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side結衣
追憶
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一月三日。
冬休みでお正月の三が日。
昨夜から日本列島を猛烈な寒波が覆っており、珍しく朝から外は強風の影響で吹雪いている。
何だかあの日みたいだな……。
通常ならば、公立中学校もお正月の休みで学校が開放される筈がない。
それに加え、もし学生時代だったら警報が発令されているので休校になっている筈だ。
普通ならば同窓会は飲食が伴うものだから、それなりに人数が収容出来るお店やホールで行われるものではないのだろうか。
それに、日中に卒業生とは言え今はもう部外者になる私達に、中学校もよく場所を開放してくれたものだ。
ある意味感心する。
窓の外は突風が吹いており、いつも以上にカタカタと網戸が音を立てている。
風邪を引かない様に、防寒はしっかりとしなきゃ。
私は由美からのハガキの内容を改めて確認しようとバッグの中に入れていたハガキを取り出した。
わざわざハガキを出すなんて郵便代金がもったいない。
みんなSNSで繋がっているならそれで一括で連絡すればいいのに。
私はそのグループに入ってないにしても、由美は私の連絡先を知っているのだから、個別で連絡すれば済む話なのだ。
ハガキには同窓会の日時、場所だけが書かれている。
出欠確認も何もない、単なるお知らせ。
……ちょっと待って。
普通、ハガキで連絡を寄越すなら、出欠確認がいるから往復ハガキで送って来るよね?
これは普通の郵便ハガキだ。
ハガキが届いたその日に由美から連絡があって、強制参加を言い渡された。
それこそ有無を言わせない勢いで、言いくるめられた。
ハガキを郵送して来た意味はあるの?
宛名書きは手書きだ。
差出人も、由美の名前。
でも何か引っかかる。
これ、由美の文字じゃない……。
ハガキを見た違和感の原因は、きっとこれだ。
由美が誰かに私の住所を教えて、それでこれを書いたのだ。
由美は一体誰に教えたの?
私の両親は、私が短大を卒業した年に、長年の夢だった古民家を手に入れてそちらに引っ越した為、実家は売却した。
私は地元の税理事務所に就職が決まって、ワンルームの部屋を借りており、その事は、同級生では由美しか知らない。
私は明日が仕事始めの日だから、新しい実家には年末帰省して元旦の夜、こちらへ戻って来た。
昨日は帰省疲れで昼過ぎまで眠っており、昼から実家から持ち帰った惣菜を食べ、ダラダラと過ごしていた。
そして迎えた今日……。
こんな天気の中、本当に同窓会なんてあるのだろうか。
また、あの時みたいに騙されているのではないだろうか。
私の中で、疑問が不安を呼び込んだ。
それもこれも、二週間前に坂本の名前を聞いたからだろう。
思い出さない様に封印したあの頃の記憶が蘇る。
あれは遡る事ちょうど十年前。
時期も今と同じ頃の事だった。
中学三年の三学期。
高校受験を控えて、みんなピリピリとした空気を感じながらも毎日を過ごしていた。
当時、私の第一希望の高校は、自宅近所にある県立高校だった。
ここの情報処理科は人気も高く、パソコンや他の資格も在学中に取得出来る事から志願倍数も高く、偏差値も私はギリギリだった事もあり、三年になってからは塾にも通っていた。
公立高校の入試日は県下一斉同一日であり、公立の併願は出来ないから、必然的に私立高校との併願をしなければならない。
私立高校の入試日は、県立高校の試験よりも早い日程で、合格発表も県立の受験日より早いので、私立高校が本命の友達は、早々に受験地獄から解放される。
併願志望を出していた私立高校は、隣町にある女子高だ。
ここにも情報処理科があり、希望している県立高校よりも偏差値は劣るものの、就職等将来的な事を考えると魅力的な物だった。
一月下旬に私立高校の入学試験があり、二月中旬には合格発表があり、私は無事に合格をこの手にもぎ取った。
県立高校の結果次第では入学金も無駄になるけれど、納めなければ入学とみなされないと聞き、 両親に頭を下げて入学金を払って貰った。
県立高校の入学試験は三月三日。
私はこの日に向けて体調も整えていた。
でも……。
三月一日。
この日は前日の夜から降り続けた雪で、交通網が麻痺する事態が発生していた。
そんなになるまで雪が降り積もっていたにも拘らず警報はまだ出てなくて、私は遅刻をしない様に朝早くに家を出る準備をしていた。
私の家から中学校まではちょっと距離があり、いつもは自転車で通学しているけれど、こんな雪の中、流石に自転車なんて出せる訳がない。
もし学校が臨時休校になるならば、朝の七時にクラスの連絡網が回ってくるのに電話は一向に鳴らない。
警報が出ていないから休校にはならないのか……。
私は半ば諦めつつ、母には受験前だからと車で学校まで送って貰うつもりだったけれど、母も慣れない雪道の運転は怖いと言うので、仕方なく歩いて登校する事にした。
そしてもうすぐ学校に到着すると言う時に……。
「あれ? 西田さん、今日学校休みだよ。
七時に連絡網回したけど、連絡行ってない?」
学校の近所に家のある同級生で、自宅前をちょうど雪かきしていた浅田聡子が私に声を掛けた。
冬休みでお正月の三が日。
昨夜から日本列島を猛烈な寒波が覆っており、珍しく朝から外は強風の影響で吹雪いている。
何だかあの日みたいだな……。
通常ならば、公立中学校もお正月の休みで学校が開放される筈がない。
それに加え、もし学生時代だったら警報が発令されているので休校になっている筈だ。
普通ならば同窓会は飲食が伴うものだから、それなりに人数が収容出来るお店やホールで行われるものではないのだろうか。
それに、日中に卒業生とは言え今はもう部外者になる私達に、中学校もよく場所を開放してくれたものだ。
ある意味感心する。
窓の外は突風が吹いており、いつも以上にカタカタと網戸が音を立てている。
風邪を引かない様に、防寒はしっかりとしなきゃ。
私は由美からのハガキの内容を改めて確認しようとバッグの中に入れていたハガキを取り出した。
わざわざハガキを出すなんて郵便代金がもったいない。
みんなSNSで繋がっているならそれで一括で連絡すればいいのに。
私はそのグループに入ってないにしても、由美は私の連絡先を知っているのだから、個別で連絡すれば済む話なのだ。
ハガキには同窓会の日時、場所だけが書かれている。
出欠確認も何もない、単なるお知らせ。
……ちょっと待って。
普通、ハガキで連絡を寄越すなら、出欠確認がいるから往復ハガキで送って来るよね?
