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烏孫の王妃
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漢の武帝の治世。紀元前2世紀の終わり頃(紀元前110年~)――
中国大陸の西方、後世「シルクロードの天山北路」と呼ばれるようになった地域での物語です。
♢
風が吹く。
帰りたい。
帰りたい。
ここは、草原の国。
故郷の漢土を旅立ち、はや数年。烏孫王の妻となり、私の歳は二十を越えた。
目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、華やかなる長安の都。
皇帝は私に命じた。
「公主となりて、烏孫へ嫁げ。謀反人の娘には、過ぎた名誉であろう?」
私の父は、皇帝の甥。皇帝への謀反を企て、失敗して自害した。事件に連座し、母は斬首された。
まだ幼かった私が生かされた理由が、ようやく分かった。皇帝は、便利な道具として私を活用できる機会を待っていたのだ。
烏孫――
はるかなる西域に暮らす、遊牧の民。多くの家畜を飼い、水草を逐って移動する。獣の服を着て、動物の毛や皮で作った家に住まうという。その生活の様は、漢の宿敵である北方の騎馬民族、匈奴と何ら変わらない。
つまるところは蛮族――夷狄だ。
そんなところへ、和親・友好という目的があったとしても、己の娘を嫁がせたくは無いのだろう。
だから皇帝は、私を急ごしらえの公主――皇女となした。
そして、告げる。
〝お前が、代わりに行け〟と。
〝夷狄の王の相手は、お前で充分。死ぬために、行け〟と。
頭を垂れる私の上で響く、皇帝の傲慢な声。
「烏孫と手を結び、匈奴を挟み撃ちにする。お前の存在は、同盟の証だ。役目を、しっかりと果たせ」
匈奴の討伐は、皇帝の生涯をかけた執念。そのためには、如何なる行いも敢えてする。
逆らうすべなど、あろうはずもない。
私は輿に乗せられ、烏孫の地へ向かう。
長安から西へ、西へ、黄河を渡り。
匈奴を防ぐ長城は北、祁連の連峰は南、その間を走る巨大な地の回廊をひたすら西へ進む。
荒涼たる沙漠を抜け、幾多の烽火台を通り過ぎ。
茶褐色の大地は、やがて緑の草原となった。
眼前には、連なりの終わりが見えない天山山脈。その圧倒的な大きさは、まさに天地そのもの。
長安を去ること、八千九百里。
私を出迎えてくれたのは――
皆、逞しい馬に乗り。
高い背丈に、彫りの深い顔立ち。金色の髪に、緑の瞳。
黒い髪に黒い瞳の私とは、何もかもが違う――これが、万里の果ての異国の民。烏孫の人々。
烏孫の戸数は十二万、人の数は六十万を超えると聞いた。
彼らの都である赤谷城は、天山のふもとにある。
赤谷城は〝城〟という名ながら、城壁は無く、宮殿も無く、市場も無い。
草原の上に、王も民も天幕で暮らしているのみであった。
私の夫となる烏孫王は、老人だった。私の祖父、いや、曾祖父と呼んでも差し支えない年齢。
匈奴の女が正妻となっており、彼女は王の左の夫人、私は右の夫人とされた。
烏孫王は私に、自身の居どころとは離れた別の天幕を用意した。
皇帝は「烏孫と手を握り、匈奴を討つ」と自信満々に述べていたが、烏孫は漢と匈奴を天秤にかけているのだろう。
烏孫は、同じ騎馬の民である匈奴よりも、勢力は小さい。生き延びるための選択として、無理もない。
そもそも私には、その事実に抗議する力も、手段も無い。
漢と烏孫とは、言語が違う。
王と言葉が通じない。烏孫の人々と話をすることが出来ない。
烏孫の者は、王も貴族も民たちも、家畜の肉を食し、乾酪を口に入れ、乳汁を飲み、毛皮を服となし、皮の長靴を履く。
馬を巧みに操り、羊を、山羊を、牛を、駱駝を、その群れを草原に逐い、野に獣、空に鳥を見つけては弓矢で獲物を射る。
私は、ここで一人。
夷狄の中で、一人。
老齢の王の妻となり、孤独に生きる。この身が朽ちてしまうまで。
振り返れば、漢の地は遠く――
長安。
ああ。漢の都、長安。
私は歌う。
『わが一族、私を天の一方、地の果てへと嫁がせる
