黎明のカサブランカ

浮嶋 ひかり

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2章

月桂 第2話

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 「いい加減にしねぇか!風波ぃ!てめぇ、自分の家族に何してるか、分かってんのか!?」

……その場に現れたのは、仲澤のおいちゃんだった。まさかの人物の登場に、思わず目が潤む。

「くっ……どうしても、白明会の為なんだ……。」

叔父も、仲澤のおいちゃんの登場には、流石に動揺している様子であった。

「それがどうした。てめぇは、極道だけじゃなく、人間としてのスジってもんまで、忘れちまったのか?風波よ!」

叔父が、仲澤のおいちゃんの言葉で、ナイフを下げようとした瞬間だった。



パンッ!と高い金属音が響き渡った。



叔父が、腕を抑え、後ろへ倒れ込んだ。



「叔父さん!!」

私は、何が何だかわからず、叔父へ駆け寄る。叔父の腕からは大量に血が流れている。

「……裏切者は……始末せな、アカン……はぁ……」

叔父を撃ったのは、金代であった。

「金代!」

御籐様は、金代に掴みかかる。

「……事務所の権利は……俺のモンや……。」

金代は、この状況でも諦めていない様子であった。

「……へぇ~。風波事務所の登記一式って、もしかしてコレのこと?」

「……来るのが遅すぎんで!釧路くん!」

以前、試着室で会った釧路さんが、倒れたヤクザの群れからひょっこりと現れた。

「えー!俺たち、これでも頑張ったんだよ!?ね!岩倉さん!」

「……おう。超過手当しっかり出してもらわな。」

「金代!そういうことや、風波事務所の登記一式は、ゆめから、俺が全部預かっとる。」

御籐様は、釧路さんから書類を受け取った。

「……何やと!……お前ら……いつの間に……!」

流石の金代も動揺が隠せないようであった。

「……囚われてるゆめが、わざわざ、俺に伝えに来てくれたんや。もう五年も前にな……。そのときの伝言でな。風波事務所の次の代表は……



俺や。」


私の目には、涙が溢れた。やっぱり、御籐様に預けて正解だったと。


「……何やと!そうはさせへん……!」

金代が立ち上がろうとする。

「ざんねーん。もう手続きまで、済ましちゃってまーす!」

釧路さんは、最後までおちゃらけて言うのであった。



 その後は仲澤のおいちゃんが、観念した様子の金代を連行し、叔父さんは若衆達に抱えられ治療を受けに行った。



 「やっとやな。ゆめ。」

御籐様があの頃のように優しく笑った。

「御籐様……。本当に、本当にありがとうございます……。」

御籐様に会えた嬉しさと感謝と安堵で、私は涙が止まらなかった。



 泣いている私を抱きしめ御籐様はこう呟いた。



 「……あん時できんかった、答え合わせを、二人でゆっくりせんとな。」
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