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285 南極へ向けて出発!
しおりを挟む「・・多分大丈夫じゃないかな? 危険な感じはしないし・・・それに飛行船で休憩できるしね」
俺はそういうと、残りのお茶を一気に飲んだ。
「ばあちゃん、ごちそうさま」
席を立ち、顔を横に向ける。
ばあちゃんが心配そうに見ていた。
・・・・
いやいや、親にこんな顔をさせるなんて・・・まだまだ俺はダメだな。
そう思ってしまった。
「フレイア、ばあちゃんたちをよろしくお願いします」
フレイアに俺は頭を下げた。
「うん。 こちらは問題ないけど、本当に気を付けてね」
微笑みながらフレイアが答えてくれる。
俺はうなずくと、ばあちゃんの家を後にする。
フレイアがギルドまで送ると言ったが、ここでいいと断った。
フレイアとは一応パーティを解消しておいた。
単独が条件だし、何が起こるかわからないからな。
長い間、俺の背中を見送ってくれていたようだ。
ありがとう。
・・・これって、死亡フラグじゃないよな?
さて、行くか。
ギルドへ近づいていくと、フラフラと女の人を連れて歩いて来る人がいる。
じいちゃんだ!
「よう、テツ。 元気か?」
じいちゃんが俺に声をかける。
じいちゃん、片手を挙げてご機嫌だな、おい!
酔っ払いじゃないんだぞ!
横にいた、きれいな女の人も一緒にお辞儀をしてくれた。
・・・・
俺は言葉が出ない。
「テツ、どっか行くのか?」
じいちゃんは軽く聞いてくる。
「うん、仕事でちょっと・・・」
俺はうなずきながら答える。
「そうか。 気をつけてな。 それよりも、フレイアさん。 お前の愛人なんだろ? もっと大切にしてやれよ」
ブフォ・・ゴホ、ゴホ・・・。
「・・・じいちゃん、あのね・・・」
俺はむせながらも返答を試みた。
じいちゃんが、うなずきながら言う。
「いやいや、いいんだ。 男はそれくらい甲斐性がなきゃな。 気を付けて行ってこい!」
そういうと、女の人に肩を寄せてご機嫌で歩いて行く。
・・・じいちゃん、畏れいります。
じいちゃんの背中を見送って、俺はギルドに到着。
時間は15時前。
ギルドの中は人が多い。
受付も忙しそうだ。
俺はそれを横目に、昇降装置の方へ歩いて行く。
発着場まで運んでもらって、南極行の飛行船を探した。
発着場も定期船が増えて来て、階層が分かれていた。
えっと、南極行は・・・
俺がボードで探していると、エレンさんが声をかけてきた。
「テツ様、こちらです」
「え? あ、はい・・」
俺はびっくりした。
まさか、こんなところにエレンさんがいるとは・・・。
「先ほど、ギルドに入られて来られたのを確認しましたので、ご案内させていただきます」
エレンさんは丁寧に話してくれる。
「いや、すみません、エレンさん」
俺は恐縮した。
「いえいえ、私たちはこんなことしかできませんが、よろしくお願いします」
エレンさんがそういいながら、俺を飛行船まで案内してくれる。
・・・・
・・
「こちらです」
エレンさんがそう言った先を見てみた。
普通の定期船よりもかなり小さい。
そんなに多くは乗れないぞ。
俺がそんなことを考えていると、エレンさんが説明してくれた。
「テツ様。 こちらは特別な飛行船になります。 なるべくクイーンバハムートを刺激したくありません。 それに、彼の地、こちらの言葉では南極というのでしょうか、その地域に用のあるものはおりません」
エレンさんはそう言う。
「・・なるほど・・」
俺も納得した。
「で、いつ出発になりますか?」
俺がそう聞くと、
「テツ様が乗られたら、すぐに出発となります」
エレンさんが答える。
「え? 」
・・そうか!
俺しか行く人がいないから、当然といえば、当然か。
俺はうなずき、エレンさんにお礼を言って、飛行船に乗り込んだ。
「テツ様、飛行時間は3時間ほどかと思われます。 お気をつけて」
エレンさんはそういうと、深々と頭を下げていた。
飛行船のドアが閉まり、ゆっくりと発着場を離れる。
すぐにギルドの建物が小さくなり、雲の中に消えた。
飛行船は揺れることもなく目的地に向かって行く。
どの飛行船も自動操縦なので、俺一人で南極に向かっていることになる。
・・・なんか、そう考えると、無性に寂しい感じになるな。
俺は頭を振り、余計なことを考えないようにした。
アイテムボックスからコートを取り出し、ゆったりできる席について、膝にコートをかけてくつろいだ。
ふぅ・・・。
完全に椅子に身体を預けてくつろいでいる。
・・・クイーンバハムート。
いったいどんな存在なのだろう。
世界事変に干渉しないのか?
・・・・
・・・違うだろう。
その存在というだけで意味があるものなのだろうか。
神というものとも違う。
神は人の意思の集合体の先にあるもののような感じがする。
善悪を超えた、何か・・・。
そんなことを考えていたら、俺は眠っていたようだ。
・・・・・
・・・
・・
「間もなく、目的地に到着いたします」
アナウンスが流れていた。
それをうつろな状態で聞きながら、俺は起きた。
ゆっくりできた。
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