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393 邪神王の胎動
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<帝都王宮にて>
アニム王のところに使者が来ていた。
魔族の使いだという。
大広間で応対する。
アニム王の前に、イシスと名乗るきれいな女の人がいた。
「アニム王、謁見していただきありがとうございます」
イシスという女は丁寧に頭を下げる。
「いえ、こちらこそわざわざお越しいただき、ありがとうございます」
アニム王も席から立ち、イシスの方へとゆっくり歩いて行く。
「アニム王、確か邪神王の復活についてのお話があるということでしたが・・・」
イシスはそう話を切り出した。
・・・・
・・
かなりの時間対話していた。
「なるほど・・魔王はそれほど魔力を使われたのですね。 私の方でも転移する際には元老長が命を落としました」
アニム王がそういうと、お互いに苦笑する。
「とにかく、この度の戦争で、この星における邪神王の復活の時期が早まったことは間違いないと思います。 聖属性の武具の制作をずっとさせておりますが、整い次第魔族国へも運ぶように指示いたします」
アニム王がイシスに言う。
「・・何から何まで、ありがとうございます。 我ら魔族もきっと邪神王復活の時には力にならせていただきます。 では、急ぎ魔王様にお伝えいたします」
イシスはそう言うと姿勢を正し、アニム王に挨拶をして王宮を後にする。
イシスを見送りつつアニム王は思う。
協力者を得られれるのは心強い。
魔族が力を貸してくれるとなれば、なおさらだ。
精霊の国はどうだろう。
会話自体が怪しい。
海神の国は、魔族が調整してくれると言っていた。
魔導国シェルファ・・ここは放置しておくしかないだろう。
・・テツ、いったい何をしているのか。
早く帰ってきてもらいたいものだ。
念話もどうやら届かないらしい。
アニム王はそんなことを考えながら、大広間で椅子に座り天井を見つめていた。
◇◇
<帝都の街>
戦争のことも近頃では話題にならなくなってきた。
皆、ダンジョンへ向かったり、外の街の未知なる冒険へと出向いたりと、いろんな冒険譚が話されるようになっていた。
連合国との戦争から半年が経過していた。
テツはまだ帰って来ていない。
テツたちの家族は日常を過ごしている。
颯のバーンがドラゴンに進化していた。
子供のドラゴンだが、連日騎士団の飛行部隊の連中に興味を持たれて、颯も大変そうだ。
それに、子供のドラゴンだが、簡単な言葉なら会話できるようになっていた。
嫁には定期的にギルドからテツのギルが振り込まれている。
テツがいないのにどうしてかと不思議に思い、ギルドに行くとエレンさんが教えてくれたそうだ。
ギルドにはテツの功績によるお金が数えきれないくらいあるという。
それを定期的に、以前テツから指示されていたそうで、振り込まれているという。
嫁は、少し驚いたようだがそれだけだ。
今日も日常が過ぎていく。
21時頃。
フレイアの家の呼び鈴が鳴る。
「はーい」
フレイアがドアを開けて出迎えた。
!!
フレイアは驚いて動けない。
身体が震えている。
「・・テ、テツ・・・」
手を口に当てて、それだけを口にするとボロボロと涙を流していた。
ゆっくりとテツに近づいて、ギュッと抱きしめる。
「テツ、テツ! うわぁぁぁん・・テツ~!!」
フレイアは泣きじゃくっていた。
フレイアに抱かれたままテツの右手が動く。
フレイアに当て身をする。
トン!
フレイアが声を出すことなく、そのままテツの肩にもたれかかる。
そこにテツはいなかった。
「これがハイエルフですか。 何とも他愛いのない」
あのウルダを倒したアサシンだった。
そうつぶやくとフレイアを支える。
アサシンは思う。
ここまで来るのに冒険者として信用を得る必要があり、時間がかかりました。
それに時期が満ちようとしています。
これで仕事は完成ですね。
さて、猊下に持ち帰りますか。
「おっと、丁寧に扱わなくて」
そうつぶやきながら、優しく丁寧にフレイアを抱える。
そして、そのまま静かに帝都から消えた。
◇◇
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