが、悪気があったわけではないし、いちいちそんなことを気にする必要はない。……フィレンティアとルメリナを重ねて見ていた私が言えることではないかもしれないが……
彼女を部屋に運んで、ベッドに降ろしたものの、彼女はまだ私の上着を掴んでいる。脱いでいくしかないか。
「そういえば、彼女はディルとアルクの他に誰かと会ったりしていたのか?」
上着を脱ぎながら、そう聞いた。ディルもアルクも外に出ていたようだし、他に誰かと遭遇していてもおかしくない。
「アルメリア第六皇妃殿下と一度……」
「お茶会していたそうですよ?」
お茶会?彼女はルメリナをかなり恐れていたはずだが……フィレンティアは大丈夫だったのか?
にしても、茶会か……作法を教えた方がいいか?ある程度自分の意思を持つまで……としていたが、どうするべきか……
いや、その前に、怪我の治療もするべきか。皇宮医を向かわせたのは一度だけだし、定期的に見て貰った方がいいかもしれないな。
問題点をあげれば次々に出てくる。向き合わなければと思っていながら、まだ放置しがちだったな。よく他の皇妃達からも、皇帝としてはいいけど父親としてはまだまだだと言われているし……
とりあえず、今すべきことは……
「ハリナ。お前の魔法で彼女の傷を治すことは可能か?」
「目立たなくさせることはできなくもないですが、完全に治すとなると、難しいです」
ハリナ以上の治癒術を持っている者が必要か。皇族専属の者を向かわせるか。なら、適任はあいつだが……腕はよくても、性格に難がある奴を彼女と会わせても大丈夫か……?
いざとなれば、ハリナとセリアもいるし、彼女のことを話しておけば、失言をするようなことはしないだろう。
「後日、皇宮医と専属の者を向かわせる」
「……ちなみに、名は?」
「フェレスだ。ハリナ以上の治癒術の腕前を持つ者となると、そう数はいないからな。今はそいつ以外出払っている。理由は知っているだろう」
「戦争……ですよね。ですが、彼が一番の腕の持ち主なのに、何でここにいるんですか?」
「奴が国境の騎士団と問題を起こしたのを忘れたか。奴の言い方にも非はあるが、あの騎士達の方が悪いから、不問とさせたが……」
一応、言葉遣いなどの礼儀は教わっているはずなんだが……なぜか、皇族専属でありながら、礼儀がなっていない。公の場ではきちんと振る舞っているから、そこまで問題にはしていないが。
「奴……奴か……」
先ほどから、そうぶつぶつ呟いている。そういえば、ハリナはフェレスが苦手だったな。
「嫌なら無理に相手しろとは言わないが……」
「いいえ!心配はいりません!大丈夫です!」
空元気のように見えるのは、気のせいだろうか……
「また時間を見つけて来る」
「レクトさんとちゃんと話し合ってくださいね~」
レクトか……今ごろ、書類が大量に積まれているだろうな。気が利く奴ではあるから、理由を話せば時間は作れるようにはしてくれるだろうが……その分、私の睡眠時間が減ることになるだろうな。
まぁ、奴には追加の仕事を頼むことになってしまうし、睡眠時間が多少削れたところで変わりはしない。
彼女を人間にするだけでは足りない。罪滅ぼしなんて、そんな言葉で逃げてはいけない。彼女に恨まれようとも、憎まれようとも構わない。その痛みや辛さは、彼女が受けてきたものの何倍も軽いんだ。
彼女が幸せを見つけるまで。それを掴むまで。私は側にいなければならない。
だからこそ、使用人の件は当然のことだが……ルメリナの実家とも、決着をつけなければならない。
あの子は……フィレンティアはどうしているだろうか。仕事が溜まっていて、最近は会いに行けていない。だが、本能的に向かいたくないと思っている自分もいる。一体、なぜなんだ……?
