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四十二、
しおりを挟む部屋に着くなり、
土方は、沖田の襟元を掴み寄せ。
土方に襟を引かせたままでいる沖田の
眼を見上げはせず、唯。
手元に引き寄せた、その分厚く温い胸板へ、
顔を寄せて土方は。
「今すぐ俺を抱け」
小さく、囁いた。
「・・・」
一寸置いて。
沖田の着物が手の内で擦れ。
土方は背に、硬い腕が回されるのを感じた。
常の様に。
だから、
それが、たとえ。
「・・総、ぁあ・・、ッ・・・」
どんなに、土方の求めた想いを
伴わずとも。
「もっと、・・く、れ・・ッ・・・」
この男を繋ぎ留めていられる、
その豊満な自己満足と。
対の、心の奥底から湧き起る虚無感とが。
「・・総、司ッ・・ぁ・・・あ」
かわらず、土方を
みえぬ刃で幾度、貫けども。
土方を見下ろす沖田が、
「幾らでも、」
笑みを浮かべて応える。
お望みの侭に、と。
穏やかに、
常の様に。
乱されるのは、そうしていつも。
「あ、アア・・、ぁああそうじ・・っ・・」
己だけ。
そんな常が、
それでも
とわに続くのなら
「・・・総司、」
沖田の腕の中で、つと、土方は身じろぎした。
どれくらい己はまどろんでいたのだろう。
土方を覗き込み、沖田が「うん」と返すのへ。
その柔らかく土方を慈しむ常の眼に。
(戻ってきてくれたんだな)
声なく、土方は胸に囁いた。
もう昨夜のように斎藤の事を口にしては来ないことに、ほっと息をつき。
・・・変わることを、望んでいた。
沖田と、己の関係が。
もっと、この狂おしいほどの恋情に沿う方向へと、変わることを。
だが今は、それが叶わぬくらいなら。
(変わらないことが、望みだ)
このままでいてくれ。
「総司・・・愛してる」
「俺もですよ、歳さん」
沖田が答えた。
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互いに知りながら。
常の様に。
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