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受け止めてくれるあなたと、無精ひげ
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深夜までアルバイトをしている晴臣と、午前中に授業を詰め込んでいる純は、生活リズムが合わない。二人暮らしを始めて一カ月が経ったけれど、じっくりと会話したのは鍋をした日だけだった。
だから、いちいちドキドキしてしまうんだと思う。玄関に晴臣のスニーカーを見つけて、純は鼓動を逸らせた。
「あ、純、おかえり」
どぅおあっ。純は声にならない声を上げて玄関扉に背をぶつけた。それもそのはず、この一室は、玄関から入ってすぐに洗面所があって、そこから出て来た晴臣は、濡れた髪からシャンプーの香りをさせていて……。
「昨日は寝落ちしちゃって、風呂に入りそびれて。バイト先、居酒屋っていうか焼き鳥屋なんだけど、炭火と煙草の匂いしない? おれ、臭くない?」
腕を眼前にかざされ、純は「無臭ですっ」と即答した。
無臭なわけがない。湯気の甘い香りと、シャンプーのシトラスの香り、それから、なんだか「せんぱいの匂い」としか言い表せない、晴臣そのものの匂い……。
「なんだよ無臭って。純っておもしろいよな。ツボだわ」
純は曖昧に笑みを返して自室へ急いだ。今まで意識していなかったけれど、風呂場やトイレを共有していることが一大事に思えて、ぬわああああ! と叫び出しそうになった。
「じゅーん。部屋にいんの?」
ドアの隙間から晴臣が顔を出す。純はぐるっとそっぽを向いて部屋の隅へ突進した。ぬわああああ……!
「おーい、どうした? 純ってほんとうにおもしろいな」
ぺたぺたと足音が近づいてくる。「純」肩を叩かれ観念して振り返ると、晴臣の人差し指が純の頬をツンとつついた。眼差しがかち合って星が散る。晴臣は薄く歯を見せて面映ゆそうに笑った。純はハッとした。晴臣の口周りに、無精ひげが生えている。
えっ、なんか、なんか……!
口周りにポツポツと散ったそれが、長い睫毛と同じくらい特別なものに思えて、純は胸をときめかせた。
「授業全部終わった?」
頷くと、次いで「今からどっか行こっか」という声が耳裏に吹きかかり、耳殻が痺れたようになった。
「純、どっか行きたいとこある?」
「や……。おれは、どこでも……」
熱くなっていく耳元に気を取られていると、頬に晴臣の指先が触れた。
背中越しに眼差しが重なる。何度でも星が散る。晴臣は「睫毛……、」と言いかけて、それから唇を結んだ。焦色の瞳が、一瞬だけキュッと歪んだ。
「準備できたら声かけるから、ちょっと待ってて」
いたずらされたのも、あんなに近くで話したのも、無精ひげを見たのも、裸足の足音も、ぜんぶ初めてで。純は熱い瞳で晴臣の背中を見つめた。二人で暮らし始めたから? 水野先輩を前より近くに感じる……。
「合格祝いに、なんか買ってあげる。欲しいものある?」
街の中心部に向かう電車の中、晴臣が囁く。おれ、何も欲しくない。首を振ると、晴臣は「欲しいもの、見つかるといいな」と言って、微笑んだ。
百貨店のATMに並んだ晴臣の後ろ姿を見ると、純は彼を呼び止めたくなった。けれど、呼び止めるのも、呼び止めないのも、違う気がする。迷っているうちに晴臣がこちらへ戻って来て、純は彼の「行こっか」という呼びかけに小さく頷いた。
「スニーカーなんかどう? もう一足持ってても困らないでしょ」
服は? 靴は? 帽子は? 立て続けに色々なものを見せられて、純は当惑した。おれ、ほんとうに何も欲しくない。
「一万や二万のことだろ? 気にしないで好きなの選んで」
「それは、なんか、違うと思います。一万や二万って言うけど、水野先輩が稼いだたいせつなお金じゃないですか。おれ、水野先輩にお世話になってばかりだし、おれはここにいられて、」
水野先輩の傍にいられて、十分にしあわせだから。
その言葉を飲み込み、純はジーンズを握りしめた。この気持ちは、きっと先輩を困らせる。
「純って、変なとこ頑固だよな……」
「だって、違うと思うことをするのは気持ち悪いです」
晴臣は眉間の強張りをとき、目を細めた。
「ところどころ妙にはっきりしてんの、あの頃から変わんないな」
変わらないのは、あなたの方。こんなおれを「しょうがないな」って受け止めて、「それが純だよな」って受け入れてくれる……。
二人はどちらともなく歩き始め、百貨店を出た。晴臣は純が後ろに下がるたび、歩調を緩めて隣に並んでくれた。あ、これだ。純は淡いため息を吐いた。これが、ずっと、恋しかった。
「純? どうした?」
ミニシアターの前でシャルロット・ゲンズブールの笑顔を見つけて立ち止まると、晴臣もそちらに面を向けた。
「純、映画も好きになったんだ? 観る?」
先輩をおれの趣味に付き合わせるなんて……。首を振ると、晴臣はクスッと笑った。
「観たいんだろ。いいよ、付き合う」
「でも、」
「いいよ」
晴臣の眼差しや声音が、胸がギュッとなるほど優しくて、純は瞳を潤ませた。「中入って上映時間確認しよっか」頷くと、晴臣は今日一番の笑顔を見せてくれた。
上映までは時間があって、二人はチケットを購入し、一度シアターを出た。
「ごめん、近くによく行ってるレコード屋があって。ちょっと覗いていい?」
思わぬ言葉に、純は瞳を丸くした。音楽が好きだなんて知らなかった。
思えば、晴臣と対面のコミュニケーションを取っていたのは、部活での一年とオープンキャンパスでの半日だけ。おれ、先輩の何を知ってるって言えるんだろう。純は茫洋とした心地になり、隣の彼を見つめた。
「あれ? 晴臣じゃん!」
レコード屋から出て来た男がこちらに手を振る。晴臣は「うお」と、浮き立った声を上げた。
「久しぶり。いいのあった?」
「気付いたら二時間ディグってた。久々に散財したわ」
男は純に目を留めた。「隣の子、晴臣の友だち?」ひたと見つめられ、純は身構えた。進学してから、こういう目を向けられることが増え、困惑していた。
「うん。高校の後輩」
さっと、晴臣が純の前へ歩み出る。晴臣の表情を確かめると、彼は苦い笑みを浮かべていた。
「ごめん純、先に映画館戻ってて。おれもすぐそっちに行くから」
晴臣に線を引かれたのを感じ、純は映画館へ踵を返した。
もしかして、おれがダサすぎて、一緒にいるのが恥ずかしかったのかな……。純はしおれた心をどうにかしたくて、まだ何も映っていないスクリーンを睨んだ。
――鍵、返してくれてありがと。明日はおれが借りとくから。
部室の鍵を返却する純を、晴臣はいつも待っていてくれた。いつの間にか、部活がある日は二人で下校するようになっていた。
――森見君、いつも難しそうなの読んでるよな。
――難しそうなの……?
――分厚くて、漢字いっぱいで、昔の人が書いたっぽいの。
――誰でも読めますよ、読もうとすれば。
真っ向から返して、しまった、と口を噤む。剛速球のストレートしか投げられないこの唇は、今までに何度も災いを連れてきた。
――なるほどね。確かに、森見君の言う通りかも。
剛速球を笑顔で受け止められ、純はまごついた。笑うとクシャッと崩れる晴臣の目元は、どうしてかこの心を浮き立たせる。
――晴臣ぃ。いま帰り? 一緒に帰ろーよ。
下駄箱でたむろしていた上級生の一人が晴臣を呼び止める。上級生は純を見るなり眉を顰めた。
――なにこいつ? 部活の後輩?
好奇と揶揄の入り混じった瞳に耐えきれず立ち去ろうとしたその時、大きな手のひらが純の背に触れた。
――この子は部活の先輩。おれ、この子を送ってくから。じゃあな。
晴臣は軽やかにそう言って、純をその場から連れ出した。
――いいんですか? あの人、友だちじゃ……。
――いいよ。おれが森見君と帰りたかったんだから。
その言葉と、こみ上げる熱っぽい感情に戸惑って、純は俯いた。
どうして、こんな人がおれの日常に紛れ込んで、こんな言葉をくれて、隣に並んでくれるんだろう。
――そうだ。森見君。手、出して。
言われた通りに手を出すと、晴臣はなぜか困ったように微笑んだ。
――あの……?
