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313 ギルマスからの依頼
しおりを挟む「これでいいかな?」
俺がそう言ってガルムを見てみると、固まっていた。
口も開いたままだ。
「・・・・おやじ。 おやじ!」
「・・あ、あぁ、すまない。 しかし、テツさんこれは・・・凄いです」
ガルムが魔石を手に取りマジマジと眺めている。
・・・・
・・
「う~ん、すごい。 これなら申し分ないです」
ガルムが魔石を置き、俺の方を見る。
「テツさん、本当にありがとうございました。 なんとお礼を言ってよいやら・・。 実は、ワシも受けた依頼を半分あきらめかけていたんです。 そんな高レベルな魔石は、なかなか集まるもんじゃない。 どだい無理ってもんです。 でも、これで確実に仕事ができます。
お金ですが、今すぐにはお支払いできませんが、後で必ず・・・」
ガルムが申し訳なさそうに言う。
「おやじさん、別にいいよ。 俺もお金には困ってないし・・・」
一度この台詞が言ってみたかった!
「いえ、お支払いは必ず。 ドワーフの名誉にかかわります」
ガルムのおやじは真剣な顔で言う。
「そうか。 じゃ、また用意できたら頼むよ」
「いえいえ、こちらこそ、またよろしくお願いします」
ガルムのおやじが丁寧に見送ってくれた。
こんな依頼って、結構楽しいかも。
俺はそんなことを思いながら、ギルドへ向かって歩いていく。
時間は10時前だ。
ギルドに到着。
ドアがスムースに開く。
相変わらず賑わっているな。
ただ、ほとんどが飛行船の乗客みたいだが・・・。
俺は受付へ向かう。
待ち時間もなく、受付に行くことができた。
ロディーネだ。
「おはよう、ロディーネさん」
「おはようございます、テツ様。 お名前を憶えていただいてたなんて・・。 私は、記憶に残る女だったのですね」
ロディーネが顔に手を当てながら微笑んでいる。
・・・いやいや、ロディーネ。
そりゃ、美人ですけど、その誤解を生みだす発言はやめてもらえます?
俺が苦笑いしつつ、席につこうとすると、
「おっさん、どけよ!」
そう言って、若い3人組の男が割り込んでくる。
「あ、困ります。 きちんと順番を守ってもらわないと・・・」
ロディーネが慌てていた。
「ええやろ。 ねぇちゃん、かわいいね」
「おっさんも別にええよな?」
俺は別にどうでもいいが、後の順番とかが気になった。
こいつら地球人だよな・・異世界人では、というかアニム王国所属の冒険者では、出会ったことがない。
「ロディーネ、俺の後って順番待ちいるのかな?」
「あ、はい。 今のところ3人の方にお待ちいただいています」
「そっか」
俺はそう答え、続けて、
「じゃ、お前ら順番を待った方がいいな」
そう言った。
当然、若い奴等が突っかかってくる。
「「なんだと、おっさん!!」」
席を立って俺にガンを飛ばしてくる。
・・・やれやれ、若い奴はどこでも元気だな。
そう思っていると、早足でギルマスが受付に出てきた。
俺を見ると近寄って来る。
「テツ君か! ちょうどよかった。 今からテツ君のところへ行こうと思っていたんだ。 ん、どうしたんだ?」
ギルマスがそう言うと、ロディーネが事情を説明する。
「そうか、じゃあ君たち、きちんと順番を守ってくれ」
「あぁ? 誰だ、おっさん?」
若い連中のリーダーっぽい奴が言う。
「俺は、この帝都のギルドマスターだが・・」
ギルマスがそう言いつつ、微笑みながら相手を見ている。
こういった手合いは日常茶飯事といった感じだ。
「げっ! ギルマスか」
「おい、ヤバいぞ」
「・・そうだな。 これからにも関わる・・」
小声で矢継ぎ早に会話していた。
若い連中はすぐにギルマスに挨拶して、その場を去った。
ギルマスは気にすることなく俺を見て、奥へ来てくれという。
嫌な予感がする・・。
奥に案内されて、席につく。
ギルマスは俺を見つめて、話し出す。
「実はね、ドワーフの街は知っているね?」
俺はうなずく。
「その街から北西、かなり離れたところに魔導国があるのだが、その中間辺りに街が出来上がっていたんだ。 その街を調査団が訪れると、どうやら追い返されたらしい」