はるか彼方、見知らぬ異国、烏孫の王へ私を託す
私の部屋は草原の天幕、その壁は動物の毛を織って出来ている
食べるのは家畜の肉、飲み物は発酵した家畜の乳
常に漢の土地を思い、私の心は傷みつづける
私は願う、白鳥となって故郷に戻りたい――』
烏孫王には、孫が居た。その名は、グンスビ。烏孫王の孫の中では、最年長。早くに両親を亡くした彼を烏孫王は可愛がり、後継者にしている。
グンスビは、私とあまり変わらぬ年齢。ともに両親が居ない境遇に近しさを感じているのか、彼は私に親切にしてくれる。
晴れた日になると、グンスビは私を己が馬に乗せ、草原を疾駆する。烏孫は漢より男女の仲が緩やかとはいえ、なんという無礼。なんという無法。
その接近を、許容してはいけないのだが。
彼は常に快活で遠慮が無く、素早く動き、私に抵抗する暇を与えない。
私は……不機嫌になっても、当然のはず。
けれど、接する彼の身体は温かく、伝わってくる彼の鼓動に生の実感を私は覚える。
幾たびも繰り返される、彼との遠出。次第に、心と身体が慣れてくる。
天山は、どこもかしこも限りなく雄大。頂きは一年中、雪の冠を被っている。湧き出る水は尽きること無く、大地を潤し、烏孫の人々の生活を支える。
遊牧の民にとっての天山は、神々が住まう世界。信仰の対象であり、ときどき下馬して拝する姿にも納得がいく。
彼らが「テングリ・オーラ」と呼ぶ天山を、グンスビと駆ける。
大山脈のふところには、野原があり、木々の茂みがあり、谷があり、川が流れ、赤谷城を離れれば、種々に違った景色を見せてくれる。
烏孫は草原の国。しかし、草原だけの国では無いのだ。
その空と地には、花が咲き、蝶が舞い、鷹が飛び、兎が跳ね、草の間から狐が顔を覗かせる。
生命の力に溢れている。
赤谷城の北には、大きな湖――イシククルがある。グンスビは、私をその湖畔へ連れて行った。
青く透きとおった水を満々とたたえた湖は広く、波の音は快く耳を打ち、彼方の岸は見えない。
グンスビが教えてくれた。
イシククルには数十もの川が流れ込んでいるが、ここから流れ出る川は一本も無い。ゆえに、真冬でも凍らない――「熱い・湖」なのだと。
グンスビは漢の言葉を、私は烏孫の言葉を少しずつ覚えた。相手に、教えあったのだ。
馬上から落ちそうになり、私はグンスビにしがみつく。
「貴女は名前のとおり、身体がとても細いね。大事に扱わないと、折れてしまいそうだ」
私の名は――「細」という。
彼のからかいに、私は怒るべきか、笑うべきか、聞き流すべきか、反応に困ってしまった。
グンスビが雪の中に咲いた花を、私に贈ってくれた。黄白色の美しい花だ。室内に飾っていると「滋養の薬草として贈ったのに」と大笑いされた。
腹が立つ。でも、その気遣いに嬉しくもなる。
花の他に、瑪瑙や琥珀といった宝石も、グンスビは私の天幕に持ってくる。そして置いていく。
立派な絨緞をいくつも提供し、羊の毛で織った壁の点検も欠かさない。
グンスビのおかげで、私の天幕の中はいつも快適だ。
彼の勧める、奇麗な紫色の飲み物を口にする。美味しい。西の国、大宛からもたらされた〝葡萄酒〟という飲み物なのだそうだ。
烏孫の更に西にも、国があることに驚く。大宛、大月氏、康居、大夏、安息――西には、まだ多くの国がある。人々が暮らしている。
そうか。私が嫁いだ国は、地の果てでは無かったのだ。世界は私が想像していたよりも広大で、限りなく、終わりなく、どこまでも続くのだ。
グンスビが緑の瞳で見つめ、手を伸ばし、私の黒い髪に触れようとする。私は身を退き、彼から離れる。
私は、グンスビの祖父である烏孫王の妻。グンスビの祖母なのだ。彼と年齢は違わぬのに。
……よく考えれば。
考えなくても、何かが歪ではあるけれど。
曲がっていたとしても、真っ直ぐには出来ない。
いくらグンスビと親しくなったとしても、越えてはならない一線がある。人倫は、道義は、守らなければならない。
私は、人なのだ。獣では無いのだから。
私とグンスビが一緒に居ても、烏孫王は何も言わない。王は、何を考えているのだろう?