――ううん、なんでもない。そのまま、目をつぶって。おれがいいって言うまで開けちゃだめだよ。
瞼を下ろすと、淡い影が差し、それから手のひらに何かが触れた。二つの温もりが純の両手を包み込み、離れていく。
――開けていいよ。
瞼を上げて晴臣を見つめると、彼は「おれじゃなくて、手を見て」と、またあの笑みを浮かべた。両手を開くと、ボールチェーンのついた「ちゃこぐまちゃん」が、コロンと寝返りを打った。
――これは……。
――この間、ゲーセンで獲ったんだ。部室の鍵、なんもついてなくてなくしそうだから、よかったらそのキーホルダー使って。
思わぬ贈り物に戸惑い、ちゃこぐまちゃんと晴臣を交互に見る。晴臣は焦ったように口元に手を当てた。
――あれ? 森見君、ちゃこぐまちゃんが好きなんじゃなかったの? 使ってるシャーペン、ちゃこぐまちゃんのヤツじゃん。
――えっと……。それは、妹のお古で……。
晴臣はみるみる赤面し、「やっぱ、それ返して。今のナシ」と言って、純の手からちゃこぐまちゃんを奪おうとした。純は咄嗟にちゃこぐまちゃんを胸に抱いた。
――だ、だめです! これはもうおれのです!
ちゃこぐまちゃんを晴臣から隠すようにして身体を捻ると、晴臣は一瞬瞳を大きくして、「それならいいんだけど……」と言って、項を摩った。
晴臣を気にしながらそろそろと両手を開く。そこでは、ちゃこぐまちゃんが瞳をくりくりさせていて、純は思わず頬を緩めた。水野先輩から、贈り物をもらってしまった……!
――なに。やっぱ好きなんじゃん。そんなニマニマして。
照れ隠しのように揶揄われ、けれど純は「水野先輩、ありがとうございますっ。とても嬉しいですっ」と声を弾ませた。
――森見君ってさ、なんつーか……。
眉を歪め、晴臣は言い淀んだ。晴臣を見つめ言葉の続きをジッと待っていると、晴臣は眉間に皺を寄せ、純の額を人差し指で小突いた。
――えっ、あっ、すみませっ……。
もしかして、調子に乗り過ぎた? 青ざめていると、晴臣は小突いたことを上書きするように頭を撫でてくれた。
――怒ってないよ。ほら、早く帰ろ。
純は頷いて、晴臣に続いた。隣に並ぶのが憚られて後ろに下がっていても、歩いているといつの間にか晴臣が隣にいて、そのたびに嬉しくて……。
ふと、晴臣と目が合って、いつもなら自分から逸らしてしまうけれど、今日は笑うことができた。
――せんぱい。これ、たいせつにします。いつも、ありがとうございます。
どうしてか、今日は晴臣がそっぽを向いてしまった。けれど、足並みは変わらず揃っていて、純はそれだけで胸がいっぱいになってしまった。
「ベティーちゃんだ」
思考が途切れ、純は声の主を振り返った。「片岡先輩」葵は片手を上げ、純の呼びかけに応えた。
「この間、ベティーちゃんと『なまいきシャルロット』観たじゃん? あれで、他のも観たくなっちゃって。……ベティーちゃんも来てんじゃん。こういうの、偶然の方が断然嬉しい」
葵は純の隣に座り、「ここ、平日の昼間はあんま人いないから」と言って、いたずらっ子みたいに笑った。
「ベティーちゃん、一人?」
「いや、高校の先輩と……」
「先輩? へえ、なんか意外。でも確かに、人見知りのネコ手懐けたような気分になるわ、ベティーちゃんといると」
ベティーちゃんの次は、人見知りのネコ……。純がムッとすると、葵は余計に生き生きした。
「機嫌直して。会えて嬉しいのは本当だよ。シャルロットが出てるやつ、うちに何本かあるから、また遊びに来て」
こちらに向き直った葵の肩からシャツが落ちる。インナーから覗いた鎖骨には青い小鳥が留まっていて、純は思わず見入ってしまった。
「おーい、めっちゃ見てくるやーん。タトゥーがそんな珍しい?」
「タトゥーって、色つけられるんですね」
「つくよ当たり前じゃん。えーとね……、」
まくり上げたスウェットの向こう、左脚のふくらはぎでは、カラフルな天使が膝を抱えている。色彩の鮮やかさに驚いていると、葵は「それから、ここ」と言って、項にかかった髪を掻き上げた。耳の付け根から、星々がこぼれている。それは天の川のように背中へと続いていて、純は星の行方を追って視線を滑らせた。
「純」
純を呼び止めたその声は、今までになかった響きを含んでいて、純はすぐに面を上げた。……ドリンクを持った晴臣が、静まり返った瞳でこちらを見ていた。
どくっ。心臓がみじろぐ。どうしてか、してはいけないことをしてしまった気分になった。
「あー……。この人が、ベティーちゃんが言ってた先輩?」
葵がカラッとした声で問うと、やっと空気が緩んで、純は頷いた。
「純」
再び呼ばれ視線を晴臣に戻すと、彼は穏やかな笑みを浮かべていた。純は説明を求められていることを直感した。
「サークルの勧誘から助けてくれた、片岡先輩です」
葵を紹介すると、晴臣は葵へ手を差し出し、握手を求めた。
「水野晴臣です。純とは高校からの付き合いで。そこ、おれの席なんですけど、よかったら座ってください。映画好きどうしで座った方が楽しいと思うし」
晴臣は、握手を交わしながら朗らかに言ったけれど、葵は早々に握手を切り上げ、「や、悪いからいいよ。おれ、座る場所にはこだわりがあって」と言って席を立った。
「じゃあね。デート楽しんで」
茶目っ気たっぷりに去って行く葵に眉を吊り上げる余裕もなく、純は晴臣を見つめた。水野先輩、怒ってる……? シンとした空気に身体が強張りはじめると、晴臣がやっと隣に座ってくれた。
「四年生? あんなにかっこいいと目立つと思うけど、見たことない気がする」
「うちの大学じゃなくて、隣の大学の美術科だって、先輩は……」
あれ? おれ、どっちの「先輩」のことを言ってるんだ? 頭がこんがらがって、純は「片岡先輩は、そう言ってたんですけど」と小さな声で言い直した。「そうなんだ」晴臣はそうとだけ言って、純にドリンクを渡した。
心臓がチクチクした。水野先輩、どうして怒ってるんだろう? そう考えて、いや水野先輩がこんなことで怒るなんてありえないから、と別の自分が狼狽えている自分を笑う。
水野先輩に謝るべき? でも、何を? 逡巡しているうちにエンドロールが流れ、純は隣の晴臣を恐る恐る確かめた。晴臣は純の視線に気付くと、「腹減らない? なんか食って帰ろ」と、いつもの穏やかな声で言った。
「足元暗いから、気を付けて」
優しく気遣われ、ホッとして力が抜けていく。すると、言われたそばから何もないところで躓いてしまい、晴臣に支えられてしまった。
「なに、大丈夫? 気を付けてって言ったばっかじゃん」
晴臣は呆れたように言ったけれど、その表情は柔らかかった。
「絡まれたのって、おれと手を振り合った後?」
「え?」
「だから。ガイダンスの日、サークルの勧誘にあって嫌な思いしたんでしょ?」
つっけんどんに返されても、心配されていると感じるのには十分だった。
「手を振り合った後です。片岡先輩のおかげで、ガイダンスに間に合いました」
「なんでおれを呼ばないの、すぐそこで絡まれてたんじゃないの」
「二号棟の前でしたから、ずっと向こうですよ。水野先輩に迷惑かけずに済んでよかったです」
「片岡先輩にはかけていいの?」
「え?」尋ね返すばかりの純に呆れたのか、晴臣は「もういいよ。この話はおしまい」と言って笑った。
「純。これ、気に入るかどうか、分かんないけど」
ミニシアターを出ると、晴臣は純に紙袋を差し出した。「え? おれに……?」驚きながらも受け取ると、晴臣はいつもよりぶっきらぼうに、「開けてみて」と言った。
「純がほんとうに欲しいものできたら買ってあげるから、これは仮の合格祝いね」
紙袋の中身は、たたみ方次第で文庫本にもハードカバーにも掛けられる、深緑色のブックカバーだった。先輩、おれのことを考えて選んでくれたんだ……!
