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お見舞い 1
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翌朝目覚めると、直哉さんの腕の中だった。
ギュッと抱き締められた状態で、私が動くと起こしてしまいそうだ。
目の前に、直哉さんの喉仏が見える。顔だけをそっと動かすと、寝顔が見えた。
睫毛、思っていたよりも長いなぁ。眠っていてもイケメンさんなんて、羨ましい。
過去の事を気にしてはいけないのは分かっているけれど、直哉さんの寝顔を見た人って、何人くらいいるのだろう……。
無意識のうちに、わたしの右手が直哉さんの頬を撫でていた。
私の動きで、直哉さんの瞼がピクピクっと動き、ゆっくりと切れ長の瞳が開いた。
「……おはよう」
「……おはようございます」
「……里美、また敬語に戻ってる」
「え? ……あ、ごめん」
「いいよ、ゆっくりで。それよりも、昨夜眠れた?」
「うん。ありがとう。……緊張して眠れないかと思ったけど、疲れてたからかな。爆睡してたかも」
「うん、寝落ちは早かったな。俺より先に寝息が聞こえた。……里美が腕の中にいると、安眠出来るな」
「ホントに……? 寝返りとか出来ないし、しんどくない?」
「抱き枕的存在?」
イタズラっ子の表情だ。
「目が覚めて、里美が腕の中にいるのがこんなに幸せな事なんだって知ったから、これから毎日こうして目覚めたいな」
直哉さんの視線が熱を帯びている。私の身体を抱いていた左手が私の頬に回り、直哉さんの唇が私の唇に落ちてきた。
キスされただけで、蕩けてしまう。角度を変えてキスが深くなるにつれ、何だか私の身体に異変が起こる。
胸がキュッと締め付けられて、身体の芯が、下腹部が疼いていく……。今までに感じた事のない感覚だった。
やだ、私、どうしたんだろう。
もっと触れて欲しい……。本能で感じている。キスだけでこんなになるなんて……。
身体が密着した状態で、私の下半身に、直哉さんの熱い塊を感じる。
思わず今以上に身体を密着させて、直哉さんを感じたい。
私の動きに、直哉さんは驚いて一瞬腰を引いたけと、私はそれを無視した。
すると口の中で、直哉さんの舌が私の舌を絡め取る。私の頬に添えられていた掌は、私の後頭部をしっかりと掴み、動くに動けない。直哉さんのキスと愛撫に蕩けさせられてしまう。
いつしか頭を支えていた手は、私の胸まで下がって来て、優しく揉み解している。
「……あっ……ぅん……、あ……、なお、……んっ……」
いつの間にか、私の口からは淫らな声が出ていた。
直哉さんは熱を帯びた瞳のまま、私の耳元で囁く。
「里美……、ヤバい。そんな可愛い声を聞いたら最後までしたくなる」
直哉さんの下半身も自己主張をしているのが伝わるだけに、何と返事をすればいいのかわからないけれど……。
このまま最後までしたい……。私の本能が直哉さんに訴えている。
「今日、お見舞い終わって、向こうに帰ったら、里美をちょうだい」
直哉さんの言葉に頷いて応えると、最後にチュッとリップ音を立てて私の首筋にキスを落とし、私の身体を離した。
「夕方までのお預けなら、我慢する。さっ、そろそろ起きて準備するぞ」
私の腕を引っ張って身体を起こしてくれると、直哉さんは先にシャワーを浴びると浴室へ向かって行った。
交代でシャワーを済ませると、朝食バイキングを食べにホテル内のレストランへと向かった。
夏バテ予防でしっかりと朝食を食べようと思うのに、何だか胸がいっぱいで食欲が湧かない。
直哉さんも、社会人になってから朝は余り食べないらしく、コーヒーとフルーツを少し食べる程度だったので、朝食はすぐに終わった。
部屋に戻り荷物を纏め、少し休憩して9時少し前にチェックアウトすると、タクシー乗り場のあるJR松山駅前まで歩いて行く。
市電やバスもあるけれど、この暑さに荷物もあるし、病院まではタクシーを使って、帰りはバスを利用するつもりだった。
駅前のロータリーにはタクシーが常駐しているのでそのうちの一台に乗り込むと、行き先を告げて病院へと向かった。
「で、おじいさんは何で入院してるんだ?」
私がお見舞い兼お土産の、羽田で買った焼き菓子詰め合わせを荷物から取り出している時に質問された。
「母のメールでは、雨どいの掃除をしてる時に梯子から落ちて足を骨折したみたい。
で、ずっとベッドの上だから体力も落ちるし気落ちしちゃったとか……。
それで見合い話になるって無茶苦茶でしょう? 意味わかんない」
本当に意味がわからない。気弱になったおじいちゃんなんて、想像すらつかないのに。
「でも、変な相手ではないのは確かだろうな。おじいさんの知り合いなんだろう……。
俺、認めて貰わなきゃ困るなぁ」
珍しく弱気な発言をする直哉さんに、私はそっと手を添えた。
視線が合うと、微笑んでこう言った。
「おじいちゃんが選んだ相手が誰だろうと、私は、直哉さんじゃないと嫌だから。
今日はしっかりと断った上で、きちんと紹介して認めて貰うから。
だから、直哉さんはいつもの直哉さんでいて」
私の言葉に瞠目した直哉さんは少し固まっていたけれど、そうだなと呟いて私の手を握った。
