どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫

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303 皆さん、移住しますよ

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セーラは政務室を後にして、建物の外へ出る。

「隊長、お疲れさまでした」

隊員たちが近寄って来る。

「あぁ、お前たちもご苦労だったな。 今日は帰って休んでいいぞ」

そういうと、皆が敬礼して、装甲車に乗って帰っていく。

セーラは一人歩きながら考えていた。



私の報告がうまくなかったのはわかる。

だが、相手を見誤ってはいないだろうか。

レアを見てもその強さなんてわからない。

自分達もレベルなどという自分の強さを測るものがある。

魔法も使えるようになった。



私もレベル25だが、今まででは考えれなかったことができるようなっている。

高層ビルも飛び越えることができる。

岩も砕くことができる。

まるでスーパーマンだ。

だからこそ自分を見誤らないようにしないといけない。

みんな、わかっているのだろうか。

そういう私も怪しいが・・・・・



セーラの見方は正しい。

だが、自分が規格外の強さを持つと、相手の規格がわからなくなる。

しかもそれが簡単に手に入り、急速に行われたものならなおさらだ。

そして、測るモノサシが違う。

セーラやジェームズなどのモノサシでレアたちを測ってはいけない。

違い過ぎるのだから。

だが、それができる人間は少ない。



それに、セーラの報告を受けたときに自分たちの耳に優しい言葉だけを聞いていなかったか。

飛行船が飛んでいるという報告を受けて、それを基準に考えを巡らせてしまわなかったか。

通常レベルの状態なら、しっかりと真意を測ることができたかもしれない。

ただ、魔法やレベルによって自我肥大が起きていたのは事実だろう。

それが自分の命を失うことになるかもしれない。

もしかしたら、レアはここの住人がこう考えることまで予見していたのかもしれない。



レアたちは自分の家のテーブルを囲んでお茶を飲んでいた。

レアはゆっくりとお茶を飲み、カップをテーブルに置く。

「皆さん、わたくしの考えはわかっていると思いますが・・・」

レアはそう言葉を発するとみんなをを見渡して、話始める。

「この街を出ようと思います」

フローラたち全員が、もっともだという感じでうなずいている。



「レア様、先ほどの街へ移られるのですか?」

エリスが聞いてくる。

「いえ、帝都に移住しようかと思っていますわ」

レアがそういうと、皆が一瞬目を大きくして拍手をした。

レアはその状況を見ながら、大きくうなずいている。

「レア様、いつ出発されますか?」

メリッサが聞いてきた。

「今からですわ」

レアが当然のように言葉を発する。



レアは特に持っていくものはない。

他の連中も持参するものはない。

あってもアイテムボックスで運べばいい。

レアたちは家具類をアイテムボックスに収納すると、アウラに声をかける。

「アウラ、大統領やジェームズくらいには声をかけてから出発しましょう」

そういうと、アウラ以下皆がうなずく。

もはや敬称は不要だ。



時間は10時30分前。



レアたちは家を出て、ホワイトハウス改に向かった。

その足取りは軽い。

すぐに到着し、ジェームズに面会を求める。



会議室に案内された。

ジェームズが対応してくれる。

「レア様、どうかされましたか?」

レアはジェームズに向かって丁寧に挨拶し、

「ジェームズ様、お別れのご挨拶に参りましたの」

そう言った。



「え? お別れとは・・・」

ジェームズには何が何だかわからない。

「ええ、私たちこの街を出発することに致しましたの」

レアは軽く答える。

「出発? この街を・・ですか?」

ジェームズは言葉に思考が追い付いていかない。

「はい」

「いえ・・・あまりにも突然で・・いきなりそう申されても・・・」

ジェームズは返答に困っていた。 意味もなく額を拭ぬぐう。



「何か、問題でもありますか?」

レアは構わずに聞く。

「い、いえ、問題などはありませんが・・・我々は、レア様からいろいろなことをいただくばかりで、何もお返ししておりません。 それが突然街を出て行かれると言われましても・・・」

ジェームズは目を閉じ、頭の中でいろいろ考えていた。

・・・・

レアたちからは魔法やレベルのことは教わった。

これからは、その利用方法も、我々の方で研究していけばいい。

ちょうどいいではないか。

こちらから出て行けと言っているのではない。

どうせ利用価値がなくなれば厄介者になるに決まっている。

異世界人など、肌が違う。

共存などできるはずがない。

地球は、我々のルールで運営されてこそ成り立つのだ。

我々のルールに従えば、生存するくらいは許してやってもいい。

大統領も同じ考えだった。

・・・・

・・

ジェームズは目を開け、

「そうですか・・・レア様。 わかりました。 これまでの数々のご指導・ご教授、本当に感謝しております。 ありがとうございます。 大統領は多忙ですぐにご挨拶に来れませんが、お待ちいただけますか?」

