325 / 426
325 こいつら野心丸出しだな
しおりを挟むマティアスが初めに口を開く。
「皆さん、テツさんの武器に興味をお持ちのようですね。 私もそうです。 先ほどテツさんにも伺いましたが、何の素材でできているのかわからないということでした」
俺もうなずく。
「でも、不思議ですわね。 テツさん以外、持ち上げることもできないのですもの。 もしかしたら、本人以外触ることもできないものも作れるのかもしれませんわね」
ソフィアが言う。
「ソフィア、あなたこそ抜け駆けしようって考えているのかしら」
「あら、心外ですわね、アナ。 皆さんと、ご一緒にと考えておりますのに・・」
おいおい、こいつら野心丸出しじゃないか。
むしろ気持ちいいぞ。
俺は黙って聞いている。
「テツさんは、魔導国へ行かれるというお話でしたね」
やや赤い髪の女の人が聞いてくる。
「はい、えっと・・」
「マルガリータよ」
「すみません、マルガリータさん。 おっしゃる通り、魔導国へ向かっている途中でこの街、いや国を発見したので立ち寄らせてもらいました」
「そう。 で、テツさんの今おられるアニム王国でしたっけ? そこでは、テツさんのお持ちのような武器などはたくさん流通しているのかしら」
このマリガリータって人、的確に要点だけを聞いてくるな。
「どうでしょうか、わかりません。 ですが、街は賑わっているので、お店に行けばあるのではないかと思います。 私の武器は、本当にたまたま偶然にいただいたものですから・・」
俺の武器に関することは、わからないで答えておいた方がいいだろうと感じていた。
「そう、仕方ないわね。 そのうちに、アニム王国とやらに行ってみてもいいかもしれないわね」
マルガリータが言う。
「マルガリータさん、その時には私もご一緒させてくださいね」
マティアスが話しかけていた。
「テツさん、よろしいですか」
ハロルドが言う。
「はい、何でしょうか?」
「テツさんは、レベルはどのくらいになられているのでしょうか? 我々はまだまだレベル20半ばですがね」
・・・こいつ、自分のレベルを言って相手の情報を引き出すつもりか?
だが、正直に答えることなどできるはずもない。
俺は少し迷いつつも、答えた。
「レベル20半ばとは凄いですね。 ですが、私の所属しているアニム王国のシステム上、レベルの公表はしてはいけないのです。 すみません・・・」
俺はそういって、ライセンスカードを取り出して見せた。
「これは、私の所属しているギルドで発行してもらったライセンスカードです」
カードには冒険者ランクと名前、発行元くらいしか見えないようになっている。
ギルドなどで、ギルマスが持つパネルボードがあれば別だが。
皆、ライセンスカードをマジマジと見つめている。
・・・なるほど、情報に飢えているんだな。
「我々のところでも、異世界人に発行させたらいいんじゃない?」
「全員分必要なわけでしょ?」
「自分たちの情報が全部知られるのかな?」
・・・・・
・・・
カードを持ったり、見たりしながら話が盛り上がっていた。
「テツさん、このカードにどれくらいの情報が入ってるのかしら?」
アナスタシアが聞いてくる。
「さぁ、私も詳しくはわからないのです。 ただ、住民はみんな持っています」
俺がそう答えると、ライセンスカードを返してくれた。
「まぁ、テツさんにあれこれ問い詰めても仕方ありませんね。 我々が、テツさんの国に行けばいいのですから」
マティアスが言う。
「そうですね、マティアスさん」
ハロルドがうなずいていた。
「テツさん、我々ばかりが聞いてしまいましたが、何か聞きたいこととかありませんか?」
ハロルドが聞いてくる。
「・・・そうですね、皆さんの国は異世界人と一緒に作られたということですが・・・」
俺がそういうと、みんなうなずいていた。
俺は続けて、
「先ほどから不思議に思っていたのですが、この場に異世界人はおられないようなのですが、どうしてでしょうか?」
それが不思議だった。
彼らの知識は我々よりも豊富だ。
なのに、なぜ一緒に会議みたいなものをしないのだろうと思っていた。
この部屋にいる連中がクスクス笑いながら、顔を見合わせている。
シュナイダーが口を開いた。
「テツさん、我々と異世界人・・・確かに見た目はそれほど変わりません。 ですが、基本となる考え方が違うのです。
街などを作るときや運営のときなどは、一緒に話し合いさせてもらったりしてますが、こういった個人的な興味というか、趣向の場面ではどうも折り合いがつかないのです」
「彼らはなぜか魔法をとても重視するのです。 私たちとしては、魔法はツールのように思っていたのですが、一種の宗教のような感じを受けて、少し距離を取っています」
ハロルドが言う。
「なるほど」
俺はうなずく。 そして、もう少し聞いてみる。
「後もう一つ。 この国の近くに、ドワーフ国があると思うのですが、接触はされなかったのですか?」
俺がそう聞くと、皆少し固まったようだが、すぐに普通に戻った。
シュナイダーが話してくる。
「えぇ、確かに異世界人の情報では、ドワーフ国があるという話を聞いていました。 確か、調査をするとか何とか・・私もよく把握していないのです。 申し訳ありません」
「そうですか、わかりました。 私も、魔導国へ出発するときにドワーフ国近くのギルドを経由して移動してきたものですから・・」
俺は話しながら、反応を見ていた。
おそらく、全員ギルティだな。
10
お気に入りに追加
362
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる