スーパーシティ ～放置国家～

第六章

第五話 決起

　とうとう警察に捕まった車輪は、まず警察署の地下室で手痛い

リンチを受けた。だがまだ米穀連合会に引き渡されなくて良かった。

一方の元レーサーはドサクサに紛れていつの間にやら姿を眩ました。

しかしこれは初めから作戦だったのだ。米穀連合会が反撃してきたら

闘って潰し、警察に通報すれば大人しく捕まる算段である。


　地元に戻った元レーサーは早速倉庫のオヤジに車輪が捕まった事を

報せ、倉庫のオヤジはそれをネット以外に無線の電波も使って国民

に決起を呼びかけた。もう我慢の限界である。さんざん国民から搾取

しながら暴力集団を野放しにし、それに逆らえば国家権力が出張って

一般人だけ逮捕する等、民主主義とは名ばかりの独裁国家だ。


　過去日本において、壬申の乱や明治維新などある程度の権力者が

クーデターを起こして政権を握った事はあっても、一般国民がそれを

した事は無いとされる。しかし怒りが積もりに積もって、江戸時代の

一揆や大正時代の打ち壊しの様なものが起きた事は多々あり、比較的

大人しい日本人とて長年に渡って税金製造機にされれば怒るしか無い。


　だがこれは政権転覆や暴力革命では無く政策変更が目的の為、決起

の内容は武器を持たずあくまで抗議であり、唯一の武器はこれだけの

国民が怒ってるという人数だけだ。しかし武力鎮圧される事も覚悟する

必要がある。参加は基本的に殺される覚悟のある成人男子のみとした。

しかしそれでも多くの者がワラワラと戸外に出てくるでは無いか。


　倉庫のオヤジが決起を呼びかけた一時間後には、全国の警察署や

役所を何万もの人が取り囲む事態となった。だが全員手ぶらで暴れる

でも無く、せいぜい建物に向けて罵声を浴びせる程度である。これに

対し政府は大いに慌てふためいた。特殊警察はおろか自衛隊にも先ず

自分達を守るよう要請し、双方一触即発の事態となった。