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その後
バレンタインデート 2
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スマホの向こうにいる坂本の事を考えながら言葉を発した。もしかしたらまだ学校に残っているのなら、他の先生達も残業されているのかも知れないし、部活の合間だったら生徒が側にいるかも知れない。どっちにせよ誰かが側にいるのなら迂闊な発言は出来ない。それなりに私も発言には気を遣わなければ。
私の心配をよそに、坂本は会話を続ける。
『今何処に居るの?』
「ちょうど事務所を出たところなの。一度家に帰って着替えようかと思って」
『そうなんだ。俺も今学校を出たところなんだ。俺も一回家に帰って車取りに行くから、アパートに迎えに行くよ。
今からなら……、二十分位で準備出来そう?』
私は腕時計を見て時間を確認する。時刻は現在十九時十分を指していた。帰宅して着替えたら、十九時半に何とか間に合いそうだ。
「うん、多分大丈夫だと思う。坂本は大丈夫なの?」
中学校への通勤は徒歩だと聞いていたので、帰宅してからの時間等が気になるところだ。でも自分から時間指定をしているのだからきっと坂本的には余裕なのだろう。
『うん、俺は余裕。着替えるの? って、西田って通勤は制服?』
そうだった、こんな事も坂本は知らないんだった。事務所にはロッカーはあるものの更衣室の様なスペースがない為に、事務服で通勤をしているのだ。冬場は事務服の上にコートを羽織っているけれど、夏場はそのままの格好で通勤しているし、皆それで通勤しているので特に何も気にした事はなかった。
「うん、職場に更衣室がないの。だからみんな事務服で通勤してるから……」
『そうなんだ。もしかして、お洒落する時間がもう少し必要?』
坂本の言葉に、私は思わずうんと言いそうになってしまうものの、自分のクローゼット内の洋服を咄嗟に思い浮かべるとそこまでの洋服がない事に気付いた。
お洒落とは無縁の生活を送っていただけに、有り合わせの服しかない。素直にそれを伝えてもいいのだろうかと不安が過る。
女子力皆無のこんな私の事を好きだと言ってくれた坂本に、何だか申し訳なく思ってしまう。
「お洒落だなんて、そんな服はないんだけど……。でも、それなりには頑張る」
私の返事が可笑しかったのか、坂本は電話越しに笑っていた。
『頑張らなくてもいいよ。てか、西田は何を着ていても可愛いから大丈夫だから気にしなくていいよ』
坂本は私の歯が浮くような発言をさらりと言ってのける。本心かどうか分からないけれど、私の心臓に悪いからやめて欲しい。
そして返事に困っている私の事を見透かしているかの様に言葉を続ける。
『車で迎えに行くから時間とか気にしなくていいよ。俺としては西田と一緒に居る時間が少しでも長くなるのは大歓迎だし』
何気に嬉しい言葉を発してくれるので、スマホ越しに照れてしまう。けれどこれは坂本には内緒だ。
「出来るだけ待たせない様に頑張る。だから坂本も安全運転で来てね」
『うん、ありがとう。そうしたらまた後で』
「うん、また後でね」
通話を終わらせると私は歩幅を大きくして帰路を急いだ。
職場へは健康の事も考えて徒歩で通勤している。自転車でもいいけれど、自転車に頼ってしまうと朝ギリギリの時間まで寝てしまっているから自分への戒めの意味を込めて徒歩通勤を貫いている。
自転車を持っていない訳ではない。食材を買いに行く時は荷物が増えるからむしろ必須アイテムだ。でも通勤時は自分を甘やかさない為に敢えて徒歩に拘っている。
いつもより歩幅も大きく歩くペースも早いから、アパートには思っていたよりも早く到着した。
私は朝のうちに考えていたコーディネートの服に着替えると、用意していたチョコレートの包みをバッグの側に置いた。今回のチョコレートは市販のチョコレートを選んだ。
付き合い始めてすぐに迎えたバレンタインデー、本命チョコとは言え流石に手作りチョコは気持ち的に重いだろう。それに職場でもきっと義理チョコとは言えチョコレートを貰っている筈だ。
私の父はパン職人だからこの季節は手作りのバレンタインチョコケーキ等お店のショーウインドウに並んでいた。そんなプロの娘だからと出来栄えを比較されるのは流石に辛い。
私は購入したチョコレートを紙袋の中に収めると、洗面台の前で化粧直しを始めた。
元々そんなに化粧をする方ではないけれど、ファンデーションを塗り直し、軽くチークを入れた。これだけでも顔色は明るくなる。その上にパウダーを叩いて少しでもナチュラルな仕上がりを目指した。
特別アイメークや眉をいじったりしていないので、そこまで化粧直しに時間はかからない。仕上げに口紅を薄く引いて完成だ。
洗面所の電気を消して再び部屋に戻りカーテンを閉めようと窓辺へ向かうと、
外に車が停車しているのが目に入った。
