一途な獣は愛にこそ跪く

野中にんぎょ

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生きる覚悟

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 己を殺し、時が来るのを待つ。あの男は必ずこの部屋にやって来るはずだ――。
 深夜、ドアの向こうから足音が聞こえ、慈雨はベッドに横たわったまま瞼を上げた。
「寝るにはまだ早いんじゃないですか」
 廊下の照明が闇に差し込み目が眩む。無防備な表情の慈雨を見て、清水は笑みを深めた。ドアを閉め部屋の明かりを点けると、清水はじっくりと慈雨へ近づいた。
「しみずさん」
 舌足らずな声に誘われて、清水の手が慈雨の頬に触れる。清水はたった一人でこの部屋を訪れたようだった。
「おれ、どうなってしまうんですか?」
 切れかけた蛍光灯の下、微笑んだ男は問いに応えず、「こんな場所に閉じ込められて、かわいそうに。おれが慰めてあげますよ」と慈雨の着ているシャツに手を掛けた。
 清水の手は生ぬるかった。思い出すのはあの夜に触れた静の背中で、慈雨はシャツを剥ぐように肩を撫でていった清水の手をおぞましく思った。
「大丈夫。優しくしますよ。慣れれば女とするよりもいい」
 慈雨は自分を慰みものにしようとしている男の手元を見つめながら、その腰に光った銀色のバックルを打見した。覆い被さったまま上着を脱ごうとする清水を助ければ、彼は顔を歪めた。
「なんだ、経験済みか?……大方あのイヌとも楽しくやってたんだろう?」
 慈雨のこめかみに電流が走った。「あのイヌ」。静のことを自身と同列のように語ったその口を衝動に任せて塞ぎたくなり、けれど慈雨は寸でのところで堪えた。
「そうだったら、だめですか?」
 首筋に押し付けられた唇に応え、言葉に笑みを含ませる。清水は途端に気を良くして慈雨の腰回りをまさぐり始めた。「ああ、だめ、清水さん」弱弱しく両手を突き出し清水の胸に触れる。獣じみた荒い息が唇に掛かっても、慈雨は不快を表に出さなかった。
 清水のベルトに手を掛け前を寛げる。まろび出た熱に直接触れれば、清水は「舐めて」とモノを慈雨の頬へ擦り付けた。
「清水さん。このままじゃできません」
「なんで。できるだろ。そのまま咥えて」
「だって怖い。こんなの、口に入らない。……舐めるのでいいなら……、」
 眉根を寄せ唇を薄く開く。清水は荒い溜息を吐いて慈雨の上から退いた。「おぼこじゃねんだからさぁ……、」苛立った声音が可笑しくて頬が緩む。慈雨は清水の股座に顔を埋め、舌を伸ばした。
「そのまま、タマから先まで舐めて」
 言われた通りにすると、「なあ、頼むよ、咥えて」と頭を押さえつけられた。慈雨は喉で小さく笑い、清水の望み通り大きく口を開けて欲望を迎え入れた。
「ぐ、ぁああああ~っ!」
 筒状の性器は思い切り噛むと面白いほどにひしゃげた。……ストローを噛むのに似てるな。目を白黒させて悶え苦しむ清水を見下ろし、慈雨はそんなことを考えた。
 心臓が飛び出しそうに脈打っている一方で、頭は冷静だった。慈雨は清水がのたうち回っている隙に引き抜いたベルトを清水の首へ巻き付けた。ベルトにバックルを通し、清水の背中に片足を着いてベルトを引っ張り上げれば、苦しみに歪んだ口元から泡立った唾液がしとどにこぼれた。
「咥えてって言ったのはそっちだろう」
 余ったベルトを更に引き上げベッドフレームへ結びつける。慈雨は裸足のまま部屋を飛び出し、ドアの取っ手にぶら下がっていた南京錠のシャックルを押し込んで出鱈目にダイヤルを回した。
 時間がない!
 ここへ連れて来られたのも真夜中で、ビルの間取りは分からない。手下を待たせていたのか、明かりの漏れた部屋から喋り声が聞こえて来る。窓から外を見やれば慈雨のいるフロアは地上四階ほどの高さがあった。
 非常階段に通じるドアを引くも、鍵がかかっていて開かない。あの状態の清水が部屋から出られるとは考えにくいが、あの色魔とて手練れ、急がなければ……!慈雨は近くに置かれていた消火器を窓めがけて放り投げた。
 ガシャン!!
