心の鍵はここにある

小田恒子

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帰宅 1

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 松山発の飛行機は定刻通りのフライトで、羽田空港に到着した。
 昨日からの気疲れもあり、飛行機の中で少し眠ってしまったけれど、そのおかげで到着した時には頭がスッキリしている。
 そして羽田から公共機関を乗り継いで、ようやく帰宅するも、明日の荷物を纏めて直哉さんの部屋へ向かう事に。

 自分の部屋に入り、取り敢えず洗濯物だけは荷物から取り出して洗濯機の中に放り込む。
 一人分の洗濯なので、いつもはある程度溜まってから洗濯をするのだが、今投入した物で洗濯をしないといけない量になってしまった。
 直哉さんも部屋に戻って片付けをするとの事だったので、私も洗濯をしてから行くと連絡し、洗濯機を回しながらお泊まりの準備を進める。

 下着、どうしよう……。色気のあるセクシーな物なんて、ないんだけど……。
 下着を収納している引き出しを開けて、しばし悩む。
 ……こう言う時って、それだけの為に下着を用意するものなの?
 特にショーツなんて、濡れてしまったら次の日に履くなんて嫌だしなぁ。
 かと言って、おりものシート貼り付けておくなんて出来ないし……。
 念の為、2セット用意した。『その時』用には私が持っている中で、一番お気に入りの、ラベンダーカラーでレースも沢山使われている物を。
 翌日仕事の時に着用する、服の下に着ても色が透けないベージュの可愛くない物と。
 アウターに響かない様に、汗取り用のキャミソールとストッキング、通勤用の服にそれから……。

 用意していると、松山に帰省した以上の荷物になって行く。
 でも、どうせ近々引っ越しするなら持って行ける物は持って行こうかな。
 向かいのマンションだから、業者さんに頼まなくてもある程度は自分で運べそうだ。
 家電製品は、今日直哉さんの部屋の中をチェックして、要らない物はリサイクルショップに引き取って貰えばいいか。
 そんな事を考えながら、荷作りをして行く。
 洗濯機の洗濯終了を知らせるアラームが鳴るまで、部屋に掃除機をかけたり窓ガラスを拭いたりと、掃除に励んでいたら、スマホからメッセージ受信のアラームが鳴った。

『夕飯、コンビニ弁当で悪いけど用意してます』

 夕飯を作ってと言われていたのに、わざわざお弁当を用意してくれた直哉さんの気遣いに感謝の言葉を返信すると、またすぐに返信が届く。

『早くおいで』

 洗濯物を干してから行くと返信して、掃除道具を片付けた。
 玄関に荷物を運び終えると、脱水が終わり洗濯終了のアラームが聞こえたので、洗面所へ向かい、洗濯物を取り出した。
 窓際の陽の当たる場所のカーテンレールに、洗い終えた洋服を掛けたハンガーを引っ掛けて、つっかえ棒を棚と壁の間に渡している所に、ハンガーに引っ掛けたタオルや下着を干した。
 洗濯かごを洗面所に戻すと、荷物を持って部屋を後にした。

 ……いよいよだ。
 緊張して、表情が強張っているのは自覚している。どうか、直哉さんに嫌われませんように……。
 深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、直哉さんの待つ向かいのマンションへ向かった。
 オートロックのマンションなので、直哉さんから部屋番号と暗証番号を教えて貰い、それを入力してマンション内に入った。
 エントランスの奥にあるエレベーターに乗って、直哉さんの部屋のある7階ボタンを押す。
 エレベーターが動いている間に改めて深呼吸をする。ドキドキが止まらない。

 こんな状態で、私は大丈夫なのかな。女の子の初めてって、凄く痛いって聞くし。
 行為自体も、AVなんて観た事もないし、テレビドラマや映画を観る程度の知識しかない。
 どうすればいいかなんてわからないし、ましてや上手く出来る自信なんてない。
 どうしよう……。
 不安なまま、エレベーターは七階に到着した。

 直哉さんの部屋は七〇三号、エレベーターを降りて一番奥だ。
 ドアの前に立ち、もう一度だけ深呼吸して覚悟を決めると、インターフォンを押した。
 中から直哉さんの声と足音が聞こえ、ドアがすぐに開かれた。

「下のオートロック、無事に解除出来た?」

 直哉さんの問いに、頷く私。

「ちゃんと自分で解除出来たよ。あと、お弁当ありがとう。晩ごはん作る約束だったのにごめんね。
 明日の朝ごはんは食材あるの? ないなら、荷物置いて買いに行ってくるよ?」

 照れ隠しで、少し饒舌になる。
 そんな私の事をお見通しな直哉さんは、優しい笑顔で迎え入れてくれる。
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