23 / 23
Shape of Sugar(下)(美広視点)
しおりを挟む
「ぁあっ……!」
直接的な刺激に足元がぐらついて、佳澄の腕がそんな美広を支えるように腰に回ってくる。美広はくらくらしながら額を佳澄の濡れた肩に押し付けた。「はあ、は、ふ」整わない息と緩んだままの視界。視線を下げると、自身のものから滴った白濁が佳澄の身体を汚していた。
「かすみくん、ごめ、ごめんなさい、ぼく……、よごしてる、かすみくんを」
「ん、大丈夫。やっぱ、頭の深いとこまで使うのが上手だね、美広は」
ご褒美のキスが額に降ってくる。美広は佳澄の身体に支えられるようにして風呂場を出た。
タオルで全身を拭かれ、真っ黒のシーツの上に裸で横たわる。「美広」名前を呼ばれると身体の輪郭が痺れて蕩けるよう。美広は気を持ち直して佳澄の肩に触れた。「ん?」覆い被さってきた佳澄が美広の胸に口づけを落とした。
「あ……あの……、新しい子……、僕の後に来たヒューマノイドは……」
ずっと気になっていた。面を上げた佳澄と目が合い美広は眉根を寄せた。
「お前じゃなかったら、誰が傍にいてもなんの意味もないよ。すぐに分かった。お前じゃないって……」
美広の胸が、これ以上なく切なくなった。この三年。この人は独りで僕を……。
「僕も……あなたじゃなければ……」
手を繋ぐのも、キスも、ハグも、誰かに肌を見せるのも、身体を開くのも、この人でなければなんの意味もない。美広はシーツの上で縮こまった。面倒だと思われていないだろうか。けれど佳澄は歯を見せて笑ってくれた。
「ねえ、早くお前と一つになりたい。リラックスして。身体の力抜いて。頭の中空っぽにして俺だけ感じて」
こくりと頷く美広。けれどもうすでに美広の頭の中は佳澄のことでいっぱいだ。
ベッドの引き出しからローションとスキンを取り出す佳澄。ローションを手にまぶし温めたところで「足、開いて」と美広の内腿にキスをした。
「ン、はず、かしいです……」
言いながらも足を開く。するとまた緩く勃ち上がってしまうそれ。「大丈夫。全部可愛い」佳澄は囁きながら、美広のふぐりの奥にある蕾を濡れた指先でくすぐった。
「ここ、よく慣らさなきゃしんどくなっちゃうから。指入れて慣らしていい?頑張れる?」
「うんっ……。頑張るっ」
指先が縁の膨らみを確かめるように往復する。そのうちにつぷんと縁をくぐっていく佳澄の指。「かすみくんっ」美広は目の前の佳澄に触れようと手を伸ばしたけれど、その手は空を切っただけだった。
「かすみ、くんっ、かすみくんっ……」
ここで佳澄とひとつになることはきっとセックスと呼べるもの。だったら、したい。佳澄とセックスがしたい。
こんな場所を使ってまでこの人と繋がりたいだなんて僕はどれだけ欲深いのだろう。美広は瞼をぎゅっと閉じて息を殺した。シーツを握りしめて耐える。中を行き来する佳澄の指。中や縁が熱くなったり背筋が戦慄いたり、佳澄の指が美広を不安と快楽の間へ誘う。佳澄は美広の緊張に気が付いて顔を覗き込んだ。
「あ、あ、かすみくんっ……」
「怖い?ごめん、俺、ちょっと焦ってたかも。ゆっくりするから」
佳澄にもっと近づいて欲しくて、美広はぐっと足を広げた。その分深く入っていく指。内壁を擦られて、抜いて、入れて。キスしながら、肌に触れながらそうされて、美広の中が、縁が、熱を持っていく。すると次第に自分でも触れたことのない場所が熱くじっとりと濡れそぼっていくような感覚が迫ってくる。
「う、は、あ、ああ……」
美広は打ち寄せる性感の予感に声を震わせた。
「ん、ん、んう、ふ」
キスの間にも自分の太ももに佳澄の熱が擦れてたまらなくなる。
早く入れて欲しい。美広は真っ白になりそうな頭で「かすみくん」と何度もその名前を呼んだ。ローションで濡れ雫を垂らすそこは時折きゅんと佳澄の指を食い締める。その度に佳澄は「また締まった」と意地悪く囁くのだった。
