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過去のあなたも、今のあなたも(中)
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「あなたは呆れるかもしれないけど、おれは、あなたの傍にいたくてここまでやって来てしまったんです。おれをこんなにも無鉄砲にさせるのは、あなただけなんです」
晴臣は閉ざしていた唇を薄く開き、「純はおれを買い被ってる」と消え入りそうな声で言った。
「純にそんなふうに思ってもらえるおれじゃないんだよ。情けないけど、おれは、」
「世話焼きで、かっこつけたがり」
ハッと、晴臣の眼差しの芯が純を捉えた。
「繊細で、心配性。プライドは高いのに、自己肯定感は低い。自分を犠牲にしてまで、他人に尽くしてしまうところがある……」
ほた、ほたほた、と、手元に雫が落ちる。純は鼻を啜り、「どう? 合ってるでしょう?」と言って、笑って見せた。
「あなたは、この部屋で友だちとルームシェアしてたって言ったけど、それにしてはきれいすぎる。靴箱だって上一段しか汚れてない。……学生寮を嫌がっていたおれのために、こんな部屋まで借りてしまうなんて。あなたはほんとうにどうかしてる」
晴臣の胸が、息を吸ってぐっと膨らんだ。言い返すのを堪えている彼が不憫だったけれど、純は追及の手を緩めなかった。
「ここが学生向けの物件でないことは、調べればすぐに分かりました。深夜までのアルバイトは、ここの家賃を払うため? おれにずっと嘘を吐き続けるつもりだったんですか?」
晴臣は押し黙ったまま顔を背け、瞳を歪めた。その様子から「そんなふうに詰らないでほしい」なんて声が聞こえてきそうで、純は晴臣の不安を宥めるように微笑んだ。
「分かってます。あなたがおれのために嘘を吐いたこと、おれのために身を粉にして働いていたこと。でもおれは、その事実や苦労を共有してほしかった。あなたはただでさえかっこつけたがるのに、嘘を吐かれると、余計にほんとうのあなたが分からなくなる」
「純は、そう言うけど……!」
張り上げた声は震えて、握った拳はその堅さゆえに砕け散ってしまいそうだった。
「純が好きになったのは、昔のおれだろ。放課後の二時間しか一緒にいない、整えた外面しか見せてないおれだろ。そういうおれしか知らないおまえに、これからも好きでいてもらうためにはどうしたらって、おれは、」
晴臣は口元を覆い、沈黙した。純は祈るように晴臣を見上げ、晴臣は瞼をきつく下ろした。
「こんな真っ直ぐな好意、初めてだったから。応えたかった。最初はただ、それだけだった」
「やっぱり。いつからおれの気持ちに気付いてたんですか?」
晴臣は深く息を吐き、「文芸部に入って、しばらくして」と答えた。その答えは晴臣に好意を抱き始めた頃とちょうど重なっていて、純は思わず噴き出した。
「はずかしい。そんなにバレバレでした?」
「……いや、分かるでしょ。あんな……あんな目で見られたら、誰だって気付く」
晴臣は腰を下ろし、純に視線を合わせた。
「純の言う通り。おれは、あれこれ考え過ぎの、見栄っ張りでプライドの高い、周囲の雰囲気に馴染むのがうまいだけの、小心者だよ。だから、高校生の頃、学校がすごく息苦しくて……。カースト上位のやつらとつるんで安心してるのに、そこに適応しきれない自分が情けなかった。ヘルニアが悪化してサッカー部を辞めることになって、腰はそんな状態になってんのに、正直ホッとした。内申に響くといけないから、会話と部員の少なそうな文化部をてきとうに選んだ。そこで、純に出会った」
晴臣の表情がかすかに緩む。純もそれに応えるように微笑んだ。
「年下のくせに、出会った瞬間におれのことを邪魔くさそうに見てくるから、おれはむきになった。絶対に毎日部活に出ておまえの目の前で本読んでやるからなって、生まれて初めて文庫本買って、毎日あの部屋に通って。でも、そうしてるうちに、しゃべったり、互いを待ったり待たれたり、一緒に帰るようになって、いつの間にかキラキラした目で見られるようになって……。それまでは、そういう好意を感じるとしんどくなってたんだけど、純のはどうしてかしんどくなくて、純をたいせつにしなきゃって思った。そう思える自分が誇らしくて、純をたいせつにすることで自分をたいせつにしてた」
「そうだったんですね。なんだかうれしい」
的外れな言葉だったのか、晴臣は面食らったようになり、それから、「あのなあ、ちゃんと話聞いてたか?」と言って項垂れた。
「おれは、ペラペラの自信をおまえの好意で補強してたんだよ」
「そうだったとしても、先輩がおれに優しかったことは事実です。その優しさが嬉しかったことも、事実です」
一瞬にして眼差しが深く絡んで、晴臣はどこか悔しそうに瞳を歪めた。
「純のさ、そういうとこが、おれにはすごく……、胸が苦しくなるくらい、眩しいんだよ。純は、そういう眩しいものを、おれにいっぱい見せてくれたんだよ。純は、気付いてもいないだろうけど……」
思わぬ言葉に、純は応えるのを躊躇った。眩しい? おれが……?