烏孫に来て、流れる歳月。王は、私に触れようとはしない。
私は生娘のまま、烏孫の人々に王妃と仰がれている。
烏孫王は数ヶ月に一、二度、私の住む天幕を訪れ、飲食をともにする。それだけだ。少ない出会い。年老いた王の私を見る目は優しい光を放っていて……それは妻を、女を見る目では無く、大事な孫を見ているような眼差しだった。
ふと、心のうちが温かくなる。
私の実の父は謀反の罪で、皇帝から自害を強要された。無実ではなかった。父は謀反人で、しかも淫乱で残虐な男だった。父であっても、尊敬できない。母の死は悲しかったが、父の死には悲しみを覚えなかった。
仮の父となった皇帝にとって、私は単なる道具だった。
親族であっても、寵愛した女人であっても、功績を挙げた家臣であっても、邪魔になれば容赦なく断罪し、処分する男。偉大ではあるが同時に冷酷非情、あらゆる階層の人々から恐れられている男――それが、漢の皇帝だ。
烏孫王は、烏孫の人々に敬われている。彼と接することが少ない私にも、分かる。王の人柄は、きわめて秀でている。
もしも烏孫王が私の父、祖父だったら――脳裏に浮かんだ愚かな妄想を、私はすぐさま消し去った。
自嘲する。
私は、烏孫王の妃。烏孫王は、私の夫。身体の交わりが無くとも、関係ない。動かせない。揺らぐことなど無い。秩序と道徳は、それほどまでに重いのだ。
烏孫王が病に倒れた。老齢の彼の体調は日々、悪化していく。
王が私を初めて、自身の天幕へ呼ぶ。
やせ衰えた彼の姿を目にして、私は思わず泣いてしまった。烏孫王は夷狄の長で、私の年老いた夫で、しかし私に夫婦としての交わりを求めず、そして――そして、優しかった。
そう。彼は私に優しかった。私のために華やかな天幕――包を用意し、召使いをあまた揃え、衣食に不便が無いよう日々の生活への手当てを怠らず、孫のグンスビとの交流を快く許してくれた。
烏孫王は私を遠ざけつつも、けれど間違いなく、私の心と身体を思い遣ってくれていた。
涙を流す私を見つめ、王は烏孫の言葉で私を慰める。本来なら、私のほうが重病人の烏孫王を慰めなければいけないのに。烏孫の言語で礼を言う私に、王は少し驚き、それから笑った。
烏孫王は笑顔を保ったまま、苦しい息をしながらも、途切れ途切れの声で私に伝える。
「自分は、もうすぐ死ぬ。王位は、孫のグンスビへ譲る。貴女は、グンスビの妻になりなさい」
絶句する。
あり得ない。
祖母の私が、孫のグンスビの妻になる?
確かにグンスビと私に血のつながりは無いが、それは関係ない。グンスビと私は、既に家族だ。祖母と孫だ。その境を越えて夫婦になるなど、絶対に許されない。人の道に反している。それは、獣の行為だ。
王の顔を見ていられず、私は自分の天幕へと逃げ戻った。
胸の奥に突き上げてくる、何かがある。
グンスビとの結婚は――
出来ない。
それは、どうしても出来ないのだ。
泣きたい。
泣けない。
嘆きの声を抑える私のもとを、グンスビが訪れた。
今は、彼に会いたくない。
必死に首を横に振り、拒絶の姿勢を示す私へ、彼は諭す。
「生母をのぞく父の妻を、子が相続するのは、草原に生きる者の習わしだ。弱き女性を守り、家系を絶やさないために伝えられてきた、遊牧の民の智恵なんだ」
グンスビの真摯な表情。懸命な声。彼の想いの強さが伝わってくる。
けれど。
無理だ。
受け入れられない。
私は漢の地で生まれた。漢に、そのような教えはない。
義理の息子、義理の孫の妻となるくらいなら、漢の女は死を選ぶ。
逃げる私の手首を、グンスビが掴む。
「駄目だ。死ぬのは、許さない」
なぜ? 私の身が、同盟の証だから?