指もいつの間にか増やされて、中で擦れる面積が増えていく。頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。佳澄の手が直接頭の中を掻き混ぜているみたいに、思考の途中で回路がぷつんぷつんと途切れていく。胸がどんどん熱くなって、その熱が腰におりて、そこを佳澄の指が行き来する度にその奥へと溜まって……。息が、熱が、止まらない……。
「大丈夫?辛くない?」
「んう、わかんないです、おなか、あったかくて、なんか、きそう……」
「ん。そっか。こっちも先走りすごいし……、出ちゃうと辛くなるから、俺の入れてもいい?俺ももう我慢の限界……」
頷くと乱れた蕾に押し当てられる佳澄の熱。「あっ……!」指とは違う質量のそれが縁を押し上げ、やがて佳澄の膨らんだ場所の形に広がってしまった。
「あっ、おっきい、どうしよう、かすみくんっ、どうしたらいいっ……?」
「大丈夫。上手に力抜けてる。十分だよ。痛かったらすぐに言って」
「んああっ……!」
ゆっくりと、美広の奥へ入っていくそれ。美広の瞳に生理的な涙が浮かぶ。佳澄はそれを舐め取って、美広の頭を抱えるようにシーツの上に両肘を突いた。目の前の愛しい主人は、切なげに眉根を寄せて口元からふうふうと噛みしめたような息を漏らしている。マスターのこんな顔、はじめて見た。美広のお腹の奥が何度も切なくなった。
「美広、こうやったら閉じ込めちゃえるな。ずーっと一生、こうしてようかな」
そう言った佳澄の瞳は光を孕んで揺れていた。美広は佳澄の両頬を手で包み込んだ。
「もう、どこにも行かない。ひとりしてごめんなさい」
「……本当?」
「ずっとずっと、あなたの傍にいる。だいすきだから、あいしてるからっ……!」
やっとのことでそう言えば、佳澄は困ったように笑って「俺も愛してる」と返してくれた。そのうちに佳澄のものが奥まで行きついて、美広は胸を撫で下ろした。良かった、入った……。
「はじめてなのに、えらかったね」
佳澄がぎゅっと抱きしめてくれて、美広はほうと息を吐いた。
「ン、あ、かすみくん、おなか、あつい……っ」
今にも泣き出しそうな声を上げる美広に「どうしたの?」と尋ねる佳澄は蕩けるような笑みを浮かべていて、美広の胸がきゅんと切なくなった。
美広の身体も頭も弛緩して思考が霞みがかる。「あ……、あ……、うー……、はあ……」律動に合わせて途切れ途切れに漏れる吐息。もう、噛み殺すことも出来ない。
佳澄に抱かれているという実感が湧いてきて、美広の胸はひどく高鳴り始めた。深くを突かれても痛みはなく、お腹の奥から声が溢れるだけ。
「こんなに奥で感じてくれるんだ……?」
佳澄は唇を噛んでどこか悔しそうに笑った。
「美広、少しだけ、速くするよ」
膝裏を掴まれ、先ほどよりも浅く速く揺すられる。苦しいのに気持ちいい。勝手に反った喉から声が止まらない……。「あ、あ、あ、ああっ」ずっとずっと我慢してきた。ヒロとしてこの部屋に居る頃からずっとこうして欲しいと思っていた。マスター、マスター、ますたあ……。
「い、いく、ぼく、でそぉっ……!ごめんなさいぃ……」
「ん、いいよ……。いくとこ、ちゃんと見ててあげるから」
美広は佳澄の許しを得るなり自分のものを性急に慰め始めた。自身の中が引き攣れるように締まるのが分かった。「あ、う、ますたー、ますたあっ……!」自分で口にしたその呼び名に誘われて、ヒリヒリとピークが近づく。美広の前から欲がとめどなくこぼれて、目の前にチカチカと星が飛んだ。
「ん……、良い子、美広、はあ、……もうちょっとだけ……頑張って……」
ぐちゅぐちゅと泡立ったローションが縁から零れる。美広は佳澄の腕に手を伸ばした。瞼を上げてくれた佳澄の瞳は快楽に濡れていた。
「手……つないでっ……ちゅうしたい……っ」
強請れば佳澄は律動の最中でも両手の指と指を絡ませシーツに縫いつけてくれた。深く唇を合わせながら腰を振られて、美広は涙をこぼした。ぱちゅん、ぱちゅん、と、肉が打ちつけられる湿った音が部屋に響く。
「あ、……ごめ……、俺も……もう……っ」
「すき、すきですっ、ますたあ、だいすきっ。かすみくん、すきっ。だいすきっ……!いってっ……!」
