翠も甘いも噛み分けて

小田恒子

文字の大きさ
上 下
18 / 20

あの日の約束 6*

しおりを挟む
 翠が震えるような小さな声で尋ねながら自分の手を動かすと、幸成の頬に触れた。その瞬間、幸成の身体が大きく揺れた。翠の触れた部分が途端に熱く感じた。逆光になっているから顔色は分からないけれど表情は見える。いつもみたいに翠を揶揄う余裕のある表情ではない。切なげに眉を寄せ、その瞳は熱を帯びている。それは初めて見るものだった。

「当たり前だろう? ずっと好きだった子を抱くんだ。めちゃくちゃにしないようにって思う反面で、思いきり抱き潰したいって思いとずっと葛藤してるんだから、これ以上煽らないで」

 再びキスで唇を塞がれた。先ほどのように深いキスだ。口の中まで犯されているかのように舌が侵入してくるけれど、それは決して不快なものではなく、むしろ中毒性のあるものだ。もっと、もっと……と、互いに求め合う、こんなキスがあるなんて知らなかった。
 いつの間にか足から力が抜け落ちて、固く閉じられていた太腿が幸成の手によって割られると、太腿に触れていた手が翠の秘めたる場所に触れた。

「……!! んんっ……!!」

 皮に隠れている肉芽を指で刺激され、翠の身体は大きく跳ねた。キスで口を塞がれているから、鼻から抜けるその声は、翠自身が今まで聞いたことのない艶のあるものだった。その声に翠自身が驚いて、余計に身体が跳ねあがる。

「めちゃくちゃエロいよ、今の声。もっと聞かせて……」

 幸成は唇を離すと、顎から首筋、胸元へとキスを徐々にずらしていく。それと同時に愛撫する手も緩めない。翠は必死で幸成から与えられる快楽から逃れようと身体を捩ったりしても、幸成がそれを許さない。しっかりと腰を掴まれて動きを封じられると、翠は観念したのか幸成にされるがままだ。幸成の手の動きに、舌使いに翻弄されて、いつしか理性を手放していた。

 幸成が翠の大切な部分にそっとキスをすると、もっと触れてくれという風に腰をくねらせる。いつの間にか花びら奥に隠れていた芯が顔を出している。幸成はそこを丁寧に舐め上げると蜜穴から甘い蜜が溢れ出た。幸成は芯を刺激しながらそっとその穴に指を挿し入れると、翠が声をあげた。

「んっ……」

 先ほどまでと違う反応に、幸成は不安を覚えた。もしかして痛かっただろうか。それとも不快だったのか。幸成は愛撫の手を止めて翠に確認をした。

「もしかして痛かった?」
「ちがっ……、あの、びっくりして……」

 翠の返事に安堵した幸成は、再び翠の大切な場所へと愛撫を始めた。

「辛かったらちゃんと言えよ」

 大切な場所に口をつけながら言葉を発するものだから、普通ならくすぐったく感じるはずなのに、その振動はくすぐったさとはまた違う感覚だった。それこそ全身が性感帯になった気分だ。
 翠は無言で頷くと、再び幸成の指と舌が動き始めた。
 蜜穴に挿し入れられた指の感覚にようやく慣れてきた頃に、指を増やされた。花芽を舐めていたはずの幸成は身体を起こし、空いた手で花芽をクニクニと刺激しながら蜜壺をかき混ぜる。蜜が溢れてぴちゃぴちゃと淫猥な水音を立てている。

 どれくらい時間が経っただろう。幸成によって解された下半身はいよいよその時を迎えた。
 幸成は事前に用意していた避妊具を取り出すと、その封を切り、器用にその屹立に装着していく。部屋の中は、翠の蜜の匂いと避妊具のゴムの匂いが混ざり合い、なんだか生々しい。けれど、そんなことなど全然気にならないくらいにその時を待っていたのは翠だけではない。幸成もまた、この時をずっと夢見ていた。

 入口を解したとはいえ、そこは未開の場所だけに奥は狭くて幸成がゆっくりと分け入っていくたびに、翠は痛みで顔を歪めている。けれど翠は、決して痛いと弱音を吐かなかった。そして最奥まで繋がった時、翠は瞳から涙がこぼれ落ちた。痛みを必死に堪える翠に、幸成はそれまで以上の愛しさを覚え、気がつけば翠に覆い被さり、繋がったまま深く唇を重ねていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

鳴宮鶉子
恋愛
Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

クリスマスに咲くバラ

篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。

幼馴染以上恋人未満 〜お試し交際始めてみました〜

鳴宮鶉子
恋愛
婚約破棄され傷心してる理愛の前に現れたハイスペックな幼馴染。『俺とお試し交際してみないか?』

社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"

桜井 響華
恋愛
派遣受付嬢をしている胡桃沢 和奏は、副社長専属秘書である相良 大貴に一目惚れをして勢い余って告白してしまうが、冷たくあしらわれる。諦めモードで日々過ごしていたが、チャンス到来───!?

Re_Love 〜婚約破棄した元彼と〜

鳴宮鶉子
恋愛
Re_Love 〜婚約破棄した元彼と〜

同居人以上恋人未満〜そんな2人にコウノトリがやってきた!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
小学生の頃からの腐れ縁のあいつと共同生活をしてるわたし。恋人当然の付き合いをしていたからコウノトリが間違えて来ちゃった!

結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。 絶対に離婚届に判なんて押さないからな」 既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。 まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。 紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転! 純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。 離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。 それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。 このままでは紘希の弱点になる。 わかっているけれど……。 瑞木純華 みずきすみか 28 イベントデザイン部係長 姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点 おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち 後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない 恋に関しては夢見がち × 矢崎紘希 やざきひろき 28 営業部課長 一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長 サバサバした爽やかくん 実体は押しが強くて粘着質 秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

処理中です...