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約束のスイーツ三昧 1
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披露宴も滞りなく終了し、二次会に流れていく友人たちを尻目に、私は荷物を手に会場を後にした。高橋くんは二次会に行く人たちの中に紛れている。
自宅に戻り部屋着に着替えると、バッグの中からスマホを取り出した。待受画面にメッセージ受信通知が表示されている。一件だけではない。複数件の通知だ。私はベッドに腰を下ろすと、スマホのロックを解除してSNSを開いた。
メッセージは、今日の披露宴に参列していた友人と高橋くんからのものだった。
友人からのメッセージを開くと、今日の挙式披露宴の画像とともに、挙式後私と高橋くんが話をしている時の画像が送られていた。
新郎新婦は高校時代の先輩後輩で、新婦は話の友達だった。新郎は高橋くんの幼馴染という関係性で披露宴に招待されたのだという。友人に画像のお礼を伝えると、高橋くんからのメッセージを開いた。
『明日、仕事終わったら連絡よろしく』
絵文字も顔文字もスタンプもない、シンプルな内容に思わず拍子抜けしたけれど、私は思わず高橋くんらしいと思い、了解のスタンプを押す。スマホの画面を閉じるとスマホを枕元に置き、ベッドに横たわった。
翌日、仕事が終わった私は、高橋くんと交わした約束通りメッセージを送った。すぐに既読マークがつき、その数秒後にOKのスタンプが表示される。私はそれを確認すると、高橋くんのお店へと向かった。
VERDEは私の職場の最寄駅近くにあり、到着までそんなに時間はかからない。
お店近くに月極駐車場もあり、遠方からやってくるお客さんも少なくはない。お店はまだ営業時間中だから、少し時間をずらして行った方がいいかと連絡すると、気にしなくていいからすぐに来てと返信があった。私は戸惑いつつも、その言葉通りにお店へと向かった。
高橋くんのお店の外壁は、落ち着いた緑色で、まるで宝石の翡翠を思い浮かばせる。周辺のビルに囲まれて、まるで都会の中のオアシスのようだ。高橋くんも、開業時に取材を受けた地元の経済誌のインタビューで、このようなことを答えていたと、以前友人から送られてきたSNSのメッセージにその時の記事が添付されていた。
VERDEのドアを開くと、正面に置かれた大きなショーケースが嫌でも目に入る。店内の壁紙は、外壁とは違ってアイボリーで、どんな陳列にも調和する。壁面のニッチには、女子受けのいい、かわいらしいプリザーブドフラワーやハーバリウムが飾られてある。
壁に掛けられている絵画は、二羽の鳥が描かれている。どうやら番だろうか、店舗の外装のような羽根の色が人目を惹いた。
店内は、焼き菓子特有の甘い匂いに包まれている。学生時代、時々高橋くんから漂う香りと同じで懐かしい思い出が脳裏をよぎった。
ショーケースの後ろ側に立つ元気のいい売り子さんが、笑顔を振りまいている。年齢は多分、私たちより上だろうか、左手の薬指に指輪が見える。恐らく販売のほうで雇っているパート従業員だろう。奥の作業場では、真剣な表情を浮かべた高橋くんが、ケーキの飾りつけをしている最中だった。
昨日のスーツ姿とはまた違い、今日は仕事着であるコックコートと呼ばれる料理人が着用する白い服を着用している。こうしてみると、改めて高橋くんがパティシエなんだと実感させられる。
「いらっしゃいませ、今日はお持ち帰りでしょうか?」
「いえ、あの……」
店員さんとのやり取りに高橋くんが気づいたようだ。飾りつけの手を止めると、カウンターへと出てきた。
「おう、思ったよりも早かったな。もうすぐ閉店だから、ちょっと待ってて。……あ、彼女は俺が呼んだんだ、客じゃないから」
高橋くんは私と店員さんに声を掛けると、店員さんも事前に話を聞かされていたのか納得したようだ。こちらでお待ちくださいとイートインスペースに通された。