「純は、自分をちゃんと持ってるよな。ちょっと卑屈っぽいけど、他人に必要以上に靡かず、受け入れるものを自分で選んでる。そういうのって、なんかちょっと、わがままだ。でも、そういう純は、おれにとってすごく眩しかった。……卒業して物理的に離れると、純のことばっか考えるようになった。それで気付いた。もしかして、って。オーキャンで再会した純は思い出の中の純よりずっときれいで、胸が苦しくなった。会えて嬉しくて、でも、また離れなきゃいけないんだと思うと、もっと苦しくなって……」
晴臣は喉元にある言葉を隠すように俯いた。考えるより先に、身体が動く。純は晴臣の手に触れ、視線が通うのを待ってから、「大丈夫だから」と囁いた。
「純の乗ったエレベーターの扉が閉まった時、純と別の部屋に帰るのはいやだって思った。純が、寮に入るのはいやだって言った時、これはチャンスだって思った。二人暮らししようって誘ったら、おまえは頷いてくれて。……正直、勝ち確じゃんって、思ったよ。二人で暮らしてるうちに純の方から告ってくれるかもなんて浮かれて、でも、」
晴臣は物憂げに下瞼を膨らませた。
「おれと同じような、いや、おれなんかよりずっと純にお似合いの男の先輩が現れて、おまえはその人とあっという間に仲良くなって、おれはすごく焦った。焦れば焦るほど肩に力が入って、余裕なくて、おまえのしたいことにも口出しして、週五でバイト入れてたから、一緒に住んでるのに離れてる時間の方が長くて、純は今頃どうしてるんだろう誰といるんだろうって、バイト中も気が気じゃなくて。それまでは、純の気持ちが手に取るように分かってたのに、一気に分かんなくなった。何考えてんのってイライラして、ひどいこと言った。ほんとうに、ごめん」
頭を下げた晴臣のつむじを見て、純は「ああこれもそうだ」と呟いた。顔を上げた晴臣と目が合って、純は微笑んだ。
「先輩のつむじって、左巻きなんですね。……知らなかった」
勢いを削がれ、晴臣は「そんなこと、おれだって知らなかったよ」と言って、眉を顰めた。
「あなたも知らないあなたのこと、おれ、ちょっと知ってます」
「今の……、つむじみたいなこと?」
「そう。少しだけど、知ってる」
周囲への気配りを忘れず、和を保とうとするところ。他人の価値観を受け止められるところ。自分より他人を優先するところ。他人のためにここまで頑張れてしまうところ。
あなたも知らないあなたのこと、おれは、あなたよりもよく知ってる。
「ねえ、これだけしゃべっても、あなたは肝心なことを言わない」
「だって、無理だ。勝ち確じゃないと無理なんだよおれは。……ごめん、こういう、“勝ち確”とか、“おまえ”とか、そういう表現も純は好きじゃないんだって分かってる。こうやってぐずぐずしてるうちに純の心が離れてくんだってことも分かってる。でもおれ、純を失ったらって考えると、」
「カチカクって、勝利は確定してる、って意味ですか?」
痛みの走った表情で、晴臣は「そうだよ」と、望みを手放すように言った。
晴臣の感じている通りだ。「勝ち確」なんて、これ以上美しくない言葉があるのだろうか。けれど、今の晴臣から聞くと、これ以上愛おしいものはないようにも思える。