「いいんですか、ありがとうございます……!」
贈り物を胸に抱き声を上ずらせると、晴臣は「そんなたいしたもんじゃないから」と言って、またそっぽを向いた。
「つか、ベティーちゃんって何。なんでそんなあだ名で呼ばれてんの」
「おれがベティー・ブープに似てるって、片岡先輩が」
はてなを飛ばす晴臣にベティー・ブープの画像を見せると、彼は「なんこれマジで純じゃん」と言って、画面の彼女と純を交互に見た。純は思わず噴き出して、すると晴臣も笑みを深めてくれて、純は再び確信した。欲しいものが見つかるのは、ずっと先のことになりそうだ。
だから、いちいちドキドキしてしまうんだと思う。玄関に晴臣のスニーカーを見つけて、純は鼓動を逸らせた。
「あ、純、おかえり」
どぅおあっ。純は声にならない声を上げて玄関扉に背をぶつけた。それもそのはず、この一室は、玄関から入ってすぐに洗面所があって、そこから出て来た晴臣は、濡れた髪からシャンプーの香りをさせていて……。
「昨日は寝落ちしちゃって、風呂に入りそびれて。バイト先、居酒屋っていうか焼き鳥屋なんだけど、炭火と煙草の匂いしない? おれ、臭くない?」
腕を眼前にかざされ、純は「無臭ですっ」と即答した。
無臭なわけがない。湯気の甘い香りと、シャンプーのシトラスの香り、それから、なんだか「せんぱいの匂い」としか言い表せない、晴臣そのものの匂い……。
「なんだよ無臭って。純っておもしろいよな。ツボだわ」
純は曖昧に笑みを返して自室へ急いだ。今まで意識していなかったけれど、風呂場やトイレを共有していることが一大事に思えて、ぬわああああ! と叫び出しそうになった。
「じゅーん。部屋にいんの?」
ドアの隙間から晴臣が顔を出す。純はぐるっとそっぽを向いて部屋の隅へ突進した。ぬわああああ……!
「おーい、どうした? 純ってほんとうにおもしろいな」
ぺたぺたと足音が近づいてくる。「純」肩を叩かれ観念して振り返ると、晴臣の人差し指が純の頬をツンとつついた。眼差しがかち合って星が散る。晴臣は薄く歯を見せて面映ゆそうに笑った。純はハッとした。晴臣の口周りに、無精ひげが生えている。
えっ、なんか、なんか……!
口周りにポツポツと散ったそれが、長い睫毛と同じくらい特別なものに思えて、純は胸をときめかせた。
「授業全部終わった?」
頷くと、次いで「今からどっか行こっか」という声が耳裏に吹きかかり、耳殻が痺れたようになった。
「純、どっか行きたいとこある?」
「や……。おれは、どこでも……」
熱くなっていく耳元に気を取られていると、頬に晴臣の指先が触れた。
背中越しに眼差しが重なる。何度でも星が散る。晴臣は「睫毛……、」と言いかけて、それから唇を結んだ。焦色の瞳が、一瞬だけキュッと歪んだ。
「準備できたら声かけるから、ちょっと待ってて」
いたずらされたのも、あんなに近くで話したのも、無精ひげを見たのも、裸足の足音も、ぜんぶ初めてで。純は熱い瞳で晴臣の背中を見つめた。二人で暮らし始めたから? 水野先輩を前より近くに感じる……。
「合格祝いに、なんか買ってあげる。欲しいものある?」
街の中心部に向かう電車の中、晴臣が囁く。おれ、何も欲しくない。首を振ると、晴臣は「欲しいもの、見つかるといいな」と言って、微笑んだ。
百貨店のATMに並んだ晴臣の後ろ姿を見ると、純は彼を呼び止めたくなった。けれど、呼び止めるのも、呼び止めないのも、違う気がする。迷っているうちに晴臣がこちらへ戻って来て、純は彼の「行こっか」という呼びかけに小さく頷いた。
「スニーカーなんかどう? もう一足持ってても困らないでしょ」
服は? 靴は? 帽子は? 立て続けに色々なものを見せられて、純は当惑した。おれ、ほんとうに何も欲しくない。
「一万や二万のことだろ? 気にしないで好きなの選んで」
「それは、なんか、違うと思います。一万や二万って言うけど、水野先輩が稼いだたいせつなお金じゃないですか。おれ、水野先輩にお世話になってばかりだし、おれはここにいられて、」
水野先輩の傍にいられて、十分にしあわせだから。
