どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

131 アニム王・・・私は感謝しっぱなしですよ！

テツは歩きながらルナの方を見て言った。

「ルナさん、アニム王ですが・・・私が前にここまで来たら、向こうからやってきてくれました。

おそらく今回も来てくれるのではないかと思っているのですが・・・」



一応念話も飛ばしてみる。

『アニム王、テツです』

・・・・・・

・・・・

いつもならすぐに返事が来るのだが・・・

何かあったのかな？

『アニム王・・テツです』

もう一度念話を送ってみた。



アニム王から答えがないことをルナに伝えようと振り向いたら、アニム王がそこにいた。



「やぁ、テツ・・・それにルナ・・・よくご無事で・・・」

アニム王は濃紺のマントを軽く振り払い、ルナに近づいていく。

その歩く格好だけで、サマになってるな。



「アニムこそ、無事でなによりだ」

ウルダとシルビアはルナから距離を取った。

「ルナ・・私としては、初めて実物のあなたとお会いすることになるね」

アニム王がルナに向かって言う。

「うむ」

ルナも頷く。



え？

初対面なのか？

そういえば、そんなことを言ってたような・・・

思わずウルダに聞いてしまった。



「ウルダさん・・アニム王とルナさんって、初対面なのか？」

アニム王たちに目線はくぎ付けだが答えてくれた。

「あぁ、そういうことになるな」

「・・でも、確かアニム王とルナさんは婚約してるんじゃなかったのですか？」

俺は好奇心が湧き出てきた。

「・・まだ婚約はしていない。

ただ、一度会ってからいろいろ決めようとしていたからな。

そんな時に、こういう事態になったわけだ」



なるほど・・・。

アニム王も大変だが、こんな美人を嫁さんにできるなんて、うらやましすぎるぞ！！



アニム王とルナは少し会話した程度で、俺の方へ近寄ってきた。



「テツ・・私もそろそろ移動しようかと考えていたのだよ」

アニム王はそう話しかけてきた。

「移動・・ですか・・・」

俺は少し驚いた。



自分の転移で、転移先の世界システムを変えてしまった。

その責任を感じていたはず。

何かあったのかな？



「・・不思議に思うだろう、テツ。

だがね、先ほど移動した人の集団がいただろう。

あれも一つのきっかけになったかもしれない」

・・・・

・・・

聞けば、いくら魔物に対処してもきりがない。

災害級の魔物が頻繁に出現する。

どの人も自分勝手に振舞う。

泉たちの集団も、レベルの低い魔物を倒しつつ、一般住人を守るのではなく、自分たちのレベル上げだけに専念していたようだ。

その影でアニム王が災害級の魔物を狩っていたからこそ、泉たちが生き残れたわけだ。



「アニム・・どういうことなのだ？」

ルナが不思議そうに聞いてきた。

俺が簡単に説明した。



アニム王が転移してきたと同時に、光の神がこの星の神と融合し、この星の世界システムが変化してしまったこと。

その責任を感じていたこと。



「ふむ・・・アニム・・お前は苦労性だな・・」

ルナは微笑みつつ軽く答える。

アニム王も言葉を発することなく、微笑んでいた。



「テツよ、この星の住人は、それほどこの星を支配していたのか？」

ルナは俺に聞いてきた。

「・・・どうでしょうか・・私的には、とても支配していたとは思えません」

俺はそう答え、続けた。

「ただ、支配していたという錯覚はあるかもしれません」

「・・・錯覚か・・・」

ルナは目線をやや下に落としながら考えていた。



それを見つつ、俺は続けた。

「ルナさん。

錯覚という表現が適切かどうかわかりませんが、この星に生かされているということを忘れて、生きていたように思います」

「・・・なるほど・・・」

ルナはそういうと、顔を上げてアニム王の方を見た。



「アニム・・私の時間の中では、世界のシステムなど常に変化しているものだぞ。

それに合わせて生物は生きていくものだ。

貴様が転移してきたところで、そんなのは関係ないと思うぞ。

そうではないか、テツよ」



え？

いきなり俺に無茶振りですか！



ルナは俺の方を見た。



いやいや、ちょっと待ってくれ、ルナさん！

俺は少し考えて答えた。

正解などあるはずもないが、俺なりの答えを出すべきだろう。

・・・・

・・・

「アニム王・・

前にも言いましたが、私はこの今のシステムに感謝しっぱなしです。

自分の行動が評価されるシステム。

それも人による評価ではなく、この自然というか星というか、神というか・・

そういうものが評価してくれるシステム。

そして、それは私だけではないと思います」

俺はそれだけいうと、アニム王に頭を下げた。



「見ろ！アニムよ。

この星の住人が直接に感謝をしているではないか！

何を悩む必要がある！！」



あれ？

ひょっとして、ルナはアニム王を励ましたのかな？