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史那編
中学三年、家庭教師 2
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エレベーターが最上階の到着を知らせる音を鳴らす。
考えごとをしていてぼんやりとしていた私は、その音で我に返った。
エレベーターの扉が開き、最上階のフロアに足を踏み入れた。この階は、我が家ともう一家族が使用している。
確か両親と歳の近いご夫婦が住んでいるけれど、お子さんがいないらしく、ほとんど交流はない。
それにご夫婦も忙しい人らしく、なかなか顔を合わせる機会に恵まれない。
だから私はどんな人たちが住んでいるのかよく知らない。
自宅前のドアのインターフォンを押すと、母が応答した。
「お帰りなさい……って、史那、どうしたの? 顔が真っ赤よ?」
玄関に出迎えてくれた母が、私の顔を見て驚いている。
確かにいつもの私と全然違う。
全身汗だくになって顔も真っ赤になっているのだから、びっくりするのも当然だ。
「うん、ちょっと走ったら汗かいちゃって……
明日は補習もないから制服、洗濯機に入れていい? それとすぐにシャワー浴びたいんだけど、まだ時間大丈夫?」
玄関の三和土で靴を脱ぐと、荷物を部屋に運んだ。私の背後から母の声が聞こえる。
「そうね、それだけ汗かいていたら気持ち悪いわよね。一度お風呂で汗を流してさっぱりして来なさい。
ご飯は出たら食べるでしょう? 用意しておくから。
制服は、ポケットの中きちんと確認してから洗濯機の中に入れてね。
あ、そうだ。良かったら、果穂も一緒に入れてやってくれる? 寝汗が凄かったのよ」
母の言葉に素直に返事した。
「分かった。果穂ー、お姉ちゃんと一緒にお風呂入ろう?」
私は自分の部屋から着替えを取り出し、リビングにいると思われる果穂へ声をかけると、そのままパウダールームに向かった。
制服を脱いで下着も脱ぎ、裸になった。正面には洗面台があり、大きな三面鏡がある。
鏡に映った十四歳の私は、まだまだ成長途中だ。
それこそ身長は百六十五センチあるものの、まだ身体に女性らしい厚みや丸みもない。
けれど、ほんの少しだけ胸の膨らみが気になり始め、中学校に進学してからスポーツブラを使い始めたけれど、色気もへったくれもない。どう転んだって、理玖の周りにいるような、綺麗な女の子や可愛い女の子たちには敵わないのは十分承知している。
生理は小学六年生の夏休みに始まり、まだ周期は不規則ながらも、何となく体調でそろそろかな? と予測ができるようになった。
ちょうど最近、そのそろそろを感じさせる身体の不調を感じている。
洗濯機に脱いだ衣服を入れると、そのまま風呂場へと向かった。
夏だから、さすがに浴槽にお湯を張ることはしない。
シャワーで顔を洗い流した。頭を洗ったりしている時に果穂が入ってくると中途半端になってしまうので、とりあえずは果穂が来るまでに日焼け止めと汗を洗い流すことにした。
洗顔クリームを洗顔ネットに出して泡立てていると、パウダールームで物音が聞こえる。
どうやら果穂が母に連れられてやってきたのだろう。
少しして勢いよく風呂場の扉が開くと、その流れで果穂がやって来た。
「お姉ちゃん、おまたせぇ」
裸ん坊の幼児は可愛いの一言に尽きる。
すべすべの肌にポッコリお腹の幼児体型、母に似た顔立ち、萌え要素だらけだ。
年齢の離れた妹がこんなにもかわいいなんて思わなかった。
小さい頃は、年齢の近い妹か弟が欲しくてたまらなかった。
理玖に蒼良がいるように、愛由美ちゃんに加恋ちゃんという二歳年下の妹がいるように、私にも妹か弟が欲しくて両親にお願いしたこともあった。
この時私は知らなかったけれど、父は病気の後遺症で、子供ができにくい体質になっていた。
ずっと私には内緒で不妊治療を続けていたらしく、母も年齢的にも身体の負担が大きくて、最後のチャンスで授かったのが果穂だった。
だから果穂は、本当に私たちの宝物で、かわいい天使だ。
ただ甘やかすだけでなくきちんとした人間に成長して欲しいから、ダメな所はきちんと注意するけれど、基本的にはみんなの愛情を一身に受けているから、素直で優しい子に育っている。
これだけ年齢も離れているから基本的に喧嘩することもなく、私も大概怒ることなく、『小さなお母さん』的な存在だと自負している。
こうやって母の代わりをすることがあるたびに、色々と果穂も母と私を比較しながらその時にして欲しいことを教えてくれる。
「よし、じゃあ頭からお湯かけるよ?」
私は果穂に声を掛けて、シャワーを果穂の頭にかけた。
果穂はキャアキャア言いながらも暴れる事なく、おとなしくしている。
