おれの愛する不機嫌なクピド

野中にんぎょ

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プリンスの不在、運命の悪戯

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 あのまま眠ってしまい、文彦の誘いに応えられないまま数日が過ぎた。朝になれば必ず来ていたメッセージがなくなって、けれど自分から何と送ればいいのか分からず、また一日が過ぎていく。
 文彦と出会ってからこれまで、多い時は毎日のように会っていた。自分が彼の時間を奪ってしまった分、やらなければならないことがあるのだろう。分かっては、いる。
「親御さんにちゃんと言った?」
 夕暮れの大通り、隣を歩く八代が微笑む。大人の余裕を漂わせた笑みだ。
「はい。帰りだけ、あんまり遅くならないようにって言われました」
「了解。苦手なものある?食べたいものがあったら遠慮なく言って」
 余裕のある大人の隣は緊張する。幼い頃から大人に囲まれて仕事をしている為か、自分に近づいて来る大人を経験則から分類する癖がついた。八代は今になってもよく分からない。だから、“注意すべき大人”の箱に分類してある。
 なんでも食べられますと言うと八代は困ったように笑って、それから、中から橙色の光が漏れているカフェへ入って行った。
 店内は薄暗く、テーブルとカウンターごとに照明が落ちていた。まだ夕方の六時前だというのに席は埋まっていて、テラスには立ち飲みしている客までいた。
「個室、使える?」
 八代は店員と顔見知りのようだった。「もちろん空けてあるよ」店員も八代と同じ“大人の笑み”を浮かべて薫に会釈した。
「朝から撮影で疲れたでしょ。脚、崩していいからね」
 個室の入り口に掛かったカーテンをくぐり、薫は一瞬固まってしまった。小上がりになった席はマットレスのようで、シーツまで引いてある。これではまるでベッドだ。
 何個かあるクッションをどかし、八代は眉を寄せて「勝手に個室にしてごめんね。知り合いがやってる店だから、話聞かれると恥ずかしいし……」と申し訳なさそうに笑った。
 個室の中央には脚のない丸い板が置いてあり、それがテーブルの役目を果たすようだった。あまりに馴染みのない光景に、八代に「上がって」と言われるまで、薫はその場に立ち尽くしてしまった。
「おまたせいたしました。ジンジャエールのお客様……、」
 丸いテーブルの上に、葡萄ソースのかかった鴨肉、牡蛎とマッシュルームのアヒージョ、カプレーゼ、雲丹のクリームパスタ、アボカドと蛸のマリネが並ぶ。メニューはほとんど八代が選んだもので、食べきれるだろうかと不安に思っている内に八代が取り分け始めてしまった。
「八代さん、あの、僕が」
「いいのいいの。今日はおれが呼んじゃったから」
 あっという間に手元へ料理がやって来て、薫は「いただきます」と手を合わせてそれらを口へ運んだ。正直、ベッドのような内装や閉め切られたカーテンに気が逸れて味など感じられない。当初の目的を果たせば帰してもらえるだろうと、薫は小皿にあるものを食べきって「あの、」と話を切り出した。
「ここ、亮君とよく来るんですか?」
「亮?……亮とは来てないかな。おれが酒好きだから、居酒屋行って、おれは酒飲んで亮はメシ食って、って感じが多いかも」
 八代と亮が居酒屋で並んでいるところを想像する。グラスを傾ける八代を見つめながら上機嫌でサラダを頬張る亮が容易に想像できた。「亮君、可愛いですよね」思わず呟くと、「確かに可愛いね」と同意が返って来た。
「それで言えば、金原君は綺麗って感じだよね」
 輔の「可愛い」と八代の「可愛い」は似ている。なのに、文彦の「綺麗」と八代の「綺麗」は違う。
 八代の「綺麗」は、嫌だ。嫌いだ。はっきりとそう思った。ここから去らなければ。薫は咄嗟にそう思い、けれどすぐに行動を起こすことはできなかった。
「僕といる時の亮君と八代さんといる時の亮君って、全然違う気がします」
「ええ?どんなふうに?」
「言葉にするの、難しいんですけど。亮君、八代さんには甘えてるっていうか、可愛くなってる……っていうか。亮君に尻尾があったら、八代さんの前ではブンブン振ってるんだろうなって」
「金原君の前では振ってないの?」
「振ってないです。八代さんの前でだけ振ってるんです。……そういうのが、可愛いとか健気ってことじゃないんですかね」
「ああ。“いたいけ”の“可愛い”か」
 いたいけ。どういう意味だっけと逡巡する前に、違う、と言ってやりたくなった。
「亮君、八代さんのこと好きだと思いますよ。どういう好きかは分からないけど、きっと、八代さんが亮君に好意を寄せてるって知ったら亮君も、」
「金原君」
