スーパーシティ ～放置国家～

第五章

第八話 軍閥

　米穀連合会の襲撃を知った中花一家も慌てて戦争の準備をしたが、

いかんせん後手に回ってしまいアジトは片っ端から襲われた。反撃

しようと思っても実戦経験が無いので、いざ隣の仲間が撃たれると

震えて銃の安全装置を外さずに撃とうとしたり、ロケットランチャー

を出しても使い方を知る者がその場にいなかったり最悪の状況だ。


　全ての襲撃は、先ずはミニバンに分乗したスキンヘッド達が先陣

を切り、後方からバイク部隊がそれを支援しながら、騒ぎに乗じて

車などで逃げる敵を追撃する役目を担った。うまく逃げたとしても、

米穀連合会以外の地元暴力集団も加担させられてるので、これらに

見つかって報告されるだけだ。


　地元の暴力集団からすれば、いくら中花一家に借りを作ったり

幹部に中花一家とズブズブの者が居ても、最強の米穀連合会から

どっちに付くかと迫られれば答えは１つだ。強さ以外にも、中花

一家はそもそも平気で裏切るタイプなので、信用という点ではまだ

米穀連合会の方がいくらかマシだからである。

　
　中花一家上層部はまさか本当に戦争になるとは思っておらず、かと

言って下っ端はチンケな旧式の装備や実戦経験の無さという現実には

目を向けず、上層部に焚き付けられて普段から米穀連合会相手に本気

で勝てると思い込んでいた。その意気込みは大事かもしれないが、

現実はそれだけではどうしようも無かった。


　ほとんどのアジトを襲撃してあとは本拠地を残すのみとなったが、

ここまでたったの数時間、圧倒的な戦力差だった。米穀連合会の

組織力や装備は暴力集団の域を超えており、もはや１つの軍閥だ。

人材も優秀な者が揃っており、本拠地の襲撃の指揮を執るのは

「削げ鼻」と呼ばれる日本人と黒人のハーフの男だった。