 慈雨は蜘蛛の巣状にヒビの入った硝子を肘で押しやり、硝子の破片を踏んで外へと飛び出した。「何の音だ!?」「仁楼会か!?」ドアの向こうから男たちの声が追って来る。
 踊り場に散らばった硝子の上で緋色の足跡と街のネオンが混ざり合う。足を踏みしめるたび痛みが重なり、慈雨の歩みを阻もうとする。慈雨はそれでも、前に進むことを止めなかった。
「ガキが逃げた!捕まえろ!!」
 けたたましく吠えている男の声には聞き覚えがあった。清水が部屋を出たのだ。「おいコラ!待たんかァ!」非常階段の根元に人が集まっていくのが見え、慈雨は引き返し階段を駆け上がった。
「はあ、はあ、はあ、はあっ……!」
 硝子の破片で傷ついた足では思うように地面を踏みしめられず、屋上からも清水の手下が下りて来て、慈雨は踊り場の手すりを握りしめた。
 ここで捕まって嬲られるくらいなら、いっそ死ぬか?
 慈雨の脳裏にそんな考えが過った。
 あの時、両親と共に死んでもおかしくなかったんだ。おれは確かに生き永らえた。もう十分じゃないか――。
 死が急速に目の前へ迫る。夜のネオンの向こうに、静の眼差しが過った。
 静。おれは、死ぬなら、もう一度おまえに会いたい。死ぬなら、おまえに殺されたい。
「飛び降りる気だ!止めろ!」
 手すりに足を掛け、息を止める。清水に破かれたシャツが夜風を孕んで舞い上がる。迫り来る追っ手の指先が背中に触れ、慈雨は一歩前に踏み出した。
 ああ、おれ、死ぬんだ。
 スローモーションで地面が迫り、滞空時間の長さに肌が痺れた。ネオンが滲み、糸を引く。……その刹那のうちに、毒々しい蛍光色の中へ、漆黒の毛並みが紛れ込んだ。
「しずか」
 眼下に現れたイヌと視線が通じた時、慈雨の脳裏に火花が散った。
 静は足を踏みしめ両腕を広げて、落ちて来る慈雨を受け止めようとしていた。その両手は、慈雨の生も死も肉体も心も悲しみも喜びも、全てを受け止めようと、広く、力強く、伸びていた。
 死への渇望が、生への執着に、か細く結びつく。
「しず……!」
 一瞬のうちに、永遠の最中に、慈雨は静の胸に抱き止められた。歯を噛みしめたイヌの口元から牙が見え、慈雨は彼の身体を掻き抱いた。
「静、しずか……!」
 静は息を震わせて慈雨の頬に鼻先を擦り付けた。
「どうしてここだと分かったの」
「貴方の匂いを辿った」
「雨で消えてしまうんじゃなかったの」
「おれはそんなもので貴方を見失ったりしない」
 早口で応酬し、静は慈雨を抱え駆け出した。慈雨は全身で静に掴まり、銃声を聞きながらすぐそこにある肩に顔を埋めた。漆黒の毛並みからは、日向と汗の匂いがした。
「おい!出すぞ!」
 静は慈雨を抱えたまま車の後部座席に乗り込みコクリと頷いた。運転席の鏑木はアクセルを踏み込み、車を急発進させた。
「おめぇ、どんだけ悪運が強ぇんだよ」
 鏑木は肩を揺すって笑い、静は深く息を吐いた。
「清水の野郎、踊り場から鬼の形相で吠えてたぞ。何したらあの厚いツラの皮剝げるんだ?」
「ちんこ噛んだからかな……」
 思い当たるふしを吐露すれば、鏑木は弾けたように笑い、静は鬼の形相になってしまった。「あのペドにはいい薬になるだろうよ」酒焼けした鏑木の声が懐かしく、慈雨はやっと身体から力を抜いた。
「おい、ワンコ。これで貸しはナシだ。ほとぼりが冷めるまでそいつと隠れてろ」
 喜重の裏切りに遭った慈雨を救うため、静は鏑木を頼ったのだろう。慈雨は運転席のシートの肩を掴み、身を乗り出した。
「鏑木さん、おれ、じいちゃんの居場所に心当たりがあるんだ」
 鏑木は慈雨を一瞥し、溜息を吐いた。
「桂なら止めとけ。まーた痛い目遭うぞ。……あの野郎、昔からオヤジに執着してたからな。オヤジの孫であるおまえなら丁重に扱ってくれるだろうと思ったが……。あいつをおまえに紹介したのは間違いだった。あいつは自分の息子が殺されても仁楼会より北山雷を取った男だ。あいつがオヤジを匿っているとしても、全てが終わるまでオヤジを外に出す気はねぇだろうよ」
「全てが終わる頃には北山組も仁楼会もめちゃくちゃになってる!」
「だからだよ。北山雷が抗争に巻き込まれることを、あいつは何より恐れてる。あいつにとっちゃ仁楼会なんぞ蜃気楼に浮かんだ城みてぇなもんだからな。どうなろうが知ったこっちゃねえだろうよ」
