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その後
バレンタインデート 3
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着信音は、スマホの当初の設定のままにしているので全く可愛げのない普通のメロディーだ。
由美や職場の人達は、音楽配信サイトから自分が気に入っているアーティストの曲や流行りの曲をダウンロードして着信音に設定しているけれど、私はそこまでしようとは思わなかった。
日中は仕事で電話を取る事もないし、かかって来るのは田舎に居る両親や妹、職場関係者だけだし使用頻度が少ないせいだ。
私はスマホをバッグから取り出して通話画面に切り替えた。
「もしもし」
『もしもし、今下にいるんだけど、準備出来たら下りてきて』
「うん、今から出るね」
会話にしたら本当に短いものだ。
通話を終わらせると、私はスマホをバッグの中に入れ、チョコを入れた紙袋を一緒に掴むと部屋の電気を消して部屋を出た。玄関の鍵をかけてアパートの外階段を下りて行くと、車の外で坂本が待っていた。
先程は頬を突き刺すほど寒さで凍えていたのに、坂本がここにいると思っただけでその刺す痛みを感じないのは、私の顔が火照っている証拠だろう。外が暗くて良かったと思う。きっと赤面した私の顔に坂本も気付いているかも知れないけれど、そこは坂本も大人の対応でスルーしてくれている。
「迎えに来てくれてありがとう」
坂本も私に気付くと手を振ってくれた。
運転席からわざわざ助手席側に回ると、助手席のドアを開けてくれる。何処までもスマートな立ち居振る舞いに私は恐縮してしまう。
「こちらこそ、疲れてるのに時間作ってくれてありがとう」
私如きがイケメンにこんな事をさせてしまっていいのだろうか。きっと傍から見れば彼氏に何させているんだと非難されてもおかしくないだろう。ここでふと、自然に『彼氏』と言う立場にいる坂本の事を自然に受け入れられる様になった自分に驚きを隠せない。
つい一ヶ月半前までは存在すら認めたくない位に恨んでいた坂本が、自分の事を好きだと言ってくれた事、それを受け入れた事、そして自分もそんな坂本に惹かれていた事……。
坂本にエスコートされて私は車の助手席に乗り込んだ。
私が座席に座った事を確認すると、坂本は静かに車のドアを閉めて運転席へと戻って来た。
坂本が乗っている車は、この前乗せて貰った時の物と同じで七人乗りのワンボックスカーだ。後部は三列シートになっているので部活動で他校と交流試合がある時は、この車に生徒達を乗せているのかも知れない。
「この前も思ったんだけど、この車、大きいね」
会話の切り口としては、きっと無難だろう。
仕事の話でも良かったかも知れないけれど、まずは目に付いたもの、気になった事を口にしてみた。
私の言葉に坂本が反応を示す。
「うん、車を買う時に大きいの選んだんだ。
部活動で生徒を乗せたりするし、遠出する時って大きい車の方が楽だからね」
嬉しそうに話をする坂本を見て、きっと運転が好きなんだと思った。
私は免許こそ持っているものの、それこそ身分証明書代わりとしか活用が出来ていない状態のペーパードライバーだから、こうやって運転をしている坂本を尊敬する。
車がないと不便な田舎在住だけど、行動範囲が狭いだけに不便だとは特に感じる事はなかった。
けれど、これからこうやって出掛ける機会が増えるのなら、私も運転が出来る方がいいのかも知れない。
車こそ持っていないけれど、遠出する機会があるのなら、運転も交代で出来れば坂本にも負担はかからない筈だ。
でもそれを今ここで口には出来ないので、もう少し付き合いも深くなってから相談してみようかな。
車はビジネス街を抜けて郊外へと向かっている様だ。
恐らくショッピングモールのある商業施設へと向っているのだろう。
時間的にも飲食店で開いているのはその施設内にある複数あるお店のどれかか近所の居酒屋、ファミリーレストランのチェーン店位だろう。
私は坂本の隣で、車窓から外の景色を眺めていた。
車が停車したのは、私の想像通り郊外にあるショッピングモールの駐車場だった。
敷地内にある飲食店の駐車場はショッピングモールと共有で、平日の夜とは言えバレンタインデーだからかそれなりの台数が停車していた。
坂本が案内してくれる店内も、窓越しから見てもカップルで溢れている。こんな時間にやって来て、果たして座席はあるのだろうか。
店のドアを開けると、フロアスタッフがやって来た。
「すみません、予約していた坂本ですが」
坂本がホール担当の男性に声を掛けた。
え、予約してくれていたの? 私は驚いて思わず坂本の横顔を見つめた。
「ようこそいらっしゃいました、坂本様。お待ちいたしておりました。お席へご案内致しますのでこちらへどうぞ」
私は訳が分からなくて、男性店員と坂本の後に続いて座席へと向かった。
一体いつ、予約を入れたのだろう。
ここは地元でも人気のあるお店で、予約なしではなかなか座席の空きがないと聞いている。