その言葉を飲み込み、純はジーンズを握りしめた。この気持ちは、きっと先輩を困らせる。
「純って、変なとこ頑固だよな……」
「だって、違うと思うことをするのは気持ち悪いです」
晴臣は眉間の強張りをとき、目を細めた。
「ところどころ妙にはっきりしてんの、あの頃から変わんないな」
変わらないのは、あなたの方。こんなおれを「しょうがないな」って受け止めて、「それが純だよな」って受け入れてくれる……。
二人はどちらともなく歩き始め、百貨店を出た。晴臣は純が後ろに下がるたび、歩調を緩めて隣に並んでくれた。あ、これだ。純は淡いため息を吐いた。これが、ずっと、恋しかった。
「純? どうした?」
ミニシアターの前でシャルロット・ゲンズブールの笑顔を見つけて立ち止まると、晴臣もそちらに面を向けた。
「純、映画も好きになったんだ? 観る?」
先輩をおれの趣味に付き合わせるなんて……。首を振ると、晴臣はクスッと笑った。
「観たいんだろ。いいよ、付き合う」
「でも、」
「いいよ」
晴臣の眼差しや声音が、胸がギュッとなるほど優しくて、純は瞳を潤ませた。「中入って上映時間確認しよっか」頷くと、晴臣は今日一番の笑顔を見せてくれた。
上映までは時間があって、二人はチケットを購入し、一度シアターを出た。
「ごめん、近くによく行ってるレコード屋があって。ちょっと覗いていい?」
思わぬ言葉に、純は瞳を丸くした。音楽が好きだなんて知らなかった。
思えば、晴臣と対面のコミュニケーションを取っていたのは、部活での一年とオープンキャンパスでの半日だけ。おれ、先輩の何を知ってるって言えるんだろう。純は茫洋とした心地になり、隣の彼を見つめた。
「あれ? 晴臣じゃん!」
レコード屋から出て来た男がこちらに手を振る。晴臣は「うお」と、浮き立った声を上げた。
「久しぶり。いいのあった?」
「気付いたら二時間ディグってた。久々に散財したわ」
男は純に目を留めた。「隣の子、晴臣の友だち?」ひたと見つめられ、純は身構えた。進学してから、こういう目を向けられることが増え、困惑していた。
「うん。高校の後輩」
さっと、晴臣が純の前へ歩み出る。晴臣の表情を確かめると、彼は苦い笑みを浮かべていた。
「ごめん純、先に映画館戻ってて。おれもすぐそっちに行くから」
晴臣に線を引かれたのを感じ、純は映画館へ踵を返した。
もしかして、おれがダサすぎて、一緒にいるのが恥ずかしかったのかな……。純はしおれた心をどうにかしたくて、まだ何も映っていないスクリーンを睨んだ。
――鍵、返してくれてありがと。明日はおれが借りとくから。
部室の鍵を返却する純を、晴臣はいつも待っていてくれた。いつの間にか、部活がある日は二人で下校するようになっていた。
――森見君、いつも難しそうなの読んでるよな。
――難しそうなの……?
――分厚くて、漢字いっぱいで、昔の人が書いたっぽいの。
――誰でも読めますよ、読もうとすれば。
真っ向から返して、しまった、と口を噤む。剛速球のストレートしか投げられないこの唇は、今までに何度も災いを連れてきた。
――なるほどね。確かに、森見君の言う通りかも。
剛速球を笑顔で受け止められ、純はまごついた。笑うとクシャッと崩れる晴臣の目元は、どうしてかこの心を浮き立たせる。
――晴臣ぃ。いま帰り? 一緒に帰ろーよ。
下駄箱でたむろしていた上級生の一人が晴臣を呼び止める。上級生は純を見るなり眉を顰めた。
――なにこいつ? 部活の後輩?
好奇と揶揄の入り混じった瞳に耐えきれず立ち去ろうとしたその時、大きな手のひらが純の背に触れた。
――この子は部活の先輩。おれ、この子を送ってくから。じゃあな。
晴臣は軽やかにそう言って、純をその場から連れ出した。
――いいんですか? あの人、友だちじゃ……。
――いいよ。おれが森見君と帰りたかったんだから。
その言葉と、こみ上げる熱っぽい感情に戸惑って、純は俯いた。
どうして、こんな人がおれの日常に紛れ込んで、こんな言葉をくれて、隣に並んでくれるんだろう。
――そうだ。森見君。手、出して。
言われた通りに手を出すと、晴臣はなぜか困ったように微笑んだ。
――あの……?
