どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫

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423 嫁との話

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時間は8時30分頃だろう。

フレイアのカフェの入口を開ける。

カラン、カランと音を鳴らして入って行く。

レトロだよな、といつも思う。

「テツ、いらっしゃい。 まだ開店前ですけど・・」

フレイアが笑いながら言う。



俺は笑いながらカウンターに向かおうとすると、カウンターに座っている黒髪の女の人がいる。

ルナだ。

「おう、テツ。 ん? やはり、お前人間やめたのか?」

ルナが言う。

「何言ってるんですか、ルナさん」

俺はそう言いながらルナの横に座った。

ルナはすでにチーズケーキを食べていた。

フレイアが俺にハーブティを出してくれる。

俺はそれを見て、ルナに話しかけた。

「ルナさん、人間やめたってどういうことですか?」

「言葉のままだ」

ルナは言う。



フレイア、次のスイーツを頼む、なんて声を聞きながら俺はもう一度聞く。

「言葉のままって・・俺、人間ですけど」

するとルナが微笑む。

「テツ、確かに人間だ。 だが、おかしくはないか? 人間にしては強すぎるレベルだ。 それに妙な気を感じる」

「えぇ、ゼロにも言われましたが、俺のスキルで神光気しんこうきっていうのがあるのです。 それがゼロたちのまとっている気に近いものだとか・・あ、それでルナさんがそう感じるのかもしれませんよ」

俺は話しながら一人納得していた。

「そうか・・」

ルナはそれ以上は聞いてこなかった。

その後は、修行のことや戦闘の事をフレイアと一緒にルナに話して聞かせていた。



フレイアの話から、邪神教団の宗主と呼ばれる人の話を聞いた。

何やらザナドゥという古代都市の生き残りだとか。

そんな長寿の薬があったのかと思ったが、その真相を聞いて吐き気がした。

大量の人の命の犠牲の上に成り立っている狂気の秘薬。

・・・・

・・

話がかなり弾んだ。

時間は11時前。



カフェに人が入って来るようになってきた。

俺も長居したようだ。

ルナとフレイアに挨拶して、ギルドへ向かう。

シルビアはダンジョンで留守番らしい。



俺はフレイアのカフェを後にしてギルドへ行く。

ギルド前に到着。

入り口がスムースに開き、中に入ってみると結構人がいる。

みんな日常だな。

受付も忙しそうだ。



せっかく来たのだから、ラピット亭で昼でも食べて行こう。

俺はそう思ってラピット亭に向かって行く。

何人か並んでいるな。

まぁ、ここはおいしいからな。

そう思って順番を待っていた。



順番待ちの客たちの会話が聞こえる。

「・・おい、見たかあの北米の魔族の戦闘」

「いや、俺は違う方の戦闘を見ていたんだ」

「魔族の戦闘はワンサイドゲームだな。 強すぎるな、あの種族は・・」

「俺なんて、地球人があれほど強いって思わなかったよ。 魔法を収束させて放つ奴がいたらしく、すごい威力だったようだぞ」

「・・そうなのか? 俺も見たかったな。 一番見たかったのは邪神王の戦闘だが・・」

「あぁ、そうだな。 この戦闘は映像がないものな。 ただ、騎士団員の話では冒険者と王様が協力して倒したという話だ」

「・・そうなのか? どんな冒険者だ? でも、ほとんど王様の活躍だろうな」

「あぁ、俺もそう思う。 王様の強さは半端じゃないからな」

「全くだ」

・・・

・・

いろいろと無責任な話が聞こえてくる。

でも、俺の存在はあまり知られていないようでホッとした。

このままの調子で事が運んでくれるとありがたい。

そんなことを考えていると、順番が来たようだ。



「いらっしゃいませ~」

案内の人にカウンターへ連れて行かれて、今日のお勧めを頼んだ。

・・・

やっぱりうまいな!



それからは王宮からの呼び出しがあるまで、俺はそんな日常を繰り返してダラダラと過ごした。

1週間くらい何もせずにブラブラしていた。

その間に嫁との会話の時間を少し持った。

結論から言うと、今のままの状態で行こうとなった。



嫁を前にしてとにかく緊張する。

なぜ俺が緊張しなきゃいけないんだと思うが仕方ない。

少し静かな時間が流れたが、初めに俺が言葉を出す。

「半年の間、子供たちをありがとう」

嫁からも驚きの言葉を聞いた。

「こっちも、ギルドを経由してお金を振り込んでもらってたのね。 ありがとう」

!!

ありがとう、だと。

あの嫁が俺に対して言ったのか?

俺は耳を疑った。



「え? あぁ、いや・・お金なんてどうでもいい」

俺は返事に困ってしまった。

そして、やはり肝心なことは伝えておかなきゃわからないだろう。

「嫁さん・・あのさ、子供たちが優くらい、もうちょっと大きくなるまでは親というのは必要だと思う。 そこからは嫁さん、自由にしてもらって構わない」

俺はついに言うことができた。

嫁は少し驚き考えていたようだが、言葉を出す。

「パパさん、それって別れるってこと?」

俺をジッと見ている。

「う~ん・・違うような気がする。 別れるんじゃなくて、自分たちの思い通りのことを自由にしてもいいという感じだな。 ただ、人間としてのモラルの範囲内だと思うけど・・それに、俺は自分のことは自分ですべてできるようになったからな。 君のおかげで」

なんか俺が嫌味を言ってるみたいだが、事実だからな。

「そう、私は要らないのね・・」

嫁が小さな声でつぶやく。



はい、要りません!

心の声です、はい。



「嫁さん、まぁお金も無茶苦茶稼げるし、何の問題もないだろう。 それに俺も冒険者としていろいろ調査依頼があるから、仕事が忙しくなるんだよ」

嘘だ。

そういうことを嫁に言ってみた。

「そっか・・パパさん、忙しいものね。 フレイアさんもいるし、大丈夫ね」

嫁が微笑みながら言う。

なんか、俺が悪者のような感じがするが、この世界になってなければ、俺は死ぬまで金、金、金って言われていたと思う。

「嫁さん、フレイアは冒険の相棒だよ。 俺のプライベートには関係ない。 まぁ、すぐに結論なんて出るわけないし、今のままで行っているうちにいい道が見えてくるかもしれないから、よろしくね」

俺がそういうと、嫁は少しうつむいていたが、大きくうなずいていた。



今のままで、時間に問題を解決してもらうのがいい。

時間は偉大だ、俺はそう思う。

関係をスパッと切ってしまうのは簡単だが、修復が難しい。

切れそうで切れない感じでいいだろう。

別に干渉するわけでもないのだから。

俺も先のことなどわからないし、なるようになるしかないと思う。

そんなことがあり、後はダラダラした日常が過ぎていく。

そして、王宮からついに呼び出しが来た。



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