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side結衣
告白
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パソコンが立ち上がり、坂本が先程のSDカードを差し込んで、画像を開いて行く。
「卒業式の日、この画像の中に西田がいないんだって改めて思ったら、凄く後悔した。
卒業式の数日前に、図書室に呼び出されて西田が言ったよな。
『知らないうちに、俺が西田を嫌うような事をしたか』って。
逆なんだよ……。
中学校に入学して、三年で同じクラスになってから、ずっと西田が好きだったんだ」
パソコンの画面を開きながら、泣きそうな表情のまま、でもはっきりと坂本が口にした。
「十一月の音楽祭前の連絡網を回さなかったのは、俺が西田のお昼ご飯を用意して、お弁当を分けてやるって口実に一緒にお昼を食べたかったからって、今思えばしょうもない理由。
前の週に、俺が図書室で告白されていたの聞いていたの、気付いてたんだ。
告白を断ったのも聞いていたと思うけど、同じ生徒会役員の子だったし、西田に誤解されるのが嫌だった。
だからあの日、一緒にお弁当を食べながらその話をして誤解を解こうと思ったんだ」
今思えば浅はかな事をしたよなと独り言ちている。
パソコンに映し出される画像がスライドショーの様に、時間が経過する毎に変わっていく。
写真を撮影したのは坂本なのだろう。
卒業式の日の集合写真以外に、坂本の姿は何処にもない。
「大雪で臨時休校が決まった時、連絡を回さなかったのは……。
西田に学校に来て欲しかったから。
あの日、臨時休校で誰も学校に来ないってわかって、絶好のチャンスだと思ったよ。
これで、誰にも邪魔されずに西田に告白出来るって」
坂本の言葉が、私の心を掻き乱す。
あの頃の坂本は、今の私と同じ気持ちでいたの……?
「西田は気付いてなかったと思うけど、西田って男子の中で密かに人気あったんだ。
小柄で色白で、控えめだけど可愛いって。
受験前が告白する最後のチャンスだと思って、俺、ずっと教室で待ってた……。
西田が来るのを。
でも、ここに辿り着く前に、西田が浅田に会って臨時休校の事を聞かされていたとは思わなかった。
浅田のお父さんに家まで送って貰った事も、その後西田がショックでその場から動けなくなるなんて……。
悔やんでも悔やみきれなかった。
もしあの日告白をしようなんて思わすに、きちんと連絡網を回していたら、一緒の高校に通えていたかも知れなかった。
西田と仲良くなる為にゆっくりと時間をかけていたら、あんな風に傷付ける事はなかったのに……。
卒業式の日、体調を崩して保健室に運ばれた西田の事は、卒業生代表挨拶が終わって壇上から降りる時、後ろ姿を見て気付いてた。
多分俺の事が許せなくて、そんな奴を視界に入れたくない、声も聞きたくないって思ってたら気分も悪くなるよな。
先生に連れられて体育館から出て行く西田の後ろ姿を見つめるしかなかった。
卒業式が終わって理由をつけて保健室を覗いたら西田は眠ってたし、多分話も出来ないと思ったから……。
眠ってる西田にあのメモを握らせたんだ。
でも意味がわからなかったよな。
あの日、西田も自転車で登校してると思ったから、駐輪場近くのあの場所で待っててって意味でメモを書いたんだけど、西田の体調はそれどころじゃなかったんだよな。
式が終わって学活が始まる前、内線で保健室から教室に電話があって、山田先生が急いで西田の荷物をまとめ出して西田のお母さんに渡したのを見たら……。
もう、会えなくなると思ったら……」
今、ここにいるのは、私が知っている坂本ではない。
あの時の後悔を、十五歳の時の後悔に囚われたまま、大人になった坂本……。
私は何も言えなくて、ただ、ただ、坂本の姿を見つめる事しか出来ない。
坂本はSDカードを抜き取ると、それを私に手渡した。
よく見ると、それはアダプターにセットされたマイクロSDカードで、アダプターを取り外せば私の使っている携帯でも画像が確認出来る。
「永木から西田はiPhoneじゃないって聞いていたから、余計なお世話かと思ったけど、画像データとクラスのみんなの連絡先をそこに入れてる。
みんな西田の事をずっと心配してるから、仲いい奴がいたら、良かったら連絡してやってよ。
それと、同窓会用にグループライン作ってるから、良かったらメンバーに入らないか?
……って言うのは口実で、良かったら連絡先、教えて欲しい」
余りにも色々な事を一度に聞いて、何も考えられない私は、うっかりスマホをバッグの中から取り出して坂本と赤外線通信でデータを交換していた。
「改めて言うけど、俺、西田の事がずっと好きで忘れられなかった。
十年振りの再会だし、俺のイメージはあの頃のまま最悪なのは自覚してるけど……。
でももし、少しでも西田の中で俺の事、許せると思うなら友達からでもいい。
告白をすると決めた、臨時休校したあの日からやり直しをさせてくれないか?」
「卒業式の日、この画像の中に西田がいないんだって改めて思ったら、凄く後悔した。
卒業式の数日前に、図書室に呼び出されて西田が言ったよな。
『知らないうちに、俺が西田を嫌うような事をしたか』って。
逆なんだよ……。
中学校に入学して、三年で同じクラスになってから、ずっと西田が好きだったんだ」
パソコンの画面を開きながら、泣きそうな表情のまま、でもはっきりと坂本が口にした。
「十一月の音楽祭前の連絡網を回さなかったのは、俺が西田のお昼ご飯を用意して、お弁当を分けてやるって口実に一緒にお昼を食べたかったからって、今思えばしょうもない理由。
前の週に、俺が図書室で告白されていたの聞いていたの、気付いてたんだ。
告白を断ったのも聞いていたと思うけど、同じ生徒会役員の子だったし、西田に誤解されるのが嫌だった。
だからあの日、一緒にお弁当を食べながらその話をして誤解を解こうと思ったんだ」
今思えば浅はかな事をしたよなと独り言ちている。
パソコンに映し出される画像がスライドショーの様に、時間が経過する毎に変わっていく。
写真を撮影したのは坂本なのだろう。
卒業式の日の集合写真以外に、坂本の姿は何処にもない。
「大雪で臨時休校が決まった時、連絡を回さなかったのは……。
西田に学校に来て欲しかったから。
あの日、臨時休校で誰も学校に来ないってわかって、絶好のチャンスだと思ったよ。
これで、誰にも邪魔されずに西田に告白出来るって」
坂本の言葉が、私の心を掻き乱す。
あの頃の坂本は、今の私と同じ気持ちでいたの……?
「西田は気付いてなかったと思うけど、西田って男子の中で密かに人気あったんだ。
小柄で色白で、控えめだけど可愛いって。
受験前が告白する最後のチャンスだと思って、俺、ずっと教室で待ってた……。
西田が来るのを。
でも、ここに辿り着く前に、西田が浅田に会って臨時休校の事を聞かされていたとは思わなかった。
浅田のお父さんに家まで送って貰った事も、その後西田がショックでその場から動けなくなるなんて……。
悔やんでも悔やみきれなかった。
もしあの日告白をしようなんて思わすに、きちんと連絡網を回していたら、一緒の高校に通えていたかも知れなかった。
西田と仲良くなる為にゆっくりと時間をかけていたら、あんな風に傷付ける事はなかったのに……。
卒業式の日、体調を崩して保健室に運ばれた西田の事は、卒業生代表挨拶が終わって壇上から降りる時、後ろ姿を見て気付いてた。
多分俺の事が許せなくて、そんな奴を視界に入れたくない、声も聞きたくないって思ってたら気分も悪くなるよな。
先生に連れられて体育館から出て行く西田の後ろ姿を見つめるしかなかった。
卒業式が終わって理由をつけて保健室を覗いたら西田は眠ってたし、多分話も出来ないと思ったから……。
眠ってる西田にあのメモを握らせたんだ。
でも意味がわからなかったよな。
あの日、西田も自転車で登校してると思ったから、駐輪場近くのあの場所で待っててって意味でメモを書いたんだけど、西田の体調はそれどころじゃなかったんだよな。
式が終わって学活が始まる前、内線で保健室から教室に電話があって、山田先生が急いで西田の荷物をまとめ出して西田のお母さんに渡したのを見たら……。
もう、会えなくなると思ったら……」
今、ここにいるのは、私が知っている坂本ではない。
あの時の後悔を、十五歳の時の後悔に囚われたまま、大人になった坂本……。
私は何も言えなくて、ただ、ただ、坂本の姿を見つめる事しか出来ない。
坂本はSDカードを抜き取ると、それを私に手渡した。
よく見ると、それはアダプターにセットされたマイクロSDカードで、アダプターを取り外せば私の使っている携帯でも画像が確認出来る。
「永木から西田はiPhoneじゃないって聞いていたから、余計なお世話かと思ったけど、画像データとクラスのみんなの連絡先をそこに入れてる。
みんな西田の事をずっと心配してるから、仲いい奴がいたら、良かったら連絡してやってよ。
それと、同窓会用にグループライン作ってるから、良かったらメンバーに入らないか?
……って言うのは口実で、良かったら連絡先、教えて欲しい」
余りにも色々な事を一度に聞いて、何も考えられない私は、うっかりスマホをバッグの中から取り出して坂本と赤外線通信でデータを交換していた。
「改めて言うけど、俺、西田の事がずっと好きで忘れられなかった。
十年振りの再会だし、俺のイメージはあの頃のまま最悪なのは自覚してるけど……。
でももし、少しでも西田の中で俺の事、許せると思うなら友達からでもいい。
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