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心に鍵をかけた日 1
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あの日から三ヶ月。
とりあえず、お付き合いの振りは順調だ。今のところ、誰も怪しむ人はいないと思う。
最初のうちは見世物パンダ状態で、教室にいても体育館にいても、不躾な視線を投げかけられる日々だったけれど、直先輩と彩奈先輩のおかげで何とかやり過ごす事が出来た。
当初懸念されていた嫌がらせも、最初の直先輩の牽制のおかげで未然に防がれていた。
私達の通う高校は、土足のまま教室に上がるため、昇降口に靴箱がない。
おかげで上履きや靴が隠されると言う嫌がらせはなかったけれど、ロッカーに入れない荷物が隠されそうになった事が一度あった。
犯人は二年のマネージャー達で、現場を目撃した他の二年の先輩達が彩奈先輩に報告し、直先輩の耳に入り……。
たまに女子のマネージャーに、男子の方の準備の手伝いを依頼していた事も断絶して事実上、彼女達を孤立させてしまった。
男子の先輩方も直先輩を支持した為、二年のマネージャー三人は退部する騒ぎにまでなったけれど、退部して目の届かない場所での嫌がらせを懸念した先輩が、三人に念書を書かせていた。
さつきが噂で聞いた話によると、次回こんな事があった場合、いじめとみなして学校と市の教育委員会に通報すると言う文言があったと言う。
因みにその念書の文面は彩奈先輩も一緒に考えて作成したとか……。
改めて、私は先輩達に守られている事を痛感した。
有言実行、恐るべし。
六月の高校総体も無事に終わり、結局男子バレー部は二回戦で敗退し、三年生は部活を引退した。
私はと言うと、結局そのまま男子バレー部のマネージャーを続けている。
直先輩が退部したから私も、となると、やはりまた風当たりが強くなりそうだったのもあるけれど、一生懸命頑張っている部員のサポートをする事にやり甲斐を感じていたのも事実だ。
直先輩の彼女と言う肩書きは、当初はみんなに色眼鏡で見られるので正直やり辛かったけれど、きちんとマネージャーの仕事に専念していたのと、直先輩も部活中は公私をきちんと分けてくれていたので、今ではマネージャーと認めて貰えた様だ。
頑張って認めて貰えたマネージャー業だけれども、ネット張りとネットの片付けだけは、部員さんにお願いしている。
何故なら私の身長が百五十五センチしかなくて、踏み台や脚立がないと、何も出来ないからだ。
そこはみんな理解してくれ、ネットに関しては何も言われないけれど、ボール拾いやコートに落ちる汗の拭き取り、ドリンクの準備は率先して取り組んでいる。
女子バレー部のマネージャーも、あの三人が退部してからはさつきが引き受ける事になり、さつきと色々協力して一緒の時間が過ごせる様になって一石二鳥だ。
そして数日前から夏休みに入って、部活三昧の日々を過ごしている。
三年生は引退したものの、やはり急に部活に出なくなると身体が鈍ると言い、たまに練習に顔を出して下級生の面倒を見てくれていた。
受験勉強も、そろそろ本腰を入れなきゃまずいのではないかと思うけど、息抜きも大事だと先輩達は笑っている。
きっとまだ余裕があるのだろう、何とも羨ましい事だ。
直先輩が引退してからは、先輩に補習があったり下校時間も合わなくて、別々に帰宅する日もあったけど、曜日を合わせて一緒に帰宅して、お付き合いは順調だとアピールしていた。
そして今日は、久しぶりに直先輩と彩奈先輩も部活に参加していた。
部員の練習中に、部員の水分補給の為に学校の冷蔵庫で朝一番に作っていた麦茶を取りに、家庭科室へと向かった。
本日練習に参加している男女合わせて部員十八名が飲む量のお茶だから、重さも量も半端じゃないので、さつきと二人で家庭科室へと向かう途中……。
体育館裏に、直先輩と彩奈先輩がコソコソと移動して行くのを目撃した。
さつきが最初に二人を発見した。
「ねえ、何であんなにコソコソしてるのかな? 気になるから後をつけてみようよ」
好奇心旺盛なさつきの瞳はキラキラしている。
直先輩と彩奈先輩は従兄妹同士だし、別に一緒にいておかしくないと思うけれど、何だか私は聞いてはいけない事じゃないかと言う直感が働いた。
「やめとこうよ、従兄妹同士で何か話があるのかもだし」
私が軽く諌めると、さつきは反発した。
「でも、あれはどう見ても怪しいよ? 人目を避ける様にしてたじゃない。
里美は直先輩の彼女でしょ? ほら、行くよ!」
さつきは強引に私の腕を引き、体育館裏へと足音を忍ばせて向かった。
さつきが先陣を切って体育館裏の物陰に隠れると、私を手招きした。
先輩達の通った通路の逆側から回り込み、ちょうどそこには掃除道具を入れる倉庫があり、その影に隠れると、こちら側が風下だったみたいで、声が聞こえて来た。
私達は顔を見合わせて頷いた。
お互い物音を立てない様に気をつけながらしゃがみ込む。
そして、二人で聞き耳を立てる。
「……だな。あいつら、その後はどうだ?