もうすぐ店の閉店時間だ。ショーケースの中のケーキはすでに完売状態で綺麗になくなっている。焼き菓子も店の陳列棚には売り切れのプレートが掲げられて、ほぼ在庫もない状態だ。さすが人気パティシエのお店だけある。
自宅に戻り部屋着に着替えると、バッグの中からスマホを取り出した。待受画面にメッセージ受信通知が表示されている。一件だけではない。複数件の通知だ。私はベッドに腰を下ろすと、スマホのロックを解除してSNSを開いた。
メッセージは、今日の披露宴に参列していた友人と高橋くんからのものだった。
友人からのメッセージを開くと、今日の挙式披露宴の画像とともに、挙式後私と高橋くんが話をしている時の画像が送られていた。
新郎新婦は高校時代の先輩後輩で、新婦は話の友達だった。新郎は高橋くんの幼馴染という関係性で披露宴に招待されたのだという。友人に画像のお礼を伝えると、高橋くんからのメッセージを開いた。
『明日、仕事終わったら連絡よろしく』
絵文字も顔文字もスタンプもない、シンプルな内容に思わず拍子抜けしたけれど、私は思わず高橋くんらしいと思い、了解のスタンプを押す。スマホの画面を閉じるとスマホを枕元に置き、ベッドに横たわった。
翌日、仕事が終わった私は、高橋くんと交わした約束通りメッセージを送った。すぐに既読マークがつき、その数秒後にOKのスタンプが表示される。私はそれを確認すると、高橋くんのお店へと向かった。
VERDEは私の職場の最寄駅近くにあり、到着までそんなに時間はかからない。
お店近くに月極駐車場もあり、遠方からやってくるお客さんも少なくはない。お店はまだ営業時間中だから、少し時間をずらして行った方がいいかと連絡すると、気にしなくていいからすぐに来てと返信があった。私は戸惑いつつも、その言葉通りにお店へと向かった。
高橋くんのお店の外壁は、落ち着いた緑色で、まるで宝石の翡翠を思い浮かばせる。周辺のビルに囲まれて、まるで都会の中のオアシスのようだ。高橋くんも、開業時に取材を受けた地元の経済誌のインタビューで、このようなことを答えていたと、以前友人から送られてきたSNSのメッセージにその時の記事が添付されていた。
VERDEのドアを開くと、正面に置かれた大きなショーケースが嫌でも目に入る。店内の壁紙は、外壁とは違ってアイボリーで、どんな陳列にも調和する。壁面のニッチには、女子受けのいい、かわいらしいプリザーブドフラワーやハーバリウムが飾られてある。
壁に掛けられている絵画は、二羽の鳥が描かれている。どうやら番だろうか、店舗の外装のような羽根の色が人目を惹いた。
店内は、焼き菓子特有の甘い匂いに包まれている。学生時代、時々高橋くんから漂う香りと同じで懐かしい思い出が脳裏をよぎった。
ショーケースの後ろ側に立つ元気のいい売り子さんが、笑顔を振りまいている。年齢は多分、私たちより上だろうか、左手の薬指に指輪が見える。恐らく販売のほうで雇っているパート従業員だろう。奥の作業場では、真剣な表情を浮かべた高橋くんが、ケーキの飾りつけをしている最中だった。
昨日のスーツ姿とはまた違い、今日は仕事着であるコックコートと呼ばれる料理人が着用する白い服を着用している。こうしてみると、改めて高橋くんがパティシエなんだと実感させられる。
「いらっしゃいませ、今日はお持ち帰りでしょうか?」
「いえ、あの……」
店員さんとのやり取りに高橋くんが気づいたようだ。飾りつけの手を止めると、カウンターへと出てきた。
「おう、思ったよりも早かったな。もうすぐ閉店だから、ちょっと待ってて。……あ、彼女は俺が呼んだんだ、客じゃないから」
高橋くんは私と店員さんに声を掛けると、店員さんも事前に話を聞かされていたのか納得したようだ。こちらでお待ちくださいとイートインスペースに通された。
もうすぐ店の閉店時間だ。ショーケースの中のケーキはすでに完売状態で綺麗になくなっている。焼き菓子も店の陳列棚には売り切れのプレートが掲げられて、ほぼ在庫もない状態だ。さすが人気パティシエのお店だけある。
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