 慈雨はシートを握りしめ唇を噛んだ。鏑木は一拍置いて「なぁ、坊ちゃんよ」と慈雨に語りかけた。
「組ってのは、駄目になる時は駄目になっちまうもんなんだ。俺なんか、組の一番いい頃を見させてもらった。楽しかったよ。こんな俺でもオヤジの隣で夢を見ていられた。でもな、やっぱり、命より惜しいものはないって、この歳になると思っちまう。おまえみてぇな若い命は、特別に惜しい」
 鏑木の声は諭すようであり、懐かしむようでもあった。慈雨の心にさざ波が立った。ずっと前線に立って来たこの人に、ここまで言わせてしまった。
「組なんか、どうなったっていいんだよ。オヤジは心血注いで組を支えたが、たかが入れ物だろ。……もういいんだよ。おまえはそのワンコ連れて逃げろ。オヤジもそういう意味でそのワンコの手綱をおまえに握らせたんじゃねぇのか?」
「そんなの、いやだ」
 突っぱねれば、鏑木の額に青筋が浮かんだ。慈雨は構わずに続けた。
「組が崩れていくのを黙って見ているだけなんて、できない」
「ガキのおまえに何ができる」
「おれはこの世界のことを何も知らない。けど、知らないから何もできないってわけじゃない。組はおれの家だ。おれはおれの守りたいもののために今のおれにできることをする。桂さんの屋敷に行って、じいちゃんを出してくれるように説得する。北山組にも仁楼会にも無駄な犠牲者を出したくない」
「オヤジを出して?そしてどうする?もう事は坂を転がり始めた。……おまえは知らねぇだろうが、昨晩仁楼会の所有している空き倉庫が半焼した。組のアタマが出てって収まる話じゃなくなってんだ。今日明日には抗争が始まる」
「それでも、おれは逃げたくない」
「ナマ言ってんじゃねぇぞ!!」
 鏑木の怒号に慈雨の鼓膜が痺れた。
「死ぬ覚悟なら、とうにできてる」
 慈雨は鏑木を睨むように見つめ、訴えた。
「おれに足りなかったのは、生きる覚悟だ」
 小さな獣が、闇の中で目を覚ます。
「鏑木さん、おれは生きる。生きるために、目の前のことをから目を逸らさずにいたい。もう、逃げたくない」
 かつてこの身を掠めた死に甘え、一枚壁を隔てた向こうで戦っている男たちの存在に気付かないふりをしていた。
 透明人間なんて、いなかった。いたのは、一匹の臆病な獣だけ。生きるのが怖いと、戦うのが怖いと震えている、小さな獣だけ……。
「ったく、手に負えねぇ。誰に似たんだかなぁ……」
 鏑木は掻き上げた前髪をぐしゃぐしゃと崩し、ウインカーを出した。
「桂の屋敷まで一時間はかかる。今のうちに寝とけ」
 表情を緩めた慈雨の頭を軽く叩き、鏑木はアクセルを踏んだ。
 慈雨はずっとこちらを見つめていた静に視線を合わせ、不器用に微笑んで見せた。……どうしてだろう。静の傍にいると、上手に笑うことができない。
 静の手に触れ、躊躇いがちに握る。大きな手。こんなおれを受け止めてくれた手。いつだって、おれを守ろうとしていた手……。
「傷、残ってしまったね」
 梢に切り付けられた手のひらの傷は閉じているものの柔らかく、触れればそこから静が壊れてしまいそうで、慈雨は瞳を歪ませた。
「どれだけ傷ついても、おれは貴方の傍にいる」
「ふふ。おれが死ぬまで?」
「そうだ。貴方が死ぬまで傍にいる。死んだって、傍にいる。おれは鼻と耳がいい。貴方が妙な悪戯をしたって、透明人間になったって、おれは貴方を見失ったりしない」
「……そうだね……」
 静は手を握り返し、空いた手で慈雨の目元を撫でた。どうして?と視線で問えば、静の指先が濡れていた。慈雨は泣いていた。
「泣かないでくれ」
 次々と転がる涙を、静は慌てて拭った。静はまるで傷口から滴る血を拭うかのように必死になっていて、慈雨は涙を流しながら笑ってしまった。
「どうして泣くんだ?貴方が泣くと……、」
 言葉を詰まらせ、静は慈雨の頬をあやすように撫でた。温かくて、優しくて、安心する。慈雨は涙で弛んだ静を見つめ続けた。火照った目元に口づけられ、その仕種に応えて瞼を下ろす。静の唇は、その手のひらにある傷と同じくらい、熱くて柔らかかった。
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