黎明のカサブランカ

１章

揺れる日暈 第3話

　「会長。自慢の姪っこはんは、偉いご活躍やなぁ。相当稼いでらっしゃるようで、大した女や。それにしてもアンタが俺を呼び出すなんて珍しい話や。……で、わざわざ呼び出したのは、何の御用や。」
金代組長は、白明会会長の風波と座敷で密会をしていた。

「おかげさまで。……その涼明のことで相談があってな。」
風波は、バツが悪そうに言いごもる。

「だいたい検討はついとるわ。……なにやら、お姫さんに悪い虫がついとるようやなぁ。」
「……！知っていたのか。」
「噂でな。御籐と出歩ってんのが、町で見られとるらしいのぅ。」
風波が金代の言葉に頷く。

「ゆめは、今大事な時期なんだ。スキャンダルを出すわけにはいかない。」
「そらそうやな。白明会の大事な稼ぎ頭や。既に男がいるなんて知れたら一大事やなぁ。……そんで、御籐は俺の言葉には逆らえへんって、俺に言いたい訳やな。」

「ゆめは私が説得する。御籐の方は、金代から頼む。」
風波は、金代と目を合わさずに言った。

「……まぁ、ええやろ。せやけど、こっちもタダでは動かんで。一つ条件がある。」
金代は、いつにも増して悪い表情をしている。

「涼明の事務所の経営は、金代組でさしてもらう。それが条件や。」
風波は眉間にしわを寄せ、額からは汗が零れ落ちた。