私は絶対認めない

しずな

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第五章 死

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「グズッうわぁ~ん!!」 
私の飼っていたクワガタが死んだ。
私は隠すことなく、思いっきり泣いた。



そして、お昼ごはん。
私は弟とご飯を食べていた。
すると、お母さんの新しい彼氏が帰ってきた。
そして、弟が
「そういえば、お姉ちゃんのクワガタ、一匹死んでたんだよ」
「ちょっ!」
〝パシッ〟
私はとっさに、弟の事を叩いてしまった。
すると新しい彼氏である、ひでとしは、
「うわ、真希那最低っ!クワガタ殺した」
「ほらね!こう言われると思ったから、私話さなかったんだよ!?」
本当はそうは思ってはいなかった。
家族でもなんでもない。
親密な関係な訳でもない人に話す意味はないと思ったからだ。
本当はそう言いたかった。
でも、言えるはずがない。
いつ殴られるか分からない。
そう思ったからだ。
私は心のなかでそう考えながらも、ガツガツごはんを食べていた。
そしてもう一度言われたのだ。
「クワガタが死んだこと隠そうとしてゆうがのこと叩いて、クワガタのこと殺して本当に最低っ!」
「・・・・・」
私は無言だった。
何を話しても無駄だと、分かっているから。 
減らず口と言われる。
ムカつくと言われる。
それだけは分かっているから。
でも
「うわぁ。マジ殴りて~」
〝ガチャ〟
私はお皿を洗いながら密かに泣いていた。
私だって……私だって……!殺したくて殺したわけでも………!
死んでほしかったわけでもない!!!



あの子は私の1番のお気に入りの子だった。
私は今までも何匹かクワガタを飼っていた。
1番最初に捕まえた子は、私が逃がしてしまったわけだが、
2番目に来た子は今回死んでしまった1番の長生きの子。
クワちゃん。
名前が変だというのは言わなくていい。
クラスの人にさんざん言われたから。
私は、この子が大好きだった。
1番良く懐いてくれていて、
一緒に好きなこともしてくれて、
私が泣きながら世話をしているときは、手にすりすりと頭をすり付け慰めてくれた。
大好きだった。
毎日の留守番。
寂しくなったときにも、クワちゃんがそばにいてくれた。
もう、そんなクワちゃんがいなくなると思うと、本当に悲しかった。
でもそれを、あの人にバカにされた。
それがとても悲しかった。
悔しかった。


でも、
でも、分かってる。
もう、どうすることも出来ない事を。



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