甘い言葉を甘い声でこぼす唇を塞がれる。
自分の中で佳澄の欲望が弾けたのが分かった。美広はその瞬間にほっとしたように表情をほどけさせて、佳澄の腰に両足を回した。「ン、ますたー、だいすき、かすみくん、だいすき……、かっこいい、すき、すき……」繋がったまま虚ろに言葉を繰り返す。もっと近くに感じたくて腰を引きつけると、佳澄はがくんと項垂れて美広の肩口に顔を埋めた。
「美広。俺をどうしたいの?」
「え?すごく……大好きってことです……」
「無自覚?俺をそんな煽んないでくれる?初めてなんでしょ?優しいセックスで終わりたいの、俺は……」
美広は佳澄の腰から足を離し神妙な顔つきで布団を引き寄せた。佳澄は大人しくなってしまった美広の鼻先にキスをして、「もっと慣れたら、好きなだけ煽っていいよ」と意地悪に囁いてきた。
「お前、芝居上手くなったね」
ふと、隣に横たわった佳澄が呟いた。美広はがばりと起き上がって「本当に!?」と目を輝かせた。起き上がった佳澄が自身の膝の上に美広を引き寄せてくれた。
「舞台観て分かったよ。お前がずっと……、俺がいない間も頑張ってたんだってこと」
佳澄は美広の頭をくしゃくしゃと撫でた…褒めてくれた。瞬きの後、美広の睫毛に涙の粒が付いているのを見て佳澄は微笑んだ。
「お前と演りたい。早く俺に追いついてきて」
煽情的な佳澄の眼差しに、美広は口づけで応えた。
離れていても、近くにいても、僕の心を震わせるあなたの愛。触れるとビリビリして、舐めると甘い。
「佳澄君……もう一回、して……」
きっと僕は、あなたの前ではもう、別の誰かを演じられない。台本の中、以外では。
【終】
直接的な刺激に足元がぐらついて、佳澄の腕がそんな美広を支えるように腰に回ってくる。美広はくらくらしながら額を佳澄の濡れた肩に押し付けた。「はあ、は、ふ」整わない息と緩んだままの視界。視線を下げると、自身のものから滴った白濁が佳澄の身体を汚していた。
「かすみくん、ごめ、ごめんなさい、ぼく……、よごしてる、かすみくんを」
「ん、大丈夫。やっぱ、頭の深いとこまで使うのが上手だね、美広は」
ご褒美のキスが額に降ってくる。美広は佳澄の身体に支えられるようにして風呂場を出た。
タオルで全身を拭かれ、真っ黒のシーツの上に裸で横たわる。「美広」名前を呼ばれると身体の輪郭が痺れて蕩けるよう。美広は気を持ち直して佳澄の肩に触れた。「ん?」覆い被さってきた佳澄が美広の胸に口づけを落とした。
「あ……あの……、新しい子……、僕の後に来たヒューマノイドは……」
ずっと気になっていた。面を上げた佳澄と目が合い美広は眉根を寄せた。
「お前じゃなかったら、誰が傍にいてもなんの意味もないよ。すぐに分かった。お前じゃないって……」
美広の胸が、これ以上なく切なくなった。この三年。この人は独りで僕を……。
「僕も……あなたじゃなければ……」
手を繋ぐのも、キスも、ハグも、誰かに肌を見せるのも、身体を開くのも、この人でなければなんの意味もない。美広はシーツの上で縮こまった。面倒だと思われていないだろうか。けれど佳澄は歯を見せて笑ってくれた。
「ねえ、早くお前と一つになりたい。リラックスして。身体の力抜いて。頭の中空っぽにして俺だけ感じて」
こくりと頷く美広。けれどもうすでに美広の頭の中は佳澄のことでいっぱいだ。
ベッドの引き出しからローションとスキンを取り出す佳澄。ローションを手にまぶし温めたところで「足、開いて」と美広の内腿にキスをした。
「ン、はず、かしいです……」
言いながらも足を開く。するとまた緩く勃ち上がってしまうそれ。「大丈夫。全部可愛い」佳澄は囁きながら、美広のふぐりの奥にある蕾を濡れた指先でくすぐった。
「ここ、よく慣らさなきゃしんどくなっちゃうから。指入れて慣らしていい?頑張れる?」
「うんっ……。頑張るっ」
指先が縁の膨らみを確かめるように往復する。そのうちにつぷんと縁をくぐっていく佳澄の指。「かすみくんっ」美広は目の前の佳澄に触れようと手を伸ばしたけれど、その手は空を切っただけだった。