――ううん、なんでもない。そのまま、目をつぶって。おれがいいって言うまで開けちゃだめだよ。
瞼を下ろすと、淡い影が差し、それから手のひらに何かが触れた。二つの温もりが純の両手を包み込み、離れていく。
――開けていいよ。
瞼を上げて晴臣を見つめると、彼は「おれじゃなくて、手を見て」と、またあの笑みを浮かべた。両手を開くと、ボールチェーンのついた「ちゃこぐまちゃん」が、コロンと寝返りを打った。
――これは……。
――この間、ゲーセンで獲ったんだ。部室の鍵、なんもついてなくてなくしそうだから、よかったらそのキーホルダー使って。
思わぬ贈り物に戸惑い、ちゃこぐまちゃんと晴臣を交互に見る。晴臣は焦ったように口元に手を当てた。
――あれ? 森見君、ちゃこぐまちゃんが好きなんじゃなかったの? 使ってるシャーペン、ちゃこぐまちゃんのヤツじゃん。
――えっと……。それは、妹のお古で……。
晴臣はみるみる赤面し、「やっぱ、それ返して。今のナシ」と言って、純の手からちゃこぐまちゃんを奪おうとした。純は咄嗟にちゃこぐまちゃんを胸に抱いた。
――だ、だめです! これはもうおれのです!
ちゃこぐまちゃんを晴臣から隠すようにして身体を捻ると、晴臣は一瞬瞳を大きくして、「それならいいんだけど……」と言って、項を摩った。
晴臣を気にしながらそろそろと両手を開く。そこでは、ちゃこぐまちゃんが瞳をくりくりさせていて、純は思わず頬を緩めた。水野先輩から、贈り物をもらってしまった……!
――なに。やっぱ好きなんじゃん。そんなニマニマして。
照れ隠しのように揶揄われ、けれど純は「水野先輩、ありがとうございますっ。とても嬉しいですっ」と声を弾ませた。
――森見君ってさ、なんつーか……。
眉を歪め、晴臣は言い淀んだ。晴臣を見つめ言葉の続きをジッと待っていると、晴臣は眉間に皺を寄せ、純の額を人差し指で小突いた。
――えっ、あっ、すみませっ……。
もしかして、調子に乗り過ぎた? 青ざめていると、晴臣は小突いたことを上書きするように頭を撫でてくれた。
――怒ってないよ。ほら、早く帰ろ。
純は頷いて、晴臣に続いた。隣に並ぶのが憚られて後ろに下がっていても、歩いているといつの間にか晴臣が隣にいて、そのたびに嬉しくて……。
ふと、晴臣と目が合って、いつもなら自分から逸らしてしまうけれど、今日は笑うことができた。
――せんぱい。これ、たいせつにします。いつも、ありがとうございます。
どうしてか、今日は晴臣がそっぽを向いてしまった。けれど、足並みは変わらず揃っていて、純はそれだけで胸がいっぱいになってしまった。
「ベティーちゃんだ」
思考が途切れ、純は声の主を振り返った。「片岡先輩」葵は片手を上げ、純の呼びかけに応えた。
「この間、ベティーちゃんと『なまいきシャルロット』観たじゃん? あれで、他のも観たくなっちゃって。……ベティーちゃんも来てんじゃん。こういうの、偶然の方が断然嬉しい」
葵は純の隣に座り、「ここ、平日の昼間はあんま人いないから」と言って、いたずらっ子みたいに笑った。
「ベティーちゃん、一人?」
「いや、高校の先輩と……」
「先輩? へえ、なんか意外。でも確かに、人見知りのネコ手懐けたような気分になるわ、ベティーちゃんといると」
ベティーちゃんの次は、人見知りのネコ……。純がムッとすると、葵は余計に生き生きした。
「機嫌直して。会えて嬉しいのは本当だよ。シャルロットが出てるやつ、うちに何本かあるから、また遊びに来て」
こちらに向き直った葵の肩からシャツが落ちる。インナーから覗いた鎖骨には青い小鳥が留まっていて、純は思わず見入ってしまった。
「おーい、めっちゃ見てくるやーん。タトゥーがそんな珍しい?」
「タトゥーって、色つけられるんですね」
「つくよ当たり前じゃん。えーとね……、」
まくり上げたスウェットの向こう、左脚のふくらはぎでは、カラフルな天使が膝を抱えている。色彩の鮮やかさに驚いていると、葵は「それから、ここ」と言って、項にかかった髪を掻き上げた。耳の付け根から、星々がこぼれている。それは天の川のように背中へと続いていて、純は星の行方を追って視線を滑らせた。
「純」
