55 / 87
史那編
切ない想い ーside理玖ー 1
しおりを挟む
藤岡先生はそう言うと、テキパキと点滴の準備を始めた。
点滴を吊るすバーは嵩張るからと、カーテンレールにハンガーを吊るし、そこに点滴の入ったパウチされた容器をセットし、史那の腕に点滴の針を刺した。
お腹が冷えると余計に体調を崩すかも知れないと、文香叔母さんは史那のお腹に薄手の肌布団を掛けると、みんな揃って部屋を後にした。
藤岡先生も、点滴が終わるまではここにいると言ってくれ、約二時間、この機会に俺は藤岡先生に俺の勉強を見て貰っていた。
文香叔母さんは事後報告で雅人叔父さんに連絡を取っており、傍に藤岡先生がいることを知らせると、一安心していた。でもスマホから聞こえた雅人叔父さんの焦った声は、普段の冷静さが欠けており、なんだか人情溢れる人間らしく思えた。
藤岡先生の解説はとても解りやすい。でも、史那の様子が気になって集中出来ないのは見抜かれていたようだ。
「史那ちゃんは多分まだ起きてこないよ」
藤岡先生の言葉に、返す言葉がなかった。
その後史那の点滴も終わり、藤岡先生は点滴を片付けると解熱剤を置いて帰って行った。
先生が帰った後、文香叔母さんは果穂を抱っこしてこう言った。
「果穂をお昼寝させたいんだけど、史那が目覚めるまでついてやっててくれないかしら。史那が目覚めたら教えてね」
見ると果穂は眠そうに瞼をこすっていた。この時間に昼寝をさせると夜眠れなくなるんじゃないだろうか。
「お昼寝の間に夕飯の準備をしたいのよ。果穂は少しの間ソファーで休ませるからお願いね」
叔母さんはそう言って果穂をリビングのソファーに寝かせると、果穂を寝かせようと頭をそっと撫でた。
俺はその様子を見ていたけれど、果穂もうとうとし始めたので、そっとリビングから離れた。
史那の部屋のドアをノックせず、そっとドアを開けて中の様子を窺ってみたけれど、まだ史那は眠ったままだ。
俺は史那の顔を覗き込んだ。点滴を打つ前の苦しそうな表情から一転して、今は穏やかな表情で眠っている。
先ほど先生が史那の腕に点滴を打ったその右腕は、注射後の脱脂綿が医療用テープで固定されている。
触れることのできる距離に史那はいるのに、本人の意識がない。
本当に目覚めるのだろうか……
俺はそんな不安に苛まれ、思わず史那を起こしたい衝動に駆られるけれど、病人相手にそんな鬼畜な真似はできないと己を律した。
史那の寝顔を見つめながら、幼い頃の面影を探している自分がいる。
兄妹のように一緒に過ごしていたあの頃みたいに、俺も史那に対して素直になりたい。そうすれば……
俺はそっと史那の頬を撫でた。
汗で髪の毛が張り付いている。
風呂上がりでアップにしていた髪の毛も、ベッドに寝かせる時、クリップを外して机の上に置いていた。
いつもは髪の毛を耳の下辺りで二つに分けて括っている、ツインテールという髪型だから、髪の毛を下ろしている史那は滅多に見ることがない。
その顔をこの目に焼き付けるかのように見つめていると、史那が小さく唸り声を上げた。
気がついたのだろうか、俺は史那の顔を覗き込んだ。
すると顔を何度もしかめながら、ようやく史那がその瞼を開いた。
良かった……俺は安堵して思わずホッと息が出た。
「私、どうして……なにが、どうなってるの?」
史那は目覚めたばかりでまだ混乱しているようだ。
俺は史那の問いに答えた。
いつもと違い、自分でも驚くくらい口調が穏やかだった。
きっと史那も内心驚いているに違いない。
「史那、軽い熱中症にかかってたんだよ。ダイニングで倒れた拍子に少し頭を打って、叔母さんが藤岡先生を呼んだんだ。
体調はどうだ?
