どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫

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19 これは魔法というものですよ

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「私はアニム王国の王です。

この国の総理大臣という方とお会いしたい」

王はそういうと、警備員は後ろの仲間に目配せをして応援を呼んだ。



2人の警備員が近づいてきた。

「・・アニム王国という国は聞かないな・・・

で、何用だ」

人数が増えたため、警備員たちの態度も大きくなってきたようだ。

「我が国をご存じないのも仕方ない。

辺境の国ですからな。

それよりもこれから大変なことが起こるかもしれません」

警備員たちに緊張が走った。



テロリストか?



誰もが思っただろう。

人数が増えてきた。

8人くらいの警備員が、王を取り囲むように移動しだした。

王は別に気にするでもなく話を続ける。

「とにかく、総理大臣とお話がしたい」



やや威圧感のある、それでいて落ち着きのある一人の警備員が答えた。

「総理はお休み中です。また朝、出直されたらいいでしょう」

「・・・それでは遅いかもしれません」

王はそういうと、警備員は警戒レベルを引き上げたようだ。

こんな真夜中にコスプレの格好。

いきなり総理に面会したいという。



まともじゃない!!!



だが、その身のこなしというか動きが何か不自然さを感じさせるのだ。

うまく言葉にできないが、『品格』を感じる。

見た目は不審者なのだが、とてもならず者とは思えない。

確かに王と言われれば、なるほどと思ってしまう、そんな感じだ。



「・・何か、テロに関する情報を持っているのかね」

落ち着きのある警備員は聞いてみた。

??

「テロ・・ですか?」

王はオウム返しで言葉を繰り返した。



警備員たちは、いつでも確保できるように距離を測りながら王に近寄って立ち止まった。

王の柔らかい会話が、安心感を与えるよりも危機感を増長したようだ。



「・・・では、危険物を見つけたとか・・そういうことなら警察へ行ってくれるとありがたいのだが・・」

警備員の対応はそれほど間違ってはいないだろう。

刺激して、この場で爆破されても困る。

緊張を与えずに方向をずらして官邸から距離をとらせなければいけない。



しかし、王にとっては一刻を争う事態だと感じている。

「・・・そうですか・・

だが、おそらく・・・

時間がない。

こちらの神がどういったものかはわからぬが、我々の神と融合すると思われるのです・・・」



王としては当たり前のことを言ったのだが、この国では神を口にすれば、すなわち変な人物だと勘違いから入る。

もはやこの時点で、王の望みは叶うことはないだろう。

王は知る由もない。



警備員の共通認識は成立した。



「「「テロリスト関係者で間違いない!!!!!」」」



刺激しないように警察へ引き渡さなければならない。

やや後方で見ていた一人の男が前へ出てきた。

「私はこの警備隊の班長です。

貴殿は総理大臣にお会いしたいということで、いいですか」

王は疑うでもなくうなずいた。

「では、こちらへどうぞ。

ですが、夜も遅いので少しお待ちいただくと思いますが、よろしいですか」

班長は丁寧に対応した。

王もその丁寧な対応に付き従った。



案内された部屋は6畳ほどの詰め所だ。

この国、世界のことなどまるでわからない王にとって、まずは信用することから始めねばならないと、自分に言い聞かせていた。

部屋に案内されて、班長は総理を呼んできますと言って出て行った。

交代するように、ガタイのいい男が2人部屋に入ってきた。

2人とも防弾チョッキを着ている。

王に威圧感を与えないように距離を保ちつつ、席についた。



班長は警察にすぐさま連絡を入れた。



詰め所ではお茶が出てきた。

王は遠慮なくお茶を飲ませてもらった。

「・・おいしいですな。少し苦みがあるが、飲みやすい。それに温まります」

そういってゆっくりと飲んでいた。



2人の警備員のどちらとでもないが、王に対して話を投げかけてきた。

「あなたはアニ・・、何でしたっけ。その国王様なのですか」

王はゆっくりとした動作でお茶を置き、その者に向き直って話し出した。

「ええ、そうです。アニム王国、国王です」

そうしゃべるだけで、その高貴な感じを受け取る2人。

とてもテロリストとは思えない。

根拠はないが、決して悪い人ではない。

そう感じさせる何かがあった。

しかし、命令だ。

警察官達が来るまで刺激せずに対応しなければならない。



「国王様は、何をなさりに来られたのですか」

ガタイのよい警備員は、最初は警戒していたがすぐにその緊張感は解けた。

王のお茶を飲む所作、会話、すべてに品位を感じずにはいられなかった。

言葉ではない。

その動きが語っていたのだ。



王はゆっくりと一呼吸して、目線をやや下斜め方向へと落とした。

「・・何から話して良いものやら・・おそらくはこの国の人には信じてはもらえまい」

そういって2人の警備員をゆっくりと見渡す。

警備員は背筋をシャキンと伸ばしてしまった。

相手に対して意識してではなく、身体が勝手に反応してしまうのだ。



「これを見てもらおう」

そういうと、王は左の手のひらを上にして、胸の前に出した。

手のひらに火が発現した。



!!!!!



2人同時に椅子を蹴り、その場で立ち上がった。

警備員2人は言葉を発することができない。



その火は水の玉に変わり、次にはバチバチと放電する。

水の固まりが消えたかと思うと、強い風が起こり2人の警備員は壁際まで押されていた。

何が起こったからわかるはずもない。

ただ、背中を壁に押し当てて立ち尽くしていた。



王は軽く微笑むと優しくいった。

「・・これは魔法というものです。

魔素を使いイメージでコントロールするのです」

王は、お茶を飲んだ場所、椅子から少しも動いてはいない。

2人のガタイのよい警備員は動けないでいる。



「・・あなたたちの世界文明では理解できないかもしれない。

先ほど、ここへ来るまでに街を見させてもらいましたが、どこにも魔素を含んだものはなかった。

逆に魔素はそこら中に多くあふれていた」

王は独り言のように言った。

「・・あなたたちは、私が変な者にみえるのでしょうな」

2人はまだ動いていない。



王は軽く微笑むと、続ける。

「・・・それはいいのです。ただ、今私が使った魔法。

これは魔素を利用して行う技術です。

そして、これが使えるということは、私の世界の神がこの世界で存在するということです。

もしかしたら、この世界の神と融合したのかもしれない。

そうすれば、今までの理が変わってしまう。

大変なことが起こってくるでしょう。

それを伝えたかったのですが・・・

ダメなようでしたね」

王は独白するように言った。



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