 八代の手が薫の手に触れる。触れて、ぎゅっと、握られる。触れていただけなのに、握られた手になってしまう。
 八代の瞳は濡れていた。ぬるり、と、照明の橙色が光彩の上で揺れて、それを見ていると、吐き気が込み上げた。あの男と同じ瞳。十四歳の薫の裸を前に、シャッターを夢中で切っていた、あの男と同じ光を湛えた瞳――。
「ごめんね。おれ、嘘吐いた。おれずっと、金原君とこうしたくて」
「……」
「亮は可愛いよ。可愛い弟みたいに思ってる。……でも、亮をこういう店には誘わない。だってほら、こんなところ、二人で来たら誤解生んじゃうでしょ」
 亮の笑顔が薫の脳裏を過る。「誤解」復唱すれば、「うん、誤解」と相槌と微笑みが返された。
「おれが気になってたのは、亮じゃなくて、君。……本当だよ。ファインダー越しでもそうじゃなくても綺麗な君が、こんなに綺麗なのに自分を飾らない君が、ずっと気になってた」
 する、と、薫の指の間に八代の指が入り込んで来る。おぞけが指先から脳天へ駆け抜けて、薫は弾かれたように手を振りほどいた。八代は目を丸くした後に、笑った。
「金原君」
 呼ばれ、薫は硬直した。指先から肘まで宥めるように撫で上げられ、薫は八代を睨みつけた。なのにやっぱり、八代は笑っている。「怒ってる顔も綺麗」そう言って、笑っている。
「ねえ、おれ、もうすぐBEのカメラマン辞めるんだ」
「それがおれに何の関係が?」
「意地悪言わないでよ。もう全部終わりになるから、金原君との思い出が欲しくて……」
 亮にもこうやって言い寄ったのだろうか。
 甘えたで寂しがりで、愛情深い亮。上京してから一度も田舎に帰っていないと話した亮は、清々しくも寂しそうだった。その寂しさに付け入って、この男――。
「思い出なら、いま、あげますよ」
 薫はグラスをひったくり、ジンジャエールを八代の顔にぶちまけた。八代の余裕の笑みが崩れて、眉が、唇が、瞳が歪んでいく。
「亮君にこれ以上手を出したら許しませんから」
「あれ?亮のこと、好きだったの?」
「好きですよ。仕事の先輩として、同じ男として、尊敬してます。……今日のことは誰にも言いません。でも、亮君に何かしたら、社員さんに報告しますから」
 腕に触れていた八代の手を振り切り、薫はた一万円札をテーブルに押し付けた。
「ごちそうさまでした」
 吐き捨て重いカーテンを捲り個室を飛び出す。店を出て人で賑わう交差点まで足を縺れさせながら駆けて行く。
 ピッポ、ピッポ、ピッポ………。
 行き交う人の群れ。夜だというのに街の中心部に夜闇はなく、ビルの明かりや大型ビジョン、ネオン色の光が人々の頭上へ降り注いでいる。交差点の手前まで来ると、足が動かなくなった。今更に震えが来て、拳をきつく握っていなければその場にくずおれてしまいそうだった。
 ブブッ。握り込んでいたスマートフォンが震えた。弛んだ視界の向こう、『元気にしてる?仕事はどう?』の文字が、浮かび上がって滲んだ。
『薫?どうしたの、電話なんて』
 スマートフォンを隔てて文彦の声が聞こえる。「気分で掛けてみた」涙を拭いながらそう言えば、『薫?』と再び疑問符を投げかけられた。
『なんか、変だ。何かあった?声が……』
 なんでもない。そう言うつもりだったのに、言葉が続かなかった。文彦の声が薫の心の襞に染み入り、沈黙を嗚咽に変えた。
『薫、どこにいるの、何が、』
「……奥泉社の近くの交差点」
 来て欲しい。顔を見たい。無性にそう思えて居場所を吐露する。一枚の機械の向こうで、文彦の唇が焦れているような気配がした。
『薫を今すぐに迎えに行きたいよ。でもおれ、今、空港で……。どこか、明るい場所、カフェとか、コンビニとか、人目のある明るい店に入っておれを待っていてくれないか』
 文彦は迎えに来てくれると言う。なのに、明かりの灯った場所に逃げ込んで一人で待っていなければならないということに、薫は絶望を感じた。「大丈夫。一人で帰れる。空港ってことは、どこかに行くの?」手元が震えて、それを押し殺そうと声を明るくする。けれど、そんな強がりはすぐに見抜かれてしまった。
『お願い薫、待ってて、迎えに行く。……それとも、待つのも苦しい?』
 あの店のたっぷりとした帆面のカーテンが眼前に掛かったような心地になった。待つのも、苦しいよ。沈黙の中に薫のそういう気持ちを掬い取り、文彦は『おれが、』と切れた息と共に声を絞り出した。彼はもう、走ってくれている。
『おれが迎えに行きたいよ。だけど、つらいなら……、今すぐにでも、助けが欲しいなら、』
 ぼろ、と、薫の眦から前触れもなく涙がこぼれる。裸の少年が泣いている。
「薫」
『薫』
 背後から、耳元から、同時に名前を呼ばれる。なのにすぐに分かった。彼が傍に立つと、意識がそこへ丸ごと引き込まれる。感情が、五感が、集約する。
