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Shape of Sugar(下)(美広視点)

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「ぁあっ……!」
 直接的な刺激に足元がぐらついて、佳澄の腕がそんな美広を支えるように腰に回ってくる。美広はくらくらしながら額を佳澄の濡れた肩に押し付けた。「はあ、は、ふ」整わない息と緩んだままの視界。視線を下げると、自身のものから滴った白濁が佳澄の身体を汚していた。
「かすみくん、ごめ、ごめんなさい、ぼく……、よごしてる、かすみくんを」
「ん、大丈夫。やっぱ、頭の深いとこまで使うのが上手だね、美広は」
 ご褒美のキスが額に降ってくる。美広は佳澄の身体に支えられるようにして風呂場を出た。
 タオルで全身を拭かれ、真っ黒のシーツの上に裸で横たわる。「美広」名前を呼ばれると身体の輪郭が痺れて蕩けるよう。美広は気を持ち直して佳澄の肩に触れた。「ん?」覆い被さってきた佳澄が美広の胸に口づけを落とした。
「あ……あの……、新しい子……、僕の後に来たヒューマノイドは……」
 ずっと気になっていた。面を上げた佳澄と目が合い美広は眉根を寄せた。
「お前じゃなかったら、誰が傍にいてもなんの意味もないよ。すぐに分かった。お前じゃないって……」
 美広の胸が、これ以上なく切なくなった。この三年。この人は独りで僕を……。
「僕も……あなたじゃなければ……」
 手を繋ぐのも、キスも、ハグも、誰かに肌を見せるのも、身体を開くのも、この人でなければなんの意味もない。美広はシーツの上で縮こまった。面倒だと思われていないだろうか。けれど佳澄は歯を見せて笑ってくれた。
「ねえ、早くお前と一つになりたい。リラックスして。身体の力抜いて。頭の中空っぽにして俺だけ感じて」
 こくりと頷く美広。けれどもうすでに美広の頭の中は佳澄のことでいっぱいだ。
 ベッドの引き出しからローションとスキンを取り出す佳澄。ローションを手にまぶし温めたところで「足、開いて」と美広の内腿にキスをした。
「ン、はず、かしいです……」
 言いながらも足を開く。するとまた緩く勃ち上がってしまうそれ。「大丈夫。全部可愛い」佳澄は囁きながら、美広のふぐりの奥にある蕾を濡れた指先でくすぐった。
「ここ、よく慣らさなきゃしんどくなっちゃうから。指入れて慣らしていい?頑張れる?」
「うんっ……。頑張るっ」
 指先が縁の膨らみを確かめるように往復する。そのうちにつぷんと縁をくぐっていく佳澄の指。「かすみくんっ」美広は目の前の佳澄に触れようと手を伸ばしたけれど、その手は空を切っただけだった。
「かすみ、くんっ、かすみくんっ……」
 ここで佳澄とひとつになることはきっとセックスと呼べるもの。だったら、したい。佳澄とセックスがしたい。
 こんな場所を使ってまでこの人と繋がりたいだなんて僕はどれだけ欲深いのだろう。美広は瞼をぎゅっと閉じて息を殺した。シーツを握りしめて耐える。中を行き来する佳澄の指。中や縁が熱くなったり背筋が戦慄いたり、佳澄の指が美広を不安と快楽の間へ誘う。佳澄は美広の緊張に気が付いて顔を覗き込んだ。
「あ、あ、かすみくんっ……」
「怖い?ごめん、俺、ちょっと焦ってたかも。ゆっくりするから」
 佳澄にもっと近づいて欲しくて、美広はぐっと足を広げた。その分深く入っていく指。内壁を擦られて、抜いて、入れて。キスしながら、肌に触れながらそうされて、美広の中が、縁が、熱を持っていく。すると次第に自分でも触れたことのない場所が熱くじっとりと濡れそぼっていくような感覚が迫ってくる。
「う、は、あ、ああ……」
 美広は打ち寄せる性感の予感に声を震わせた。
「ん、ん、んう、ふ」
 キスの間にも自分の太ももに佳澄の熱が擦れてたまらなくなる。
 早く入れて欲しい。美広は真っ白になりそうな頭で「かすみくん」と何度もその名前を呼んだ。ローションで濡れ雫を垂らすそこは時折きゅんと佳澄の指を食い締める。その度に佳澄は「また締まった」と意地悪く囁くのだった。
 指もいつの間にか増やされて、中で擦れる面積が増えていく。頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。佳澄の手が直接頭の中を掻き混ぜているみたいに、思考の途中で回路がぷつんぷつんと途切れていく。胸がどんどん熱くなって、その熱が腰におりて、そこを佳澄の指が行き来する度にその奥へと溜まって……。息が、熱が、止まらない……。
「大丈夫?辛くない?」
「んう、わかんないです、おなか、あったかくて、なんか、きそう……」
「ん。そっか。こっちも先走りすごいし……、出ちゃうと辛くなるから、俺の入れてもいい?俺ももう我慢の限界……」
 頷くと乱れた蕾に押し当てられる佳澄の熱。「あっ……!」指とは違う質量のそれが縁を押し上げ、やがて佳澄の膨らんだ場所の形に広がってしまった。
「あっ、おっきい、どうしよう、かすみくんっ、どうしたらいいっ……?」
「大丈夫。上手に力抜けてる。十分だよ。痛かったらすぐに言って」
「んああっ……!」
 ゆっくりと、美広の奥へ入っていくそれ。美広の瞳に生理的な涙が浮かぶ。佳澄はそれを舐め取って、美広の頭を抱えるようにシーツの上に両肘を突いた。目の前の愛しい主人は、切なげに眉根を寄せて口元からふうふうと噛みしめたような息を漏らしている。マスターのこんな顔、はじめて見た。美広のお腹の奥が何度も切なくなった。