「漢との同盟? そんなのは、知ったことでは無い。ただ、貴女が欲しい。これからも、ともに草原を馬で駆けたい。ともに生きたい。…………貴女が好きだから」
彼の声に、言葉に、私の心は震える。
「気付いていなかった? これでも、随分と頑張っていたつもりなんだが」
気付いて……いたかもしれない。
でも。
それでも。
やはり。
私は――
彼との明日を、描けない。
私は、草原では生きられないのだろうか?
どこまでいっても、漢土の女なのだろうか?
迷いを断ち切るために、私は漢の皇帝へ書状を出した。
『次代の烏孫王への再婚を求められている。いかに烏孫の風習とはいえ、このような婚姻は受け入れられない。今、私がただ願うのは――――漢への帰国を許して欲しい』
グンスビの妻には、新しい、別の漢の公主がなれば良い。
私は……。
長安へ、故郷の地へ帰りたい。
帰りたい。
帰りたい。
帰りたい――――本当に?
親しき家族はもはや無く、友も無く、待っている者は誰一人として居ない、漢の地へ?
貴族たちが互いに疑い、警戒しあい、裏切りを繰り返す、虚飾の都。
謀反人の娘を見る人々の眼は、とても冷たくて。
囲まれた街。
狭い空。濁った水。石と土と木の家。泥の道。
長安は、漢の大地は、もう、私にとって、あまりにも遠い。
時が経ち。
漢の皇帝から、返書が来た。
木簡でも竹簡でも無い、絹布に書かれていたのは、たったの四文字。
『従其国俗』――〝烏孫の習俗に従え〟
皇帝の命令を記した手紙を目にした時、私の心を満たした思いは……。
悲しみか。
喜びか。
失意か。
安堵か。
自虐か。
それとも、それとも、もしかして、希望――――
烏孫王が亡くなった。グンスビが、烏孫の新しい王となった。
グンスビが、馬を走らせる。
その隣で、私も馬を駆る。私はもう、一人で馬に乗れる。
遊牧の民の衣装は、身体にぴったりとしていて動きやすく、心地よい。
馬も良く、私に馴れてくれている。
申し分の無い、その速さ。
烏孫の馬は、全て駿馬だ。駄馬など、いない。
風が吹く。
烏孫の人々が「わが王庭」と呼ぶ大草原を、グンスビとともに騎行する。
顔を見合わせて、グンスビと笑いあう。
彼の指には、黒色の指輪。
私の指には、緑色の指輪。
彼も私も、相手の瞳の色の指輪をはめている。
緑の草原。
青い空。
澄み切った水の広い湖。
蒼天にそびえる神々の山は幻想的で、極まりを知らぬほどに美しい。
銀色に輝く、天の山々のふもと。
私はグンスビの妻となり、この地で生きていく。
烏孫の王妃として生きていく。
了
♢
※本作のイラスト【キャラクターはAI作成・背景(パオ&馬も含む)は写真】を、あき伽耶様より頂きました。ありがとうございます!
