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1章
揺れる日暈 第2話
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「あら、御籐さん!奇遇だわ!嬉しい!こんなところでお会いできるなんて!ぴったり茶屋に来なくなっちゃったから、みんな寂しがってるんですよ。この後、お時間どうですか?」
女性の可愛らしい猫撫で声が近くで聞こえる。チラッと盗み見ると、身体にピッタリと沿った形で今流行り柄の薄手の着物を着た、とても綺麗なお姉さんが、御籐様の腕に触れていた。
「……じゃかあしいわ。悪いけど、もう茶屋に行く気ないねん。お前から他の娘にも伝えとけや。」御籐様は、いつもより冷たい声で、その女性に言い、決して乱暴ではないが、女性の手を掴み、自らの腕から離させた。
「えぇ~。もうお会いできないんですかぁ。めっちゃ残念ですぅ。」
とその女性は、名残惜しそうだが、御籐様は私の肩を抱き、足早に人目につかない路地へ入った。噂には聞いていたが、御籐様は本当に女遊びが激しい人だったのか……その事実を受け、私の心臓はバクバクと鳴りやまない。そうか、私は、御籐様が他の女性と話す姿を見て、とても傷ついているんだ……。
「み、御籐様。あの、さっきの女性とはどういうご関係なんですか?」
私は、御籐様から距離を取り、思わず思ったことを口に出してしまう。嫌だ、こんなこと言いたくないのに。
「……昔の女や。心配すんな。もう会わん。」
御籐様は少し気まずそうに私に答える。私は、昔の女という言葉にショックを受け、思わず泣きそうになる。
御籐様は、そんな私に気づいたのか、すまん、と私の頭を自身の胸に寄せた。楽しい時間に、こんなこと、言いたくなかったのに……。
「……ごめんなさい。私、子どもみたいで……。」
人気者彼と付き合っているわけでもないのに、こんなことで、泣いて妬いてしまって。御籐様に子ども扱いされて、当然だ。
「いや、不安にさせるようなことしたんは俺の方や。……でも俺の好きな女はゆめ、お前や。」
御籐様は、私を真っすぐ見つめ、一番欲しかった言葉をくれた。
「御籐様、私も御籐様のことが好きです。……他の誰よりもずっと。」
最初は、初恋の人に似ているから気になったのかもしれない。今までずっとそうやって、自分の気持ちに気づかないふりをしていただけだ。初恋の人とは関係なく、御籐様が好きだ。誰にも負けないくらい、一番大好きだ。
私たちは、しばらくそこで抱きしめ合い、何より幸せな時間を過ごした。
女性の可愛らしい猫撫で声が近くで聞こえる。チラッと盗み見ると、身体にピッタリと沿った形で今流行り柄の薄手の着物を着た、とても綺麗なお姉さんが、御籐様の腕に触れていた。
「……じゃかあしいわ。悪いけど、もう茶屋に行く気ないねん。お前から他の娘にも伝えとけや。」御籐様は、いつもより冷たい声で、その女性に言い、決して乱暴ではないが、女性の手を掴み、自らの腕から離させた。
「えぇ~。もうお会いできないんですかぁ。めっちゃ残念ですぅ。」
とその女性は、名残惜しそうだが、御籐様は私の肩を抱き、足早に人目につかない路地へ入った。噂には聞いていたが、御籐様は本当に女遊びが激しい人だったのか……その事実を受け、私の心臓はバクバクと鳴りやまない。そうか、私は、御籐様が他の女性と話す姿を見て、とても傷ついているんだ……。
「み、御籐様。あの、さっきの女性とはどういうご関係なんですか?」
私は、御籐様から距離を取り、思わず思ったことを口に出してしまう。嫌だ、こんなこと言いたくないのに。
「……昔の女や。心配すんな。もう会わん。」
御籐様は少し気まずそうに私に答える。私は、昔の女という言葉にショックを受け、思わず泣きそうになる。
御籐様は、そんな私に気づいたのか、すまん、と私の頭を自身の胸に寄せた。楽しい時間に、こんなこと、言いたくなかったのに……。
「……ごめんなさい。私、子どもみたいで……。」
人気者彼と付き合っているわけでもないのに、こんなことで、泣いて妬いてしまって。御籐様に子ども扱いされて、当然だ。
「いや、不安にさせるようなことしたんは俺の方や。……でも俺の好きな女はゆめ、お前や。」
御籐様は、私を真っすぐ見つめ、一番欲しかった言葉をくれた。
「御籐様、私も御籐様のことが好きです。……他の誰よりもずっと。」
最初は、初恋の人に似ているから気になったのかもしれない。今までずっとそうやって、自分の気持ちに気づかないふりをしていただけだ。初恋の人とは関係なく、御籐様が好きだ。誰にも負けないくらい、一番大好きだ。
私たちは、しばらくそこで抱きしめ合い、何より幸せな時間を過ごした。
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