ライトが点いた状態でハザードランプが点滅している。多分坂本が到着したのかも知れない。
私はカーテンを閉め、バッグの中に入れていたスマホに手を伸ばしたその時、スマホから通話を知らせる着信音が響き渡った。
私の心配をよそに、坂本は会話を続ける。
『今何処に居るの?』
「ちょうど事務所を出たところなの。一度家に帰って着替えようかと思って」
『そうなんだ。俺も今学校を出たところなんだ。俺も一回家に帰って車取りに行くから、アパートに迎えに行くよ。
今からなら……、二十分位で準備出来そう?』
私は腕時計を見て時間を確認する。時刻は現在十九時十分を指していた。帰宅して着替えたら、十九時半に何とか間に合いそうだ。
「うん、多分大丈夫だと思う。坂本は大丈夫なの?」
中学校への通勤は徒歩だと聞いていたので、帰宅してからの時間等が気になるところだ。でも自分から時間指定をしているのだからきっと坂本的には余裕なのだろう。
『うん、俺は余裕。着替えるの? って、西田って通勤は制服?』
そうだった、こんな事も坂本は知らないんだった。事務所にはロッカーはあるものの更衣室の様なスペースがない為に、事務服で通勤をしているのだ。冬場は事務服の上にコートを羽織っているけれど、夏場はそのままの格好で通勤しているし、皆それで通勤しているので特に何も気にした事はなかった。
「うん、職場に更衣室がないの。だからみんな事務服で通勤してるから……」
『そうなんだ。もしかして、お洒落する時間がもう少し必要?』
坂本の言葉に、私は思わずうんと言いそうになってしまうものの、自分のクローゼット内の洋服を咄嗟に思い浮かべるとそこまでの洋服がない事に気付いた。
お洒落とは無縁の生活を送っていただけに、有り合わせの服しかない。素直にそれを伝えてもいいのだろうかと不安が過る。
女子力皆無のこんな私の事を好きだと言ってくれた坂本に、何だか申し訳なく思ってしまう。
「お洒落だなんて、そんな服はないんだけど……。でも、それなりには頑張る」
私の返事が可笑しかったのか、坂本は電話越しに笑っていた。
『頑張らなくてもいいよ。てか、西田は何を着ていても可愛いから大丈夫だから気にしなくていいよ』
坂本は私の歯が浮くような発言をさらりと言ってのける。本心かどうか分からないけれど、私の心臓に悪いからやめて欲しい。
そして返事に困っている私の事を見透かしているかの様に言葉を続ける。
『車で迎えに行くから時間とか気にしなくていいよ。俺としては西田と一緒に居る時間が少しでも長くなるのは大歓迎だし』
何気に嬉しい言葉を発してくれるので、スマホ越しに照れてしまう。けれどこれは坂本には内緒だ。
「出来るだけ待たせない様に頑張る。だから坂本も安全運転で来てね」
『うん、ありがとう。そうしたらまた後で』
「うん、また後でね」
通話を終わらせると私は歩幅を大きくして帰路を急いだ。
職場へは健康の事も考えて徒歩で通勤している。自転車でもいいけれど、自転車に頼ってしまうと朝ギリギリの時間まで寝てしまっているから自分への戒めの意味を込めて徒歩通勤を貫いている。
自転車を持っていない訳ではない。食材を買いに行く時は荷物が増えるからむしろ必須アイテムだ。でも通勤時は自分を甘やかさない為に敢えて徒歩に拘っている。
いつもより歩幅も大きく歩くペースも早いから、アパートには思っていたよりも早く到着した。
私は朝のうちに考えていたコーディネートの服に着替えると、用意していたチョコレートの包みをバッグの側に置いた。今回のチョコレートは市販のチョコレートを選んだ。
付き合い始めてすぐに迎えたバレンタインデー、本命チョコとは言え流石に手作りチョコは気持ち的に重いだろう。それに職場でもきっと義理チョコとは言えチョコレートを貰っている筈だ。
私の父はパン職人だからこの季節は手作りのバレンタインチョコケーキ等お店のショーウインドウに並んでいた。そんなプロの娘だからと出来栄えを比較されるのは流石に辛い。
私は購入したチョコレートを紙袋の中に収めると、洗面台の前で化粧直しを始めた。
元々そんなに化粧をする方ではないけれど、ファンデーションを塗り直し、軽くチークを入れた。これだけでも顔色は明るくなる。その上にパウダーを叩いて少しでもナチュラルな仕上がりを目指した。
特別アイメークや眉をいじったりしていないので、そこまで化粧直しに時間はかからない。仕上げに口紅を薄く引いて完成だ。
洗面所の電気を消して再び部屋に戻りカーテンを閉めようと窓辺へ向かうと、
外に車が停車しているのが目に入った。
ライトが点いた状態でハザードランプが点滅している。多分坂本が到着したのかも知れない。
私はカーテンを閉め、バッグの中に入れていたスマホに手を伸ばしたその時、スマホから通話を知らせる着信音が響き渡った。
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