「かすみ、くんっ、かすみくんっ……」
ここで佳澄とひとつになることはきっとセックスと呼べるもの。だったら、したい。佳澄とセックスがしたい。
こんな場所を使ってまでこの人と繋がりたいだなんて僕はどれだけ欲深いのだろう。美広は瞼をぎゅっと閉じて息を殺した。シーツを握りしめて耐える。中を行き来する佳澄の指。中や縁が熱くなったり背筋が戦慄いたり、佳澄の指が美広を不安と快楽の間へ誘う。佳澄は美広の緊張に気が付いて顔を覗き込んだ。
「あ、あ、かすみくんっ……」
「怖い?ごめん、俺、ちょっと焦ってたかも。ゆっくりするから」
佳澄にもっと近づいて欲しくて、美広はぐっと足を広げた。その分深く入っていく指。内壁を擦られて、抜いて、入れて。キスしながら、肌に触れながらそうされて、美広の中が、縁が、熱を持っていく。すると次第に自分でも触れたことのない場所が熱くじっとりと濡れそぼっていくような感覚が迫ってくる。
「う、は、あ、ああ……」
美広は打ち寄せる性感の予感に声を震わせた。
「ん、ん、んう、ふ」
キスの間にも自分の太ももに佳澄の熱が擦れてたまらなくなる。
早く入れて欲しい。美広は真っ白になりそうな頭で「かすみくん」と何度もその名前を呼んだ。ローションで濡れ雫を垂らすそこは時折きゅんと佳澄の指を食い締める。その度に佳澄は「また締まった」と意地悪く囁くのだった。
指もいつの間にか増やされて、中で擦れる面積が増えていく。頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。佳澄の手が直接頭の中を掻き混ぜているみたいに、思考の途中で回路がぷつんぷつんと途切れていく。胸がどんどん熱くなって、その熱が腰におりて、そこを佳澄の指が行き来する度にその奥へと溜まって……。息が、熱が、止まらない……。
「大丈夫?辛くない?」
「んう、わかんないです、おなか、あったかくて、なんか、きそう……」
「ん。そっか。こっちも先走りすごいし……、出ちゃうと辛くなるから、俺の入れてもいい?俺ももう我慢の限界……」
頷くと乱れた蕾に押し当てられる佳澄の熱。「あっ……!」指とは違う質量のそれが縁を押し上げ、やがて佳澄の膨らんだ場所の形に広がってしまった。
「あっ、おっきい、どうしよう、かすみくんっ、どうしたらいいっ……?」
「大丈夫。上手に力抜けてる。十分だよ。痛かったらすぐに言って」
「んああっ……!」
ゆっくりと、美広の奥へ入っていくそれ。美広の瞳に生理的な涙が浮かぶ。佳澄はそれを舐め取って、美広の頭を抱えるようにシーツの上に両肘を突いた。目の前の愛しい主人は、切なげに眉根を寄せて口元からふうふうと噛みしめたような息を漏らしている。マスターのこんな顔、はじめて見た。美広のお腹の奥が何度も切なくなった。
「美広、こうやったら閉じ込めちゃえるな。ずーっと一生、こうしてようかな」
そう言った佳澄の瞳は光を孕んで揺れていた。美広は佳澄の両頬を手で包み込んだ。
「もう、どこにも行かない。ひとりしてごめんなさい」
「……本当?」
「ずっとずっと、あなたの傍にいる。だいすきだから、あいしてるからっ……!」
やっとのことでそう言えば、佳澄は困ったように笑って「俺も愛してる」と返してくれた。そのうちに佳澄のものが奥まで行きついて、美広は胸を撫で下ろした。良かった、入った……。
「はじめてなのに、えらかったね」
佳澄がぎゅっと抱きしめてくれて、美広はほうと息を吐いた。
「ン、あ、かすみくん、おなか、あつい……っ」
今にも泣き出しそうな声を上げる美広に「どうしたの?」と尋ねる佳澄は蕩けるような笑みを浮かべていて、美広の胸がきゅんと切なくなった。
美広の身体も頭も弛緩して思考が霞みがかる。「あ……、あ……、うー……、はあ……」律動に合わせて途切れ途切れに漏れる吐息。もう、噛み殺すことも出来ない。
佳澄に抱かれているという実感が湧いてきて、美広の胸はひどく高鳴り始めた。深くを突かれても痛みはなく、お腹の奥から声が溢れるだけ。