「やっぱり薫だ、なに、どうした、泣いてんじゃん」
『薫?……薫?聞こえてる?……薫、』
 振り返れば、スマートフォンの向こうの文彦と同じように息を切らした輔が、髪を乱して立っていた。
「どうした、なんで泣いてんの、何かあった?」
 輔の瞳に自分が映っているのを見た途端、薫の全身の力が抜けて、スマートフォンを持った手もすとんと落ちた。輔は行き交う人々から薫を守るように肩を抱き、交差点を渡った。会った瞬間にはなんでどうしてと尋ねて来たのに、隣の彼は自分に触れるなり無言になってしまい、そのまま歩いていると薫の瞳から次々に涙がこぼれた。
「飲み物買ってくるから。ここ、座っといて」
 駅の長椅子に座らされ、薫はぶるぶると首を振った。輔は目と鼻の先にある自動販売機と薫の頬を伝う涙を交互に見て、薫の隣に腰を下ろした。彼はしきりに鞄やポケットを漁り、何かを探した。落とし物かと尋ねようとすれば、輔の指先が濡れた目元を拭ってくれた。
「ごめん。ハンカチとかティッシュとか、気の利いたもん、持ってねーわ……」
 心底申し訳なさそうにする輔が可笑しくて、薫は軽く噴き出した。握ったままにしていたスマートフォンに気が付いて画面を確かめると、文彦との通話は切れていた。
「電話で誰かとケンカでもした?」
 ふっと気配がし、それがスマートフォンを打見した輔の視線だったのだと気付く。
「や、別に、言いたくなかったら、いいんだけど」
「いや……ケンカじゃない。ちょっと油断して、嫌なこと思い出しただけ」
 よく分かんねぇ。そう言いたげに怪訝な顔をする輔。そういう輔を見るとホッとした。輔という避難所に駆け込んで外界から守られているような気分になった。
「おまえ、昔っから、苦しそうにしてても、おれに何も言わねーよな」
「うん。言わないかも」
「……吐き出せる誰か、いる?おれじゃなくてもいいから、おまえにそういうヤツがいるといいなって、昔から思ってるんだけど」
 裸の写真を撮られた後、しきりに輔の元を訪れたことを思い出す。彼はいつも店先にいて、笑顔で薫を迎え入れてくれた。輔の母と薫の母は十代からの付き合いで、輔はもしかしたら年下の幼馴染に何かあったのだと気付いていたのかもしれない。けれど、輔は必要以上に踏み込まなかった。そういう輔の傍は、これ以上なく安心した。
「僕には僕の方法があるから。だから、大丈夫」
「……そっか」
 しばらくベンチでとりとめもないことを話し、輔がおもむろに立ち上がる。「立てる?これ以上遅くなったらおばちゃんが心配するぞ」「うん」薫は頷いて、差し出された手を取った。彼の手のひらは幼い頃よりずいぶん大きくなったけれど、熱いくらいの体温は今も変わらなかった。
「よく僕だって分かったね」
「そりゃ分かるだろ。背ぇ高くてバカみたいに綺麗なヤツが泣いてるんだもん。一目で分かったわ」
「でも、息切れるくらい走ってくれたんでしょ。遠くからでも分かったんだ」
 目をすがめ「あのなぁ……」と薫を振り返る輔。引かれた手は、繋いだというよりも介助しているというような様子で、薫は思わず笑ってしまった。
「おまえ、自分がどんだけ目立ってんのか分かってないだろ」
「なんで目立つの。眼鏡してるし、街に出れば金髪なんて珍しくない」
「……もーいい。電車出るよ。急ご」
 土曜日の夜、電車はいつもより浮足立った空気を乗せている。街でイベントでもあったのか車内は浴衣姿の男女で賑わっていて、輔はやっと見つけた一人分の席に薫を座らせた。
「輔君」
「うん」
 扉が閉まります、ご注意ください。トン……、トン、トトン、タタン、タタン、タタ……。
「ありがとう」
「うん」
 時折、輔をお守りのように感じる。持っているだけで、何があっても大丈夫なのだと思えるお守り。けれど輔を持ち歩くことはできないから、薫は何度だって輔の元を訪れる。僕は大丈夫。そう思いたくて。
「おばちゃん、ごめん、おれが薫を連れ回しちゃって」
 玄関を開けるや否や息子より前に出てそんなことを言う輔に、薫の母は「そうだったのね、送ってくれてありがとうね」と輔を労った。
「薫、疲れたみたいだから。門限より遅くなったけど、おれのせいだから。薫を叱らないで。今日はこのまま寝かせてあげて」
 薫は輔の背後から黙ったまま母を見つめた。そんな息子に何か感じたのか、母は何一つ追求せずに、「いつも薫をありがとう」と言って輔に頭を下げた。
「輔君はあんたのヒーローだね」
 パジャマを用意しながら、母はそんなことを呟いた。「ヒーロー」口の中で呟けば、これ以上ないくらい輔に似合った二つ名で、薫は脱衣所でひとり微笑んだ。
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