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280 ・・交渉役・・ですか?
しおりを挟む「他にはないかね?」
アニム王はそういって、場を見渡す。
・・・・
「・・では、今のところ、以上だね。 後は、それぞれ調査をよろしくお願いする」
そういうと、皆が席を立ち、ゆっくりと会議室を出て行った。
後に残ったのは、俺とフレイア、ルナにウルダ、騎士団長とアニム王、そしてミランだった。
他の人が全員退出すると、騎士団長がアニム王に一礼して、俺の前に来た。
「テツ君、この度はメサイアがお世話になったそうだね。 本当にありがとう」
騎士団長が頭を下げていた。
俺は焦ってしまった。
「・・いえ、そんな大げさな・・・」
言葉に詰まりながら、俺はオドオドしてしまった。
騎士団長は握手を求めてくる。
俺もグッと握り返す。
騎士団長は、俺の目を少し見つめて、握手を外した。
後は、アニム王に一礼をして、退出していく。
俺は無言のまま見送った。
アニム王は微笑みながら見送っている。
すぐに、ミランの方を見てうなずいた。
ミランが話始める。
「テツ君、いろいろ活動ありがとう」
「いえ、そんな・・・」
俺は戸惑いつつ答える。
「活動に応じて、報酬は支払わせてもらうよ。 さて、ここからが本題だが・・」
ミランがそういうと、アニム王も真剣な顔になっていた。
「テツ君・・いろいろ調べていて驚いたよ。 君の種族というのは、その・・戦いの連続だね。 しかも酷い」
ミランがそう話し始めていた。
俺には返す言葉もない。
「・・・いや、勘違いしないでくれ。 文句を言っているんじゃない。 そんな戦いで、犠牲になった人たちの怨嗟が気になるんだ」
ミランがそういって、目を閉じた。
「テツ、ミランの言い方が悪かったね。 つまりは邪神王の出現が起こりやすいということだよ」
アニム王が説明してくれる。
「・・アニム王、邪神王というのは・・・」
俺がそういうと、皆がハッとしたような顔になった。
「あ、すまない、テツ。 その説明ができてなかったね」
アニム王がそういうと、説明してくれた。
前にも言ったかもしれないが、邪神というのは、負のエネルギーが多いところに現れる。
その邪神が方向性を持ち始めて動き出した存在をいう。
出現すると、そのエネルギーを消費=浄化するまでは消えることがない。
無差別に破壊を始める。 国が滅んだこともあったそうだ。
・・・破壊神みたいだな。
俺は聞きながらそう思った。
また、どんな形で現れるのかわからない。
人の形になるかもしれないし、魔物の形になるかもしれない。
形成されてくると、その形にエネルギーが集約されているので、それを倒せばいいという。
だが、倒すことが容易でないのはわかる。
それだけのエネルギーを得ているのだ。 しかも時間をかけて・・・。
膨大なものだろう。
そして、アニム王たちの現在の見解としては、その出現は時間の前後はあるにしても、抑えることができないということだ。
負のエネルギーの拡散。
それの代行者が邪神王なのかもしれない。
善悪の区別はないようだ。
バランスを取っているのではないのかという。
意思のある生物が存在する以上、その出現は必然だろうと考えているそうだ。
ただ、アニム王の前の王の時代のこと。
原因が推測されるので、コントロールできるのではないかと思ったという。
・・・結果は最悪だったそうだ。
自然に発生する現象は、長い目で見れば対処療法がベターな回答だと結論づけていた。
俺もそう思う。
自然をコントロールしようとすると、ロクなことがない。
自分が自然の一部だということを忘れている。
主と従が入れ替わってしまっているからな。
・・・・・・
・・・
・・
「まぁ、そんなわけで、我々としてはいろんな種族の人たちと仲良くしたいわけだよ。 前の時にも不干渉国交として、良好な関係が構築できたところだったからね」
苦笑いしながら、アニム王が説明してれた。
俺は黙って聞いている。
・・・創造と破壊。 死と再生。
これは仕方のないことなのかもしれない。
人の理解を超えていると思う。
星が爆発して、その中から新しい星が誕生したりする。
いや、仕方ないのではない。 ひとつの摂理なのだろう。
俺は聞きながら、そんなことを考えていた。
「・・それで、テツ。 ここからが大事な話なんだが・・・」
アニム王が何やら言いにくそうな感じで話してくる。
アニム王がミランを見る。
ミランが代わりに話してきた。
「・・実はね、テツ君。 君に交渉役を頼みたいと思っているんだ」
!!
え? 何、それ・・・。
「・・交渉役・・ですか?」
俺は、言葉がうまく出なかった。
アニム王はうなずく。
ミランが続けて話す。
「そうなんだ。 こんな身勝手なことはわかっている。 だが、君くらい・・いや、君にしか頼めないんだ」
・・・ギルマス。 それって、殺し文句ですよ。
「・・・何の交渉をするんですか?」
俺は、半分覚悟を決めながら聞いた。
「・・・クイーンバハムート。 この個体と接触して欲しいんだ」
ミランが言いにくそうに言葉を発した。
その俺たちの会話の間中、ルナたちは悠然と飲み物を飲んでいる。
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