「追い返された?」
俺はオウム返しに言葉を口にしていた。
「そうなんだ。 どうも地球人主導の街らしいんだが、そこら辺りがよくわからない」
「ギルドマスター、まさか例の邪神教団とかという連中ではないのですか?」
俺は思いつくままに聞いてみた。
「推測でしか言えないが、それは大丈夫だと思う。 ただ、我々も異世界人という立場がある。 相手が受け入れてくれなければ、強引に交流をできないんだ。 だが、いずれ現れるであろう邪神王の対策のためにも、少しでも味方がいる方がいいのだがね・・」
ギルマスが困ったような顔をして話している。
そして、顔を俺に向けた。
・・・なるほど、俺に調査を依頼したいわけだな。
俺はギルマスの顔を見る。
「ギルドマスター、俺に見て来いというわけですね」
俺は笑いながら言葉を出す。
「テツ君。 理解が早くて助かるよ」
ギルマスも笑っている。
「ギルドマスター、初めからわかっていたでしょ」
俺も特にやることもなかったので別に問題ない。
「そしてだ。 調査に行くにあたっては、審議官を連れて行ってもらいたい」
ギルマスが言う。
「審議官? ですか・・」
ギルマスがうなずく。
「テツ君も知っていると思うが、ココを連れて行ってもらいたい」
!!
俺は驚いた。 そして、何となくわかった。
何故、審議官を連れて行かなければいけないのか。
俺が少し驚いた顔をしていると、ギルマスが軽くうなずき話してくれる。
「テツ君も気づいたかな。 何故、我々と交流を持とうとしないのか。 相手に不利になるようなことはないはずなんだ。 それを上回る何か、もしくは洗脳、その他危険な因子があれば困るし、話だけでは見抜けないかもしれない。 だから審議官を同行させたいと思っているんだ。 よろしく頼めるかな?」
答えはわかっているだろうが、敢えて聞いているようだ。
無論、俺もうなずいて答える。
「もちろんですよ、ギルドマスター」
そう言いつつも、ココのことを頭に浮かべた。
確かあの子・・・高飛車な子だったというイメージがあるけど、どうなんだ?
「それでテツ君、いつ出発できるだろうか。 ココはいつでも大丈夫だと言っていたが・・・」
ギルマスが俺を見て言う。
「特に用もないので、いつでもいいですよ。 いや、今から出発しても問題ありません」
俺がそう答えると、
「わかった。 ありがとうテツ君。 それじゃ、ココを呼ぶから少し待っててもらえるだろうか」
ギルマスはそういうと、席を離れて受付の方へ移動して行った。
少しして戻ってきて、
「テツ君、地上からすぐにココがやってくると思うので、ここで待っていてもらってもいいし、ギルド内ならどこでいてくれてもいい」
ギルマスはそういうと仕事に戻って行った。
ギルマスも忙しいんだな。
俺はそんなことを思いながら、この部屋で待っていようと思った。
椅子に深く腰掛け、身体を前後にゆっくりと揺らして、ボォーとしていた。
!
そうだ、少しステータスを見てみよう。
レベルは上がってないけど時間もあるしな。
俺はそう思ってステータスを見てみる。
テツ(ランクA)
レベル:42
種族 :人
HP :710/720
MP :520/530
力 :618
防御 :575
敏捷 :787
技能 :493
運 :72
職業 :賢者9
固有スキル
罠解除☆
上忍術☆
鑑定☆
アイテムボックス☆
自動回復☆
祝福☆+β
魔法耐性☆
調理4
神光気1new
・・・・
!!
ん? 何だこれ?
何て読むんだ?
俺はステータス画面にある神光気という項目に触れてみた。
なになに・・・しんこうき。 練度を高めていくと、あらゆる攻撃、魔法に対する耐性が得られる可能性がある。 また、攻撃魔法を吸収して自身の魔力に変換する可能性もある。
・・・・
なんともコメントのしようがない。 凄いスキル能力なのはわかる。
だが、可能性があるという微妙な表現がいまいち納得できない。
なんだ、その可能性っていうのは? できるのかできないのかはっきりしろ!
そんなことを考えていると、俺の後ろの方から声がした。
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