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第三章

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 私は理解が追いつかない。

 一体これはどういうこと……?
 新手の嫌がらせにしては、瑠璃まで巻き込んで、かなり手の込んだ悪質なものだ。

 私の様子を窺いながら、瑠璃が再び口を開く。

「ねえ、もしかしてなんだけど……、玲央から何も聞いてない?」

「『何も』って、何? 私、昔からあの人に嫌われているのに。社会人になる前までまともに会話すらしたことないし、今は同じ会社だから業務上会話はあるけど、それ以外で会話することなんてないよ。それよりこれ何? 新手の嫌がらせ?」

 私の返答を聞いて、瑠璃は頭を抱えている。
 二日酔いがひどいのだろうか。私は薬を探そうと立ち上がった。棚の引き出しの中に、購入している市販薬をまとめて入れているので、その中から胃薬と頭痛薬を取り出した。期限もまだ大丈夫だったので、それを瑠璃の前にそっと置くと、瑠璃は「そうじゃない」と、首を横に振る。

「あのバカ……、真冬の気持ち、全く確かめてないじゃないか……!」

 瑠璃はそう言うと、スマホの通話ボタンを押した。相手はもちろん玲央だ。

 瑠璃の剣幕に押しやられ、私は口を開く隙も与えられないでいる。瑠璃は黙って玲央が通話ボタンを押すのを待っている。
 どうやら回線が繋がったようだ。玲央が口を開く隙を与えることなく、瑠璃はマシンガンのように言葉を捲し立てた。

「もしもし、玲央! ちょっとあんた、今すぐ真冬の家に来なさい、用事があってもこっちを最優先にしなさい。そうじゃないならもう私はあんたと縁を切るわよ! そこからなら三十分もかからないはずでしょう? 三十分以内に到着しなかったら、その時はもう真冬とも縁を切らせるからね! わかった?」

 瑠璃は一方的にそう言って通話を強制終了すると、スマホの電源を落とした。
 瑠璃は呆気に取られている私に向かって、口を開く。

「ほら、三十分以内に玲央がここに来るよ。真冬はそんな格好でいいの?」

 そう言って、私に着替えるよう指示をする。

 外出するわけではないので、部屋着から少しはマシな部屋着へと着替ていたけれど、きちんとした格好に着替えろと促されたので、渋々普段着に着替えた。

 そして今度は化粧をするよう促された。
 化粧も、外出するわけではないのでガッツリとはせず、簡単なものだ。
 やる気のない私に、瑠璃は盛大な溜め息を吐くけれど、そんなの知ったことではない。

 なぜここに玲央を呼んだのか、その理由を聞いても「本人から聞きなさい」の一点張りだ。

 私は諦めて、お湯を沸かすためにキッチンへと向かった。
 玲央が来るなら、瑠璃もいることだしお茶くらいは出さないといけないだろう。

 お湯を沸かしている時に、インターホンが鳴る。玄関に向かったのは、もちろん瑠璃だ。
 玄関先で二人が何やら口論しているけれど、その内容までは聞き取れない。口論というよりも、瑠璃が玲央へ対して一方的に何か言っているようだ。

 そして、二人がリビングに入ってくると、瑠璃は自分の荷物を持って、部屋を出ようとしているのでわたしはその腕を掴んだ。

「ちょっと瑠璃!? 何で帰ろうとするのよ」

 私が必死になって引き止めるも、瑠璃はニヤリと笑うのみ。

「あなたたちは圧倒的に言葉が足りていない。きちんと話し合いなさい。それから玲央、今度こそ真冬を泣かせたら承知しないわよ」

 そう言って、瑠璃は部屋を後にした。

 何のことかわからない私は、この場に立ち尽くしている。瑠璃に呼び出された玲央も、また然り。
 玄関のドアが閉まる音がして、玲央が玄関へと向かった。一緒に出て行くのかと思いきや、何と玲央は施錠をして戻って来た。

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