おれもたいがいだな。純は自嘲気味に微笑み、晴臣の手を握った。
「勝ち確ですよ」
「……」
「勝ち確です。だから、言って。あなたの口から聞きたい」
あなたに出会う前のおれだったら、きっと、その言葉を耳にするだけで顔を顰めていただろう。あなたと出会ってから、おれは変わった。おれも知らないおれが、顔を出すようになった。
純は晴臣を見つめ返した。眼差しを伝って、光が散った。
「純が好きだ。……おれのそばにいて」
欠けた月を愛おしく思うように、柔いあなたを愛おしく思う。
確かに、おれはあなたに夢を見ていたのかもしれない。でも、あなたは、そういう夢をおれに見せるだけのものを、おれにくれていたんだよ。
ふしぎだけど、ほつれたところや欠けたところを見つけると、あなたがもっと愛おしくなった。好きって気持ちに、愛してるって気持ちが混じるようになった。
「おれも、あなたが好き。あなたのそばにいたい」
長かったですね。うん。ケンカしちゃいましたね。うん。
囁き合って、脚を崩して、手を伸ばし合って。
触れられると、触れると、二人の心がもっともっと近づいた。体温で輪郭がとろけて恍惚としていると、純の頬に晴臣の頬が触れた。息苦しくなるほど、胸がときめいた。
「純、好きだよ」
「はい」
「どこにも行かないで……」
「どこにも行きません。ずっと、ここにいます」
自分より一回り大きな身体を抱きしめると、その温みと重みにため息がこぼれた。おれ、やっと、あなたを抱きしめることができたんだ。
晴臣は閉ざしていた唇を薄く開き、「純はおれを買い被ってる」と消え入りそうな声で言った。
「純にそんなふうに思ってもらえるおれじゃないんだよ。情けないけど、おれは、」
「世話焼きで、かっこつけたがり」
ハッと、晴臣の眼差しの芯が純を捉えた。
「繊細で、心配性。プライドは高いのに、自己肯定感は低い。自分を犠牲にしてまで、他人に尽くしてしまうところがある……」
ほた、ほたほた、と、手元に雫が落ちる。純は鼻を啜り、「どう? 合ってるでしょう?」と言って、笑って見せた。
「あなたは、この部屋で友だちとルームシェアしてたって言ったけど、それにしてはきれいすぎる。靴箱だって上一段しか汚れてない。……学生寮を嫌がっていたおれのために、こんな部屋まで借りてしまうなんて。あなたはほんとうにどうかしてる」
晴臣の胸が、息を吸ってぐっと膨らんだ。言い返すのを堪えている彼が不憫だったけれど、純は追及の手を緩めなかった。
「ここが学生向けの物件でないことは、調べればすぐに分かりました。深夜までのアルバイトは、ここの家賃を払うため? おれにずっと嘘を吐き続けるつもりだったんですか?」
晴臣は押し黙ったまま顔を背け、瞳を歪めた。その様子から「そんなふうに詰らないでほしい」なんて声が聞こえてきそうで、純は晴臣の不安を宥めるように微笑んだ。
「分かってます。あなたがおれのために嘘を吐いたこと、おれのために身を粉にして働いていたこと。でもおれは、その事実や苦労を共有してほしかった。あなたはただでさえかっこつけたがるのに、嘘を吐かれると、余計にほんとうのあなたが分からなくなる」
