転生の剣(登場人物のフィギュア画像7枚あり)

北之 元

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第11話  予兆 

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「……健太、健太、けーんた」 

 自分の名前を呼ぶ声で健太が目をさますと、そこにはひとりの若い女性が立っていた。
――摩耶である。いかめしい軍服姿ではなく、斬魂刀も提げていない。ボーダーのTシャツにデニムのショートパンツ、足にはスニーカーといった、ごく気がるな服装である。

「お待たせ」

「おまたせって、ここ、どこ?」

「やだ、寝ぼけてるの」 

 健太はベンチの上でうたた寝をしていたようだった。鳥のさえずりに森の匂い、頬をなでる温かな微風が心地よい。どこまでも澄みきった快晴の青空と、緑豊かな木々と、……そして遠くから聞こえてくるのは、

(波の音だ)

  彼はベンチから立ち上がった。

 ここは島の高台だった。見おろすと周囲にはコバルトブルーの大海原おおうなばらがひろがり、砂浜の白とのあざやかな対比を成していた。

――健太は、摩耶とふたりで◯◯島の観光に訪れていたのだった。

 きょうは「絶景スポットめぐり」ということでガイドマップとGPSを頼りに歩いていたのだが、目的地に到着した時に、摩耶がその少しさきにあるという洞窟を見たいと言い出したのである。健太も興味はあったが、予想外の強行軍でヘトヘトに疲れきっていたので、行くのは遠慮して待っていることにした。摩耶は旅行中知りあった夫婦の観光客とともに洞窟見物へ出かけ、ベンチに腰を下ろした健太はそのまま眠ってしまったらしい。

――摩耶は、その口調も態度も、知りあった当時の彼女にもどっていた。

(なんてことだ、あれはぜんぶ夢だったのか)

 健太は腕時計を見る。ベンチに座りこんでから一時間ほどが経過していた。

 高台には石碑が建てられていた。ここはかつての激戦地であり、おおくの将兵が戦死している。そのための供養塔であった。

 摩耶が言う、「むかし、この島が戦場だったのは健太も知ってるよね。ここに来る途中でも戦車のスクラップなんかあったし……さっき洞窟の中も見てきたけど、ボロボロに錆びたヘルメットとか、飯ごうなんかが、まだそのままになっていたわ」

 健太は何者かに誘われるかのようにフラフラと石碑に歩みよった。

 黒い御影石みかげいしには数多あまたの戦死者の氏名が彫られている。

(これは)

 彼はその中に「敷島十朗」の文字を見つけた。


「――!」

 背後で何か物音がした。

 ふりかえると摩耶が倒れている。
 健太はあわてて駆けよった。
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