♢補足
この物語では、烏孫の王に漢から嫁いだ劉細君(「江都公主」または「烏孫公主」)の人生の一片を描いてみました。大筋は基本的に、史実にもとづいています。けれど、ディテールは自分なりに解釈したり、やや変更したりもしました。
作中で劉細君が歌った詩は、『漢書』に記されている内容を意訳してみたものです。
本作における単語は分かりやすいものを選んでみたつもりなのですが、「乾酪」はどうしても(汗)……これは「チーズ」のことですね。
烏孫は謎多き遊牧民で、容姿はコーカソイド系で白人に近かったという推測があります。5世紀から6世紀にかけて、歴史から姿を消しました。
物語の終わりで、烏孫の若き王である軍須靡が妻の劉細君へ指輪を贈っています。これは、20世紀に烏孫族の墓と伝えられる場所から緑の指輪が出土した話を知って、思い付きました。また「雪の中に咲いた花」「黄白色の美しい花」とは、雪蓮花のことです。チベットや天山山脈の高地に自生している奇麗な花であり、古来より漢方薬の原料として珍重されてきました。
軍須靡と劉細君の間には「一女が生まれた」と史書に書かれています。
中国大陸の西方、後世「シルクロードの天山北路」と呼ばれるようになった地域での物語です。
♢
風が吹く。
帰りたい。
帰りたい。
ここは、草原の国。
故郷の漢土を旅立ち、はや数年。烏孫王の妻となり、私の歳は二十を越えた。
目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、華やかなる長安の都。
皇帝は私に命じた。
「公主となりて、烏孫へ嫁げ。謀反人の娘には、過ぎた名誉であろう?」
私の父は、皇帝の甥。皇帝への謀反を企て、失敗して自害した。事件に連座し、母は斬首された。
まだ幼かった私が生かされた理由が、ようやく分かった。皇帝は、便利な道具として私を活用できる機会を待っていたのだ。
烏孫――
はるかなる西域に暮らす、遊牧の民。多くの家畜を飼い、水草を逐って移動する。獣の服を着て、動物の毛や皮で作った家に住まうという。その生活の様は、漢の宿敵である北方の騎馬民族、匈奴と何ら変わらない。
つまるところは蛮族――夷狄だ。
そんなところへ、和親・友好という目的があったとしても、己の娘を嫁がせたくは無いのだろう。
だから皇帝は、私を急ごしらえの公主――皇女となした。
そして、告げる。
〝お前が、代わりに行け〟と。
〝夷狄の王の相手は、お前で充分。死ぬために、行け〟と。
頭を垂れる私の上で響く、皇帝の傲慢な声。
「烏孫と手を結び、匈奴を挟み撃ちにする。お前の存在は、同盟の証だ。役目を、しっかりと果たせ」
匈奴の討伐は、皇帝の生涯をかけた執念。そのためには、如何なる行いも敢えてする。
逆らうすべなど、あろうはずもない。
私は輿に乗せられ、烏孫の地へ向かう。
長安から西へ、西へ、黄河を渡り。
匈奴を防ぐ長城は北、祁連の連峰は南、その間を走る巨大な地の回廊をひたすら西へ進む。
荒涼たる沙漠を抜け、幾多の烽火台を通り過ぎ。
茶褐色の大地は、やがて緑の草原となった。
眼前には、連なりの終わりが見えない天山山脈。その圧倒的な大きさは、まさに天地そのもの。
長安を去ること、八千九百里。
私を出迎えてくれたのは――
皆、逞しい馬に乗り。
高い背丈に、彫りの深い顔立ち。金色の髪に、緑の瞳。
黒い髪に黒い瞳の私とは、何もかもが違う――これが、万里の果ての異国の民。烏孫の人々。
烏孫の戸数は十二万、人の数は六十万を超えると聞いた。
彼らの都である赤谷城は、天山のふもとにある。
赤谷城は〝城〟という名ながら、城壁は無く、宮殿も無く、市場も無い。
草原の上に、王も民も天幕で暮らしているのみであった。
私の夫となる烏孫王は、老人だった。私の祖父、いや、曾祖父と呼んでも差し支えない年齢。
匈奴の女が正妻となっており、彼女は王の左の夫人、私は右の夫人とされた。
烏孫王は私に、自身の居どころとは離れた別の天幕を用意した。
皇帝は「烏孫と手を握り、匈奴を討つ」と自信満々に述べていたが、烏孫は漢と匈奴を天秤にかけているのだろう。
烏孫は、同じ騎馬の民である匈奴よりも、勢力は小さい。生き延びるための選択として、無理もない。
そもそも私には、その事実に抗議する力も、手段も無い。
漢と烏孫とは、言語が違う。
王と言葉が通じない。烏孫の人々と話をすることが出来ない。
烏孫の者は、王も貴族も民たちも、家畜の肉を食し、乾酪を口に入れ、乳汁を飲み、毛皮を服となし、皮の長靴を履く。
