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97 ・・っく、クソ! !?・・なんだ、あの矢は・・・
しおりを挟む僥倖だろう・・・。
斧の振り下ろされた辺りは、トロウルの炎を纏ったメイスなど比べ物にならないくらいの土ぼこりを上げていた。
近くにあったマンションの残骸だろうか・・・
一緒に崩れ落ちていた。
ミノタウロスと行き違いになり、振り返った時の見えた景色だ。
だが、その土煙の中から大きな巨体がこちらへ向かってきた。
ミノタウロスは同じような攻撃を仕掛けてきた。
また俺も同じように脇を抜けようとしたが、途中で横へ飛んだ。
俺が抜けようとしたところに、ミノタウロスの尻尾があった。
「・・こいつ!
考えてやがる!!!」
しかし、無理に横に飛んだことで、壁に激突した。
ダメージはそれほどないが、体勢が崩れたのが痛い。
ミノタウロスはその隙を見逃すはずもなく、今度は片手で斧を振り下ろしてきた。
大きな弧を描く分、威力は先ほどとは比べものにならないだろう。
2回しか移動してないが、俺の方がやや速く動いていると感じる。
ミノタウロスの斧を持ってる腕を刀で下から切り上げながら、その方向へ飛んだ。
ミノタウロスの頭を足場にして、蹴り出して飛んだ。
その巨体が障壁となって、斧を振り下ろしたときの破片など礫を防ぐことができたようだ。
頭を蹴った時のその感触・・・。
まるで岩場のようだった。
刀は折れていなかった。
ミノタウロスの動きが止まっている。
何やらモゾモゾしている。
ミノタウロスの右手が落ちたようだ。
左手で斧を持ち換えていた。
視点を動かしてみると、ミノタウロスの前方に大きな地割れが出来ていた。
マジか・・・
地割れって・・ありえねぇ・・。
左手で斧を持つと、ミノタウロスは叫び声を上げた。
「グォオオオオオオオオオ!!!!!!!」
今まで聞いた咆哮とは違う。
ビリビリくる感じはあるが、硬直するのでもない。
ただ、やる気が失われる気がする。
・・恐怖を与えるのか・・。
・・このクソがぁ!!
俺はかろうじて戦闘意欲を失わないで済んだ。
おそらくもっとレベル差があれば、それだけで動けなくなったんじゃないか?
しかも戦闘意欲までも奪われていたかもしれない。
ミノタウロスは左手で斧を振りかぶりながら迫ってくる。
俺も刀を構えることができた。
右手を切ることができたんだ。
刀は通じる。
斧が振り下ろされた。
やはり、すり抜けながら切る方がいい。
バックステップや横に避けても、その衝撃からは逃れられないだろう。
あの地割れだ・・・死ぬ・・。
左脇へ抜けながら、ミノタウロスの身体を刀がかすめた。
次の瞬間、ミノタウロスの尻尾が目の前に迫っていた。
尻尾の打撃をもろに食らってしまった。
ちょうどカウンターでもらった感じだ。
ミノタウロスの左横方向へ吹き飛ばされた。
瓦礫に突っ込みつつも30メートル以上は吹き飛ばされただろうか。
「ぐはぁ・・・・」
ふぅ・・はぁ・・はぁ・・・
「ぅくぅ・・・」
身体が痺れて動きづらい。
やばい・・・。
くそ・・・・やばい!
自動回復を待つ時間などあるはずがない。
回復魔法なんて覚えてないぞ。
やはり、このレベル差は無理だったか・・。
・・逃げれるか?
いや、回復できなければ、無理だな・・。
身体を起こしつつ、そんなことを考えた。
ミノタウロスはこちらを見つけたようだ。
駆け出してきた。
クソ!!
こんなところで・・・
調子に乗り過ぎたのか。
クソ!!
嫁にもっと嫌味を言ってやりたかったのに・・・。
クソ!!
すまない・・優・・
クソ!!
・・・!!
・・・ただで死ねるか!!!
突きぬいてやる!!
来い、この牛野郎が!!!
俺はそう思うと両手で刀を構えた。
思いっきり突いてやる!
突きぬいて、貫いてやる。
それだけを考えた。
ミノタウロスが斧を振りかぶった。
トシュ!
ミノタウロスの振りあがった左腕に矢が刺さったのが見えた。
トシュ、トシュ、トシュ!!
連続して頭と左肩に矢が刺さる。
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