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42 アニム・オリホス
しおりを挟む武器など、じいちゃんしか作れない。
レアな人だ。
でも、それで無理を重ね過ぎたら・・・
そう思うと不安だが、本人が嫌がってないようだから・・・経過観察だな。
颯は相変わらずスライムと遊んでいる。
凛はやっぱり触らせてもらえないようだが、一緒に横になったりゴロゴロしたりしてる。
優は迷ってるみたいだったが、スクッと立ち上がってこちらへ来た。
「おっさん・・・俺、ハンターにしてみるよ」
そう力強く言ってきた。
「そうか。
ハンターか・・響き・・かっこいいよな。
レベルがあるんだし、また違う強さがあるかもな・・・」
俺もネガティブなことは言わずに答えた。
「うん。俺もそう思うよ」
そういって優はハンターを選択した。
ハンターの職を選んでも、俺の忍者の時もそうだったが、身体の変化はそれほど感じないようだ。
軽く感じる程度のことはあるが、実際に動いて戦闘などしてみないとよくわからない。
そう思っていると、颯がこちらへやって来て話しかけてきた。
「兄ちゃん・・スラちゃんが、兄ちゃんが怖い感じがするって・・・」
え?
颯・・・スライムと話ができるのか?
それって、すごい衝撃だぞ。
「・・・颯・・・お前、スライムと会話できるのか?」
そう聞かずにいられなかった。
優は黙って背中を若干伸ばして俺の方を見てきた。
颯が、兄ちゃんが怖い感じがするといったのが気になったようだ。
「・・えっとねぇ・・話ができるわけじゃないけど、何となくそう思うだけ・・・」
そういうとスライムを抱っこしてこちらに近寄ってきた。
凛も颯の後ろについてくる。
「やっぱりそう感じるね。
テツよりも兄ちゃんの方が怖い感じだって・・
テツは大きい感じがするって・・・」
やっぱ、会話というか、意思疎通ができるのか。
それってすごいんじゃない?
それよりも、スライム・・魔物の感覚だな。
「優が・・・俺よりも怖い感じか・・・ハンターの特性だよな・・」
何か少しショックだな・・・。
レベルは俺の方が上のはずなのに・・・。
「おっさん。落ち込むなよ・・仕方ないじゃないか」
優が背中に軽く手を置いてくれた。
・・・あのなぁ・・俺を慰めてくれるな!
別にいいよ。
「いやいや、優。
悔しくないからな。
そんなんじゃないんだからな・・」
「わかってる、わかってるって・・」
優は、ニコニコしながらばあちゃんの横へ行き、座ってお茶を飲み始めた。
これじゃあ、まるで俺が子供じゃないか・・・。
あれ?
何か忘れてる気がするが・・・
・・・
・・・
!!
思い出した。
嫁たちを迎えに行くの忘れてた。
迎えに行く前に、ばあちゃんとじいちゃんに、嫁のお義母さんを2階に来させてもいいかと聞いてみた。
何せこの家は、じいちゃんの退職金で建てた家だからな。
俺の金は・・・ない。
「お義母さんね、一人で不安だろうし・・うちは全然問題ないよ」
ばあちゃんは、嫌な顔することなく答えてくれた。
じいちゃんは無言でうなずいていた。
「そうか・・ありがとう、ばあちゃん、それにじいちゃんも・・・」
俺はそう言って迎えに行こうとした。
時間は12時45分頃になっている。
また、そろそろ魔物が現れてくるだろう。
今なら、優に頼んでおけば何とかなるだろうし、また優に狩ってもらいたかった。
そういって、優にまたワーウルフを単独で狩ってもらいたいと言ってみた。
「うん、やってみるよ。
レベルも9だし・・
それになんかうまく狩れそうな感じがするんだ」
スキルには「観察」と「見切り」というのがあるらしい。
・・・感じ的には見切りって武術だろうし、それって忍者にあってもおかしくないんじゃないか?
俺って本当に大丈夫なのか?
ほんの少しだけ沈んだ気持ちになったが、すぐに切り替えて嫁たちを迎えに行った。
30秒かかってないだろう。
嫁の実家に到着。
ドアのインターホンを鳴らした。
すぐにカチリと鍵が開く音が聞こえてドアが開いた。
だから、不用心だと言ってるだろ!
心の声です、はい。
嫁とお義母さんは、さすがに準備できてたみたいで一緒に歩いていくことになった。
俺がお義母さんを背負った方が早いだろうが、まぁそれはいいや。
お義母さんの歩く速度で移動し始めた。
普通の人の移動速度だな。
・・・遅すぎる。
嫁とお義母さんは他愛もない話をしていた。
辺りを索敵しながら歩いていると、またしても声が聞こえてきた。
『・・・誰かいないか・・・返事をしてくれ・・・』
やっぱり、天の声じゃないが、誰かの声だ。
嫁とお義母さんは楽しそうに俺の前を歩いている。
どうしようかな・・・答えてみるか。
別に声を出すわけじゃない。
頭の中で返事をすればいいわけだし・・
でも、やばい引っかけの誘いだったら・・
そんなことを考えつつも、結局は今の状態も異常なんだし・・・
開き直って答えてみた。
『はい!』
頭の中でそう返事をした。
すぐに返答があった。
『答えてくれたのか?ありがとう!
こちらから呼びかけていて申し訳ないが、君は誰なのかね?』
・・・誰ってなぁ・・・俺は少し迷ったが頭の中の会話を続けた。
『私は、テツというものです・・あなたはどちら様ですか』
相手は軽く笑ったように思った。
『あは・・すまない。
失礼したね。
私は、アニム、アニム・オリホス。
アニム王国の王です』
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