「陛下、今大丈夫ですか?」
レクトがドアから顔を覗かせる。
「問題ないが……どうした?」
「陛下に会いたいという方がいまして……私は止められないので……身分的に」
レクトは私の側近なので、身分はかなり上。それよりも上となると、私と同じ皇族しか……
「父さ……父上!」
「アルクか。なんだ?」
皇族だろうとは思っていたが、来たのはアルクだった。普段はぶっきらぼうのような感じだが、きちんと筋は通す。なのに、事前の申し入れもなしに来るのは珍しい。
「いい加減フィレンティアと交流してください!」
「どういう意味だ」
「俺たちに押しつけてから、一回も訪ねてないらしいじゃないですか!」
「──っ!」
痛いところを突かれた。確かに、仕事を言い訳に避けているんじゃないかと言われれば、否定はできない。
「仕事も溜まっているし、そんなに頻繁に訪れられても、向こうが迷惑だろう」
「父上が嫌なだけではないのですか?フィレンティアは、迷惑だと思わないと思います。そう思う感情がない人形姫だって言ったのは、父上でしょう!それに、そもそも人形姫になったのは、父上のせいじゃないんですか?」
「……なぜそう思う」
彼女が虐待を受けていたことは話したが、人形姫になった経緯は話していなかったはずだ。
「俺だって馬鹿じゃない。5歳になるまであんな状態で過ごしていたら、普通は気づくはずだ。でも、あの悪妃が死んで、父上が迎えに行くまで、誰も知らなかったじゃないですか!父上は、一回も会いに行ってなかったんでしょう?そうじゃなかったら、もっと早い段階で保護していたはずだから!」
「……そうだ。私は、彼女に会いに行ってはいなかった。私が会いに行ったら、ルメリナがどうするかなんて、想像がつくだろう」
ルメリナは、使用人をストレスをぶつける道具としか見ていなかった。だが、ルメリナは権力欲も強く、実家の力も強かったことから、第四皇妃にまでなった。そのため、私が訪ねて、皇妃に気づかれでもしたら、まずフィレンティアには会えなかっただろう。
プライドの高い彼女は、あの状態のフィレンティアを維持でも隠し続けるだろうし、ルメリナは魔力が非常に強く、本気で抵抗されたら、私でも敵うか分からないほどだ。抵抗されて負けでもしたら、私が操り人形になってしまう
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まぁ、彼女ほどの魔力なら、少しは魔法が使えたかもしれないが……あの結界は、あくまで魔法を結界内に閉じ込めるのと、中にいる者の魔力を弱くするだけだ。私が結界内に入ってしまえば、意味がない。あの魔法は、魔力が少なくても、発動自体はできる。彼女よりも魔力が弱い私は、支配されるしかなくなってしまう。
でも、それはあくまでも建前だ。本当は、ただ会いたくなくて避けていただけだ。数分相手をするだけで、体力をかなり消耗するし、話が通じるような者でもない。そして、そんな悪妃の言動を見て育ったなら、彼女も悪人となってしまっているかもしれないと、彼女にも会わなかった。
つまりは……ただ恐れて逃げたのだ。彼女から。父親としての義務から。
それは分かっている。だから、向き合おうとしている。
「父上は、フィレンティアと悪妃を重ねてしまうから会いたくないんじゃないですか?……俺もそうだし」
フィレンティアとルメリナを……?確かに、フィレンティアのことを悪人だと決めつけていたのは事実だ。
事実だが……すぐに違うと思った。思ったが……確かに、ちらついてしまうのかもしれない。俺を魔法で支配しようとしたあの顔と。使用人をいたぶっているあの顔と。感情はないのに……私が、壊したも同然なのに。
悪妃と似ているから気に入らない。そう思ってるのと同然だ。彼女は、魔法で支配しようとしない。使用人をいたぶることもしない。そんなことをするための感情も欲もないのだから。
「……彼女は今どこにいる?」
「……俺の宮だと思います。休んでいるように言ったので」
アルクの宮……ということは、ルビー宮か。
「会いに行く。休んでいたら出直そう」
私がそう言うと、アルクは顔を輝かせて、自分も行くと言い出した。帰ってくるころには、おそらくレクトが書類を山積みにして待っているだろうが、一段落はついているし、問題ない。
ルビー宮に行って、アルクの部屋に行ってみると、彼女は眠っていた。
「フィレンティアは寝たのか?」
「はい、皇子殿下が宮を出て、私がここに来たころにはすでに……」
「なら、私がシトリン宮に運ぼう」
「へ、陛下の手を煩わせずとも……」
慌てたように止められたが、問題ないと言って、抱き抱えた。
帰る途中、夢でも見ているのか、何やらうなされている。揺らしたり、声をかけて起こそうとしてみても、余計に顔が歪んでいる。
彼女は、こういうときに声や感情は出せるのか。無意識だからか?なら、話すことや感情を出すことに何か恐怖を覚えるようなことでもあったのか?そもそも、彼女が感情を出さなくなったのはなぜだ?
……本格的に探った方がいいか。冷宮の使用人の顔はだいたい覚えているし、時間的に国外に出る時間はなかったはずだから、まだ国内にいるだろう。
使用人がいる場所の検討をつけていたとき、私の上着の裾を掴んできた。そのとき、ある出来事がフラッシュバックする。子供が欲しいとねだるルメリナが、寝所に忍び込んで、服を脱がそうとしてきたあの出来事が。
彼女はルメリナじゃない。そう思いながら、シトリン宮に向かった。
「へ、陛下!」
「彼女はルビー宮で眠ってしまったようでな。私が連れてきた」
「は、はい。今ベッドメイクをして参ります」
そう言って、セリアが駆け足で部屋に向かった。
「あの……フィレンティア皇女殿下はどうされたのですか?」
「分からないが……何か夢を見ていることは確かだな」
「起こした方がよろしいのでは?」
先ほど起こそうとしたときは、さらに苦しそうにしていたし、起こさない方がいいかと思って、そのままにしていたが……起こした方がいいのか?
「起こそうとしたが、さらにうなるばかりでな」
「そうですか……ですがやはり起こした方が──」
「陛下!ベッドメイクが終わりました…が……お話の途中でしたか、失礼しました」
「いや、気にするな」
自分よりも身分が上の者の会話を遮るのは不敬に当たりはするが、悪気があったわけではないし、いちいちそんなことを気にする必要はない。……フィレンティアとルメリナを重ねて見ていた私が言えることではないかもしれないが……
彼女を部屋に運んで、ベッドに降ろしたものの、彼女はまだ私の上着を掴んでいる。脱いでいくしかないか。
「そういえば、彼女はディルとアルクの他に誰かと会ったりしていたのか?」
上着を脱ぎながら、そう聞いた。ディルもアルクも外に出ていたようだし、他に誰かと遭遇していてもおかしくない。
「アルメリア第六皇妃殿下と一度……」
「お茶会していたそうですよ?」
お茶会?彼女はルメリナをかなり恐れていたはずだが……フィレンティアは大丈夫だったのか?
にしても、茶会か……作法を教えた方がいいか?ある程度自分の意思を持つまで……としていたが、どうするべきか……
いや、その前に、怪我の治療もするべきか。皇宮医を向かわせたのは一度だけだし、定期的に見て貰った方がいいかもしれないな。
問題点をあげれば次々に出てくる。向き合わなければと思っていながら、まだ放置しがちだったな。よく他の皇妃達からも、皇帝としてはいいけど父親としてはまだまだだと言われているし……
とりあえず、今すべきことは……
「ハリナ。お前の魔法で彼女の傷を治すことは可能か?」
「目立たなくさせることはできなくもないですが、完全に治すとなると、難しいです」
ハリナ以上の治癒術を持っている者が必要か。皇族専属の者を向かわせるか。なら、適任はあいつだが……腕はよくても、性格に難がある奴を彼女と会わせても大丈夫か……?
いざとなれば、ハリナとセリアもいるし、彼女のことを話しておけば、失言をするようなことはしないだろう。
「後日、皇宮医と専属の者を向かわせる」
「……ちなみに、名は?」
「フェレスだ。ハリナ以上の治癒術の腕前を持つ者となると、そう数はいないからな。今はそいつ以外出払っている。理由は知っているだろう」
「戦争……ですよね。ですが、彼が一番の腕の持ち主なのに、何でここにいるんですか?」
「奴が国境の騎士団と問題を起こしたのを忘れたか。奴の言い方にも非はあるが、あの騎士達の方が悪いから、不問とさせたが……」
一応、言葉遣いなどの礼儀は教わっているはずなんだが……なぜか、皇族専属でありながら、礼儀がなっていない。公の場ではきちんと振る舞っているから、そこまで問題にはしていないが。
「奴……奴か……」
先ほどから、そうぶつぶつ呟いている。そういえば、ハリナはフェレスが苦手だったな。
「嫌なら無理に相手しろとは言わないが……」
「いいえ!心配はいりません!大丈夫です!」
空元気のように見えるのは、気のせいだろうか……
「また時間を見つけて来る」
「レクトさんとちゃんと話し合ってくださいね~」
レクトか……今ごろ、書類が大量に積まれているだろうな。気が利く奴ではあるから、理由を話せば時間は作れるようにはしてくれるだろうが……その分、私の睡眠時間が減ることになるだろうな。
まぁ、奴には追加の仕事を頼むことになってしまうし、睡眠時間が多少削れたところで変わりはしない。
彼女を人間にするだけでは足りない。罪滅ぼしなんて、そんな言葉で逃げてはいけない。彼女に恨まれようとも、憎まれようとも構わない。その痛みや辛さは、彼女が受けてきたものの何倍も軽いんだ。
彼女が幸せを見つけるまで。それを掴むまで。私は側にいなければならない。
だからこそ、使用人の件は当然のことだが……ルメリナの実家とも、決着をつけなければならない。
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