純を呼び止めたその声は、今までになかった響きを含んでいて、純はすぐに面を上げた。……ドリンクを持った晴臣が、静まり返った瞳でこちらを見ていた。
どくっ。心臓がみじろぐ。どうしてか、してはいけないことをしてしまった気分になった。
「あー……。この人が、ベティーちゃんが言ってた先輩?」
葵がカラッとした声で問うと、やっと空気が緩んで、純は頷いた。
「純」
再び呼ばれ視線を晴臣に戻すと、彼は穏やかな笑みを浮かべていた。純は説明を求められていることを直感した。
「サークルの勧誘から助けてくれた、片岡先輩です」
葵を紹介すると、晴臣は葵へ手を差し出し、握手を求めた。
「水野晴臣です。純とは高校からの付き合いで。そこ、おれの席なんですけど、よかったら座ってください。映画好きどうしで座った方が楽しいと思うし」
晴臣は、握手を交わしながら朗らかに言ったけれど、葵は早々に握手を切り上げ、「や、悪いからいいよ。おれ、座る場所にはこだわりがあって」と言って席を立った。
「じゃあね。デート楽しんで」
茶目っ気たっぷりに去って行く葵に眉を吊り上げる余裕もなく、純は晴臣を見つめた。水野先輩、怒ってる……? シンとした空気に身体が強張りはじめると、晴臣がやっと隣に座ってくれた。
「四年生? あんなにかっこいいと目立つと思うけど、見たことない気がする」
「うちの大学じゃなくて、隣の大学の美術科だって、先輩は……」
あれ? おれ、どっちの「先輩」のことを言ってるんだ? 頭がこんがらがって、純は「片岡先輩は、そう言ってたんですけど」と小さな声で言い直した。「そうなんだ」晴臣はそうとだけ言って、純にドリンクを渡した。
心臓がチクチクした。水野先輩、どうして怒ってるんだろう? そう考えて、いや水野先輩がこんなことで怒るなんてありえないから、と別の自分が狼狽えている自分を笑う。
水野先輩に謝るべき? でも、何を? 逡巡しているうちにエンドロールが流れ、純は隣の晴臣を恐る恐る確かめた。晴臣は純の視線に気付くと、「腹減らない? なんか食って帰ろ」と、いつもの穏やかな声で言った。
「足元暗いから、気を付けて」
優しく気遣われ、ホッとして力が抜けていく。すると、言われたそばから何もないところで躓いてしまい、晴臣に支えられてしまった。
「なに、大丈夫? 気を付けてって言ったばっかじゃん」
晴臣は呆れたように言ったけれど、その表情は柔らかかった。
「絡まれたのって、おれと手を振り合った後?」
「え?」
「だから。ガイダンスの日、サークルの勧誘にあって嫌な思いしたんでしょ?」
つっけんどんに返されても、心配されていると感じるのには十分だった。
「手を振り合った後です。片岡先輩のおかげで、ガイダンスに間に合いました」
「なんでおれを呼ばないの、すぐそこで絡まれてたんじゃないの」
「二号棟の前でしたから、ずっと向こうですよ。水野先輩に迷惑かけずに済んでよかったです」
「片岡先輩にはかけていいの?」
「え?」尋ね返すばかりの純に呆れたのか、晴臣は「もういいよ。この話はおしまい」と言って笑った。
「純。これ、気に入るかどうか、分かんないけど」
ミニシアターを出ると、晴臣は純に紙袋を差し出した。「え? おれに……?」驚きながらも受け取ると、晴臣はいつもよりぶっきらぼうに、「開けてみて」と言った。
「純がほんとうに欲しいものできたら買ってあげるから、これは仮の合格祝いね」
紙袋の中身は、たたみ方次第で文庫本にもハードカバーにも掛けられる、深緑色のブックカバーだった。先輩、おれのことを考えて選んでくれたんだ……!
「いいんですか、ありがとうございます……!」
贈り物を胸に抱き声を上ずらせると、晴臣は「そんなたいしたもんじゃないから」と言って、またそっぽを向いた。
「つか、ベティーちゃんって何。なんでそんなあだ名で呼ばれてんの」
「おれがベティー・ブープに似てるって、片岡先輩が」
はてなを飛ばす晴臣にベティー・ブープの画像を見せると、彼は「なんこれマジで純じゃん」と言って、画面の彼女と純を交互に見た。純は思わず噴き出して、すると晴臣も笑みを深めてくれて、純は再び確信した。欲しいものが見つかるのは、ずっと先のことになりそうだ。
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