どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

28 やっとスーパーに来てみたものの・・・

優の移動速度もかなりのものだ。

３０秒とかからずにスーパーエイトの駐車場へ着いた。

この駐車場、６０台くらい車が止まれるようになっている。

３キロメートルを３０秒かからないって・・

アホだろ！！



それよりも静かすぎる。

・・・様子がおかしい。

店の明かりはついてるが・・



「うわ・・優・・足下に注意しろよ！」

俺は思わず声に出た。

１足のスニーカーが見えたのはいい。

少し目線を前に向けると、駐車場のあちこちに靴が散らばっている。

布の破れたのもある。

何かに襲われたのは間違いないだろう。

だが・・・残骸が・・生き物の形が見当たらない。



スーパー入り口付近に停めてある車のドアが開きっぱなしだ。



何だ？

索敵を意識してみたが何もひっかからない。

店の扉は自動ドアだが、半開きだ。

入り口から少し離れた窓も大きく割れていた。



ゆっくりと歩いて店内に入る。

「誰かいませんか～？」

俺は呼んでみた。

店内はまだ冷気があるようだ。



「すみませ～ん。

誰かいませんか？

買い物がしたいんですけど～」

何か間抜けな感じだな。

外は普通の状況じゃないのに、買い物をしようとする俺って・・・。

優は黙ってついてきている。



誰もいないのかな？



ん？

店の奥の方で気配がする。

・・・・魔物ではないようだ。

気配察知は魔物に特化しているらしく、パーティを組んだ人は表示されるけど、その他はあまり表示されないようだ。

俺だけかもしれないが・・・。



店の奥へ移動してきた。

店員が出入りする入り口だろう・・・

しかし、この扉だけがしっかりと閉まっている。

扉の前に来て軽くノックする。



「誰かいませんか？」



う～ん・・・

確かに誰かいる感じなのだが・・

もう１度ノックする。

「誰かいるのですか？」



「・・・・・・誰？・・・

助けに来てくれたんですか」

扉の裏から若い感じの男の声がする。



やっぱりいたな。

「いえ、助けというわけじゃないのですが、買い物がしたいのです。

それよりも、めちゃくちゃな感じですが・・・何かあったのですか？」

とりあえず、見た通りのことを言ってみた。



扉が少し開き、様子を見てから人が通れるくらいに開かれた。

中には何人かいるようだ。

口々に、助かった・・良かった・・・人が来た・・などの言葉が飛び交っている。いや、助けにきたわけじゃないけど・・・。



さっきの声の人が最初に出てきた。

「・・いやぁ、安心しました」

何を安心したんだ？

「何があったのですか？」

とりあえずそう聞くしかない。



男は少し間をおいてから話し出した。

「店の外の掃除をしていたのですが、いきなり、狼のような大きな犬が現れて、吠えて襲ってきたのです。

まだ、お客さんも来てなかったので、びっくりして店の中に入り、従業員たちに知らせました。」

なるほど・・。

「すると、今度は入り口やら窓に体当たりするじゃないですか・・。

急いで店内にいる従業員たちと一緒にここに避難したわけです」

なるほど・・。

「・・それは怖かったですね・・・」

それしか言えなかった。



ん？

「ということは、今まで中でいたのですか？」

「・・ええ、そうです」

何か申し訳なさそうに答える。

「・・・ここに避難したら、外では大きな音が鳴り響いて・・・」

ロンリーウルフやゴブリンたちに襲撃されたんだなと思った。

ということは、駐車場の散らかっていた靴って、もしかしてお客のものか？

だが、靴や衣服だけが残ってるなんて・・・



！！！



そうか！

魔物も死ねば消えた。

人間も・・死ねば消えるのかもしれない。



もう、非常識なことが起こっても、あまり驚かないだろうと思っていたが、驚いてしまった。

人まで蒸発するのか・・・。

・・・死にたくないな。



勝手に一人考えていたら、さきほどの男の人が声をかけてきた。

「・・ところで、助けに来てくれたわけじゃないんですか？」

一呼吸おいてから答える。

「・・俺たちは、助けに来たわけではないのです。

その・・買い物をしようと思ってきてみたら・・・

こうなったのです」

男は少しがっかりしたように見えたが、従業員以外の人を見れてホッとしたようだった。

「・・そうですか。

でも、一体、何が起こっているんでしょうね？」

男は俺に聞いてるようだった。

こっちが聞きたいよ。

「・・そうですね。

何が起こってるんでしょうね」

いい言葉も見つからず、お互いに困ってしまった。

まぁ、俺も基本は食料確保なので、買い物をしたいと伝えた。



「そうですね。いろいろ買っていただきたいのですが、この有様ですから・・

付近一帯、停電してるようですし、電源も自家発電でどこまで持つことやら・・・」