どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫

文字の大きさ
上 下
352 / 426

352 クリムゾン・ブレードのミラン

しおりを挟む



俺はみんなに見送られながら、フレイアと一緒に王宮へと戻っていった。

時間は14時30分過ぎ。

王宮へ戻ると、ゲートのある場所へ案内の人に連れて行ってもらう。

俺たちの通過するゲートの前まで来ると、エレンさんがいた。

「テツ様、フレイア様、ご武運を!」

そういうと、深々とお辞儀をする。

「エレンさん、わざわざありがとうございます。 では、行ってまいります」

俺はそういうとゲートをくぐる。 フレイアも軽く挨拶して通過した。



ゲートを抜けると、王宮の人と騎士団員だろうか、何人かが待機していた。

俺たちに現在地とこれから進んで行く進路を教えてくれる。

・・・・・

・・・

なるほど、ここは上海あたりか。

ここから北西に向かって行くわけだな。

モンゴルの南辺りを通って、ロシアの方へと敵を押し上げるわけだ。

俺は大雑把にそんなことを考えてみる。

ま、とにかく前進すればいいんだな。

騎士団たちが先行しているようだ。



◇◇



ギルマスことミランが出立しゅったつに当たって、ギルドがものすごく盛り上がっていたそうだ。

ミランがギルド奥の部屋で、戦闘服に着替えていた。

「ミラン、またこの服で出かけて行くのですね」

エレンが寂しそうな顔を向ける。

「エレン、すまない。 無事に帰って来るよ」

ミランが微笑み、答える。

「はい、それは心配しておりません。 また、争いが始まってしまうのかと思うといたたまれません」

エレンがそういうと、ギルマスが紫水晶のような宝玉をはめ込んだ剣を背中に背負っていた。

「エレン、その平和を維持したいんだ」

ミランはそういうとエレンにキスをした。



ミランが奥の部屋から出て来る。 赤を基調にした戦闘服のようだ。 

その姿でゆっくりとギルド内に現れた。



掲示板を見ていたやや年配の男が、ミランの赤い姿を見て固まっている。

その横にいた仲間だろうか。 年配の男に声をかけていた。

「おい、見ろよあの姿。 真っ赤にいろどって、派手だねぇ・・ん? あの剣はどこかでみたような・・」

そんなことを言っている。

「あ、あれは・・・ミランだ」
年配の男はつぶやく。

「は?」

横の男は何を当たり前のことを言っているんだという感じだ。

「・・クリムゾン・ブレードのミランだ」

年配の男がそういう。

横でいた男はよくわからなかった。

「クリムゾン・・・なんだって?」

「クリムゾン・ブレードだ」

年配の男はもう一度言う。



ミランはゆっくりとギルドの中を歩いて行く。

ギルドの中にいた冒険者たちが騒がしくなってきた。

「・・俺、あの剣を昔の映像でみたことあるぞ」

「俺も、本で見たことある・・」

誰かが言った。 アメジスト・ダンサーという言葉を。



「「「アメジスト・ダンサー!!」」」



「そりゃ、見たことあるわけだ」

「伝説の魔剣だ」

・・・・

いろんな二つ名が飛び交っていた。

ミランは気にするでもなくギルドを出て王宮へ向かって行った。

エレンも同行する。



ギルドの中は、お祭りのような雰囲気になっていた。

「「「うおぉおお!!!」」」

「あのミランが出て行くとはな。 負けはないな!」

「敵が気の毒だな・・」

「まさか、またあの赤い戦闘服が見られるとは・・・」

・・・・

・・

若い冒険者などは不思議そうな顔をしているものもいる。

「・・なんだお前知らないのか・・」

ミランの二つ名の由来を聞いている人がいた。

前の大戦で、アニム王子の護衛で雇った傭兵。

敵の返り血ではなく、剣についた血が乾くことなく連続戦闘したという。

まるでアメジストの宝玉が血を吸っているのかと思うような感じだったようだ。

まさに鬼神のごとき闘い。

物語でも同じように書かれている。

学校の教科書にも魔剣として記載されていた。

アメジスト・ダンサー。 英雄ミランの固有武器。

戦場を踊るように紫色の軌跡が地上を走るところから命名されたそうだ。



◇◇

アニムside



俺はフレイアと一緒に、先行している部隊を追った。

「テツ、この方向へ行けばいいわけね」

フレイアが俺に言う。

俺もうなずき移動する。



それほどの時間もかからずに先行部隊に追いついた。

既に戦闘が始まっていたようだ。

俺の予想では、楽勝モードだろうと思っていた。

騎士団がワイバーンを連れて移動している。

地上部隊も飛行船を荷運び用にして運用している。

物資は問題ないし、戦闘力もかなりのものだと思った。

北米帰りの姫様の報告などを聞くと、戦闘機や装甲車などをレベル22~23程度の魔核で改造した程度だと聞いていた。

それなら、オーガ程度の攻撃力しか出せないのは間違いない。

そう思っていた。

だが、今前を見て情報の修正を余儀なくされた。



「・・フレイア、相手の動力ってレベル22程度の魔核だよな」

俺はつぶやくように口にする。

「えぇ、そう聞いているし、実際感じているのはその程度よ」

なんだ、これ?

空を飛んでるのは確かに戦闘機だし、地上を走ってるのは装甲車や戦車だ。

それに遠くには戦艦みたいなのが浮かんでいる。

SFか? 威圧感はかなりある。



ワイバーンが敵の攻撃を受けて傷ついている。

翼をもがれ、落下しているものもある。

飛行船付近には防御結界が張られているので、直接の攻撃は受けることはない。

ただ、衝撃音は響く。

俺はその中に入って行って、指揮をしているだろう人のところへ近寄って行く。

人がかなり集まって状況を見ながら、マップ上でもホログラム映像で同時観測していた。

「・・しかし、これでは・・」

「情報と違います・・」

・・・

何やら不穏な会話が聞こえる。



「すみません・・」

俺はおそるおそる言葉をかけた。

その声に反応して、何人かがこちらを向く。

銀色の鎧をまとった騎士団の人だろう。

俺をみて、にっこりとした。

「これは、テツ殿ではありませんか。 こちらを手伝っていただけるのですね。 それにフレイア殿も・・・ありがたい」



しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

処理中です...