「純は、そう言うけど……!」
張り上げた声は震えて、握った拳はその堅さゆえに砕け散ってしまいそうだった。
「純が好きになったのは、昔のおれだろ。放課後の二時間しか一緒にいない、整えた外面しか見せてないおれだろ。そういうおれしか知らないおまえに、これからも好きでいてもらうためにはどうしたらって、おれは、」
晴臣は口元を覆い、沈黙した。純は祈るように晴臣を見上げ、晴臣は瞼をきつく下ろした。
「こんな真っ直ぐな好意、初めてだったから。応えたかった。最初はただ、それだけだった」
「やっぱり。いつからおれの気持ちに気付いてたんですか?」
晴臣は深く息を吐き、「文芸部に入って、しばらくして」と答えた。その答えは晴臣に好意を抱き始めた頃とちょうど重なっていて、純は思わず噴き出した。
「はずかしい。そんなにバレバレでした?」
「……いや、分かるでしょ。あんな……あんな目で見られたら、誰だって気付く」
晴臣は腰を下ろし、純に視線を合わせた。
「純の言う通り。おれは、あれこれ考え過ぎの、見栄っ張りでプライドの高い、周囲の雰囲気に馴染むのがうまいだけの、小心者だよ。だから、高校生の頃、学校がすごく息苦しくて……。カースト上位のやつらとつるんで安心してるのに、そこに適応しきれない自分が情けなかった。ヘルニアが悪化してサッカー部を辞めることになって、腰はそんな状態になってんのに、正直ホッとした。内申に響くといけないから、会話と部員の少なそうな文化部をてきとうに選んだ。そこで、純に出会った」
晴臣の表情がかすかに緩む。純もそれに応えるように微笑んだ。
「年下のくせに、出会った瞬間におれのことを邪魔くさそうに見てくるから、おれはむきになった。絶対に毎日部活に出ておまえの目の前で本読んでやるからなって、生まれて初めて文庫本買って、毎日あの部屋に通って。でも、そうしてるうちに、しゃべったり、互いを待ったり待たれたり、一緒に帰るようになって、いつの間にかキラキラした目で見られるようになって……。それまでは、そういう好意を感じるとしんどくなってたんだけど、純のはどうしてかしんどくなくて、純をたいせつにしなきゃって思った。そう思える自分が誇らしくて、純をたいせつにすることで自分をたいせつにしてた」
「そうだったんですね。なんだかうれしい」
的外れな言葉だったのか、晴臣は面食らったようになり、それから、「あのなあ、ちゃんと話聞いてたか?」と言って項垂れた。
「おれは、ペラペラの自信をおまえの好意で補強してたんだよ」
「そうだったとしても、先輩がおれに優しかったことは事実です。その優しさが嬉しかったことも、事実です」
一瞬にして眼差しが深く絡んで、晴臣はどこか悔しそうに瞳を歪めた。
「純のさ、そういうとこが、おれにはすごく……、胸が苦しくなるくらい、眩しいんだよ。純は、そういう眩しいものを、おれにいっぱい見せてくれたんだよ。純は、気付いてもいないだろうけど……」
思わぬ言葉に、純は応えるのを躊躇った。眩しい? おれが……?