ジェームズはやや落ち着いてそういうと、レアが別に挨拶は不要と言った。



「レア様たちの今後に、神の祝福がありますようにお祈り申し上げます」

ジェームズはレアたちに丁寧に言葉をかけた。

「ジェームズ様、こちらこそ良き隣人になれるようにお祈り申しあげます。 それから神ですが、何もしてはくださりませんよ」

レアは微笑みながら言う。

ジェームズは目を少し大きくしたが、聞き流すことにした。

レアは少し身をかがめて、「ごきげんよう」と挨拶して、ホワイトハウス改を後にする。



「レア様、あのジェームズって男やこの街の連中・・・アニム王国と仲良くできますかね?」

メリッサがホワイトハウス改の前を歩きながら聞いた。

「無理でしょうね」

レアはきっぱりと言う。

メリッサは少し驚いていた。



そんなメリッサの反応を感じたのか、レアは言葉を続ける。

「メリッサ。 まだこの街の住人しか接していませんので、確定したことは言えませんが、この星の文明レベルはかなり遅れているようです。 

そんな文明がオーバーテクノロジーの力を手にしたら、使いたくなり力を試してみたくなるのが当たり前です。 それにその予兆はいろんなところに見てとれますわよ」

レアがいたずらっぽくメリッサをみる。

メリッサにはわからない。

レアがにっこりとして、

「そうですわね。 私たちが街を出て行くと言った時に、私たちの重要度がわかっていれば、トップがすぐにでも飛び出してくるでしょう。 それを何もなしに見送ったのですから、既にほころびが生じている証拠ですわ。 また、そうするということは、今後は自分たちだけでおこなっていこうということを示しています。 つまり、相手に合わせるのではなく自分たちの型を押し付ける。 自然と衝突が発生するでしょう」

そう説明をしていた。



レアの予見は、それほどの時間を待たずして現実のものとなるのだが、それはまだ先の話だ。



レアたちが街の出入り口付近に来たとき、セーラが走って来た。

「レア様!!」

セーラの声が聞こえ、レアはその方向を向いて立ち止まる。

レアの前に来て、セーラが挨拶をする。

「レア様、街を出て行かれるというのは本当ですか?」

セーラは言う。

「ええ、その通りですわ、セーラさん」

「また、急ですね・・・」

セーラは引きつりながら笑っていた。

「そうですわね・・・私も先ほどの街を見て、故郷の空気が恋しくなったというところでしょうか」

レアがそう言う。



セーラはレアを見つめながら、一度目を閉じて顔を引き締めた。

「レア様。 短い間でしたが、本当にありがとうございました。 お身体にお気をつけください」

セーラは敬礼をしながら言った。

レアはにっこりとして答える。

「セーラさん、ありがとう。 ごきげんよう」

そういうと、城壁の出入り口を出て行く。

セーラはしばらくの間見送っていた。



◇◇



ホワイトハウス改の中。

大統領とジェームズ、そしてトーマスなどが会議室に集まっていた。

「・・大統領、あの異世界人のレアですが、この街を出て行きました」

ジェームズが言う。

「そうか」

大統領はそう返事をしながらも、どうでもいいという感じだった。

「・・異世界の街が恋しいと見える・・」

誰かがつぶやいていた。



「それよりも国務長官。 例の件は順調かね?」

大統領が聞く。

「はい」

トーマスはそう答えると、顔を横に向け顎で合図をする。

「はい、私が報告させていただきます!」

そういうと、制服を着た男が立ち上がり話始める。

「ご存知のように、魔核を利用すると戦闘機などは以前よりもすべてにおいて能力が向上しています。 それを空母や戦艦などに利用し、既に実験中です。 成功すれば、海ではなく空を飛ぶ戦艦が完成します。そして・・・」

そういうとザワザワという雰囲気が起こった。

「・・おお・・」

「・・それは凄い・・・」

・・・・・

・・・

若い男は話しているうちに熱が入ってきたようだ。

大統領も聞きながら、少しうんざりしてきたが、これが完成すれば世界はまた我々のルールで動くことになる。

そう思っていた。



レアたちが出て行ったのは、むしろ都合がいい。

余計なものを見られないで済む。

奴等からは学ぶべきことは学んだ。 十分だ。

この空間にいるものは皆、同じようなことを思っていた。

ただ、使っている魔核はレベル20程度のものだったが・・・。



◇◇



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