これは普通の郵便ハガキだ。
ハガキが届いたその日に由美から連絡があって、強制参加を言い渡された。
それこそ有無を言わせない勢いで、言いくるめられた。
ハガキを郵送して来た意味はあるの?
宛名書きは手書きだ。
差出人も、由美の名前。
でも何か引っかかる。
これ、由美の文字じゃない……。
ハガキを見た違和感の原因は、きっとこれだ。
由美が誰かに私の住所を教えて、それでこれを書いたのだ。
由美は一体誰に教えたの?
私の両親は、私が短大を卒業した年に、長年の夢だった古民家を手に入れてそちらに引っ越した為、実家は売却した。
私は地元の税理事務所に就職が決まって、ワンルームの部屋を借りており、その事は、同級生では由美しか知らない。
私は明日が仕事始めの日だから、新しい実家には年末帰省して元旦の夜、こちらへ戻って来た。
昨日は帰省疲れで昼過ぎまで眠っており、昼から実家から持ち帰った惣菜を食べ、ダラダラと過ごしていた。
そして迎えた今日……。
こんな天気の中、本当に同窓会なんてあるのだろうか。
また、あの時みたいに騙されているのではないだろうか。
私の中で、疑問が不安を呼び込んだ。
それもこれも、二週間前に坂本の名前を聞いたからだろう。
思い出さない様に封印したあの頃の記憶が蘇る。
あれは遡る事ちょうど十年前。
時期も今と同じ頃の事だった。
中学三年の三学期。
高校受験を控えて、みんなピリピリとした空気を感じながらも毎日を過ごしていた。
当時、私の第一希望の高校は、自宅近所にある県立高校だった。
ここの情報処理科は人気も高く、パソコンや他の資格も在学中に取得出来る事から志願倍数も高く、偏差値も私はギリギリだった事もあり、三年になってからは塾にも通っていた。
公立高校の入試日は県下一斉同一日であり、公立の併願は出来ないから、必然的に私立高校との併願をしなければならない。
私立高校の入試日は、県立高校の試験よりも早い日程で、合格発表も県立の受験日より早いので、私立高校が本命の友達は、早々に受験地獄から解放される。
併願志望を出していた私立高校は、隣町にある女子高だ。
ここにも情報処理科があり、希望している県立高校よりも偏差値は劣るものの、就職等将来的な事を考えると魅力的な物だった。
一月下旬に私立高校の入学試験があり、二月中旬には合格発表があり、私は無事に合格をこの手にもぎ取った。
県立高校の結果次第では入学金も無駄になるけれど、納めなければ入学とみなされないと聞き、 両親に頭を下げて入学金を払って貰った。
県立高校の入学試験は三月三日。
私はこの日に向けて体調も整えていた。
でも……。
三月一日。
この日は前日の夜から降り続けた雪で、交通網が麻痺する事態が発生していた。
そんなになるまで雪が降り積もっていたにも拘らず警報はまだ出てなくて、私は遅刻をしない様に朝早くに家を出る準備をしていた。
私の家から中学校まではちょっと距離があり、いつもは自転車で通学しているけれど、こんな雪の中、流石に自転車なんて出せる訳がない。
もし学校が臨時休校になるならば、朝の七時にクラスの連絡網が回ってくるのに電話は一向に鳴らない。
警報が出ていないから休校にはならないのか……。
私は半ば諦めつつ、母には受験前だからと車で学校まで送って貰うつもりだったけれど、母も慣れない雪道の運転は怖いと言うので、仕方なく歩いて登校する事にした。
そしてもうすぐ学校に到着すると言う時に……。
「あれ? 西田さん、今日学校休みだよ。
七時に連絡網回したけど、連絡行ってない?」
学校の近所に家のある同級生で、自宅前をちょうど雪かきしていた浅田聡子が私に声を掛けた。
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