馬を巧みに操り、羊を、山羊を、牛を、駱駝を、その群れを草原に逐い、野に獣、空に鳥を見つけては弓矢で獲物を射る。
私は、ここで一人。
夷狄の中で、一人。
老齢の王の妻となり、孤独に生きる。この身が朽ちてしまうまで。
振り返れば、漢の地は遠く――
長安。
ああ。漢の都、長安。
私は歌う。
『わが一族、私を天の一方、地の果てへと嫁がせる
はるか彼方、見知らぬ異国、烏孫の王へ私を託す
私の部屋は草原の天幕、その壁は動物の毛を織って出来ている
食べるのは家畜の肉、飲み物は発酵した家畜の乳
常に漢の土地を思い、私の心は傷みつづける
私は願う、白鳥となって故郷に戻りたい――』
烏孫王には、孫が居た。その名は、グンスビ。烏孫王の孫の中では、最年長。早くに両親を亡くした彼を烏孫王は可愛がり、後継者にしている。
グンスビは、私とあまり変わらぬ年齢。ともに両親が居ない境遇に近しさを感じているのか、彼は私に親切にしてくれる。
晴れた日になると、グンスビは私を己が馬に乗せ、草原を疾駆する。烏孫は漢より男女の仲が緩やかとはいえ、なんという無礼。なんという無法。
その接近を、許容してはいけないのだが。
彼は常に快活で遠慮が無く、素早く動き、私に抵抗する暇を与えない。
私は……不機嫌になっても、当然のはず。
けれど、接する彼の身体は温かく、伝わってくる彼の鼓動に生の実感を私は覚える。
幾たびも繰り返される、彼との遠出。次第に、心と身体が慣れてくる。
天山は、どこもかしこも限りなく雄大。頂きは一年中、雪の冠を被っている。湧き出る水は尽きること無く、大地を潤し、烏孫の人々の生活を支える。
遊牧の民にとっての天山は、神々が住まう世界。信仰の対象であり、ときどき下馬して拝する姿にも納得がいく。
彼らが「テングリ・オーラ」と呼ぶ天山を、グンスビと駆ける。
大山脈のふところには、野原があり、木々の茂みがあり、谷があり、川が流れ、赤谷城を離れれば、種々に違った景色を見せてくれる。
烏孫は草原の国。しかし、草原だけの国では無いのだ。
その空と地には、花が咲き、蝶が舞い、鷹が飛び、兎が跳ね、草の間から狐が顔を覗かせる。
生命の力に溢れている。
赤谷城の北には、大きな湖――イシククルがある。グンスビは、私をその湖畔へ連れて行った。
青く透きとおった水を満々とたたえた湖は広く、波の音は快く耳を打ち、彼方の岸は見えない。
グンスビが教えてくれた。
イシククルには数十もの川が流れ込んでいるが、ここから流れ出る川は一本も無い。ゆえに、真冬でも凍らない――「熱い・湖」なのだと。
グンスビは漢の言葉を、私は烏孫の言葉を少しずつ覚えた。相手に、教えあったのだ。
馬上から落ちそうになり、私はグンスビにしがみつく。
「貴女は名前のとおり、身体がとても細いね。大事に扱わないと、折れてしまいそうだ」
私の名は――「細」という。
彼のからかいに、私は怒るべきか、笑うべきか、聞き流すべきか、反応に困ってしまった。
グンスビが雪の中に咲いた花を、私に贈ってくれた。黄白色の美しい花だ。室内に飾っていると「滋養の薬草として贈ったのに」と大笑いされた。
腹が立つ。でも、その気遣いに嬉しくもなる。
花の他に、瑪瑙や琥珀といった宝石も、グンスビは私の天幕に持ってくる。そして置いていく。
立派な絨緞をいくつも提供し、羊の毛で織った壁の点検も欠かさない。
グンスビのおかげで、私の天幕の中はいつも快適だ。
彼の勧める、奇麗な紫色の飲み物を口にする。美味しい。西の国、大宛からもたらされた〝葡萄酒〟という飲み物なのだそうだ。
烏孫の更に西にも、国があることに驚く。大宛、大月氏、康居、大夏、安息――西には、まだ多くの国がある。人々が暮らしている。
そうか。私が嫁いだ国は、地の果てでは無かったのだ。世界は私が想像していたよりも広大で、限りなく、終わりなく、どこまでも続くのだ。
グンスビが緑の瞳で見つめ、手を伸ばし、私の黒い髪に触れようとする。私は身を退き、彼から離れる。
私は、グンスビの祖父である烏孫王の妻。グンスビの祖母なのだ。彼と年齢は違わぬのに。
……よく考えれば。
考えなくても、何かが歪ではあるけれど。
曲がっていたとしても、真っ直ぐには出来ない。
いくらグンスビと親しくなったとしても、越えてはならない一線がある。人倫は、道義は、守らなければならない。
私は、人なのだ。獣では無いのだから。
私とグンスビが一緒に居ても、烏孫王は何も言わない。王は、何を考えているのだろう?