髪の毛と全身を綺麗に洗ってやり、髪の毛の水分をざっと拭き取ると、浴室のボタンを押して母を呼ぶ。
後は母にお願いして、私は自分の身体を洗った。
考えごとをしていてぼんやりとしていた私は、その音で我に返った。
エレベーターの扉が開き、最上階のフロアに足を踏み入れた。この階は、我が家ともう一家族が使用している。
確か両親と歳の近いご夫婦が住んでいるけれど、お子さんがいないらしく、ほとんど交流はない。
それにご夫婦も忙しい人らしく、なかなか顔を合わせる機会に恵まれない。
だから私はどんな人たちが住んでいるのかよく知らない。
自宅前のドアのインターフォンを押すと、母が応答した。
「お帰りなさい……って、史那、どうしたの? 顔が真っ赤よ?」
玄関に出迎えてくれた母が、私の顔を見て驚いている。
確かにいつもの私と全然違う。
全身汗だくになって顔も真っ赤になっているのだから、びっくりするのも当然だ。
「うん、ちょっと走ったら汗かいちゃって……
明日は補習もないから制服、洗濯機に入れていい? それとすぐにシャワー浴びたいんだけど、まだ時間大丈夫?」
玄関の三和土で靴を脱ぐと、荷物を部屋に運んだ。私の背後から母の声が聞こえる。
「そうね、それだけ汗かいていたら気持ち悪いわよね。一度お風呂で汗を流してさっぱりして来なさい。
ご飯は出たら食べるでしょう? 用意しておくから。
制服は、ポケットの中きちんと確認してから洗濯機の中に入れてね。
あ、そうだ。良かったら、果穂も一緒に入れてやってくれる? 寝汗が凄かったのよ」
母の言葉に素直に返事した。
「分かった。果穂ー、お姉ちゃんと一緒にお風呂入ろう?」
私は自分の部屋から着替えを取り出し、リビングにいると思われる果穂へ声をかけると、そのままパウダールームに向かった。
制服を脱いで下着も脱ぎ、裸になった。正面には洗面台があり、大きな三面鏡がある。
鏡に映った十四歳の私は、まだまだ成長途中だ。
それこそ身長は百六十五センチあるものの、まだ身体に女性らしい厚みや丸みもない。
けれど、ほんの少しだけ胸の膨らみが気になり始め、中学校に進学してからスポーツブラを使い始めたけれど、色気もへったくれもない。どう転んだって、理玖の周りにいるような、綺麗な女の子や可愛い女の子たちには敵わないのは十分承知している。
生理は小学六年生の夏休みに始まり、まだ周期は不規則ながらも、何となく体調でそろそろかな? と予測ができるようになった。
ちょうど最近、そのそろそろを感じさせる身体の不調を感じている。
洗濯機に脱いだ衣服を入れると、そのまま風呂場へと向かった。
夏だから、さすがに浴槽にお湯を張ることはしない。
シャワーで顔を洗い流した。頭を洗ったりしている時に果穂が入ってくると中途半端になってしまうので、とりあえずは果穂が来るまでに日焼け止めと汗を洗い流すことにした。
洗顔クリームを洗顔ネットに出して泡立てていると、パウダールームで物音が聞こえる。
どうやら果穂が母に連れられてやってきたのだろう。
少しして勢いよく風呂場の扉が開くと、その流れで果穂がやって来た。
「お姉ちゃん、おまたせぇ」
裸ん坊の幼児は可愛いの一言に尽きる。
すべすべの肌にポッコリお腹の幼児体型、母に似た顔立ち、萌え要素だらけだ。
年齢の離れた妹がこんなにもかわいいなんて思わなかった。
小さい頃は、年齢の近い妹か弟が欲しくてたまらなかった。
理玖に蒼良がいるように、愛由美ちゃんに加恋ちゃんという二歳年下の妹がいるように、私にも妹か弟が欲しくて両親にお願いしたこともあった。
この時私は知らなかったけれど、父は病気の後遺症で、子供ができにくい体質になっていた。
ずっと私には内緒で不妊治療を続けていたらしく、母も年齢的にも身体の負担が大きくて、最後のチャンスで授かったのが果穂だった。
だから果穂は、本当に私たちの宝物で、かわいい天使だ。
ただ甘やかすだけでなくきちんとした人間に成長して欲しいから、ダメな所はきちんと注意するけれど、基本的にはみんなの愛情を一身に受けているから、素直で優しい子に育っている。
これだけ年齢も離れているから基本的に喧嘩することもなく、私も大概怒ることなく、『小さなお母さん』的な存在だと自負している。
こうやって母の代わりをすることがあるたびに、色々と果穂も母と私を比較しながらその時にして欲しいことを教えてくれる。
「よし、じゃあ頭からお湯かけるよ?」
私は果穂に声を掛けて、シャワーを果穂の頭にかけた。
果穂はキャアキャア言いながらも暴れる事なく、おとなしくしている。
髪の毛と全身を綺麗に洗ってやり、髪の毛の水分をざっと拭き取ると、浴室のボタンを押して母を呼ぶ。
後は母にお願いして、私は自分の身体を洗った。
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