そうこうしているうちにタクシーは渋滞もなく進み、無事に病院に到達した。
ギュッと抱き締められた状態で、私が動くと起こしてしまいそうだ。
目の前に、直哉さんの喉仏が見える。顔だけをそっと動かすと、寝顔が見えた。
睫毛、思っていたよりも長いなぁ。眠っていてもイケメンさんなんて、羨ましい。
過去の事を気にしてはいけないのは分かっているけれど、直哉さんの寝顔を見た人って、何人くらいいるのだろう……。
無意識のうちに、わたしの右手が直哉さんの頬を撫でていた。
私の動きで、直哉さんの瞼がピクピクっと動き、ゆっくりと切れ長の瞳が開いた。
「……おはよう」
「……おはようございます」
「……里美、また敬語に戻ってる」
「え? ……あ、ごめん」
「いいよ、ゆっくりで。それよりも、昨夜眠れた?」
「うん。ありがとう。……緊張して眠れないかと思ったけど、疲れてたからかな。爆睡してたかも」
「うん、寝落ちは早かったな。俺より先に寝息が聞こえた。……里美が腕の中にいると、安眠出来るな」
「ホントに……? 寝返りとか出来ないし、しんどくない?」
「抱き枕的存在?」
イタズラっ子の表情だ。
「目が覚めて、里美が腕の中にいるのがこんなに幸せな事なんだって知ったから、これから毎日こうして目覚めたいな」
直哉さんの視線が熱を帯びている。私の身体を抱いていた左手が私の頬に回り、直哉さんの唇が私の唇に落ちてきた。
キスされただけで、蕩けてしまう。角度を変えてキスが深くなるにつれ、何だか私の身体に異変が起こる。
胸がキュッと締め付けられて、身体の芯が、下腹部が疼いていく……。今までに感じた事のない感覚だった。
やだ、私、どうしたんだろう。
もっと触れて欲しい……。本能で感じている。キスだけでこんなになるなんて……。
身体が密着した状態で、私の下半身に、直哉さんの熱い塊を感じる。
思わず今以上に身体を密着させて、直哉さんを感じたい。
私の動きに、直哉さんは驚いて一瞬腰を引いたけと、私はそれを無視した。
すると口の中で、直哉さんの舌が私の舌を絡め取る。私の頬に添えられていた掌は、私の後頭部をしっかりと掴み、動くに動けない。直哉さんのキスと愛撫に蕩けさせられてしまう。
いつしか頭を支えていた手は、私の胸まで下がって来て、優しく揉み解している。
「……あっ……ぅん……、あ……、なお、……んっ……」
いつの間にか、私の口からは淫らな声が出ていた。
直哉さんは熱を帯びた瞳のまま、私の耳元で囁く。
「里美……、ヤバい。そんな可愛い声を聞いたら最後までしたくなる」
直哉さんの下半身も自己主張をしているのが伝わるだけに、何と返事をすればいいのかわからないけれど……。
このまま最後までしたい……。私の本能が直哉さんに訴えている。
「今日、お見舞い終わって、向こうに帰ったら、里美をちょうだい」
直哉さんの言葉に頷いて応えると、最後にチュッとリップ音を立てて私の首筋にキスを落とし、私の身体を離した。
「夕方までのお預けなら、我慢する。さっ、そろそろ起きて準備するぞ」
私の腕を引っ張って身体を起こしてくれると、直哉さんは先にシャワーを浴びると浴室へ向かって行った。
交代でシャワーを済ませると、朝食バイキングを食べにホテル内のレストランへと向かった。
夏バテ予防でしっかりと朝食を食べようと思うのに、何だか胸がいっぱいで食欲が湧かない。
直哉さんも、社会人になってから朝は余り食べないらしく、コーヒーとフルーツを少し食べる程度だったので、朝食はすぐに終わった。
部屋に戻り荷物を纏め、少し休憩して9時少し前にチェックアウトすると、タクシー乗り場のあるJR松山駅前まで歩いて行く。
市電やバスもあるけれど、この暑さに荷物もあるし、病院まではタクシーを使って、帰りはバスを利用するつもりだった。
駅前のロータリーにはタクシーが常駐しているのでそのうちの一台に乗り込むと、行き先を告げて病院へと向かった。
「で、おじいさんは何で入院してるんだ?」
私がお見舞い兼お土産の、羽田で買った焼き菓子詰め合わせを荷物から取り出している時に質問された。
「母のメールでは、雨どいの掃除をしてる時に梯子から落ちて足を骨折したみたい。
で、ずっとベッドの上だから体力も落ちるし気落ちしちゃったとか……。
それで見合い話になるって無茶苦茶でしょう? 意味わかんない」
本当に意味がわからない。気弱になったおじいちゃんなんて、想像すらつかないのに。
「でも、変な相手ではないのは確かだろうな。おじいさんの知り合いなんだろう……。
俺、認めて貰わなきゃ困るなぁ」
珍しく弱気な発言をする直哉さんに、私はそっと手を添えた。
視線が合うと、微笑んでこう言った。
「おじいちゃんが選んだ相手が誰だろうと、私は、直哉さんじゃないと嫌だから。
今日はしっかりと断った上で、きちんと紹介して認めて貰うから。
だから、直哉さんはいつもの直哉さんでいて」
私の言葉に瞠目した直哉さんは少し固まっていたけれど、そうだなと呟いて私の手を握った。
そうこうしているうちにタクシーは渋滞もなく進み、無事に病院に到達した。
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