「美広、こうやったら閉じ込めちゃえるな。ずーっと一生、こうしてようかな」
 そう言った佳澄の瞳は光を孕んで揺れていた。美広は佳澄の両頬を手で包み込んだ。
「もう、どこにも行かない。ひとりしてごめんなさい」
「……本当?」
「ずっとずっと、あなたの傍にいる。だいすきだから、あいしてるからっ……!」
 やっとのことでそう言えば、佳澄は困ったように笑って「俺も愛してる」と返してくれた。そのうちに佳澄のものが奥まで行きついて、美広は胸を撫で下ろした。良かった、入った……。
「はじめてなのに、えらかったね」
 佳澄がぎゅっと抱きしめてくれて、美広はほうと息を吐いた。
「ン、あ、かすみくん、おなか、あつい……っ」
 今にも泣き出しそうな声を上げる美広に「どうしたの?」と尋ねる佳澄は蕩けるような笑みを浮かべていて、美広の胸がきゅんと切なくなった。
 美広の身体も頭も弛緩して思考が霞みがかる。「あ……、あ……、うー……、はあ……」律動に合わせて途切れ途切れに漏れる吐息。もう、噛み殺すことも出来ない。
 佳澄に抱かれているという実感が湧いてきて、美広の胸はひどく高鳴り始めた。深くを突かれても痛みはなく、お腹の奥から声が溢れるだけ。
「こんなに奥で感じてくれるんだ……?」
 佳澄は唇を噛んでどこか悔しそうに笑った。
「美広、少しだけ、速くするよ」
 膝裏を掴まれ、先ほどよりも浅く速く揺すられる。苦しいのに気持ちいい。勝手に反った喉から声が止まらない……。「あ、あ、あ、ああっ」ずっとずっと我慢してきた。ヒロとしてこの部屋に居る頃からずっとこうして欲しいと思っていた。マスター、マスター、ますたあ……。
「い、いく、ぼく、でそぉっ……!ごめんなさいぃ……」
「ん、いいよ……。いくとこ、ちゃんと見ててあげるから」
 美広は佳澄の許しを得るなり自分のものを性急に慰め始めた。自身の中が引き攣れるように締まるのが分かった。「あ、う、ますたー、ますたあっ……!」自分で口にしたその呼び名に誘われて、ヒリヒリとピークが近づく。美広の前から欲がとめどなくこぼれて、目の前にチカチカと星が飛んだ。
「ん……、良い子、美広、はあ、……もうちょっとだけ……頑張って……」
 ぐちゅぐちゅと泡立ったローションが縁から零れる。美広は佳澄の腕に手を伸ばした。瞼を上げてくれた佳澄の瞳は快楽に濡れていた。
「手……つないでっ……ちゅうしたい……っ」
 強請れば佳澄は律動の最中でも両手の指と指を絡ませシーツに縫いつけてくれた。深く唇を合わせながら腰を振られて、美広は涙をこぼした。ぱちゅん、ぱちゅん、と、肉が打ちつけられる湿った音が部屋に響く。
「あ、……ごめ……、俺も……もう……っ」
「すき、すきですっ、ますたあ、だいすきっ。かすみくん、すきっ。だいすきっ……!いってっ……!」
 甘い言葉を甘い声でこぼす唇を塞がれる。
 自分の中で佳澄の欲望が弾けたのが分かった。美広はその瞬間にほっとしたように表情をほどけさせて、佳澄の腰に両足を回した。「ン、ますたー、だいすき、かすみくん、だいすき……、かっこいい、すき、すき……」繋がったまま虚ろに言葉を繰り返す。もっと近くに感じたくて腰を引きつけると、佳澄はがくんと項垂れて美広の肩口に顔を埋めた。
「美広。俺をどうしたいの?」
「え?すごく……大好きってことです……」
「無自覚?俺をそんな煽んないでくれる?初めてなんでしょ?優しいセックスで終わりたいの、俺は……」
 美広は佳澄の腰から足を離し神妙な顔つきで布団を引き寄せた。佳澄は大人しくなってしまった美広の鼻先にキスをして、「もっと慣れたら、好きなだけ煽っていいよ」と意地悪に囁いてきた。
「お前、芝居上手くなったね」
 ふと、隣に横たわった佳澄が呟いた。美広はがばりと起き上がって「本当に!?」と目を輝かせた。起き上がった佳澄が自身の膝の上に美広を引き寄せてくれた。
「舞台観て分かったよ。お前がずっと……、俺がいない間も頑張ってたんだってこと」
 佳澄は美広の頭をくしゃくしゃと撫でた…褒めてくれた。瞬きの後、美広の睫毛に涙の粒が付いているのを見て佳澄は微笑んだ。
「お前と演りたい。早く俺に追いついてきて」
 煽情的な佳澄の眼差しに、美広は口づけで応えた。
 離れていても、近くにいても、僕の心を震わせるあなたの愛。触れるとビリビリして、舐めると甘い。
「佳澄君……もう一回、して……」
 きっと僕は、あなたの前ではもう、別の誰かを演じられない。台本の中、以外では。


【終】
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みんなの感想(1件)

ma2sa2
2024.09.24 ma2sa2

もうめちゃくちゃに大好きな作品です!!!次が楽しみ過ぎてずっとワクワクしています🫶🫶

野中にんぎょ
2024.09.25 野中にんぎょ

楽しみにしてくださって、ありがとうございます♡
ずいぶん前に書いたもので、視点がころころ変わるのが読みづらいかな?と思ったのですが、お直ししながらアップするとこのお話はそれぞれが主人公だったんだなと感じます。
感想ありがとうございます。美広と佳澄の恋の行方を最後まで見届けていただだけると嬉しいです!

解除

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