烏孫に来て、流れる歳月。王は、私に触れようとはしない。
私は生娘のまま、烏孫の人々に王妃と仰がれている。
烏孫王は数ヶ月に一、二度、私の住む天幕を訪れ、飲食をともにする。それだけだ。少ない出会い。年老いた王の私を見る目は優しい光を放っていて……それは妻を、女を見る目では無く、大事な孫を見ているような眼差しだった。
ふと、心のうちが温かくなる。
私の実の父は謀反の罪で、皇帝から自害を強要された。無実ではなかった。父は謀反人で、しかも淫乱で残虐な男だった。父であっても、尊敬できない。母の死は悲しかったが、父の死には悲しみを覚えなかった。
仮の父となった皇帝にとって、私は単なる道具だった。
親族であっても、寵愛した女人であっても、功績を挙げた家臣であっても、邪魔になれば容赦なく断罪し、処分する男。偉大ではあるが同時に冷酷非情、あらゆる階層の人々から恐れられている男――それが、漢の皇帝だ。
烏孫王は、烏孫の人々に敬われている。彼と接することが少ない私にも、分かる。王の人柄は、きわめて秀でている。
もしも烏孫王が私の父、祖父だったら――脳裏に浮かんだ愚かな妄想を、私はすぐさま消し去った。
自嘲する。
私は、烏孫王の妃。烏孫王は、私の夫。身体の交わりが無くとも、関係ない。動かせない。揺らぐことなど無い。秩序と道徳は、それほどまでに重いのだ。
烏孫王が病に倒れた。老齢の彼の体調は日々、悪化していく。
王が私を初めて、自身の天幕へ呼ぶ。
やせ衰えた彼の姿を目にして、私は思わず泣いてしまった。烏孫王は夷狄の長で、私の年老いた夫で、しかし私に夫婦としての交わりを求めず、そして――そして、優しかった。
そう。彼は私に優しかった。私のために華やかな天幕――包を用意し、召使いをあまた揃え、衣食に不便が無いよう日々の生活への手当てを怠らず、孫のグンスビとの交流を快く許してくれた。
烏孫王は私を遠ざけつつも、けれど間違いなく、私の心と身体を思い遣ってくれていた。
涙を流す私を見つめ、王は烏孫の言葉で私を慰める。本来なら、私のほうが重病人の烏孫王を慰めなければいけないのに。烏孫の言語で礼を言う私に、王は少し驚き、それから笑った。
烏孫王は笑顔を保ったまま、苦しい息をしながらも、途切れ途切れの声で私に伝える。
「自分は、もうすぐ死ぬ。王位は、孫のグンスビへ譲る。貴女は、グンスビの妻になりなさい」
絶句する。
あり得ない。
祖母の私が、孫のグンスビの妻になる?
確かにグンスビと私に血のつながりは無いが、それは関係ない。グンスビと私は、既に家族だ。祖母と孫だ。その境を越えて夫婦になるなど、絶対に許されない。人の道に反している。それは、獣の行為だ。
王の顔を見ていられず、私は自分の天幕へと逃げ戻った。
胸の奥に突き上げてくる、何かがある。
グンスビとの結婚は――
出来ない。
それは、どうしても出来ないのだ。
泣きたい。
泣けない。
嘆きの声を抑える私のもとを、グンスビが訪れた。
今は、彼に会いたくない。
必死に首を横に振り、拒絶の姿勢を示す私へ、彼は諭す。
「生母をのぞく父の妻を、子が相続するのは、草原に生きる者の習わしだ。弱き女性を守り、家系を絶やさないために伝えられてきた、遊牧の民の智恵なんだ」
グンスビの真摯な表情。懸命な声。彼の想いの強さが伝わってくる。
けれど。
無理だ。
受け入れられない。
私は漢の地で生まれた。漢に、そのような教えはない。
義理の息子、義理の孫の妻となるくらいなら、漢の女は死を選ぶ。
逃げる私の手首を、グンスビが掴む。
「駄目だ。死ぬのは、許さない」
なぜ? 私の身が、同盟の証だから?