「こんなに奥で感じてくれるんだ……?」
佳澄は唇を噛んでどこか悔しそうに笑った。
「美広、少しだけ、速くするよ」
膝裏を掴まれ、先ほどよりも浅く速く揺すられる。苦しいのに気持ちいい。勝手に反った喉から声が止まらない……。「あ、あ、あ、ああっ」ずっとずっと我慢してきた。ヒロとしてこの部屋に居る頃からずっとこうして欲しいと思っていた。マスター、マスター、ますたあ……。
「い、いく、ぼく、でそぉっ……!ごめんなさいぃ……」
「ん、いいよ……。いくとこ、ちゃんと見ててあげるから」
美広は佳澄の許しを得るなり自分のものを性急に慰め始めた。自身の中が引き攣れるように締まるのが分かった。「あ、う、ますたー、ますたあっ……!」自分で口にしたその呼び名に誘われて、ヒリヒリとピークが近づく。美広の前から欲がとめどなくこぼれて、目の前にチカチカと星が飛んだ。
「ん……、良い子、美広、はあ、……もうちょっとだけ……頑張って……」
ぐちゅぐちゅと泡立ったローションが縁から零れる。美広は佳澄の腕に手を伸ばした。瞼を上げてくれた佳澄の瞳は快楽に濡れていた。
「手……つないでっ……ちゅうしたい……っ」
強請れば佳澄は律動の最中でも両手の指と指を絡ませシーツに縫いつけてくれた。深く唇を合わせながら腰を振られて、美広は涙をこぼした。ぱちゅん、ぱちゅん、と、肉が打ちつけられる湿った音が部屋に響く。
「あ、……ごめ……、俺も……もう……っ」
「すき、すきですっ、ますたあ、だいすきっ。かすみくん、すきっ。だいすきっ……!いってっ……!」
甘い言葉を甘い声でこぼす唇を塞がれる。
自分の中で佳澄の欲望が弾けたのが分かった。美広はその瞬間にほっとしたように表情をほどけさせて、佳澄の腰に両足を回した。「ン、ますたー、だいすき、かすみくん、だいすき……、かっこいい、すき、すき……」繋がったまま虚ろに言葉を繰り返す。もっと近くに感じたくて腰を引きつけると、佳澄はがくんと項垂れて美広の肩口に顔を埋めた。
「美広。俺をどうしたいの?」
「え?すごく……大好きってことです……」
「無自覚?俺をそんな煽んないでくれる?初めてなんでしょ?優しいセックスで終わりたいの、俺は……」
美広は佳澄の腰から足を離し神妙な顔つきで布団を引き寄せた。佳澄は大人しくなってしまった美広の鼻先にキスをして、「もっと慣れたら、好きなだけ煽っていいよ」と意地悪に囁いてきた。
「お前、芝居上手くなったね」
ふと、隣に横たわった佳澄が呟いた。美広はがばりと起き上がって「本当に!?」と目を輝かせた。起き上がった佳澄が自身の膝の上に美広を引き寄せてくれた。
「舞台観て分かったよ。お前がずっと……、俺がいない間も頑張ってたんだってこと」
佳澄は美広の頭をくしゃくしゃと撫でた…褒めてくれた。瞬きの後、美広の睫毛に涙の粒が付いているのを見て佳澄は微笑んだ。
「お前と演りたい。早く俺に追いついてきて」
煽情的な佳澄の眼差しに、美広は口づけで応えた。
離れていても、近くにいても、僕の心を震わせるあなたの愛。触れるとビリビリして、舐めると甘い。
「佳澄君……もう一回、して……」
きっと僕は、あなたの前ではもう、別の誰かを演じられない。台本の中、以外では。
【終】
21
お気に入りに追加
22
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
ポケットのなかの空
三尾
BL
【ある朝、突然、目が見えなくなっていたらどうするだろう?】
大手電機メーカーに勤めるエンジニアの響野(ひびの)は、ある日、原因不明の失明状態で目を覚ました。
取るものも取りあえず向かった病院で、彼は中学時代に同級生だった水元(みずもと)と再会する。
十一年前、響野や友人たちに何も告げることなく転校していった水元は、複雑な家庭の事情を抱えていた。
目の不自由な響野を見かねてサポートを申し出てくれた水元とすごすうちに、友情だけではない感情を抱く響野だが、勇気を出して想いを伝えても「その感情は一時的なもの」と否定されてしまい……?