このショッピングモールも車を所有していない私はバスでしか来た事がないので、この時間に車でやって来れたことで内心興奮していたのだけど、こんなサプライズがあるなんて思ってもみなかった。
由美や職場の人達は、音楽配信サイトから自分が気に入っているアーティストの曲や流行りの曲をダウンロードして着信音に設定しているけれど、私はそこまでしようとは思わなかった。
日中は仕事で電話を取る事もないし、かかって来るのは田舎に居る両親や妹、職場関係者だけだし使用頻度が少ないせいだ。
私はスマホをバッグから取り出して通話画面に切り替えた。
「もしもし」
『もしもし、今下にいるんだけど、準備出来たら下りてきて』
「うん、今から出るね」
会話にしたら本当に短いものだ。
通話を終わらせると、私はスマホをバッグの中に入れ、チョコを入れた紙袋を一緒に掴むと部屋の電気を消して部屋を出た。玄関の鍵をかけてアパートの外階段を下りて行くと、車の外で坂本が待っていた。
先程は頬を突き刺すほど寒さで凍えていたのに、坂本がここにいると思っただけでその刺す痛みを感じないのは、私の顔が火照っている証拠だろう。外が暗くて良かったと思う。きっと赤面した私の顔に坂本も気付いているかも知れないけれど、そこは坂本も大人の対応でスルーしてくれている。
「迎えに来てくれてありがとう」
坂本も私に気付くと手を振ってくれた。
運転席からわざわざ助手席側に回ると、助手席のドアを開けてくれる。何処までもスマートな立ち居振る舞いに私は恐縮してしまう。
「こちらこそ、疲れてるのに時間作ってくれてありがとう」
私如きがイケメンにこんな事をさせてしまっていいのだろうか。きっと傍から見れば彼氏に何させているんだと非難されてもおかしくないだろう。ここでふと、自然に『彼氏』と言う立場にいる坂本の事を自然に受け入れられる様になった自分に驚きを隠せない。
つい一ヶ月半前までは存在すら認めたくない位に恨んでいた坂本が、自分の事を好きだと言ってくれた事、それを受け入れた事、そして自分もそんな坂本に惹かれていた事……。
坂本にエスコートされて私は車の助手席に乗り込んだ。
私が座席に座った事を確認すると、坂本は静かに車のドアを閉めて運転席へと戻って来た。
坂本が乗っている車は、この前乗せて貰った時の物と同じで七人乗りのワンボックスカーだ。後部は三列シートになっているので部活動で他校と交流試合がある時は、この車に生徒達を乗せているのかも知れない。
「この前も思ったんだけど、この車、大きいね」
会話の切り口としては、きっと無難だろう。
仕事の話でも良かったかも知れないけれど、まずは目に付いたもの、気になった事を口にしてみた。
私の言葉に坂本が反応を示す。
「うん、車を買う時に大きいの選んだんだ。
部活動で生徒を乗せたりするし、遠出する時って大きい車の方が楽だからね」
嬉しそうに話をする坂本を見て、きっと運転が好きなんだと思った。
私は免許こそ持っているものの、それこそ身分証明書代わりとしか活用が出来ていない状態のペーパードライバーだから、こうやって運転をしている坂本を尊敬する。
車がないと不便な田舎在住だけど、行動範囲が狭いだけに不便だとは特に感じる事はなかった。
けれど、これからこうやって出掛ける機会が増えるのなら、私も運転が出来る方がいいのかも知れない。
車こそ持っていないけれど、遠出する機会があるのなら、運転も交代で出来れば坂本にも負担はかからない筈だ。
でもそれを今ここで口には出来ないので、もう少し付き合いも深くなってから相談してみようかな。
車はビジネス街を抜けて郊外へと向かっている様だ。
恐らくショッピングモールのある商業施設へと向っているのだろう。
時間的にも飲食店で開いているのはその施設内にある複数あるお店のどれかか近所の居酒屋、ファミリーレストランのチェーン店位だろう。
私は坂本の隣で、車窓から外の景色を眺めていた。
車が停車したのは、私の想像通り郊外にあるショッピングモールの駐車場だった。
敷地内にある飲食店の駐車場はショッピングモールと共有で、平日の夜とは言えバレンタインデーだからかそれなりの台数が停車していた。
坂本が案内してくれる店内も、窓越しから見てもカップルで溢れている。こんな時間にやって来て、果たして座席はあるのだろうか。
店のドアを開けると、フロアスタッフがやって来た。
「すみません、予約していた坂本ですが」
坂本がホール担当の男性に声を掛けた。
え、予約してくれていたの? 私は驚いて思わず坂本の横顔を見つめた。
「ようこそいらっしゃいました、坂本様。お待ちいたしておりました。お席へご案内致しますのでこちらへどうぞ」
私は訳が分からなくて、男性店員と坂本の後に続いて座席へと向かった。
一体いつ、予約を入れたのだろう。
ここは地元でも人気のあるお店で、予約なしではなかなか座席の空きがないと聞いている。
このショッピングモールも車を所有していない私はバスでしか来た事がないので、この時間に車でやって来れたことで内心興奮していたのだけど、こんなサプライズがあるなんて思ってもみなかった。
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