同窓会~あの日の恋をもう一度~

小田恒子

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その後

Dolce notte 2

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 そして迎えた三月十四日。この日は朝から小雪がぱらつく寒い日となった。
 三月の雪も、ごく当たり前の事の様に捉えられる様になって来たのは、近年の異常気象によるところが大きい。
 今年の十四日は木曜日に当たるので、金曜日に有給休暇を貰うと三連休になる。
 滅多に有給休暇を使わない私が休みを申請したので、職場では何があるのか、何処かへ行くのかと色々と詮索されたものの、みんな気持ちよく休みを取らせてくれたのでありがたく思う。

 前もって今日の食事の買い出しを済ませていたので、今日は帰宅したらそれを調理するだけだ。と言っても、今日は冷え込みが厳しいので、急遽鍋をする事にした。調理する時間が取れない場合も想定して、カレーも作れるように材料は揃えていたので、カレー鍋を作る予定だ。
 今日が確定申告の締め切り前日と言う事もあり、大抵の企業さんや個人事業主さんからは前もって必要書類を揃えて貰っていたおかげもありそこまで忙しくはなかった。天気も悪いし、今日はそこまで残業をしなくても早く帰れそうだ。
 その旨をお昼休みに悠太くんにメールで伝えると、悠太くんも満面の笑みのスタンプで返信してくれた。
 きっと昼休みで職員室にいても、勤務時間中だし周りの目があるから簡単にスマホが触れない環境下にあるのだろう。それでもこうして連絡をくれるのが悠太くんらしい。

 私はスマホをバッグの中に片付けると、午後からの業務に取り掛かった。


 就業時間は朝八時から夕方の五時までの休憩時間を除き八時間。でも定時で上がれた試しはない。いつもだと一時間オーバーで事務所を出ているけれど、今日は十八時半に仕事が終わった。確定申告の時期はいつもだと二十時を回っているだけに、久しぶりのこの時間帯に帰宅できるのが本当に嬉しい。
 他の事務員さん達も同じくらいの時間に仕事が終わったので、私一人が特別という訳ではない事にホッとしつつ、急いで帰り支度を整えて事務所を後にした。

 帰宅してすぐに部屋の暖房を入れると、室内を少し片付けて事務服から普段着に着替えた。
 外出する訳ではないので、そこまできちんとした格好ではないけれど、やっぱりそれなりに見られたいと思う女心位は私にだってある。ニットのざっくりとしたワンピースの下にレギンスを穿いて体型隠しをする事も忘れない。
 でも、今日は……。

 全てを曝け出す事を事前に伝えているだけに、身体のお手入れも事前に頑張った。
 ダイエットまではいかないけれど、今日まで少し食事にも気を遣っていたし、スキンケアだって手を抜かずに頑張った。少しでも綺麗だと思って貰いたい。そう思って努力するだけでも会えない時間を有効活用出来て楽しかった。

 着替えを済ませると、私はキッチンに向かい、夕飯の下拵えを始めた。
 カセットコンロをこたつのテーブルに用意して少し大きめな両手鍋を出すと、材料を切り大皿の上に盛って行く。お肉もどの位食べるか分からないから少し多めに買っていたのを、鍋用と焼肉用で取り分けた。
 悠太くんが来たらすぐに食べられる様に、鍋の中にスープを入れてキッチンで先にした準備をして鍋に火をかけた。締めの麺は、市販の生のうどんを冷蔵庫の中に常備しているのでそれを使う。本当なら冷凍のうどんの方が麺にコシがあるけれど、きっと満腹中枢も刺激されている状態でコシのあるうどんを食べたら本当にお腹いっぱいになってしまうだろう。

 イイ感じで鍋に火が通った頃、玄関のインターフォンが鳴った。
 モニター画面で悠太くんの姿を確認すると、私は玄関のドアを開けた。

 仕事帰りの悠太くんはスーツ姿だ。この前のバレンタインの時は一度帰宅して着替えて来ていたのでスーツ姿は新鮮だ。

「お仕事お疲れ様、寒かったでしょう? どうぞ入って」

 何だか照れが入ってまともに悠太くんの姿を直視出来なくて、思わず早口でまくし立てる様に部屋の中へ招き入れた。悠太くんも、手には着替えの入った袋を持っている。『お泊りする』と言う事が、益々現実味を帯びて緊張してしまう。

 悠太くんも緊張の面持ちで中に入ると、荷物を置くとコートを脱いだので私はそれを預かるとハンガーにかけた。
 荷物もある事だし車で来たのだろう、そこまでコートの表面は冷たく感じなかった。

「車で来たんだよね? 駐車場大丈夫だった?」

 悠太くんに手を洗って貰う様に促しながら、緊張している事を悟られない様に私は口を開いた。
 このアパートは一部屋に一台分の駐車場代も家賃に含まれているので、来客があればそこに車を停めて貰う事にしている。無断駐車を予防する為にいつもはコーンを立てているけれど、今日は撤去している。
 私自身が車を運転しないから分からないけれど、悠太くんの車が大きいので、きちんと駐車場に車を停める事が出来たのか気になっていた。

「うん、大丈夫。結構ここの駐車場は間隔が広いから停めやすかった」

 洗面所から出て来た悠太くんは、スーツから普段着に着替えると言うので、私は着替えが終わる間キッチンで鍋の準備を進めた。

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