スーパーシティ ～放置国家～

第五章

第四話 中花一家

　米穀連合会は緩やかに支配してきた筈の住民が予想以上に経済成長

し、自分達の商売にまで影響を及ぼしてきた事に怒り、住民の商売を

規制し保護料を上げて弱体化を計った。結果、商店や町工場は倒産

寸前に追い込まれ、他のスラムと変わらない状況に陥り、潜伏中の

車輪と元レーサーは憤りを感じながらも手が出せなかった。


　そこへ米穀連合会や様々な暴力集団と取引している、隣町を縄張り

とする中花一家（ちゅうかいっか）が最近勢力を伸ばし始めた。中花

一家は東洋系で組織され、実態は秘密主義でなにやら謎につつまれて

いるが、黒づくめの服装にサングラスをかけている者が多く、残虐性

は暴力社会の中でもトップクラスだ。


　中花一家は米穀連合会の支配する町の工場から安く仕事を請け負い、

それを自分の縄張り内の住民にさらに安く仕事を回したり、自分達の

工場で安く作った物を米穀連合会の町の商店に安く買ってもらう方法

を思いついた。当然米穀連合会には話を通してあり、共に儲かる仕組み

にしたので抗争になる事は今の所無い。


　町工場や商店からすれば倒産寸前だったので安価な取引相手は大いに

助かり、住民全体も保護料が上がって弱っていた所に、質が良くない

とは言え安く物が買え、中花一家の支配地域の住民にも仕事を与える事

にもなるので受け入れる事にした。しかし、これは中花一家という暴力

集団の利益を上げる結果になり、米穀連合会以上の経済力を持たせた。


　だが時すでに遅し、住民は自分達だけでは商品を作ったり仕入れたり

する能力が半減していたので、中花一家が無くては生きられない様な状況

に陥っていた。また住民の有力者の中には中花一家に協力するように金を

掴まされ脅される者も出始め、その上米穀連合会の幹部にも中花一家に

借りを作ってしまった者もおり、中花一家の時代が到来しかけていた。