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395 魔法刻印
しおりを挟む<邪神教団本部>
会場は静まりかえっている。
床に落ちた腕は、しばらくして蒸発していた。
モレクはゆっくりと会場を見渡すと、言葉を発する。
「どうですか皆さん。 我々の神はこのように応えてくれるのです。 その神が間もなく復活されます。 この魔法刻印のないものは、その祝福を得られません。 我々の同胞になられるかどうか、今から30分ほどの時間を差し上げます。 ごゆっくりとお考えください。 仮に同胞にならずとも、そのままお帰りいただいて構いません。 では、よい返事をお待ちしていますよ」
モレクはそう言うと、隣の部屋へと移動して行く。
若い女の人も後に従う。
モレクが部屋から出ると、会場が騒がしくなった。
「・・いったいなんだ、あれは・・」
「回復魔法は知っているが、身体が再生するのか・・」
「・・確かに、今まで神を信じてきたが、見える形で何もなかった・・」
「お前、不敬な・・」
「・・しかしなぁ・・・」
・・・・・
・・・
シュナイダーやジェームズたちも例外ではなかった。
この会場には300名ほどがいる。
また、3つの街でも至るところで同じようなことが行われていた。
同時にギルドに対してもアサシンによる攻撃が加えられていた。
ギルドはほとんど監視のための施設であり、騎士団員が派遣されていただけだ。
邪神教団によってすぐに制圧されていた。
◇
隣の部屋では、モレクと若い女が静かにたたずんでいる。
モレクが若い女に言葉をかける。
「すまないことをした。 許しておくれ」
モレクが頭を下げる。
「な、何をおっしゃいますか、猊下。 もったいないお言葉。 私などのために・・お顔をお上げください」
若い女は驚いたようだ。
「さて、どれくらいの人数がこちらに来ますかな」
モレクは微笑みながらつぶやく。
若い女はモレクの顔を見つめる。
「アサシン、こちらに来ない連中は始末するように」
「ハッ」
隣の部屋とは1つの扉で仕切られているが、完全防音・防壁となっている。
少々の攻撃で壊れることはない。
・・・
30分が経過した。
モレクが会場へ戻って来る。
「どうですかな、皆さん。 お決まりになりましたか?」
モレクはそう言いながら会場を見つめる。
どうせ結局は邪神様の糧となるのだ。
この刻印も、いわば逃がさないための指標。
それにあなたたちに施す刻印は、家畜の烙印。
先に死ぬか、後で死ぬかの違いでしかない。
会場からいろんな声が飛んでいたが、モレクは聞いていなかった。
モレクが言う。
「では、ご意思のある方はこちらへどうぞ」
そう言ってモレクが先導して横の部屋へ移動した。
扉の前では、先程の若い女が見送っている。
よく見れば、会場の部屋の隅に何名かの存在の薄い人たちがいるようだ。
会場からは250人くらいの人が移動しただろうか。
扉の前の女の人が言う。
「もう、後はおられませんか。 扉を閉めますが・・」
シュナイダーは移動しなかった。
ソフィアは移動していた。
ジェームズも移動した。
大統領は移動しなかった。
ジェームズ達は、後でお互いの情報を交換しようと思っていたようだ。
「では、扉を閉めさせていただきます」
若い女の人がそういってゆっくりと扉を閉めていく。
ゆっくりと扉が閉まる。
扉が完全に閉まると、鍵をかけたようだ。
カチリ。
その音が合図だった。
部屋の隅に待機していた人たち、アサシンだが、一気に動き出す。
「な、なんだお前たちは・・・」
それが最初で最期の声だった。
後は声を出す暇もなく、アサシンたちに会場にいた人間全員が殺害された。
時間にしてほんの10秒ほどだろう。
◇
隣の移動した部屋。
モレクがニコニコしながら話す。
「ここにおられる方々は神に選ばれた人です。 これから我々はともに歩んでゆきましょう。 魔法刻印といってもどうということはありません。 痛みもなければすぐに終わります」
会場の前でそう言うと、モレクの手の平が赤黒く光る。
すぐに会場に光が広がり、会場全員の身体に赤い光が灯る。
皆、少し驚いていたようだが、光が落ち着いてくると全員がぼんやりとした表情になり、その場で立ちつくしていた。
モレクは大きく何度もうなずくとおぞましい笑い声をあげる。
「ガハハハハ・・・・いいですよ、いい・・」
・・・・
しばらくして、会場に集まった人たちを残したまま隣の部屋へ移動する。
扉が開き、モレクが入って行くと、アサシンたちが静かに駆け寄って来た。
モレクの前で膝をつく。
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