171 / 426
171 凛の無邪気さが痛いな・・・。
しおりを挟む「アリアさん、闘技場をお借りしますね。
アリアさんはもうお帰りくださってもいいですよ」
ウベールはそう言ったが、アリアもついていくという。
「いえ、私も見させていただきます。
ギルドマスターのときには見てませんでしたから・・」
・・・そんなに期待されても困るけど。
俺たちは闘技場に入って行った。
俺とウベールが向かい合って立つ。
「テツさん、どんな武器を使われますか?」
俺は笑ってしまった。
「これは失礼しました。
ミランさんも同じように聞いてきたものですから、すみません」
「いえ、問題なく。
私は剣を使わせてもらいます」
ウベールはそう言うと、木剣を手に取っていた。
俺も飛燕を横に置き、木剣を手に取った。
「私も剣を使わせてもらいますね」
そういってウベールと向かい合った。
・・なるほど・・
ウベールは強いな。
注意して見てみる。
レベル32。
凄いな・・・。
そう思ったところだった。
ウベールが一気に迫って来る。
速い踏み込みだが、はっきり見える。
ウベールの剣が上から振り下ろされてくる。
俺は軽く受けて流しつつ、そのままウベールに切り返した。
ウベールの左肩をかすめたようだ。
「グッ!・・」
ウベールが木剣を落とす。
だが、そのままウベールは突っ込んできた。
俺に掴つかみかかろうとする。
俺も木剣を捨て、ウベールの右側に躱かわしつつ右回し蹴りを出した。
これはおとりだ!
ウベールは俺の蹴りを両手で受けた。
その固まったところへ俺は左の手で掌打を放つ!
ウベールの右肘あたりにきれいに決まって、そのまま吹き飛んだ。
すまないな、ウベール・・・
レベル差だよ。
俺は心の中でつぶやいた。
ウベールは吹き飛んだまま動かない。
・・・まさか死んでないよな?
それほど全力で打ち込んでいないはずなんだが・・・。
フレイアが駆け寄って行って、回復魔法をかけてくれていた。
アリアが近寄って来て、
「テツ様・・凄いの一言です。
ギルドマスターが言われるのもわかりましたぁ」
「・・・・・」
俺は何も言えなかった。
ウベールはどうやら回復したらしく、立ち上がってこちらに歩いてきた。
「テツさん・・完敗です。
試すようなことをして申し訳ありませんでした」
ウベールは深々と頭を下げる。
「いえいえ、どういたしまして・・」
「ですが、テツさん・・まだまだ本気ではありませんね」
・・・ウベール、気づいていたのか?
「え?
あれで本気じゃないのですか?」
アリアが驚いている。
「いや、あんなものですよ」
俺がそう答えると、ウベールは笑いながら首を振っていた。
「私もまだまだ修行が足りませんね。
ダンジョンもできたことですし、もっともっとレベルを上げたいと思います。
今日はありがとうございました」
ウベールがそういいながら、みんなで闘技場を出た。
「フレイア、ありがとう」
俺はフレイアに礼を言った。
ウベールは非礼を詫わび、アリアもこれで仕事も終わり、みんなで帰路についた。
ギルドを出て俺も家に向かう。
時間は午後20時を過ぎていただろう。
ばあちゃんの家の明かりはもう消えていた。
・・・さすがに寝るのは早いな・・・。
俺は嫁の家の方に立ち寄った。
ドアをノックして、しばらくしてドアが開いた。
「あ、おっさん!」
優が出迎えてくれた。
「おっさん、もうご飯ないよ」
「・・・・・。
あ、そう・・・それはいいが、俺、明日に王宮へ行ってから冒険者というか、日本を回ってこようと思ってるんだ」
そうやって優に言ってると、奥から凛の声が聞こえた。
「パパお帰り~」
トコトコとスラちゃんを抱いて歩いてくる。
嫁も一緒に歩いてきた。
優に言ったのと同じことを繰り返して行って、しばらく帰らないかもしれないので、よろしくとも伝えた。
「あ、そう。
気を付けてね」
嫁はそういう。
・・あれ?
違うな・・雰囲気が・・
ここ、帝都に引っ越して来て、明らかに変わったよな。
「俺の家も自由に使ってくれていいから・・」
俺はそういうと、嫁の家を後にする。
凛がおやすみ~と言ってくれた。
凛の無邪気さが心に染みるな・・・。
しかし、何だろう・・・
もう今までのしきたりやルール、モラルはないだろう。
だが、人が身につけてきたことが、それほど激変するとも思えない。
あの嫁の雰囲気・・・
自分でやっていけるという自信の表れか?
それなら今までもあっただろう。
お互いになくてはならない存在ではない。
それは間違いない。
・・・考えてもわからないし、面倒だしな・・・。
そのうち、何かわかるようになるだろう。
そんなことを考えながらゆっくりと歩いて俺の家に向かった。
11
お気に入りに追加
362
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる