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まだ知らない私 第3話

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「食事の前に案内を終わらせてしまおう。あとは、こちらの風呂だな。」

私は神楽さんに続いた。お風呂は、木でできており、とても贅沢な造りになっている。陽の光が差し込んでぬくもりのあるお風呂だ。ここにも女中さんがおり、掃除や水汲みなどの仕事をしていた。

「風呂は時間で分けて男女も交代制になっている。……まぁ、ないと思うが、間違えないように気をつけるんだぞ。……もし心配なら外に見張りをつけてもいいが。」

「み、見張りですか?そんな大袈裟な……。」

「いや、最近女中の数も増えてきたしな。中には君のように若い女性もいる。よからぬことを考える馬鹿がいるかもしれん。……今度、氷川さんに進言してみよう。」

そういって、神楽さんは少し考え込んでしまった。よからぬことって誰か心当たりでもいるのかしら。まぁ、若い男の人が沢山集まっているんだし、悪事を事前に防ぐためには必要な対策なのかも……。

神楽さんの言うとおり、所内のいたるところに女中さんがいて、炊事や掃除、洗濯を行っている。だからこんなに手入れが行き届いているんだなぁ。私も見習いとして働けるように頑張ろう。

「さて、大体所内は案内し終えたな。昼食にしようか。」

「はいっ!」

私は神楽さんに勢いよく返事した。わーい!待ってました。さっきの良い匂いもあって、お腹ペコペコだよ~。

神楽さんは、そんな私を見てクスッと笑う。えへへ。大人っぽいのに笑顔はキュートなのね。

先程来た食堂に戻ると、これまた別の男前と鉢合わせた。

「藤堂、今から昼か。」

「あぁ。副総長もか。……さっき劉さんが言っていた娘か。」

神楽さんが声をかけたのは、藤堂さんという鬼だった。

「もう既に話がいっていたか。劉紀の奴、流石の仕事の速さだな。」

「あぁ……噂どおりだな」

噂どおり……?桜谷さんは、私のことをどんな風に紹介しているんだろう?私を悪く言う人には思えないけど……。

「桃子、彼は八番隊隊長の藤堂大和とうどうやまとだ。口数はそう多くないが、腕っぷしは劉紀にも劣らない。信頼できる男だ。」

「ご紹介ありがとうございます。……桃子と言います。藤堂さん、よろしくお願いします。」

私が挨拶すると、藤堂さんは、あぁ、とだけ、返事をした。確かに、寡黙そうな雰囲気だ。でも彼もキリッとしていてとってもカッコいい。身体つきもがっしりしていて、なんだかとても強そうだ。桜谷さんと並ぶほど強いと言われているのも頷ける。
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