3 / 34
side結衣
消えない記憶
しおりを挟む
私は、聡子の言葉を聞いて頭の中が真っ白になった。
一体どう言う意味?
臨時休校になっている?
連絡網も回っている?
聡子は私に連絡網が回っていない事に驚き、すぐに家の中に入る様に招き入れてくれたが、私の思考と行動は上手く働かない。
その場に立ち尽くして動けないでいた。
聡子はそんな私を見て困った顔をしたものの、すぐに家の中に入り、お父さんらしき人を連れてすぐに出て来た。
「今から学校に行っても誰も居ないし、風邪ひいちゃうよ。
お父さんに送って貰うから、家に帰ろう」
結局私は聡子のお父さんに車で家まで送って貰ったものの、帰宅してからも思考が停止したままで、しばらくの間家の前で立ち尽くしていた。
私に気付いた母が驚いて家の中に私を連れて入ったものの、私の記憶はその時点でもうあやふやになっていた。
吹雪の中外でどの位居たのかすら分からない。
母が私を見つけた時、私は軒下に居たものの座り込んでいて、その身体の上には雪が降り積もっていたらしい。
病院に行くにも、私もこの時点で発熱していたのかなかなか思うように身体も動かない。
母が私を急いで着替えさせ、部屋の暖房を入れてホットミルクを作ってくれた。
部屋に上がる気力もなく、私はリビングのソファーの上でたくさんの服を着込み、母が持ってきた毛布と布団にくるまって眠った。
今思えば、この時点で既にインフルエンザに感染していたのだろう。
予防接種を受けていたおかげで、症状は発熱だけで済んだけれど、インフルエンザは感染症。
学校も『欠席』ではなく『出席停止』となる。
発熱のせいで微睡みながらも、私の中に疑問が湧く。
聡子が、朝の七時に臨時休校の連絡網を回したと言っていた。
なのに何故、私の所に連絡網が回って来なかったのだろう。
クラスの連絡網は、出席番号順で四班に分かれている。
先生から班の先頭の人に連絡が行き、最後の人が確認で先生に連絡をして終了する。
私は二班で、最後の順番だった。
私の前の人は……。
坂本だ。
フルネームは坂本悠太、小学校は違う校区だし、同じクラスになったのは今年が初めてだった。
坂本はスポーツ万能で、バスケ部のキャプテンで部長、加えて生徒会長と二足の草鞋を履き、駄目押しでイケメン。
男子にも女子にも先生にも後輩にも、人気や信頼のある天に二物も三物も与えられた男だ。
進学先も、私が本命で受験する県立高校の普通科が年明け早々に推薦で決まっていた。
誰にでも優しくて世話好きな坂本が、こんな連絡ミスをするだろうか。
もしかしたら坂本の所にも連絡網が回ってなかったのだろうか。
それならば、坂本の前の人は一体何をやっていたのだろう。
私は熱で朦朧とする意識の中でも坂本の心配をしていた。
午前中はぐっすりと眠り、汗をかいたので一度着替えると、母に病院へ連れて行かれ、インフルエンザの診断を受けた。
今まで体調にあれだけ気を付けていたのに……。
私はショックで頭が回らなかった。
母も受験が何とかならないかと学校に連絡して先生に掛け合って貰ったものの、交通機関の遅れ等、一定の条件に当てはまらない個人の体調不良では再試験の実施にはならないとの回答だった。
母もそう簡単には引き下がらず、今回の体調不良は学校からの連絡網が回って来なかった事による不可抗力だと伝えるも、学校側からはまさかの回答があった。
それは、坂本から担任に連絡があり、私の家に電話するも繋がらなかったと。
それを聞いて母も私もクラスで配布された連絡網に記載されている我が家の電話番号を確認するも、電話番号は間違っていない。
それに母は私が学校に出てからも外には出ておらず、私が帰宅するまで電話は一切鳴らなかったと言う。
私はそこで初めて坂本に対して疑念を抱いた。
確か以前も、一度連絡網が回って来なくて大変な目に遭いそうになった事があったのだ。
あれは二学期の、秋の音楽祭前日の事だ。
季節外れの台風の影響で、音楽祭が一日後にズレる事になり、当日と翌日の二日分お弁当がいると言う事が連絡網で回って来る筈だったのだ。
この時はたまたまママ友の情報網で母の方が先に連絡を受けていたのでお弁当を忘れると言う失態は免れたのだけれど……。
この時、確か坂本は気まずそうな顔をして、でも私には何も言ってくれなかった。
そして今回も、連絡網が回って来なかった。
もしかして、これはわざとなのだろうか。
それとも本当にうちに電話をかけたけど繋がらなかったのだろうか。
一度湧いた疑惑は、そう簡単に払拭する事は出来ない。
どちらにしても、私はインフルエンザに感染している以上、本命の高校受験すら叶わないし、熱が下がってもしばらくは登校出来ないのだから、大人しく自宅で過ごすしかない。
私は悔しくて、悲しくて、涙が止まらない。
受験に失敗する挫折よりも、それすらも叶わない現実に、その原因がもしかしたら坂本の故意によるものだとしたら……。
私の出校停止が解けるまでに、私は体重が二キロ落ちていた。
一体どう言う意味?
