スーパーシティ ～放置国家～

第三章

第八話 国民の怒り

　真友連合の追撃を躱し、民間警察に追われていた所を住民に助け

られた車輪は、彼らが暴力集団だけでなく警察組織や政府にも不満

がある事を知った。それもそうだろう。税金は収入の３割、暴力集団

の徴収も３割、それでいて行政サービスは放置状態なのだから当たり

前だ。ちなみに消費税は徐々に上がり２０４０年に２０％になった。


　この倉庫の持ち主であるオヤジが言うには、ほぼ日本全体となった

スラムは全国このような惨状なのに、全国に７か所ある「スーパー

シティ」はまさに楽園、犯罪が起きないように人や金、物流の動き

は全てコンピューターで管理され、人間が苦労しなくて良いように

ＡＩが代わりに何でもやってくれるらしい。


　極端な話、人間は複数のＡＩロボットを所持しているので仕事も

一任してる可能性があるらしく、スラムに住み非正規労働に勤しむ

国民はロボットから仕事を与えられ指示されて監督されているかも

しれないのだ。それでいてスーパーシティの住民は掃除や洗濯すら

せずに我々からの収益で悠々自適の生活である。


　このシステムを主導した竹内平助いわく、彼らは努力した結果で

あって成功した者を妬んでははいけない。スラムの住民は自分から

努力しなかったのだから貧しくなる権利を有していると言う。確か

に全てが間違っている訳では無い。だが努力しなかったのでは無く、

最初から努力する機会すら奪われていたとしたらどうなのか。


　一部の者だけに富が集中し、ほとんどの国民が強盗や麻薬等の

犯罪と隣り合わせの生活を強いられる劣悪な環境で、金のかかる

それなりの大学まで行くのはほぼ不可能だ。そこには蓋をして勝手

に努力を怠ったと決めつけられるのは納得が行かない。無関心と

思われた国民の怒りと憎悪は確実に竹内平助に向かっていた。