重い過去を持つ一途な攻め × 不幸に抗(あらが)う男前な受けのお話。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
・性描写のある回には「※」マークが付きます。
・水元視点の番外編もあり。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
※番外編はこちら
『光の部屋、花の下で。』https://www.alphapolis.co.jp/novel/728386436/614893182
魔王なアイツは遠すぎて......。嫌われモノの俺 戦えない俺の異世界転生生活
やまくる実
BL
異世界ファンタジー ゲームの中の様な世界観ですがフンワリ設定です。
この国には黒髪のものはいない。黒髪は不吉な存在だといわれて嫌われモノだった主人公のショウ、10歳の誕生日の日、魔力の測定に向かった神殿で魔力が無い事が分かる。逆に、勇者だと分かった幼なじみのリュウともその日を境に離れ離れになってしまう。
この国の者はどんな者でも魔力はあると言われている為、今まで以上に不気味がられて嫌われるショウ。
8年後一人暮らしをしていた洞窟の前で腹を切られてボロボロになっていた魔物を拾った所で運命の歯車が動き出す。
受け攻め両方、頻繁に視点が変わります。
エロは後半です。
クール真面目系魔王×自己肯定感低め地味美人受け
表紙イラスト あかまロケ 様です。
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
臆病なピアニストに捧げる愛のうた
野中にんぎょ
BL
今里世良(30歳・書店員)は娘の直(5歳)を育てるシングルファザー。郊外の古い一軒家に住む二人はひょんなことからお隣の洋館に現れた藤巻譲二(38歳)と出会う。厳めしい外見とは裏腹に繊細なピアノを奏でる譲司に惹かれ、今里親子は藤巻邸に出入りするように。
世良は思わぬところから譲司が名の知れたピアニストでクラシック界隈では過去の人となっていることを知る。正体を知りつつもそれを黙ったまま譲司と交流を重ねる世良だったが、彼と関わっていくにつれ当初のスマートな印象が裏返って……?
才能とは裏腹に自分に自信のないピアニストと、道半ばで夢を捨てた書店員。立ち止まっていた二人が、恋と愛をきっかけに一歩を踏み出す、大人のビタースゥイート・ロマンス。
かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~
入海月子
恋愛
セレブの街のブティックG.rowで働く西原望晴(にしはらみはる)は、IT企業社長の由井拓斗(ゆいたくと)の私服のコーディネートをしている。彼のファッションセンスが壊滅的だからだ。
ただの客だったはずなのに、彼といきなりの同居。そして、親を安心させるために入籍することに。
拓斗のほうも結婚圧力がわずらわしかったから、ちょうどいいと言う。
書類上の夫婦と思ったのに、なぜか拓斗は甘々で――。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
もうめちゃくちゃに大好きな作品です!!!次が楽しみ過ぎてずっとワクワクしています🫶🫶
楽しみにしてくださって、ありがとうございます♡
ずいぶん前に書いたもので、視点がころころ変わるのが読みづらいかな?と思ったのですが、お直ししながらアップするとこのお話はそれぞれが主人公だったんだなと感じます。
感想ありがとうございます。美広と佳澄の恋の行方を最後まで見届けていただだけると嬉しいです!