「純は、自分をちゃんと持ってるよな。ちょっと卑屈っぽいけど、他人に必要以上に靡かず、受け入れるものを自分で選んでる。そういうのって、なんかちょっと、わがままだ。でも、そういう純は、おれにとってすごく眩しかった。……卒業して物理的に離れると、純のことばっか考えるようになった。それで気付いた。もしかして、って。オーキャンで再会した純は思い出の中の純よりずっときれいで、胸が苦しくなった。会えて嬉しくて、でも、また離れなきゃいけないんだと思うと、もっと苦しくなって……」
晴臣は喉元にある言葉を隠すように俯いた。考えるより先に、身体が動く。純は晴臣の手に触れ、視線が通うのを待ってから、「大丈夫だから」と囁いた。
「純の乗ったエレベーターの扉が閉まった時、純と別の部屋に帰るのはいやだって思った。純が、寮に入るのはいやだって言った時、これはチャンスだって思った。二人暮らししようって誘ったら、おまえは頷いてくれて。……正直、勝ち確じゃんって、思ったよ。二人で暮らしてるうちに純の方から告ってくれるかもなんて浮かれて、でも、」
晴臣は物憂げに下瞼を膨らませた。
「おれと同じような、いや、おれなんかよりずっと純にお似合いの男の先輩が現れて、おまえはその人とあっという間に仲良くなって、おれはすごく焦った。焦れば焦るほど肩に力が入って、余裕なくて、おまえのしたいことにも口出しして、週五でバイト入れてたから、一緒に住んでるのに離れてる時間の方が長くて、純は今頃どうしてるんだろう誰といるんだろうって、バイト中も気が気じゃなくて。それまでは、純の気持ちが手に取るように分かってたのに、一気に分かんなくなった。何考えてんのってイライラして、ひどいこと言った。ほんとうに、ごめん」
頭を下げた晴臣のつむじを見て、純は「ああこれもそうだ」と呟いた。顔を上げた晴臣と目が合って、純は微笑んだ。
「先輩のつむじって、左巻きなんですね。……知らなかった」
勢いを削がれ、晴臣は「そんなこと、おれだって知らなかったよ」と言って、眉を顰めた。
「あなたも知らないあなたのこと、おれ、ちょっと知ってます」
「今の……、つむじみたいなこと?」
「そう。少しだけど、知ってる」
周囲への気配りを忘れず、和を保とうとするところ。他人の価値観を受け止められるところ。自分より他人を優先するところ。他人のためにここまで頑張れてしまうところ。
あなたも知らないあなたのこと、おれは、あなたよりもよく知ってる。
「ねえ、これだけしゃべっても、あなたは肝心なことを言わない」
「だって、無理だ。勝ち確じゃないと無理なんだよおれは。……ごめん、こういう、“勝ち確”とか、“おまえ”とか、そういう表現も純は好きじゃないんだって分かってる。こうやってぐずぐずしてるうちに純の心が離れてくんだってことも分かってる。でもおれ、純を失ったらって考えると、」
「カチカクって、勝利は確定してる、って意味ですか?」
痛みの走った表情で、晴臣は「そうだよ」と、望みを手放すように言った。
晴臣の感じている通りだ。「勝ち確」なんて、これ以上美しくない言葉があるのだろうか。けれど、今の晴臣から聞くと、これ以上愛おしいものはないようにも思える。
おれもたいがいだな。純は自嘲気味に微笑み、晴臣の手を握った。
「勝ち確ですよ」
「……」
「勝ち確です。だから、言って。あなたの口から聞きたい」
あなたに出会う前のおれだったら、きっと、その言葉を耳にするだけで顔を顰めていただろう。あなたと出会ってから、おれは変わった。おれも知らないおれが、顔を出すようになった。
純は晴臣を見つめ返した。眼差しを伝って、光が散った。
「純が好きだ。……おれのそばにいて」
欠けた月を愛おしく思うように、柔いあなたを愛おしく思う。
確かに、おれはあなたに夢を見ていたのかもしれない。でも、あなたは、そういう夢をおれに見せるだけのものを、おれにくれていたんだよ。
ふしぎだけど、ほつれたところや欠けたところを見つけると、あなたがもっと愛おしくなった。好きって気持ちに、愛してるって気持ちが混じるようになった。
「おれも、あなたが好き。あなたのそばにいたい」
長かったですね。うん。ケンカしちゃいましたね。うん。
囁き合って、脚を崩して、手を伸ばし合って。
触れられると、触れると、二人の心がもっともっと近づいた。体温で輪郭がとろけて恍惚としていると、純の頬に晴臣の頬が触れた。息苦しくなるほど、胸がときめいた。
「純、好きだよ」
「はい」
「どこにも行かないで……」
「どこにも行きません。ずっと、ここにいます」
自分より一回り大きな身体を抱きしめると、その温みと重みにため息がこぼれた。おれ、やっと、あなたを抱きしめることができたんだ。
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