まだ里美に嫌がらせとか仕掛けたりしてないか?」
直先輩の声だ。
私の心配をしていると言う事は、退部した二年生マネージャー三人の話だろうか。
とりあえず、お付き合いの振りは順調だ。今のところ、誰も怪しむ人はいないと思う。
最初のうちは見世物パンダ状態で、教室にいても体育館にいても、不躾な視線を投げかけられる日々だったけれど、直先輩と彩奈先輩のおかげで何とかやり過ごす事が出来た。
当初懸念されていた嫌がらせも、最初の直先輩の牽制のおかげで未然に防がれていた。
私達の通う高校は、土足のまま教室に上がるため、昇降口に靴箱がない。
おかげで上履きや靴が隠されると言う嫌がらせはなかったけれど、ロッカーに入れない荷物が隠されそうになった事が一度あった。
犯人は二年のマネージャー達で、現場を目撃した他の二年の先輩達が彩奈先輩に報告し、直先輩の耳に入り……。
たまに女子のマネージャーに、男子の方の準備の手伝いを依頼していた事も断絶して事実上、彼女達を孤立させてしまった。
男子の先輩方も直先輩を支持した為、二年のマネージャー三人は退部する騒ぎにまでなったけれど、退部して目の届かない場所での嫌がらせを懸念した先輩が、三人に念書を書かせていた。
さつきが噂で聞いた話によると、次回こんな事があった場合、いじめとみなして学校と市の教育委員会に通報すると言う文言があったと言う。
因みにその念書の文面は彩奈先輩も一緒に考えて作成したとか……。
改めて、私は先輩達に守られている事を痛感した。
有言実行、恐るべし。
六月の高校総体も無事に終わり、結局男子バレー部は二回戦で敗退し、三年生は部活を引退した。
私はと言うと、結局そのまま男子バレー部のマネージャーを続けている。
直先輩が退部したから私も、となると、やはりまた風当たりが強くなりそうだったのもあるけれど、一生懸命頑張っている部員のサポートをする事にやり甲斐を感じていたのも事実だ。
直先輩の彼女と言う肩書きは、当初はみんなに色眼鏡で見られるので正直やり辛かったけれど、きちんとマネージャーの仕事に専念していたのと、直先輩も部活中は公私をきちんと分けてくれていたので、今ではマネージャーと認めて貰えた様だ。
頑張って認めて貰えたマネージャー業だけれども、ネット張りとネットの片付けだけは、部員さんにお願いしている。
何故なら私の身長が百五十五センチしかなくて、踏み台や脚立がないと、何も出来ないからだ。
そこはみんな理解してくれ、ネットに関しては何も言われないけれど、ボール拾いやコートに落ちる汗の拭き取り、ドリンクの準備は率先して取り組んでいる。
女子バレー部のマネージャーも、あの三人が退部してからはさつきが引き受ける事になり、さつきと色々協力して一緒の時間が過ごせる様になって一石二鳥だ。
そして数日前から夏休みに入って、部活三昧の日々を過ごしている。
三年生は引退したものの、やはり急に部活に出なくなると身体が鈍ると言い、たまに練習に顔を出して下級生の面倒を見てくれていた。
受験勉強も、そろそろ本腰を入れなきゃまずいのではないかと思うけど、息抜きも大事だと先輩達は笑っている。
きっとまだ余裕があるのだろう、何とも羨ましい事だ。
直先輩が引退してからは、先輩に補習があったり下校時間も合わなくて、別々に帰宅する日もあったけど、曜日を合わせて一緒に帰宅して、お付き合いは順調だとアピールしていた。
そして今日は、久しぶりに直先輩と彩奈先輩も部活に参加していた。
部員の練習中に、部員の水分補給の為に学校の冷蔵庫で朝一番に作っていた麦茶を取りに、家庭科室へと向かった。
本日練習に参加している男女合わせて部員十八名が飲む量のお茶だから、重さも量も半端じゃないので、さつきと二人で家庭科室へと向かう途中……。
体育館裏に、直先輩と彩奈先輩がコソコソと移動して行くのを目撃した。
さつきが最初に二人を発見した。
「ねえ、何であんなにコソコソしてるのかな? 気になるから後をつけてみようよ」
好奇心旺盛なさつきの瞳はキラキラしている。
直先輩と彩奈先輩は従兄妹同士だし、別に一緒にいておかしくないと思うけれど、何だか私は聞いてはいけない事じゃないかと言う直感が働いた。
「やめとこうよ、従兄妹同士で何か話があるのかもだし」
私が軽く諌めると、さつきは反発した。
「でも、あれはどう見ても怪しいよ? 人目を避ける様にしてたじゃない。
里美は直先輩の彼女でしょ? ほら、行くよ!」
さつきは強引に私の腕を引き、体育館裏へと足音を忍ばせて向かった。
さつきが先陣を切って体育館裏の物陰に隠れると、私を手招きした。
先輩達の通った通路の逆側から回り込み、ちょうどそこには掃除道具を入れる倉庫があり、その影に隠れると、こちら側が風下だったみたいで、声が聞こえて来た。
私達は顔を見合わせて頷いた。
お互い物音を立てない様に気をつけながらしゃがみ込む。
そして、二人で聞き耳を立てる。
「……だな。あいつら、その後はどうだ?
まだ里美に嫌がらせとか仕掛けたりしてないか?」
直先輩の声だ。
私の心配をしていると言う事は、退部した二年生マネージャー三人の話だろうか。
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