「漢との同盟? そんなのは、知ったことでは無い。ただ、貴女が欲しい。これからも、ともに草原を馬で駆けたい。ともに生きたい。…………貴女が好きだから」
彼の声に、言葉に、私の心は震える。
「気付いていなかった? これでも、随分と頑張っていたつもりなんだが」
気付いて……いたかもしれない。
でも。
それでも。
やはり。
私は――
彼との明日を、描けない。
私は、草原では生きられないのだろうか?
どこまでいっても、漢土の女なのだろうか?
迷いを断ち切るために、私は漢の皇帝へ書状を出した。
『次代の烏孫王への再婚を求められている。いかに烏孫の風習とはいえ、このような婚姻は受け入れられない。今、私がただ願うのは――――漢への帰国を許して欲しい』
グンスビの妻には、新しい、別の漢の公主がなれば良い。
私は……。
長安へ、故郷の地へ帰りたい。
帰りたい。
帰りたい。
帰りたい――――本当に?
親しき家族はもはや無く、友も無く、待っている者は誰一人として居ない、漢の地へ?
貴族たちが互いに疑い、警戒しあい、裏切りを繰り返す、虚飾の都。
謀反人の娘を見る人々の眼は、とても冷たくて。
囲まれた街。
狭い空。濁った水。石と土と木の家。泥の道。
長安は、漢の大地は、もう、私にとって、あまりにも遠い。
時が経ち。
漢の皇帝から、返書が来た。
木簡でも竹簡でも無い、絹布に書かれていたのは、たったの四文字。
『従其国俗』――〝烏孫の習俗に従え〟
皇帝の命令を記した手紙を目にした時、私の心を満たした思いは……。
悲しみか。
喜びか。
失意か。
安堵か。
自虐か。
それとも、それとも、もしかして、希望――――
烏孫王が亡くなった。グンスビが、烏孫の新しい王となった。
グンスビが、馬を走らせる。
その隣で、私も馬を駆る。私はもう、一人で馬に乗れる。
遊牧の民の衣装は、身体にぴったりとしていて動きやすく、心地よい。
馬も良く、私に馴れてくれている。
申し分の無い、その速さ。
烏孫の馬は、全て駿馬だ。駄馬など、いない。
風が吹く。
烏孫の人々が「わが王庭」と呼ぶ大草原を、グンスビとともに騎行する。
顔を見合わせて、グンスビと笑いあう。
彼の指には、黒色の指輪。
私の指には、緑色の指輪。
彼も私も、相手の瞳の色の指輪をはめている。
緑の草原。
青い空。
澄み切った水の広い湖。
蒼天にそびえる神々の山は幻想的で、極まりを知らぬほどに美しい。
銀色に輝く、天の山々のふもと。
私はグンスビの妻となり、この地で生きていく。
烏孫の王妃として生きていく。
了
♢
※本作のイラスト【キャラクターはAI作成・背景(パオ&馬も含む)は写真】を、あき伽耶様より頂きました。ありがとうございます!
♢補足
この物語では、烏孫の王に漢から嫁いだ劉細君(「江都公主」または「烏孫公主」)の人生の一片を描いてみました。大筋は基本的に、史実にもとづいています。けれど、ディテールは自分なりに解釈したり、やや変更したりもしました。
作中で劉細君が歌った詩は、『漢書』に記されている内容を意訳してみたものです。
本作における単語は分かりやすいものを選んでみたつもりなのですが、「乾酪」はどうしても(汗)……これは「チーズ」のことですね。
烏孫は謎多き遊牧民で、容姿はコーカソイド系で白人に近かったという推測があります。5世紀から6世紀にかけて、歴史から姿を消しました。
物語の終わりで、烏孫の若き王である軍須靡が妻の劉細君へ指輪を贈っています。これは、20世紀に烏孫族の墓と伝えられる場所から緑の指輪が出土した話を知って、思い付きました。また「雪の中に咲いた花」「黄白色の美しい花」とは、雪蓮花のことです。チベットや天山山脈の高地に自生している奇麗な花であり、古来より漢方薬の原料として珍重されてきました。
軍須靡と劉細君の間には「一女が生まれた」と史書に書かれています。
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