脳しんとうを起こしてたみたいだから、今日はもう大人しく寝てろよ。脱水起こしてたから、点滴も打ってるから」
俺の言葉に、史那は右腕に視線を落とした。注射後の痛みも感じているはずだ。
「倒れてから三時間は寝てたから、もしかしたら今晩眠れないかも知れないな」
再び俺が口を開くと、史那は身体を起こそうとするので、俺はそれを手助けする。
先ほど抱き上げた時にも思ったが、史那の体型がいつの間にか少女から女性へと変わりつつあることを意識せざるを得ない。
ただ、余りにも細すぎる。もう少し肉付きが良くなると抱き心地がよさそうだ。
そんな邪な気持ちを悟られたくなくて、俺は無理矢理話題を変えた。
「叔母さんに、史那が目覚めたことを知らせてくるよ。
果穂が枕元で騒がしくして史那がゆっくり休めないだろうって言ってリビングにいるから。なにか欲しいものある?」
きっと史那はまだしっかりと頭が働いていない。
ぼんやりとした眼差しで俺を見つめている。
点滴のおかげで脱水状態からは脱したものの、とろんとした目つきや赤い顔色といい、まだ熱が下がっていないのかも知れない。
もし史那があの頃のように、俺のことを欲してくれるなら……
俺は、史那が欲しい。
そう言えたなら……でもこの状況下でそんなこと言えるわけがない。
「理玖……」
これは俺を望んでいる声ではない。単なる呼びかけだ、期待してはいけない。
「ん? なんだ? 水でも飲むか?」
点滴を吊るすバーは嵩張るからと、カーテンレールにハンガーを吊るし、そこに点滴の入ったパウチされた容器をセットし、史那の腕に点滴の針を刺した。
お腹が冷えると余計に体調を崩すかも知れないと、文香叔母さんは史那のお腹に薄手の肌布団を掛けると、みんな揃って部屋を後にした。
藤岡先生も、点滴が終わるまではここにいると言ってくれ、約二時間、この機会に俺は藤岡先生に俺の勉強を見て貰っていた。
文香叔母さんは事後報告で雅人叔父さんに連絡を取っており、傍に藤岡先生がいることを知らせると、一安心していた。でもスマホから聞こえた雅人叔父さんの焦った声は、普段の冷静さが欠けており、なんだか人情溢れる人間らしく思えた。
藤岡先生の解説はとても解りやすい。でも、史那の様子が気になって集中出来ないのは見抜かれていたようだ。
「史那ちゃんは多分まだ起きてこないよ」
藤岡先生の言葉に、返す言葉がなかった。
その後史那の点滴も終わり、藤岡先生は点滴を片付けると解熱剤を置いて帰って行った。
先生が帰った後、文香叔母さんは果穂を抱っこしてこう言った。
「果穂をお昼寝させたいんだけど、史那が目覚めるまでついてやっててくれないかしら。史那が目覚めたら教えてね」
見ると果穂は眠そうに瞼をこすっていた。この時間に昼寝をさせると夜眠れなくなるんじゃないだろうか。
「お昼寝の間に夕飯の準備をしたいのよ。果穂は少しの間ソファーで休ませるからお願いね」
叔母さんはそう言って果穂をリビングのソファーに寝かせると、果穂を寝かせようと頭をそっと撫でた。
俺はその様子を見ていたけれど、果穂もうとうとし始めたので、そっとリビングから離れた。
史那の部屋のドアをノックせず、そっとドアを開けて中の様子を窺ってみたけれど、まだ史那は眠ったままだ。
俺は史那の顔を覗き込んだ。点滴を打つ前の苦しそうな表情から一転して、今は穏やかな表情で眠っている。
先ほど先生が史那の腕に点滴を打ったその右腕は、注射後の脱脂綿が医療用テープで固定されている。
触れることのできる距離に史那はいるのに、本人の意識がない。
本当に目覚めるのだろうか……
俺はそんな不安に苛まれ、思わず史那を起こしたい衝動に駆られるけれど、病人相手にそんな鬼畜な真似はできないと己を律した。
史那の寝顔を見つめながら、幼い頃の面影を探している自分がいる。
兄妹のように一緒に過ごしていたあの頃みたいに、俺も史那に対して素直になりたい。そうすれば……
俺はそっと史那の頬を撫でた。
汗で髪の毛が張り付いている。
風呂上がりでアップにしていた髪の毛も、ベッドに寝かせる時、クリップを外して机の上に置いていた。
いつもは髪の毛を耳の下辺りで二つに分けて括っている、ツインテールという髪型だから、髪の毛を下ろしている史那は滅多に見ることがない。
その顔をこの目に焼き付けるかのように見つめていると、史那が小さく唸り声を上げた。
気がついたのだろうか、俺は史那の顔を覗き込んだ。
すると顔を何度もしかめながら、ようやく史那がその瞼を開いた。
良かった……俺は安堵して思わずホッと息が出た。
「私、どうして……なにが、どうなってるの?」
史那は目覚めたばかりでまだ混乱しているようだ。
俺は史那の問いに答えた。
いつもと違い、自分でも驚くくらい口調が穏やかだった。
きっと史那も内心驚いているに違いない。
「史那、軽い熱中症にかかってたんだよ。ダイニングで倒れた拍子に少し頭を打って、叔母さんが藤岡先生を呼んだんだ。
体調はどうだ?
脳しんとうを起こしてたみたいだから、今日はもう大人しく寝てろよ。脱水起こしてたから、点滴も打ってるから」
俺の言葉に、史那は右腕に視線を落とした。注射後の痛みも感じているはずだ。
「倒れてから三時間は寝てたから、もしかしたら今晩眠れないかも知れないな」
再び俺が口を開くと、史那は身体を起こそうとするので、俺はそれを手助けする。
先ほど抱き上げた時にも思ったが、史那の体型がいつの間にか少女から女性へと変わりつつあることを意識せざるを得ない。
ただ、余りにも細すぎる。もう少し肉付きが良くなると抱き心地がよさそうだ。
そんな邪な気持ちを悟られたくなくて、俺は無理矢理話題を変えた。
「叔母さんに、史那が目覚めたことを知らせてくるよ。
果穂が枕元で騒がしくして史那がゆっくり休めないだろうって言ってリビングにいるから。なにか欲しいものある?」
きっと史那はまだしっかりと頭が働いていない。
ぼんやりとした眼差しで俺を見つめている。
点滴のおかげで脱水状態からは脱したものの、とろんとした目つきや赤い顔色といい、まだ熱が下がっていないのかも知れない。
もし史那があの頃のように、俺のことを欲してくれるなら……
俺は、史那が欲しい。
そう言えたなら……でもこの状況下でそんなこと言えるわけがない。
「理玖……」
これは俺を望んでいる声ではない。単なる呼びかけだ、期待してはいけない。
「ん? なんだ? 水でも飲むか?」
0
お気に入りに追加
436
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。