どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫

文字の大きさ
上 下
320 / 426

320 ドワーフの武器が本命か

しおりを挟む





「・・いえ、私は日本人でした」

俺はこういう資産家の人たちと付き合ったことはない。

だが、正直が最善の外交なんて、誰かが言ってたなと思い、そのまま話した。



シュナイダーは少し目を細めて、後は俺を値踏みするように見つめる。

ゆっくり微笑みながらうなずく。

「・・・そうですか、それはご苦労されましたね」

そう話しながら、続ける。

「テツさん、その腰に下げてる武器ですが、ドワーフの方からもらったものだとか・・・」

シュナイダーは言う。

・・・なるほど、これが目当てか。

俺はそう思ってみた。



「えぇ、そうです。 アニム王国にドワーフのお店が出来まして・・・私は、たまたま交流記念だとかで、幸運にも手にすることが出来たのです」

ちょっと苦しかったか・・・だが、そう答えるより仕方ない。

どうも、このおっさん、本当のことを言ってないような気がする。



「ドワーフのお店ですか・・・いえ、私は珍しいものが好きなのですよ。 何でも、テツさんの武器は、誰もが持ち上げることができなかったのだとか・・・」

シュナイダーはそういうと、少し前のめりになって話してきた。



こいつ、いきなり直球か?

やっかいなやつだな。



「えぇ、私専用の武器だとかで、いただきました。 どうですか、お持ちになってみます?」

俺はそう聞いてみる。

シュナイダーはものすごくうれしそうな顔をした。

俺は席を立ち、飛燕を持ってシュナイダーの方へ歩いて行く。

ゆっくりとシュナイダーの机の前に置いた。

机の上に置くときには、普通にものを置く感じだ。

自然と存在しているだけでは、ほとんど重さも見た目通りなんだろうなと思った。



シュナイダーは飛燕に軽く触れ、持ち上げようとする。

・・・・・

当然、動くはずもない。

席を立ち、両手で上げようと試みる。

・・・・

・・

はぁ、はぁ、はぁ・・・。



「テツさん、これはいったい何でできているのですか?」

シュナイダーが聞いてくる。

「いえ、私にもわからないのです、そこら・・」

えへん。 咳払いをする。

俺は、思わず素材はそこら辺にあるものだと言いそうになった。

そんなことがわかれば、余計に執着するだろう。

・・・ヤバいな。

このおっさん、相手を安心させるスキルでも持っているのか?



「そうですか、私はまた特別な素材でも使っているのかと思いましたが・・・」

シュナイダーが片手を顎に当てながら、残念そうにつぶやく。

「・・シュナイダーさん、すみませんね」

俺がそういうと、

「いえいえ、私が勝手に思っただけですから。 お気になさらずに」

そういうと、俺は飛燕を持って元の位置に戻した。

その動作を見ると、改めてシュナイダーが感心したようだ。



「テツさん、その武器ですが、とても軽そうに扱われますね。 不思議です」

シュナイダーは言う。

「そうですね、私専用の武器ということですから・・」

俺も同じフレーズを繰り返す。

「・・なるほど、セキュリティ的にも、その人の何か特定のものにしか反応しないとか、そういう制限をかけてあるのかもしれないということですかな?」



シュナイダーは一人つぶやきながら考えていた。

・・このおっさん、賢い。

つぶやきながら俺の反応を見ている。

俺は、こういった駆け引きの現場は経験したことがない。

まとわりつくような緊張感、それを楽しめる奴もいるのだろうが、俺ではないな。



「テツさん、我々も、そのドワーフとかと取引ができますでしょうか?」

シュナイダーがいきなり俺に聞いてくる。

「・・・取引・・ですか?」

このおっさん、いったい何を言っているんだ?

「えぇ、テツさんの持たれている武器を拝見して確信しました。 特殊な能力というのは、安全度を高めます。 我々人間の立場を強化できると考えます。 アニム王国に行ければ、ドワーフのお店なども利用できるのでしょうか?」

シュナイダーが聞いてきた。

「さぁ、私にはわかりません。 ですが、ギルドなどが調整してくれるのではないですか?」

俺もわかる範囲で答えてみる。

どうも、相手のペースで話が運ばれる。



「なるほど・・・わかりました。 ありがとうございます。 しかし、テツさんは慎重な方のようですな」

シュナイダーは微笑みながら言う。

「・・・・・」

「いえ、警戒なさらないでください・・・という方が無理ですな。 ですが、我々もこれからこの世界で生きて行かなければなりません。 ですから、いろんな情報を集めておきたいのです。

それに、こういった国らしきものもできてしまいました。 普通に暮らしている人たちに、今までの生活を提供する義務も、我々運営側が負うべきものだと考えております」

シュナイダーは話す。

「・・わかりました。 テツさん、少しの間でしたが、ありがとうございました」

シュナイダーが席を立ち手を出してきて、俺は握手をした。



しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

処理中です...