臨時休校になっている?
連絡網も回っている?
聡子は私に連絡網が回っていない事に驚き、すぐに家の中に入る様に招き入れてくれたが、私の思考と行動は上手く働かない。
その場に立ち尽くして動けないでいた。
聡子はそんな私を見て困った顔をしたものの、すぐに家の中に入り、お父さんらしき人を連れてすぐに出て来た。
「今から学校に行っても誰も居ないし、風邪ひいちゃうよ。
お父さんに送って貰うから、家に帰ろう」
結局私は聡子のお父さんに車で家まで送って貰ったものの、帰宅してからも思考が停止したままで、しばらくの間家の前で立ち尽くしていた。
私に気付いた母が驚いて家の中に私を連れて入ったものの、私の記憶はその時点でもうあやふやになっていた。
吹雪の中外でどの位居たのかすら分からない。
母が私を見つけた時、私は軒下に居たものの座り込んでいて、その身体の上には雪が降り積もっていたらしい。
病院に行くにも、私もこの時点で発熱していたのかなかなか思うように身体も動かない。
母が私を急いで着替えさせ、部屋の暖房を入れてホットミルクを作ってくれた。
部屋に上がる気力もなく、私はリビングのソファーの上でたくさんの服を着込み、母が持ってきた毛布と布団にくるまって眠った。
今思えば、この時点で既にインフルエンザに感染していたのだろう。
予防接種を受けていたおかげで、症状は発熱だけで済んだけれど、インフルエンザは感染症。
学校も『欠席』ではなく『出席停止』となる。
発熱のせいで微睡みながらも、私の中に疑問が湧く。
聡子が、朝の七時に臨時休校の連絡網を回したと言っていた。
なのに何故、私の所に連絡網が回って来なかったのだろう。
クラスの連絡網は、出席番号順で四班に分かれている。
先生から班の先頭の人に連絡が行き、最後の人が確認で先生に連絡をして終了する。
私は二班で、最後の順番だった。
私の前の人は……。
坂本だ。
フルネームは坂本悠太、小学校は違う校区だし、同じクラスになったのは今年が初めてだった。
坂本はスポーツ万能で、バスケ部のキャプテンで部長、加えて生徒会長と二足の草鞋を履き、駄目押しでイケメン。
男子にも女子にも先生にも後輩にも、人気や信頼のある天に二物も三物も与えられた男だ。
進学先も、私が本命で受験する県立高校の普通科が年明け早々に推薦で決まっていた。
誰にでも優しくて世話好きな坂本が、こんな連絡ミスをするだろうか。
もしかしたら坂本の所にも連絡網が回ってなかったのだろうか。
それならば、坂本の前の人は一体何をやっていたのだろう。
私は熱で朦朧とする意識の中でも坂本の心配をしていた。
午前中はぐっすりと眠り、汗をかいたので一度着替えると、母に病院へ連れて行かれ、インフルエンザの診断を受けた。
今まで体調にあれだけ気を付けていたのに……。
私はショックで頭が回らなかった。
母も受験が何とかならないかと学校に連絡して先生に掛け合って貰ったものの、交通機関の遅れ等、一定の条件に当てはまらない個人の体調不良では再試験の実施にはならないとの回答だった。
母もそう簡単には引き下がらず、今回の体調不良は学校からの連絡網が回って来なかった事による不可抗力だと伝えるも、学校側からはまさかの回答があった。
それは、坂本から担任に連絡があり、私の家に電話するも繋がらなかったと。
それを聞いて母も私もクラスで配布された連絡網に記載されている我が家の電話番号を確認するも、電話番号は間違っていない。
それに母は私が学校に出てからも外には出ておらず、私が帰宅するまで電話は一切鳴らなかったと言う。
私はそこで初めて坂本に対して疑念を抱いた。
確か以前も、一度連絡網が回って来なくて大変な目に遭いそうになった事があったのだ。
あれは二学期の、秋の音楽祭前日の事だ。
季節外れの台風の影響で、音楽祭が一日後にズレる事になり、当日と翌日の二日分お弁当がいると言う事が連絡網で回って来る筈だったのだ。
この時はたまたまママ友の情報網で母の方が先に連絡を受けていたのでお弁当を忘れると言う失態は免れたのだけれど……。
この時、確か坂本は気まずそうな顔をして、でも私には何も言ってくれなかった。
そして今回も、連絡網が回って来なかった。
もしかして、これはわざとなのだろうか。
それとも本当にうちに電話をかけたけど繋がらなかったのだろうか。
一度湧いた疑惑は、そう簡単に払拭する事は出来ない。
どちらにしても、私はインフルエンザに感染している以上、本命の高校受験すら叶わないし、熱が下がってもしばらくは登校出来ないのだから、大人しく自宅で過ごすしかない。
私は悔しくて、悲しくて、涙が止まらない。
受験に失敗する挫折よりも、それすらも叶わない現実に、その原因がもしかしたら坂本の故意によるものだとしたら……。
私の出校停止が解けるまでに、私は体重が二キロ落ちていた。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛
冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる